特定技能外国人は転職可能だがリスクもある|転職時に企業が行うべき手続きとは
2019年に新設された在留資格「特定技能」では転職が可能です。しかし、転職するための要件や手続きを知っている人が少ないため、雇用している外国人に「転職したい」と言われても困ってしまいます。
そこでこの記事では、特定技能外国人が転職するための要件や、旧受け入れ企業と新受け入れ企業がしなければならない手続きを紹介します。
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1. 特定技能の転職は可能だがリスク・ハードルが高い
特定技能の転職は条件を満たせば可能ですが、実際は転職が困難になるポイントがいくつかあります。
- 在留資格変更許可申請中には、アルバイトができない
- 在留資格申請が不許可になった場合帰国しなければならない
- 転職先の協力がなければならない
それぞれ詳しく説明します。
2-1,在留資格変更許可申請中にはアルバイトができない
転職をする場合、外国人は在留資格変更許可申請をしなければなりません。この申請は必要書類が多く準備が大変であるだけでなく、申請から許可まで約1~3か月かかります。
この申請中に前職を辞めてアルバイトで収入を得ようと考える外国人は多いと思いますが、在留資格「特定技能」で日本に滞在している外国人は、指定された企業・職種でしか働くことができないため、アルバイトはできません。申請期間中に長くて3か月も日本で収入が0になってしまうことは、転職のハードルを上げてしまっています。
特定技能の変更申請についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
2-2,在留資格申請が不許可になった場合帰国しなければいけない
さらに、万が一在留資格変更許可申請が不許可になった場合、日本に滞在できる在留資格がなくなることになるため、速やかに帰国しなければなりません。もし内密に日本滞在を延長した場合、外国人本人がオーバーステイで罰せられるだけでなく、雇用していた企業も不法就労助長罪で罪に問われます。
在留資格変更許可申請は許可率が非常に高い申請というわけではありません。在留資格を失ってしまうリスクがあることも、外国人の転職のハードルを上げています。
2-3.転職先の協力がなければならない
2-1で触れたように、特定技能では外国人が従事できる企業・職種・業務が定められています。これはパスポートに貼付されている指定書に書かれています。
そのため、特定技能で転職する場合は指定書に定められている職種の企業を探す必要があり、さらに指定書内の業務しかできないことを了承してもらわなければなりません。
また、転職先の企業は、在留資格変更許可申請の際に提出書類を用意しなければなりません。
このように転職先の企業の負担は決して小さくなく、特定技能外国人の転職は転職先の企業の協力が不可欠ということが分かります。
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2. 転職をする外国人側の条件
続いて、転職する外国人が満たすべき要件を紹介します。転職するときは、前職と同じ業種に転職する場合と、前職と別の業種に転職する場合で手続きが異なります。
2-1. 転職先でも業種・業務が変わらない場合
在留資格「特定技能」を取得するには、以下の2つの試験に合格する必要があります。
- 日本語能力試験N4以上(又は同等以上の日本語能力を証明できるもの)
- 産業分野別の特定技能試験
前職と転職先で業種・業務が変わらない場合は、2の技能試験も免除になります。例えば介護施設で働いていた外国人が、別の介護施設で特定技能「介護」に指定されている範囲内の業務を行う場合、技能試験は免除されます。
しかし、この場合でも在留資格変更許可申請をする必要があります。
2-2. 転職先でも業種・業務が変わる場合
例えば、特定技能「飲食」を取得し飲食店で働いていた外国人が、特定技能「介護」を取って介護施設に転職したい場合は、在留資格変更許可申請をするために分野別の技能試験に合格しなければなりません。
同じ分野の中でも職種が異なる会社に転職する場合は、技能試験も異なるため試験を受け直す必要があります。例えば、建設分野〈土木〉で特定技能ビザを取得していた外国人が、建築分野〈建築〉の業務をするためには、新たに建設分野〈建築〉の技能試験に合格する必要があります。
3.転職先の企業側への条件
外国人が在留資格「特定技能」で転職する場合、転職先の会社は特定技能ビザの外国人を受け入れる制度と設備が必要です。
3-1.特定産業分野(12分野)のいずれかに該当している
特定技能ビザで外国人を雇用する場合、そもそも自社の産業分野・業種が特定産業分野に該当しているのかを確認しなければなりません。
特に気を付けなければならないのは、業務区分です。同じ「建設」分野でも、タイル張りは建築分野、建設機械施工は土木分野など、作業によって業務区分が変わってきます。外国人に従事させる予定の業務が、本当に特定技能ビザの業務範囲内なのかを細かく確認しなければなりません。
3-2. 必要となる試験・修了するべき技能実習の確認を行う
特定技能ビザを得るには、日本語試験と技能試験の2つに合格しなければなりません。前職と同じ分野・業種に転職する場合には試験は免除されますが、転職してくる外国人を雇用する場合には、必要となる試験や技能実習を事前に確認しておかなければなりません。
特定技能外国人の転職に関して何かお困りのことがございましたらお気軽にご相談ください
4. 特定技能における転職手続き
ここから、実際に特定技能ビザで外国人が転職する場合の手続きの流れを解説します。
4-1. 旧受け入れ企業が行う5つの手続き
新たに特定技能外国人を雇用する企業だけでなく、外国人が以前勤めていた企業(旧受け入れ企業)も行わなければならない手続きがあります。
- 外国人雇用状況の届け出
- 特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
…外国人との雇用契約に変更(離職の場合も含め)があった場合に提出 - 特定技能所属機関による受入困難に係る届出
…「特定雇用契約に係る届出」を提出する前に事前に提出 - 特定技能所属機関による支援計画変更に係る届出
…外国人との雇用契約が終了するのに伴い、登録支援機関との委託契約が終了する場合 - 雇用保険や社会保険の解約など日本人の従業員が退所したときと同様の手続き
①は雇用保険の適用を受けている事業所を管轄するハローワーク、またはオンラインで提出します。離職の場合は離職の日の翌日から起算して10日以内に提出しなければなりません。
②~④は出入国在留管理庁電子届出システム、または旧受入れ企業の本店を管轄する出入国在留管理局に提出します。提出期限は退職後14日です。
各届け出の申請書の様式や、必要書類は上記リンクを参考にしてください。(出典:出入国在留管理庁)
4-2. 新受け入れ企業が行う手続き
新受け入れ企業は多くの書類を準備しなければなりません。特に「所属機関に係る提出書類」では、企業が特定技能外国人を受け入れるための体制が整っているか(母国語での支援があるか、登録支援機関と委託契約を結んでいるか等)、過去に行方不明者を出していないかなどが確認されます。
以下は必要書類の一例です。
- 特定技能雇用契約書
- 特定技能外国人の報酬に関する説明書
- 特定技能外国人支援計画書
- 登録支援機関との支援受託契約に関する説明書(登録支援機関に支援を委託する場合)
- 労働保険料等納付証明書
- 役員の住民票の写し
併せて、最寄りのハローワークに外国人雇用状況の届け出を忘れずに提出してください。提出の期限は、雇い入れの場合は翌日10日です。
新受け入れ企業は所属機関に係る提出書類だけでなく、外国人当人が在留資格変更許可申請を提出する際に必要な雇用契約書などの書類も準備しなければなりません。
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4-3.外国人が行う手続き
在留資格変更許可申請を行う必要があります。
必要書類は「申請人に関する提出書類」「所属機関に関する提出書類」「分野に関する提出書類」に分けられます。
申請人に関する提出書類は、在留資格変更許可申請書に始まり、健康診断個人表・納税証明書・源泉徴収書などです。所属機関に関する提出書類は新受け入れ企業に準備してもらわなければなりません。登記事項証明書・役員の住民票の写し・労働保険料等納付証明書(未納なし証明)などが挙げられます。分野に関する書類は技能試験の合格証明書と、その他実習を修了していることの証明書の提出が求められます。
「申請人に関する提出書類」「所属機関に関する提出書類」「分野に関する提出書類」の一覧は出入国在留管理庁HPを確認してください。
5. 特定技能の転職までにかかる期間
在留資格変更許可申請の審査には一般的に1~2か月かかると言われています。提出用の書類の準備にも約1か月必要であることを考えると、転職には早くて1か月半、長くて3か月かかります。
特定技能ビザで滞在している外国人は、在留資格変更許可申請が認められない限り新受け入れ企業で働くことはできません。収入を途切れさせないためにも、退職日と入社日は注意して決めなければなりません。
6. 特定技能外国人の転職を防ぐためのポイント
膨大な量の書類を準備してせっかく雇用した外国人が他の企業に転職してしまうというのは、企業にとって大きなダメージになってしまいます。
ここでは、企業側の体制や対応が原因で外国人が退職することを防ぐポイントを説明します。
6-1. 事前ガイダンスやオリエンテーションの徹底
事前ガイダンスや業務・生活オリエンテーションは、外国人が完全に理解できるように外国人の母国語で実施することをおすすめします。外国人の母国語が話せるスタッフがいない場合には、マニュアルにすべて翻訳を付けるといいでしょう。
ガイダンスやオリエンテーションが終わった後には、理解確認のためのミニテストを実施している企業もあります。
6-2. 正当な待遇を行う
給与や待遇面で日本人従業員に比べて不当に扱われていると感じた時、外国人従業員は不満を抱き退職の原因になってしまいます。
また、給与・昇進に関わる評価体制も明言化することをおすすめします。日本人従業員と外国人従業員では仕事で評価されるポイントが異なる場合もあるため、日本の企業で評価されるポイントを事前に共有するといいでしょう。
6-3. 適切な教育体制を整える
外国人従業員は、日本と言う異国の地で働くことに業務だけでなく生活面でも不安に思っていることが多いです。
外国人従業員の教育係には、業務だけでなく生活面もサポートするように指示することが望ましいです。金融機関・医療機関・行政での手続きでのサポートだけでなく、日々の業務や生活の不安を話せるような関係を築けるといいでしょう。
そのため、外国人従業員の母国語が話せる、または母国の文化を理解しているスタッフを教育係に配置すると、サポートが円滑にできます。
外国人労働者の受入れ研修については、こちらの記事も参考にしてください。
外国人の転職の大きな理由が職場での人間関係です。
外国人労働者と良い関係を築くためには「外国人労働者とのコミュニケーションマニュアル」にノウハウを説明しております。
6-3. 働くメリットを伝えてあげる
もし外国人従業員が転職を考えていると伝えてきたときには、自社で働き続けることのメリットを伝えるといいでしょう。
業務の評価体制や外国人従業員の受け入れ態勢が、日本企業の中でもトップクラスで整っていることを伝えれば、転職を思いとどまるかもしれません。
7. よくある質問
8. まとめ
意外と知られていない特定技能ビザの転職について説明してきましたが、いかがだったでしょうか。
実際に特定技能ビザでの転職は非常にハードルが高く、外国人を雇用している企業の採用担当者の方でもよく知らない人が多いです。
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