登録支援機関とは?役割、費用、登録支援機関の選び方について解説

執筆者:松本(JapanJobSchool 講師兼就職支援室長)
特定技能では、雇用をした外国人の支援を行う必要があります。その支援を代行する機関として『登録支援機関』は存在します。
今回は『登録支援機関』について掘り下げて、徹底解説していきます。

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1.登録支援機関とは?
特定技能外国人を雇用した時に、受入れ機関から委託され、支援を代行する機関です。
特定技能では支援が必ず必要になります、その方法は下記の2つになります。
- 受入れ機関自ら支援を行う
- 登録支援機関に委託し、支援を行う
受入れ機関 | 特定技能の外国人が実際に働く企業 |
登録支援機関 | 受け入れ機関からその所属する特定技能外国人に対してする支援の実施を委託された場合に、 中立的な立場から受入れ機関に代わってその支援を代わって行う機関 |
受け入れ機関は、登録支援機関にすべての業務を委託することはもちろん、一部の業務のみを委託することも可能です。
登録支援機関は7,552社(2022.10.7現在)あり、内訳は、株式会社、人材紹介会社、行政書士事務所、監理団体、学校法人と様々です。
1-1.なぜ特定技能では支援が必要なのか?
特定技能はいままでになかった、人手不足を解消するための在留資格です。特定技能は制度上、日本語検定のN4級の取得が要件の1つにあります。N4というのは『基本的な日本語が理解できる』定義されていますが、漢字の読み書きはむずかしいレベルなので、誰かが支援を行い、生活で困らないようにサポート、または失踪などのリスクがないよう、このような法律が設けられています。
目的は若干違いますが、在留資格『技能実習』でも、登録支援機関と同じような『監理団体』という機関が支援を行っております。高度の人材であることが想定されている在留資格『技術・人文知識・国際業務』はこのような支援が必要ありません。
1-2.登録支援機関になるための要件
登録支援機関になるには出入国在留管理庁の登録が必要になります。また、登録支援機関として届出の際、以下の要件を満たす必要があります。
- 支援責任者および1名以上の支援担当者がいること
- 2年以内に企業として就労資格を持った中長期在留外国人(就労資格に限る。)の採用をしたことがあるか、支援責任者および支援担当者が2年以内に中長期在留外国人への生活相談業務に従事した経験があること
- 外国人が理解できる言語での支援体制が整っていること
- 1年以内に特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させてないこと
- 支援の費用を外国人本人に負担させないこと
- 5年以内に関係法令違反をしていないこと
※②に「採用」につきまして、留学生のアルバイトや永住者、定住者の採用は含まれません。就労のためのビザを持った外国人が対象となります。
※③につきまして、対応してる言語以外の支援はできません。弊社の例をあげると、ベトナム、ミャンマー、ネパール、中国、その他英語圏の支援はできますが、その他の言語の国籍の特定技能外国人の支援が現在はできません。
また、登録の際に 登録料28,400円がかかります。5年間有効です。(更新料11,100円)
参考:出入国在留管理庁 『登録支援機関の登録申請』
1-3.自社で支援する場合の要件
考までに自社で支援する場合も支援体制についての要件も記載いたします。
登録支援機関とほぼ同じ要件が求められます。
- 支援責任者および1名以上の支援担当者がいること
- 2年以内に企業として就労資格を持った中長期在留外国人(就労資格に限る)の採用をしたことがあるか、支援責任者および支援担当者が2年以内に中長期在留外国人への生活相談業務に従事した経験があること
- 外国人が理解できる言語での支援体制が整っていること
- 1年以内に特定技能外国人または技能実習生の行方不明者を発生させてないこと
- 支援の費用を外国人本人に負担させないこと
- 5年以内に関係法令違反をしていないこと
- 支援責任者又は支援担当者が,外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること
※②につきまして支援責任者と支援担当者を兼任することは可能ですが、特定技能外国人の直属の上司が支援責任者になることはできません。
※⑦につきまして、「定期面談」は、支援責任者または支援担当者が、特定技能外国人だけでなく、その外国人を監督する上司との面談も必要です。
2.登録支援機関の役割
登録支援機関は受入れ機関から委託され、外国人を受け入れるための支援体制の整備をして、支援計画に沿った支援を中立的な立場で適切に行う機関になります。
必要な手続きや特定技能外国人のフォローを行い、企業と外国人の認識のズレを解消し、スムーズに働ける環境づくりを行います。
2-1.支援体制の構築
登録支援機関は住所、電話番号、支援内容、対応言語、など出入国在留管理庁に登録をして、支援体制の構築を行います。出入国在留管理庁のホームページでは、登録をした登録支援機関の一覧が見られるようになっています。

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3.支援の内容
特定技能の支援内容は以下の2つになります。
- 支援計画の作成
- 義務的支援・任意的支援の実施
これに加えて、出入国在留管理庁に、契約内容に変更などがあった際の変更報告をする必要があります。
3-1.支援計画書の作成
特定技能外国人を採用するにあたって、まず「支援計画の作成」が必要になります。支援計画は特定技能外国人が仕事中や日常生活を円滑に行うため、というのが目的です。
支援計画書の作成は受入れ企業が登録支援機関にすべての業務を委託していても、基本的に外国人を受け入れる企業が作成を行う必要があります。(登録支援機関や助言や補助を行うのは問題ありません。)
支援計画書は当該外国人が十分に内容を理解できる言語でも作成をし、本人に説明をしたうえで署名を得る必要があります。
3-2.『義務的支援』と『任意的支援』
支援計画の中には、必ず行わなければならない「義務的支援」のほか、これに加えて行うことが望ましい「任意的支援」という2つが定義されています。
支援計画に「この支援を行います。」と記載した場合、それが「任意的支援」であっても支援義務が生じることとなります。ですので、支援内容については受け入れる企業と働く外国人の間でよく話し合う必要があります。
ここからは義務的支援と任意的支援について、詳しく説明をしていきます。
3-1-1.事前ガイダンス

事前ガイダンスは働く外国人が十分に理解できる言語(基本的には母国語)によって実施しなければなりません。方法は直接対面かzoomのようなオンラインでも可能ですが、文書やメールのみでの案内は認められません。
また、事前ガイダンスは十分に理解するために3時間は必要とされています。(技能実習→特定技能と同じ企業で働く場合は1時間以上で可能)
3-1-2.出入国する際の送迎

海外在住の外国人を雇用した場合は、入国時送迎は必ず行わなければなりません。
日本在住の外国人を雇用した場合は、必ずしも送迎が必要ではないのですが、いままでの経験上、多くの外国人のほうから引っ越しや移動のお金について相談があります。ですので、必ず支援計画の段階で転居費用について話し合いの場を設けたほうがトラブルが少なくなります。
3-1-3.適切な住居の確保に係る支援

企業が住居を借り上げてくれる場合、敷金礼金などを特定技能外国人に負担させてはいけません。
3-1-4.生活に必要な契約に係る支援

『必要に応じて同行する。』というのは、外国人の中には自分で手続きを行うことができるレベルの方もいるので、『支援することは義務だが、同行は外国人の日本語等のレベルにあわせる』という意味になります。
3-1-5.生活オリエンテーションの実施

生活オリエンテーションは働く外国人が十分に理解できる言語(基本的には母国語)によって実施しなければなりません。方法は直接対面かzoomのようなオンライン、またはあらかじめ作成した動画を視聴するような形でも可能ですが、常に質問ができるように動画視聴時に監督する者が必要です。
また、生活オリエンテーションは少なくとも8時間以上行うことが必要と考えられています。
3-1-6.日本語学習の機会の提供

日本語は必ずしも教える必要はなく、情報を提供することが義務となっています。

弊社で支援している特定技能外国人には、オンライン日本語講座の提供を行っております。
3-1-7.相談または苦情への対応


相談及び苦情への対応は働く外国人が十分に理解できる言語(原則母国語)によって実施しなければなりません。
3-1-8.日本人との交流促進に係る支援


地域のお祭りに遊びにいく、というようなこともこの支援に該当します。
3-1-9.外国人が解雇になった場合の転職支援


可能な限り次の受入先(就職先)が決まるまで、支援を継続することが求められます。
3-1-10.定期的な面談の実施、行政機関への通報


相談及び苦情への対応は働く外国人が十分に理解できる言語(基本的には母国語)によって実施しなければなりません。また、定期面談は登録支援に全部の委託をしている場合を除き、受け入れ企業は自社でやらなければなりません。
4.登録支援機関に支援を委託する場合の費用
ここからは、登録支援機関に支援を委託する場合の費用について解説していきます。
4-1.支援すべてを委託する場合
出入国在留管理庁の担当の方に話を伺ったところ、全部を委託する支援の場合、おおよそ月々20,000~30,000円の登録支援機関が多いようです。
4-2.支援の一部を委託する場合
事前ガイダンス | 1回あたり 30,000円〜60,000円 |
生活オリエンテーション | 1回あたり 50,000円〜80,000円 |
定期面談 | 1回あたり 10,000円〜20,000円 |
同行が必要な支援 | 1回あたり 10,000円〜20,000円+交通費等 |
すべてを支援するより割高になるのが一般的です。ですので、ほとんどの企業が全部を委託するという選択をしております。
5.登録支援機関の選び方と注意点
ここまで登録支援機関の支援内容について説明をいたしました。
では、登録支援機関を選ぶときに『どのように選べばいいんだろう?』という疑問が生じます。
よく比較される、在留資格『技能実習』にも、似たような支援を行う監理団体という機関があります。
下図を見ていただくと、登録支援機関の数が多いということがお分かりになるかと思います。
働いている外国人の人数 | 監理団体・登録支援機関の数 | |
技能実習 | 276,123 | 3,615 |
特定技能 | 87,472 | 7,552 |
そこで、こちらでは登録支援を選ぶ基準について、特定技能制度の開始当初から登録支援機関で働く筆者が考えを述べていきます。ご参考になれば幸いです。
5-1.支援人数で選ぶ
少し前の記録になりますが、登録支援機関の中で、100人以上の特定技能外国人の支援を行っている企業は1%以下です。
参考:一般社団法人外国人雇用協議会
支援をした外国人の数が多ければ、特定技能外国人とコミュニケーションを取る回数が多くなります。その分だけ外国人の考え方への理解度が深まっている可能性が高いと思います



弊社でも始めたばかりの頃と支援人数が100人を超えた今だと、さまざまな外国人トラブルの事例を経験したため、スタッフ一同かなりレベルアップしたと思います。
5-2.費用で選ぶ
前項で、登録支援に委託した際の料金について触れましたが、安い登録支援機関を選べばいいのかというと、必ずしもそういうわけではございません。
以前弊社が支援している企業であった事例なのですが、弊社ともう一つの登録支援機関(A機関)で支援をしていた企業様から、『A機関のほうが支援料金は安いんだけど、全部支援を御社にお願いしたい。』という連絡がありました。
話を聞いてみると、A機関は月額10,000円というかなり安い料金で支援しておりましたが、生活オリエンテーションや事前ガイダンスをすごく短い時間で終わらせる、など、法令を遵守した形で実施していなかったそうです。



相場より安い場合は、なぜ安くできるのかを確認した方がいいでしょう!
5-3.支援内容で選ぶ
実際に支援を受けてからでないとわからない項目が多いのですが、筆者が考える支援内容での見極め方はこの2つだと考えます。
- どれだけ多くの言語で支援の対応ができるか?
将来的に様々な国の人材の採用をお考えの場合、1つの言語にしか対応していない登録支援機関を選んでしまうと、新たに別の登録支援機関を用意しなければならないので、最低でも2~3の言語に対応しているほうがいいと思います。 - 通常の支援業務以外の定着支援やサポート体制
『最初は日本語が話せなくて、少しずつ話せるようになってくれれば』と期待して採用に至るケースがあります。しかし、彼らも毎日仕事を覚えることで精いっぱいだったりします。その中で自分で日本語を学習してください、と言ってもなかなか自分で頑張れる人は多くありません。ですので、特定技能外国人が継続的に学べる学習プログラムの提供ができているかが、意外と重要だったりします。
5-4.人材紹介会社にそのまま頼む
人材紹介会社を通して採用をした場合、ほとんどの人材紹介会社が登録支援機関として登録をしていると思います。ですので、採用後そのまま委託するという方法もあります。特定技能外国人を採用している企業様で、一番多いケースがこちらだと思います。弊社から人材を紹介した企業でも90%以上の企業で支援のほうも委託していただいております。



情報の共有や書類の送付など、2者間でのやりとりより3者間のやりとりのほうがより手間がかかり煩雑になってしまうためです。
登録支援機関の選び方について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。


6.番外編|登録支援機関は儲かるのか?
前項で記載したように、登録支援機関は7,000社以上あり、「それだけの数あるってことは、すごく儲かるんじゃないの?」と考える人がいらっしゃると思いますので、実体験を踏まえてお答えいたします。
結論から申し上げますと、支援代行業務のみでは、あまり儲かりません。
仮に1人20,000円、100名の支援を行っていたとしましょう。100名の支援を行うには最低でも3~4名の支援担当者が必要になります。また、支援は急なトラブルや労働時間外でも対応をしなければなりません。朝7時からの空港の送迎や夜9時に交通事故にあった外国人のサポートなども実際にありました。
1ヶ月の収入が200万で、そこから3~4名の人件費等を差し引くと、ほとんど利益は残りません。
登録支援機関は、資産要件等はないため参入障壁も低いので、機関数は多いですが、前述したように100名以上の支援を行っているのが全体の1%以下です。本格的に支援機関として活動している機関はまだまだ少ないのが現状です。
そのため、人材紹介会社や行政書士事務所が支援も一緒に提供することが多いです。
7.まとめ
支援についてご説明させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
筆者の考える登録支援機関の選び方は、支援の内容は支援機関によって様々なので、自社の求めている支援なのかをよく見極める必要があるでしょう。
JapanJobSchoolでは、100名以上の支援を行っている実績があります。入社後のオンライン日本語レッスンの提供や、資格取得サポートも行っています。弊社の支援に興味がある方は、まずは無料相談を受けてみてください。