特定技能「製造業」とは?工場製品製造業分野で外国人を採用しよう!

執筆者:白鳥純一(白鳥国際行政書士法務事務所所長)

2019年4月時点で人口のおよそ30%を60代以上が占める日本の少子高齢化を起因とする慢性的な人手不足や産業界の活性化を図ることを目的に出入国管理法(入管法)が改正されました。製造業においても人手不足の業界で外国人を正社員として雇える「特定技能」資格を持つ外国人の就労が認められるようになり、日本企業と外国人就労者の双方にとってまたとない好機となりました。

そもそも特定技能について詳しく知りたい方は「特定技能まるわかり資料」をダウンロードください

目次

1. 特定技能「製造業」とは?

1-1. 3つの分野が工場製品製造業分野に統合

2022年4月、それぞれの申請が必要だった3つの分野「素形材産業分野」、「産業機械製造分野」、「電気・電子情報関連製造業分野」が「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」として統合されました。

そして、2024年3月29日に政府は分野名を「工場製品製造業分野」と変更したうえで、新たな業種・業務区分を追加する閣議決定を行いました。

参考:特定技能在留外国人数|出入国在留管理局

また、対象業務もかなり拡大しています。下の図の赤線部は新たに追加された業種です。

1-2.製造業に従事する外国人は多い

また、この「製造業」は日本で働く在留外国人の26.6%が従事しており最も多い割合となっています。特定技能でも飲食料品製造業の次に多い40,069人(令和5年12月末現在)が製造業に従事しています。

製造業では高度な日本語のスキルを求められることが少なく未経験でも始めやすい、また続ければ専門的な知識を身に着けられるという点で外国人から人気な分野のひとつとなっています。

参考:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表」

日本で働く在留外国人の業界別ランキングはこちらの記事で解説しています。

1-3.特定技能への対象に「縫製」が追加

特定技能制度における工業製品製造業分野の新たな業務区分の一つに縫製が追加されました。これまで技能実習制度を活用し、技能実習生がものづくりの一端を支えていた国内縫製業や関係者からは歓喜の声が上がっています。技能実習生が多く活躍している業界のため、特定技能への追加要望が高かったものが実現されました。

一方で、繊維業はかつて制度を不正利用する縫製業者が後を絶たなかったことがあるなど懸念もある。法制度の遵守や人権対策など課題は多く、どのような運用となるか注目が集まっている。

政府は2024年3月に繊維業の技能実習制度において、時間外労働に対する賃金不払い等の違反が多いことから、違反をなくし適正な取引を推進するため、繊維業においては追加要件を設定した。下の図は新たな追加要件の内容です。

2. 特定技能「製造業」3分野の業務区分・職種

特定技能の在留資格を持つ外国人が、働くことのできる製造業の業務区分と、職種は以下の通りです。

2-1. 素形材産業分野

「素形材産業分野」は金属などの素材に対して鋳造や塑性加工を施し組み立てる産業のことを指し、以下の業種が該当します。

素形材産業分野に該当する業種

  • 鋳型製造業(中子を含む)
  • 鉄素形材製造業
  • 非鉄金属素形材製造業
  • 作業工具製造業
  • 配管工事用附属品製造業(バルブ、コックを除く)
  • 金属素形材製品製造業
  • 金属熱処理業
  • 工業窯炉製造業
  • 弁・同附属品製造業
  • 鋳造装置製造業
  • 金属用金型・同部分品・附属品製造業
  • 非金属用金型・同部分品・附属品製造業
  • その他の産業用電気機械器具製造業(車両用、船舶用を含む)
  • 工業用模型製造業

参考:経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて

素形材産業分野で、外国人が就労可能な職種

「素形材産業」で、要件を満たした外国人が従事できるのは以下の職種です。

  • 鋳造  (鋳鉄鋳物鋳造、非鉄金属鋳物鋳造)
  • 鍛造  (ハンマ型鋳造、プレス型鋳造)
  • ダイカスト(ホットチャンバダイカスト、コールドチャンバダイカスト)
  • 機械加工(普通旋盤、フライス盤、数値制御旋盤)
  • 金属プレス加工(金属プレス)
  • 鉄工(構造物鉄工)
  • 工場板金(機械板金)
  • めっき(電気めっき、溶融亜鉛めっき)
  • アルミニウム陽極酸化処理(陽極酸化処理)
  • 仕上げ(治工具仕上げ、金型仕上げ、機械組立て仕上げ)
  • 機械検査(機械検査)
  • 機械保全(機械系保全)
  • 塗装
  • 溶接

参考:経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて

2-2. 産業機械製造業

産業機械製造業は、建設業や農業などで使う機械を製造する産業のことを指し、以下の業種が該当します。

産業機械製造業に該当する業種

  • 機械刃物製造業
  • ボルト・ナット・リベット・小ねじ・木ねじ等製造業
  • はん用機械器具製造業(ただし、消火器具・消火装置製造業及び素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く。)
  • 生産用機械器具製造業(ただし、素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く。)
  • 業務用機械器具製造業(ただし、以下に掲げられた業種に限る。)
  • 管理、補助的経済活動を行う事業所(27業務用機械器具製造業)
  • 事務用機械器具製造業
  • サービス用・娯楽用機械器具製造業
  • 計量器・測定器・分析機器・試験機・測量機械器具・理化学機械器具製造業
  • 光学機械器具・レンズ製造業

産業機械製造業で、外国人が就労可能な職種

「産業機械製造業」の中で、要件を満たした外国人が従事できるのは以下の職種です。

  • 鋳造
  • 鍛造
  • ダイカスト
  • 機械加工
  • 金属プレス加工
  • 鉄工
  • 工場板金
  • めっき
  • 仕上げ
  • 機械検査
  • 機械保全
  • 電子機器組立て
  • 電気機器組立て
  • プリント配線板製造
  • プラスチック成形
  • 塗装
  • 溶接
  • 工業包装

2-3. 電気・電子情報関連産業

電気・電子情報関連産業は、電化製品や電子部品を製造する産業のことを指し、以下の業種が該当します。

電気・電子情報関連産業に該当する業種

  • 電子部品・デバイス・電子回路製造業
  • 電気機械器具製造業(ただし、内燃機関電装品製造業及び素形材産業分野に掲げられた対象業種を除く)
  • 情報通信機械器具製造業

電気・電子情報関連産業で外国人が就労可能な職種

「電気・電子情報関連産業」の中で、要件を満たした外国人が従事できるのは以下の職種です。

  • 機械加工 
  • 機械保全 
  • 塗装
  • 金属プレス加工 
  • 電子機器組立て 
  • 溶接
  • 工場板金 
  • 電気機器組立て 
  • 工業包装
  • めっき 
  • プリント配線版製造
  • 仕上げ 
  • プラスチック成形

製造業で特定技能外国人の採用をお考えの方はお気軽にご相談ください。

3. 特定技能「製造業」の企業の要件

特定技能制度を使って外国人を受け入れるには、製造業の3分野(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)を行う事業者が以下の企業の要件を満たしていなければなりません。

3-1. 事業を継続しているか

一つ目は事業者が継続して製造業を行っていることが認められることです。特定技能制度における製造業の判別は事業者が直近1年間に素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業に分類される産業を行い、製造品の出荷額等を発生させているかどうかで判断されます。

「製造品出荷額等」とは直近1年間における製造品の出荷額や加工賃の収入額、くず廃物の出荷額やその他の収入を合計したもので消費税などの税金を含んだ額を指します。これらの収入額をそれぞれ具体的に説明します。

加工賃の収入額

直近1年間で他企業が所有する主要原材料によって製造された製品、あるいは他企業が所有する製品又は半製品に加工や処理を加えた際に受け取った賃金のことを指します。

その他収入額

くず廃物の出荷額以外(転売収入。仕入れて又は受け入れてそのまま販売したもの)、修理料収入額、冷蔵保管料及び自家発電の余剰電力の販売 収入額等)の収入額を指します。

3-2. 事業者所有の原材料で製造されているか

もう一つの要件は売り上げを得た製造品は事業所が所有する原材料によって製造され、出荷されている必要があります。また、以下のようなケースも製造出荷として含まれます。

製造出荷に該当する例

  • 同一企業に属する他の事業所へ引き渡したもの
  • 自家使用されたもの(その事業所において最終製品として使用されたもの)
  • 委託販売に出したもの(販売済みでないものを含み,直近1年間中に返品されたものを除く)

参考:製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会 運営要領

3-3.協議会に参加しているか

経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて

特定技能外国人材の受け入れを新たに希望する事業者は入管庁(出入国在留管理庁)による在留諸申請に係る審査を受ける必要があります。基準をクリアした事業者は初めて特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会に入会する義務があります。

この協議会は特定技能資格を有する外国人の働きやすい労働環境を守るために設けられたもので、経済産業省などの省庁が構成員となり不正行為の抑止やさまざまな事例の共有によってより適切な外国人労働者の受け入れ環境の整備に取り組んでいる点が特徴です。現に加入事業者や審議内容が原則として公開されるなど、情報をできる限り透明化したい意向も垣間見えます。

参考:経済産業省 特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業)
   製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会の設置について
   経済産業省 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会
   製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会運営要領

4. 特定技能「製造業」の外国人の要件

2019年4月に新たに設けられた特定技能を使って外国人が日本で働くためには規定の日本語試験と特定技能の分野ごとに異なる技能試験に合格している必要があります。

4-1.日本語試験への合格

特定技能を使って日本での就業を希望する外国人は日々の生活や業務に必要な日本語能力を習得している必要があります。そのため日本語能力試験(N4以上)もしくは国際交流基金日本語基礎テスト(A2レベル以上)に合格し、円滑にコミュニケーションを図れる人材であることを示さなければなりません。

各レベルの外国人がどのくらい日本語力があるかはこちらの資料で詳しく解説しています。

4-2. 技能評価試験への合格

特定技能を使って日本での就業を希望する外国人は日本語能力試験に加えて、技能評価試験を受験し合格する必要があります。基本的には就業する業種に応じた試験に合格する必要がありますが、「技能実習2号を良好に修了した」と認められ、特定技能(1号)との関連がある場合などには技術評価試験の受講を免除されます。

この「良好に修了している」とは技能実習を2年10か月以上修了している状況を指し、製造業の技能評価試験を行う目的でもある「技能検定3級」と同等以上の能力を有していることが認められた場合にこの特例が適用されます。

参考:経済産業省 製造分野特定技能1号評価試験

特定技能外国人の要件

  • 在留期間:1年、6か月又は4か月ごとの更新、通算で上限5年まで
  • 技能水準:試験等で確認(技能実習2号を修了している外国人は、試験等が免除される)
  • 日本語能力水準:生活や業務に必要な日本語能力を試験等で確認
  • 家族の帯同:基本的に認めない
  • 受入れ機関又は登録支援機関による支援の対象外

参考:外務省 特定後能外国人を受け入れるまで
   経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて
   特定技能総合支援サイト 特定技能制度とは

5. 特定技能「製造業」の試験

では技能試験に関してもう少し詳しくご説明します。令和4年時点では製造分野特定技能1号評価試験(日本国内実施)は19区分に分かれており、いずれの場合も学科試験と実技試験の2科目で実施されます。(※溶接区分のみ、製作等作業方式の実技試験を実施)

5-1. 実技試験

製造分野特定技能1号評価試験の19区分
製造分野特定技能1号評価試験(日本国内実施)の流れ

試験内容は日本人向けの技能検定3級程度とされており、実技試験は60%以上で「合格」と判定されます。

(※溶接•手溶接作業はJIS Z 3801、半自動溶接作業はJIS Z 3841に基づいて判定)

「特定技能外国人材制度(素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野)ポータルサイト」では、試験問題のサンプルも掲載されているので、こちらを見ながら試験の対策を立てられてみるのも良いのではないでしょうか。

参考:特定技能外国人在制度 製造分野特定技能1号評価試験

5-2. 学科試験

学科試験では製造業に使う専門性の高い日本語能力を図る問題や、定規のメモリを正しく読み取る問題などが日本語で出題され、実際の業務で活躍できる人材かどうかを見極める試験となっています。学科試験は全体の65%以上で合格と判定されます。学科試験と実技試験の2科目の基準をクリアした場合、製造分野特定技能1号評価試験の合格と認定されます。

申し込み方法

製造分野の試験は規定のサイトから申し込むことが出来ます。

参考:特定技能外国人在制度 製造分野特定技能1号評価試験
参考:経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて
参考:特定技能総合支援サイト 特定技能制度とは

6. 特定技能「製造業」の採用方法

製造業を営む事業者が、特定技能外国人を採用する際には、以下の3つのケースが一般的です。

6-1. 技能実習からの移行

日本で2年間の実習を修了した技能実習生(技能実習2号)と製造業を営む事業者との合意があった場合には特定技能外国人として雇い入れることも出来ます。

6-2. 留学生アルバイトからの移行

日本語試験と特定技能試験に合格した留学生は留学ビザから切り替えて日本国内で特定技能外国人として業務を行うことが出来ます。

6-3. 海外からの採用

国内または国外で実施された日本語試験と特定技能試験に合格した外国人は日本国内で特定技能外国人として業務を行うことが出来ます。

参考:経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて

7. 特定技能「製造業」の採用の流れ

7-1. 技能実習からの移行の場合の流れ

技能実習は日本の進んだ技術を海外に移転することが制度の目的とされ設立された在留資格です。基本的に転職は認められておらず、外国人は特定の業務を集中的に従事できます。

技能実習2号を良好に修了した実習生は特定技能に移行する際、特定技能評価試験の受験も免除されます。特定技能外国人の受け入れが可能な業務が限られているので、自社の事業が該当するかどうかを事前に確認しましょう。

特定技能と技能実習の違いはこちらの記事で詳しく説明しているので気になる方はぜひご覧ください。

7-2. 留学生アルバイトからの移行の場合の流れ

外国人留学生が、特定技能に切り替える際には、特定技能評価試験と日本語試験に合格していること、そして納期が課されている税金を全て支払っていることが条件となります。留学ビザでは日本国内でのアルバイトが週28時間以内と決められていますが、就労が規定の時間内で収めているかどうかを源泉徴収票などの資料を入管に提出して示す必要があります。

参考:外国人労働者に対する税金はどうなりますか?
参考:経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて

7-3. 海外からの採用の場合の流れ

国外または日本国内で行われた特定技能評価試験と日本語試験に合格している外国人である必要があります。外国人雇用者からの直接の応募や事業者による求職の斡旋などを経て事業者との合意に至った場合には雇用契約の締結と在留資格認定証明書の交付、そして特定技能ビザの発給を経て勤務の開始に至ります。

いずれの場合にも特定技能評価試験と日本語試験に合格した外国人が特定技能で日本に滞在するためには、以下の書類かが必要です。

特定技能外国人と契約する際に必要な書類

  • 申請書(外国人・受入れ先の企業がそれぞれ作成)
  • 技能水準,日本語能力水準に関する書類・労働条件に関する書類
  • 労働保険・社会保険・税に関する書類(外国人・受入れ機関)
  • 特定技能(1号)の外国人の支援に関する書類

参考:経済産業省 製造業における特定技能外国人材の受入れについて

特定技能の受け入れ方や採用までの流れを詳しく知りたい方は以下の記事をご参照ください。

8. まとめ

製造業を営む事業者にとって特定技能外国人の雇用は事業を拡大させる上でも魅力的な選択肢の一つです。ですが手続きの煩雑さや心理的なハードルの高さなどから、実際の制度利用には至っていないという製造業の事業者も多くいらっしゃると思います。

さまざまな形で円滑な手続きが整備されつつある特定技能外国人の雇用をこの機会に考えられてみてはいかがでしょうか。「自社は特定技能を受け入れられる業種に該当する?」や「費用はどのくらいかかる?」など気になる点がありましたらオンラインで無料相談も行っているのでぜひご活用ください。

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この記事を書いた人

白鳥国際行政書士法務事務所所長
行政書士として活動する傍ら、インタビューやコラム記事を中心に、執筆活動を続けている。
主な執筆ジャンルは、法律、スポーツ、エンターテイメントなど。
https://www.foriio.com/shiratori-junichi

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