介護で外国人採用|在留資格別メリット比較と採用のポイント、定着のコツ

介護業界で人材確保に頭を抱えていませんか。「求人に応募が集まらない」「入職後すぐに辞めてしまう」など、課題はさまざまです。そこで今回は、採用担当者が直面する悩みに応えるかたちで、外国人介護スタッフの可能性について実例・データを交えて解説します。
この記事では、外国人介護人材を活用するメリットや採用ポイント、人材定着化を図るコツについて具体的にまとめました。社内取材による事例をもとにした解説もあり、現場感覚のリアルな情報がわかります。ぜひ、人材確保に向けてお役立てください。
1. 介護業界の外国人材 受け入れ現状

介護業界では、少子高齢化による深刻な人手不足の状態です。厚生労働省の報告によると、2040年度には約69万人の追加介護職員が必要とされています。また介護事業所の65%が「従業員不足」を感じており、主な原因は「採用困難」と回答しました(介護労働安定センター)。
介護業界での人手不足を解消する選択肢として、「外国人材」の受け入れがあります。在留資格のひとつである「特定技能制度」では、介護分野での向こう5年間の受け入れ見込み数を最大13万5,000人と定め、外国人労働者を含む人材の受け入れを推進しています。
実際、令和元年から令和4年度にかけて、介護スタッフは平均1万6,000人の増加が見られました。今後、介護スタッフの拡充を図るために、外国人労働者の活躍を視野に入れてみましょう。
2. 介護職での外国人採用 メリット・デメリット
初めて外国人スタッフを受け入れる場合、日本人スタッフと比べてどのようなメリットがあるのか気になるでしょう。また生じうるリスクも把握しておきたいはずです。
2-1. 介護で外国人を採用するメリット
人材不足の解消
日本人スタッフのみを求人募集するより、人材を集めやすいのが利点です。過疎化が進む国内の地方では、若い介護職員は貴重な存在です。海外から来日する外国人材は地域にこだわらないことが多く、日本人に代わる重要な戦力となり得ます。
職場環境の向上
外国人材に仕事を理解してもらうプロセスをとおして、日本人職員の成長や業務改善のきっかけが生まれます。また、外国人のアイデアを活かすことで、新たなサービスやレクリエーションの導入も期待できます。
▼弊社JJSが支援する企業さまの事例インタビュー
「優秀な外国人と一緒に働くことで日本人の意識も刺激されました」

「スタッフ全体に責任感が芽生え、勤務態度や業務内容を見直すきっかけに」

国際化への先行対応
近年、日系人の高齢化にともなう介護需要の増加が報告されています。移民や外国人労働者が増えるなか、複数言語対応の職員を持つことは大きな強みになります。
※外国人高齢者に対する効果的なケアのために外国人介護人材が果たす役割に関する調査研究事業 報告書
2-2. 介護で外国人を採用するデメリット
採用・維持費が高い
日本人に比べ、外国人材の採用には費用が多く発生します。入社後も研修や生活サポートが必要になり、ランニングコストもかかります。例えば受け入れの初期費は、人材紹介を受けると約50万円で、ランニングコストは2~3万円(月額)で必要です。
コミュニケーションやリスクの課題
日本語能力の不足により、意思疎通が図りにくく、ミス多発のリスクを抱えます。そのため簡潔で具体的な日本語を話す、日本語研修の実施など対策が必要です。
ビザ更新の課題
介護ビザを除いて、他のビザには在留期限があります。そのため習得したスキルを活かす前に、帰国してしまうかもしれません。対策として介護福祉士資格を取得し、介護ビザへの切り替えを目指すことが重要です。
3. 介護職で採用できる外国人の在留資格
外国人介護スタッフを雇用するには、特別な在留資格(ビザ)を取得してもらいます。介護分野が就労の対象になるのは、主に以下4つの資格です。

特定技能
「特定技能」とは、人手不足を解消する目的で2019年4月に新たに導入された在留資格制度です。この資格を取得するには、技能実習から移行するか、日本語試験、介護日本語評価試験、介護技能評価試験の3つの試験に合格する必要があります。そのため、日本語能力があり、介護分野の知識を持つ人材を採用できます。
特定技能で採用する場合、単独夜勤や訪問分野を含む身体介助や支援業務が任せられます。また転職が認められているため、他の施設で勤務していた経験のある人材を迎え入れることも可能です。


技能実習(2030年までに育成就労に移行予定)
技能実習は、「日本で培われた技能や知識を開発途上地域へ移転し、それらの地域の経済発展を支える人材を育成すること」が目的です。そのため、外国人採用にあたって実習計画に基づいた丁寧な研修が求められます。技能実習の場合、ひとりでの夜勤はできません。
なお、技能実習制度は今後、新たに「育成就労」へと移行することが決まっています。現在の予定では、2027年に育成就労制度が開始され、2030年までに移行期間が完了する見込みです。

介護ビザ
介護ビザは、介護福祉士の国家試験に合格した外国人に対して付与されます。ビザを取得すると、長期にわたって雇用できるのが大きなメリットです。
ただし介護ビザの外国人材を見つけるのは、簡単ではありません。外国人にとって介護福祉士の国家資格を取得することは、介護と日本語のスキルが求められるため、非常に高いハードルといえます。
近年の傾向としては、特定技能から介護ビザへの移行を目指す人も増えつつあります。日本での長期就労を希望する外国人が増加しているため、今後のさらなる増加に期待です。
特定活動EPA介護福祉士
特定活動EPA介護福祉士(以下、EPA)とは、日本がインドネシア、フィリピン、ベトナムとの間で締結した経済連携協定(EPA)に基づいて設けられた制度です。この協定により、これら3カ国から外国人介護福祉士候補者を受け入れています。
EPAの目的は、「労働力不足の解消」ではなく、「二国間の経済活動連携の強化」にあります。
EPAは、介護福祉士国家試験の合格を目指して在留資格「特定活動(EPA介護福祉士候補者)」を取得し、最大4年間日本で研修と就労をします。最初は在留期間1年となり、最大3回まで更新が可能です。
▼EPA介護福祉士の取得方法や受け入れの流れは、以下で詳しく解説しています。

※参考:インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて
4. 【4つの在留在留資格を比較】 採用活動で知っておきたいこと
外国人介護スタッフを採用する際には、入社時期やコスト、求めるスキル、キャリアプランなどを考えます。通常の採用活動と同様です。
ただし外国人の採用に際しては、在留資格によって任せられる業務が変わります。
任せたい業務と外国人介護スタッフの人材市場を照らし合わせ、より現実的に進めていくことが重要です。
3-1. 任せられる仕事内容
在留資格によって、外国人介護スタッフに任せられる業務が違います。例えば特定技能の場合、施設内での身体介助や支援業務に加え、訪問系サービスへの従事も可能です。


「在留資格によって従事できる業務に制限がある」
ということを知らない方がいらっしゃいます。
各在留資格の対象業務を把握することで、スムーズな採用に
つながります。
3-2. 採用しやすい在留資格


外国人介護スタッフの採用では、技能実習生や特定技能を持つ人材が中心となっています。特に特定技能は試験合格が必要なため、一定のスキルを持つ人材を確保しやすい点が特徴です。候補者を選ぶ際には、「特定技能」を推進する人材紹介会社や支援団体を活用することで、採用にかかる負担を軽減しましょう。





「介護ビザ(即戦力)・永住権(長期的)の人材がほしい!」という声をいただきますが、実際募集をかけてもなかなか集まりません。
技能実習や特定技能の外国人介護スタッフは、約6割が3~6年かけて介護ビザを取得しています。
今後、介護ビザに移行する割合は増える見込みです。
JJSは、「特定技能」の人材紹介を得意としております。
受け入れ条件の確認や、各種申請サポートも可能!


3-3. 企業側の支援義務
在留資格によって企業側に課される支援義務は異なります。初期費用に加え、継続的にかかってくるコストや負担を正確に把握して、予算や支援計画を立てましょう。





「特定技能はコストや負担がかかる!」というイメージがあるようです。しかしEPA、技能実習のほうが、外国人に対して企業側の支援義務が
多く、ランニングコストや負担が大きいといえます。「特定技能」は、
他の在留資格に比べて比較的支援義務が少ないため、弊社でも推進しています。
3-4. 補助金・支援制度の活用
外国人介護スタッフ採用には、自治体や国が提供する補助金・支援制度を活用することで、費用が抑えられます。
以下、具体例を挙げてみました。
①人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
- 外国人が安心して働ける職場環境整備にかかる費用を支援
- 多言語対応や社内ルール整備などが対象
- 上限額:最大72万円
②キャリアアップ助成金
- 非正規雇用から正規雇用への転換を支援 ※外国人スタッフも対象
- 上限額 : 要件に応じて変動


③外国人雇用管理アドバイザー制度
- 外国人労働者を適切に採用・管理するためのアドバイザーを無料で派遣
- 企業の負担軽減を図る制度
④地域特化型補助金
- 各自治体が提供する補助金
- (例)多言語化対応費用/外国人スタッフの教育費など
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5. 外国人介護スタッフの面接ポイント
社内取材にて、「外国人介護スタッフ」の面接ポイントを調査しました。そこで、日々外国人求職者の面接現場に立ち会う社員からのリアルな声をもとに、適切な人材を見極める「質問内容」を紹介します。
全分野共通
質問内容 | 質問意図 |
未来のビジョン 例)将来の夢は何ですか? | ・求職者の目指すところと自社の方向性が同じかどうかを確認する |
一時帰国の希望 例)どのくらいの頻度、期間で一時帰国したいですか? | ・自社で許容できる範囲か ・調整が現実的かどうか確認する |
キャリアパスの希望 例)あと何年日本で働きたいですか? | ・日本でどれくらい長く働く予定があるのかを見る |
日本語能力の伸び率 例)日本語を勉強して何年ですか? | ・入社後の日本語上達率 ・来日した後も日本語学習や仕事に関する勉強を頑張ることができそうか確認する |



日本語能力について、母国から直接日本で就職、または留学や在日経験を経て就職など、求職者が持つ経歴は様々です。
例えば、20歳で1年ほど母国で日本語を勉強していただけのに「これだけ喋れるの!」という人材は、来日したらかなり日本語が上達することが多いです。面接時の日本語力を気にしすぎないことが大切です。
介護分野
質問内容 | 質問意図 |
介護職で働きたい理由 例)どうして介護のお仕事がしたいですか? | 職業「介護」という概念がない国もあるため 「介護の”仕事”」を理解しているかどうかを見る |
介護経験の有無 例1)おじいちゃんおばあちゃんのお世話をしたことはありますか? 例2)今働いている施設の形態、夜勤回数や記録、申し送りの経験を教えてください | <未経験の場合> ・介護の原体験があるか ・大変さややりがいを少しでも体験したことがあるか <経験者> ・すぐに自社でも活躍してくれる経験を持っているか |
人材選定において重要なのは日本語能力よりも、介護職や企業と本人のマッチングです。半年もすれば、基本的なコミュニケーションや業務に関する日本語は理解できてきます。面接では日本を選んだ理由や介護職への志望動機、将来の目標、日本語学習歴などを質問しましょう。「自社との相性」や「日本語能力の伸びしろ」を見極めるように心がけてみてください。
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6. 外国人介護スタッフを定着させるコミュニケーション
外国人介護スタッフの雇用において、コミュニケーションの取り方が重要です。異文化理解により信頼関係が育まれると、外国人スタッフにとって安心して働ける環境になります。外国人介護スタッフの定着率アップを目指して、取り組んでみましょう。
6-1. やさしい日本語と視覚情報で伝える
外国人介護スタッフが職場に定着するためには、日本人職員の意識改革が求められています。現場では、日本語による指示の内容を十分に理解していなくても「わかりました」と返事してしまうケースがあります。
理解不足による誤解や業務上のミスを防ぐためには、「やさしい日本語」を使いましょう。できるだけ簡単な単語でわかりやすく伝えることが肝心です。またジェスチャーやイラストと併用して、視覚的なわかりやすさも意識してみましょう。細かなニュアンスが伝わりづらい場面では、翻訳アプリもおすすめです。
6-2. 異文化への理解を示す
異文化に理解を示す姿勢が、適切な対応につながります。大まかな文化や宗教の違いは分かっていても、日常生活の些細な事にも、価値観の違いが現れることがあります。
ある施設では、食事介助の際に外国人介護士さんがご飯とおかずを混ぜてしまい、施設側が困惑するという出来事がありました。
弊社JJSの母国語対応スタッフを通じて確認したところ、その国では「ご飯とおかずを混ぜることで美味しくなる」という価値観が一般的だと判明しました。本人に悪気はまったくなかったのです。
そこで弊社JJSの担当者が双方に背景を説明し、施設内では混ぜないようにルールを共有。結果的に、文化の違いによる不安や誤解を解消しました。
価値観の違いや異文化の摩擦は、多様な背景を持つ人々が共に働く場で必然的に起こり得ます。しかし、そうした際に適切にコミュニケーションを取り、互いの背景を理解しようと努めることが、職場の円滑な運営と強固な相互信頼関係を構築する上で極めて重要です。


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7. 外国人介護スタッフを受け入れた施設の声
▼文化や考え方の違いを乗り越え、ユニットを束ねるリーダーを輩出
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▼良くも悪くも「外国人」ではなく「一人の人」として、本人の力に合わせてステップアップ
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▼いい環境で働いてもらいたいからこそ、余裕があるうちの外国人採用
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▼外国人の方々の素直さや努力を惜しまない精神には目を見張るものが
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▼積極的ではなかった外国人採用 課題に対して試行錯誤を繰り返し「今ではとても助かっています」
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8. まとめ
外国人介護スタッフの活用は、介護業界が直面する人材不足を解決するための重要な手段となっています。ただし、受け入れにあたって、費用やコミュニケーション課題があり、慎重な採用計画が必要です。
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