【徹底比較】特定技能と技能実習9つの違い、またそれぞれのメリット・デメリットを解説

執筆者:伊藤(株式会社JJS 取締役)

「技能実習生と何と違うんだろう?」
「少し違うのはわかっているけど具体的な違いがわからない」

とお考えの人事担当者の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

本記事では、計2,000名以上のベトナム人と面談を行い、200名以上の特定技能外国人の就職を成功させた筆者が特定技能と技能実習の制度の違い、それぞれのメリット・デメリット、企業様のご状況に合わせたおすすめの採用方法をご紹介いたします。

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目次

1.特定技能と技能実習の9つの違い

特定技能と技能実習の違いは9つあります。

まずはそれぞれを一覧にまとめましたので、以下の図をご確認ください。

制度名特定技能技能実習
制度の目的人手不足を目的に外国人”労働者”を受け入れる国際貢献を目的に発展途上国から技能”実習生”を受け入れる
対象業種と職種14職種
*技能実習より幅広い業務に従事可能
85職種156作業
在留期間1号:通算5年
2号:上限なし(家族呼び寄せ可)
最長5年
1号:1年以内
2号:2年以内
3号:2号以内
受け入れまでにかかる時間2~5ヶ月6ヶ月以上
人材レベル即戦力となりうる
技能水準:相当程度の知識又は経験が必要
日本語水準:N4以上(日常会話が可能なレベル)の日本語能力要件あり
未経験
技能水準:試験等はなし
日本語水準:試験等はなし
(介護職種のみ入国時N4レベルの日本語能力要件あり)
採用方法受け入れ企業が直接海外で採用活動を行うことも出来る通常管理団体と送出機関を通して行われる
受け入れ人数制限なし(介護・建設分野を除く)常勤職員の総数に応じた人数枠あり
転職の可否可能原則不可
(ただし、実習実施者の倒産等やむを得ない場合や2号から3号へ移行時は転籍可能)
コスト5年間で技能実習より20~30万円ほど割安5年間で特定技能より20~30万円ほど割高

違い①|制度の目的

特定技能と技能実習は制度の目的が違います。この制度の目的の違いが重要です。

先述の通り、特定技能は日本の人手不足解消を目的とし、外国人労働者を受け入れるための制度です。一方で、技能実習は国際貢献を目的とした制度であり、発展途上国人材に日本の先進技術を学び母国の発展に活かしてもらうための制度となります。

違い②|対象業種と職種

特定技能と技能実習では対象となる業種や職種が異なります。

技能実習の業種・職種

技能実習の対象職種は以下の通りになります。

出典:厚生労働省「技能実習 移行対象職種・作業一覧(90職種165作業)」令和5年10月31日時点

特定技能の業種・職種

特定技能は以下の分野に分かれています。

出典:法務省「特定技能ガイドブック」

ご覧のように特定技能の方が技能実習よりも幅広い業務に従事させることが可能です。

技能実習では、受け入れ対象職種が86職種(158作業)と細分化されており、それぞれの職種ごとに決められている作業以外に従事させることは認められていません。一方で、特定技能においては、特定技能外国人は日本人従業員と同じ業務に従事させることができるため比較的幅広い業務に従事させることが可能です。

違い③|在留期間

特定技能と技能実習では以下の図の通りで在留できる期間に違いがあります。技能実習の場合、あくまで途上国への技術移転が目的であるため技能実習生は最大5年間の契約期間を満了後帰国をしなければいけないというルールがある一方で、特定技能は労働者を受け入れるための制度であるため特定技能2号に移行することができれば日本で長く働くことも可能です。

特定技能技能実習
1号:通算5年
2号:上限なし(家族の呼び寄せ可)
1号:1年以内
2号:2年以内
3号:2年以内
合計で最長5年

特定技能2号では家族の呼び寄せが可能となります。家族の呼び寄せは外国人が日本で長く働く上で非常に重要です。家族と何十年も一緒に暮らすことができないとなると日本で長く働く選択肢を取る外国人は少数かと思いますので家族の呼び寄せ可能という要件は非常に重要です。

また、以前は特定技能2号が認められているのでは建設と造船の分野のみでしたが、2023年6月に特定技能2号の対象分野が介護以外の11分野に広がりました

違い④|人材レベル

特定技能の場合は即戦力となりうる人材を採用できる可能性があります。なぜなら、外国人は業務上必要な一定の日本語能力や知識について試験に合格をしなければ特定技能で働くことができないというルールになっているためです。一方、技能実習生の場合は来日にあたって、技能水準や日本語水準を測る試験等はありません。

また、特定技能では日本在住者や来日経験者を採用できる可能性があります。このような人材は日本語能力も高く、日本の文化や風習への理解も深い傾向があるので、日本人採用と近い感覚で受け入れをしやすいでしょう。中には技能実習等の際に特定技能で従事する業務と同様の業務を経験している人材もいるため、即戦力として十分な能力を有している可能性があります。

一方、技能実習の場合は初めて来日する人材を対象とし、受け入れを行います。

違い⑤|受け入れまでにかかる時間

特定技能は日本国内で採用する場合と海外から採用する場合とで受け入れまでにかかる時間が異なります。日本国内採用であれば3ヶ月程度、海外であれば5ヶ月程度で受け入れが可能です。

一方、技能実習の場合は海外からのみ受け入れ可能で6ヶ月以上受け入れまで時間を要します。理由としては、技能実習の場合はあくまで実習のため入社前の事前研修等に時間がかかってきてしまうからです。

違い⑥|採用方法

特定技能は、国内外問わず企業が直接採用活動をすることが可能です。

一方、技能実習の場合は通常監理団体と送出機関を通して行われます。

違い⑦|受け入れ人数制限

特定技能では受け入れ可能人数に特段制限はありません。(※介護業と建設業を除く)

一方、技能実習では適切な指導が実施できるよう、受け入れ可能人数に制限があります。この受け入れ人数の制限は常勤職員の総数に応じて決定されます。

詳しくは以下をご参照ください。

実習実施者の常勤の職員の総数技能実習生の人数
301人以上常勤職員総数の 20分の1
201人~300人15人
101人~200人10人
51人~100人6人
41人~50人5人
31人~40人4人
30人以下3人

参考:厚生労働省「新たな外国人技能実習制度について」

違い⑧|転職の可否

特定技能では転職可能ですが、技能実習ではそもそも転職という概念が存在しません。なぜなら、技能実習は労働が目的ではないためです。

ただし、外国人が技能実習2号から3号に移行する際は転籍をすることも可能ではありますが、少なくとも3年は労働力を確保することが可能です。

違い⑨|コスト

コスト面では5年間で特定技能の方が20〜30万円ほど割安となります。

技能実習はあくまで実習のため、検定や講習に費用が発生します。また、実習状況の報告等をこまめに行う必要があるため事務作業の量も多く煩雑であるため多くのコストが発生します。一方で特定技能は労働者であるため検定や講習に対する費用は発生せず、事務的な手続きも少ないため結果的に割安となります。

特定技能のコストについてはこちらの記事をご覧ください。

以上が、特定技能と技能実習の9つの違いとなります。

次の章では9つの違いを踏まえたそれぞれのメリット・デメリットを見ていきますので、導入にあたってのご参考にしていただければと思います。

2. 特定技能と技能実習どちらを選べばいいのか?

「結局、特定技能と技能実習どちらを選べばいいのか?」とお悩みの方も多いと思いますので、以下にて特定技能がおすすめの企業と技能実習がおすすめの企業をご紹介いたします。

2-1. 特定技能がおすすめの企業

特定技能受け入れにおいて、重要なのは外国人が転職をしない環境を提供できるかという点になります。外国人は、①立地 ②給与条件 ③外国人理解度の高さの、3つを重視する傾向があります。

私の考えでは、その中でも「外国人理解度の高さ」が最も重要で、外国人は自分たちの持つ日本人とは異なる価値観や気持ちに対して、理解を示し尊重をしてもらえる環境だと転職しにくい傾向があります。

そのため、以下に該当する企業様は特定技能がおすすめです。

  • 立地や給与条件に自信がある

  • 立地や給与条件に自信はないが、外国人が働きやすい環境づくりを追求できる

  • 初めて外国人を受け入れするので少しでも言語や文化の壁が少ない外国人を採用したい

                                                            
  • 日本語能力が必要な業務が多いので、日本に滞在している外国人や来日経験のある外国人を採用したい                

  • 早急に人手が欲しいので入社まで6ヶ月以上時間のかかる技能実習ではなく、入社まで2〜5ヶ月しかかからない特定技能で採用したい

  • 大人数の外国人を採用したいので人数制限のある技能実習ではなく、人数制限のあまりない特定技能で人財を採用したい

  • 幅広い業務に従事して欲しいので作業内容が限定的な技能実習ではなく、日本人と同様の業務を任せられる特定技能で採用したい
  • 立地や給与条件に自信がある

  • 立地や給与条件に自信はないが、外国人が働きやすい環境づくりを追求できる

  • 初めて外国人を受け入れするので少しでも言語や文化の壁が少ない外国人を採用したい

  • 日本語能力が必要な業務が多いので、日本に滞在している外国人や来日経験のある外国人を採用したい

  • 早急に人手が欲しいので入社まで6ヶ月以上時間のかかる技能実習ではなく、入社まで2〜5ヶ月しかかからない特定技能で採用したい

  • 大人数の外国人を採用したいので人数制限のある技能実習ではなく、人数制限のあまりない特定技能で人財を採用したい

  • 幅広い業務に従事して欲しいので作業内容が限定的な技能実習ではなく、日本人と同様の業務を任せられる特定技能で採用したい

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2-2. 技能実習がおすすめの企業

技能実習の場合は転職がありませんが、技能実習生には失踪の選択肢もないとは言えないので、外国人の価値観等を理解し受け入れをすることが重要であることは変わりありません。

以下に該当する企業様は技能実習がおすすめです。

  • 立地や給与条件、労働環境に自信がない

  • 3年間でいいので確実な労働力の確保がしたい

  • 日本語能力が必要な業務が少ない

  • 人材の採用に急いでいない

  • 少人数の外国人受け入れで構わない

  • 外国人に任せたい業務内容がはっきりしている

技能実習が廃止⁉新制度「育成就労」に代わる

政府は技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」を設けるとした方針を決定しました。

政府は関係閣僚会議を開いて、有識者会議の最終報告書を踏まえた技能実習制度の見直し方針を決定しました。

それによりますと、今の技能実習制度を廃止して、新たに「育成就労制度」を設け、基本的に3年で一定の水準に育成するとしています。

受け入れる職種は介護や建設、農業など、特定技能制度と同じ分野に限るとしていますが、それ以外の職種についても今後、人材確保などの観点から追加するかどうか検討を進めるとしています。

また、これまで原則できなかった、別の企業などに移る「転籍」も同じ分野に限り認めるとした上で、最初の受け入れ先で働く期間を職種ごとに1年から2年の範囲で定められるとしています

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

3.技能実習から特定技能に移行できる!そのやり方は?

3-1.移行の要件

技能実習から特定技能への移行の要件は2点です。

  • 技能実習2号を良好に修了している
  • 従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる

3-2.特定技能に移行する方法

STEP
提出書類を用意する

技能実習から特定技能に移行するには、地方出入国管理局に必要書類を提出します

地方出入国管理局に書類を提出してから申請が承認されるまで、1~2か月かかります。提出書類の量も膨大で、特定技能外国人を受け入れるための社内体制を整えることが必要です。

したがって、特定技能外国人の入社日から逆算して3~4か月前から必要な書類を準備することをおすすめします。

主な書類は以下の通りです。必要な書類の一覧は、特定技能総合支援サイトから確認できます。

  • 申請書(外国人・受入れ機関がそれぞれ作成)
  • 技能水準、日本語能力水準に関する書類
  • 労働条件に関する書類
  • 労働保険・社会保険・税に関する書類(外国人・受入れ機関)
  • 特定技能(1号)の外国人の支援に関する書類

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STEP
地方出入国在留管理局に申請

提出書類の準備が完了したら、企業が各地域の地方出入国管理局に提出します。

窓口の受付時間は平日午前9時から同12時、午後1時から同4時です。窓口が混雑している場合もありますので、なるべく早い時間に訪れることをおすすめします。さらに、手続により曜日又は時間が設定されている場合があります。

その際は、外国人在留総合インフォメーションセンター0570-013904)に問い合わせてください。

参照:出入国在留管理庁 特定技能総合支援サイト

技能実習から特定技能に移行する方法の詳細はこの記事で解説しています。

4.登録支援機関と監理団体/組合の違い

最後に技能実習、特定技能外国人を雇用する際の支援機関の違いを解説します。

4-1.登録支援機関

登録支援機関は主に特定技能外国人を雇用する場合、または雇用後の支援業務を代行できる機関です。

特定技能外国人への支援は書類作成などの専門的な知識も必要になる場合もありすべて受入れ機関で行うことは困難です。そこで登録支援機関が受入れ機関に委託され、外国人の支援を代わりに行います。

受け入れ機関は、登録支援機関にすべての業務を委託することはもちろん、一部の業務のみを委託することも可能です。

費用は委託する内容によっても異なりますが、ひと月当たりの相場は外国人一人に対して一人約20,000円から30,000円です。

費用についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

この登録支援機関は条件さえ満たせば民間団体や個人事業主でもなれます。ただ、そうなると各登録支援機関によってよし悪しが出てきてしまうので、委託する際は慎重に選ぶ必要があるでしょう。

4-2.監理団体/組合

監理団体/組合は主に技能実習生の受け入れ企業に対して、適切に実習が行われているか監督する機関です。ですので3か月に一回以上、監理団体は受け入れ機関を監査します。

費用は外国人一人に対してひと月約25,000円から50,000円と登録支援機関よりも少し割高となっています。

また登録支援機関とは異なり、監理団体/組合は非営利法人である協同組合が運営しており、民間団体や個人事業主は認められません。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか。本記事では特定技能実習生という言葉の誤り、特定技能と技能実習の9つの違いとそれぞれのメリット・デメリット、企業様の状況に応じたおすすめの採用方法をお伝えさせていただきました。

まとめると、コスト面や制約の少なさ等の点で特定技能の方が技能実習よりも使いやすい制度ということがわかりました。一方で、特定技能は転職が可能であるため外国人が転職しない環境づくりをしなければいけません。

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この記事を書いた人

主に「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」「外国人マネジメント」「企業・外国人インタビュー」などの情報をこれから外国人を採用したい企業様向けに発信しています。編集部は外国人の人材紹介と支援を行っているJapanJobSchoolの社員で構成されており、専門家ならではの視点からお届けします。

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