外国人の犯罪率は本当に高いのか?国別、在留資格別に徹底検証!

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

日本の人口は年々減少していく中で、働き手の数も当然減っていきます。今後日本が成長を目指すには外国人労働者で不足分を補うことが求められますが、その際に不安視されているのが外国人が引き起こす犯罪です

外国人の犯罪率は高いのか、犯罪率が高い国・低い国、在留資格別の犯罪率などをご紹介するとともに、現状問題視されているベトナム人技能実習生の犯罪率や対処法についても解説します。

本記事を読むことで、外国人の犯罪率やベトナム人を技能実習生で招く際に気を付けた方がいいことなどがわかります。ぜひ最後までご覧ください。

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目次

1.外国人による犯罪率は減ってきている

ニュース番組を見ていると、外国人による犯罪が報道されるケースが目立つので外国人による犯罪率は高そうに見えますが、実際のところは減ってきているのが実情です。

1-1.外国人の犯罪件数・推移

引用:法務省「令和3年版犯罪白書第2節 犯罪の動向

令和3年版犯罪白書によると、外国人の検挙件数はここ10年は一定の範囲で留まっており、令和2年度は1万4536件と令和元年度よりも減少しています。このうち、来日外国人の検挙件数は9,512件、その他の外国人の検挙件数は5,024件と来日外国人の方が多めです。

犯罪白書で用いられている来日外国人とは永住者やその配偶者、在日米軍関係者などを除いた外国人全般を指しており、永住者やその配偶者以外の在留資格を得た外国人が来日外国人となります。令和2年度末における在留外国人の数は288万7116人で、このうち永住者80万7517人、永住者の配偶者等4万2905人、特別永住者30万4430人を除くとおよそ170万人ほどが来日外国人です。(※)

※:法務省「【第1表】 国籍・地域別 在留外国人数の推移」

来日外国人の検挙件数や検挙人員は増減を繰り返すものの、2003年から2008年のピーク時からは減少傾向にあり、一定の範囲内で留まっているのが実情です。

件数的にはほぼ横ばいの状況にある中で、外国人の数は年々増えており、令和4年6月末現在は2,961,969人と300万人ほどの外国人が日本にいます。外国人の数が増えても検挙件数が増えていないということは実質的な犯罪率が下がっていると言えるでしょう。(※)

※:出入国在留管理庁「令和4年6月末現在における在留外国人数について」

近年は新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で、在留資格「留学」や「短期滞在」で日本にやってくる外国人が減り、この2つの在留資格で罪を犯した外国人が減ったことも犯罪率低下の要因として考えられます。(※)

※:日本経済新聞「外国人犯罪6年ぶり減 短期滞在、コロナも影響」

1-2.外国人の犯罪率はたったの5%、検挙率も日本人とほとんど変わらない

令和2年度における外国人全体の検挙人員は9,529人で、このうち、来日外国人は5,634人、その他の外国人は3,895人となっています。令和2年度の検挙人員総数が18万2582人であることから、外国人の犯罪率は全体の5%しか占めていないことが明らかとなっています。

ちなみに令和2年度末の時点で来日外国人はだいたい170万人ほど、永住者などは120万人ほどいますが、どちらも割合としては0.3%程度が検挙されたことになります。日本に住む日本人で計算すると、日本人の検挙人員はおよそ18万人程度なので、その割合は0.2%程度です。来日外国人・その他の外国人の0.3%程度は若干高いと言えますが、明らかに多いとは言えない差です。

2.犯罪の種類別割合

引用:法務省「令和3年版犯罪白書第2節 犯罪の動向

来日外国人が引き起こした令和2年度における犯罪の中で、全体の6割以上を占めたのが窃盗、その次が傷害・暴行で11.3%、次が詐欺の6.6%でした。ちなみにこのグラフの中には入っていない犯罪の中に強盗と殺人がありますが、強盗の場合は0.9%に対し、殺人は0.5%でした。

引用:法務省「令和3年版犯罪白書第2節 犯罪の動向

およそ20年の推移を見ると、窃盗に関してはピーク時が3万件近い件数でしたが、現在はおよそ6,000件弱と5分の1程度になっています。窃盗の中でも非侵入窃盗が過半数以上を占めていますが、非侵入窃盗はひったくりや万引き、置き引き、車上荒らしなどが該当します。

一方、傷害・暴行は窃盗の件数から見れば件数は少ないですが、右肩上がりになっています。また、強制性交等・強制わいせつもジワジワと増えている状況です。その反面、強盗や文書偽造などの犯罪は下がっており、状況が刻々と変化していることがわかります。

3.外国人の国籍別犯罪率

ここからは外国人の国籍別犯罪率をご紹介します。今回取り上げるデータは令和2年度に発生した刑法犯における検挙状況のデータとなっています。

3-1.ベトナム人による犯罪が増え続けている

令和2年度の国籍別刑法犯検挙状況では、ベトナムが2,931件と全体の31%を占めており、中国が2,666件で28%とこの2か国で6割ほどを占めます。ブラジルが682件で全体の7%、韓国が608件で全体の6%、フィリピンが339件で全体の4%と続きます。この結果からもベトナム人による犯罪が多いことがわかります。(※)

※参考:警察庁「令和2年における組織犯罪の情勢p67」

検挙件数で以前圧倒していた中国は年々その数を減らし、2015年にはベトナムが1位に躍り出ます。その後、中国の再逆転、ベトナムが再び1位になる状況を経て、令和2年度はその差が再び肉薄した形です。一方、この2か国が過半数を占める状況はこの10年ほど変わっていません。

引用:令和3年度警察白書第3章 組織犯罪対策

万引きに関する検挙件数ではベトナムが過半数以上を占めているのに対し、侵入窃盗の罪では中国と韓国で過半数以上を占めます。自動車盗難ではスリランカやルワンダが上位を占めていることがわかります。また、ブラジルのようにどの罪でも一定数の割合で検挙数の上位に入ってくるケースもみられるなど、国籍によって傾向が変わっている状況です。

日本人に危害を加えるケースよりも外国人同士の小競り合いなど、外国人コミュニティ内でのトラブルが検挙件数の増加につながることもあります。群馬県ではここ数年、来日外国人の摘発率が10%前後と高く、群馬県で起きた事件の12.5%が来日外国人が関わっている状況です。これを受けて群馬県警は、来日外国人のコミュニティや外国人同士のトラブルの凶悪化への対策を始めています。(※)

※:上毛新聞「22年の被摘発者の外国人割合は10.2% 4年連続で全国1位、群馬県警」

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4.特にベトナム人技能実習生による犯罪が増加している

中国人よりもベトナム人の方が検挙件数が多い状況をご紹介しましたが、個々からご紹介するのは在留資格別の犯罪率についてです。こちらは在留資格別刑法犯の検挙人員の推移を5年分まとめた内容となっています。

4-1.外国人の在留資格別犯罪率

在留資格別にまとめた刑法犯の検挙人員の推移ですが、これまでトップだった留学が年々減少の一途を辿る一方、在留資格「技能実習」が令和元年度から一気に増え、在留資格別では1位に躍り出ました。

技能実習における刑法犯の検挙人員は令和2年度で1,076人でそのうち正規滞在が899人、不法残留が177人です。一方、留学における刑法犯の検挙人員は令和2年度で952人で、そのうち正規滞在が871人、不法残留が81人です。

4-2.技能実習の多くを占めるのはベトナム人

令和4年度末で3,075,213人が在留外国人として日本にいましたが、在留資格「技能実習」は324,940人でした。技能実習の資格で在留していた外国人324,940人の中でベトナム人がそのうちの半数近く、176,348人を占めています。ちなみに2位がインドネシアで45,919人、3位がフィリピンの29,140人でした。(※)

※:法務省「【第1表】 国籍・地域別 在留外国人数の推移」

インドネシアやフィリピンは令和2年度の国籍別刑法犯検挙状況を見ると、フィリピンが全体の5番目、インドネシアは圏外で、フィリピンの人数も全体ではかなり小さいものでした。大きな比重を占めていたのがベトナムであり、技能実習を多く占めているのがベトナムであることを考えると、ベトナム人技能実習生の犯罪率が高いことが窺い知れます。

技能実習に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

5.なぜベトナム人技能実習生の犯罪率が増えているのか

ベトナム人技能実習生が引き起こす犯罪に関して、2023年に入っても報道が相次いでいます。なぜベトナム人技能実習生の犯罪率が増えているのか、主に4つの理由についてまとめました。

5-1.ベトナム人技能実習生はほかの国籍の人より来日のための借金が多い

1つ目の理由は、ベトナム人技能実習生はほかの国籍の人より来日のための借金が多いことです。

ベトナム人技能実習生は来日するまでに借金を抱えるケースが目立ち、法務省の調査では、「あなたは来日するために母国で借金をしましたか?」という質問に対し、8割のベトナム人が借金をしたと答えています。また来日前に送出機関に支払った費用としてベトナム人は平均656,014円を支払っており、ほかの国より高いことが明らかになりました。

※出典:法務省「技能実習生の支払い費用に関する実態調査の結果について」

「あなたは来日するために母国で借金をしましたか?」という質問は中国人にも行っていますが、借金したのはわずか13.4%とベトナム人技能実習生のケースと大きく異なります。ベトナム人技能実習生は2年以内に借金を返済する人が95%以上で、そのうちの6割が1年以内と早急に返済しなければならないことも法務省のアンケートで明らかになっています。

来日までに多額の借金をして来日し、しかも早急に返済しなければならない現実があるため、技能実習生だけの稼ぎでは返済できず、犯罪に走ってしまうベトナム人技能実習生が出てきてもおかしくないと言えるでしょう。

5-2.仲介業者などにもお金を支払っている

2つ目は仲介業者などにもお金を支払っていることです。

先ほどもご紹介した送出機関への支払いですが、中国では578,326円、カンボジアでは571,560円が平均でかかっている一方、ミャンマーは287,405円、インドネシアは231,412円、フィリピンに至っては94,191円と10万円を割り込んでいます。さらに詳しくベトナム人技能実習生が支払った金額を見ると、100万円を超えるケースも珍しくありませんでした。他の国では100万円を超えるケースは数えるほどしかなかっただけに、ベトナムだけ異常と言えます。

さらに支払った額の内訳を見ると、派遣手数料や事前教育費用など、実は中国やカンボジアと比べても大して多いわけではありませんでした。その代わり、不明という項目が突出して高いほか、費用の支払いについて事前に説明を受けていない割合がベトナムが多いことも明らかになっています。送出機関とは別に母国の仲介者にお金を支払うケースもあり、こちらもベトナムは446,963円と他の国を圧倒しています。

5-3.多くのベトナム人は家族に仕送りをしている

2つ目は、多くのベトナム人は家族に仕送りをしていることです。

ベトナムではまだまだ物価が安く、3万円から4万円程度を送金するだけでベトナムにおける正社員の給料に相当します。数万円や10万円を毎月仕送りとして家族に送るベトナム人技能実習生が多く、当初は何の問題もなく仕送りができていました。

近年は歴史的円安の影響で今までなら5万円で住んでいた仕送りが7万円にしないといけなくなるケースなど、円安のあおりをかなり受けている状況です。技能実習生の収入は必ずしも高いとは言えず、手取りの給与は15万円前後とされています。この中から5万円を出すのも大変な中で半分近い7万円を出さざるを得ないとなると、明らかに足りません。

足りない分を何とか捻出しないといけない時に犯罪に手を染める技能実習生が出てくると考えられます。ベトナム人は非常にまじめな性格なので精神的に追い詰められてしまうのかもしれません。

ベトナム人に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

5-4.技能実習は転職ができないため「ブラック企業」に就職してしまった際失踪するしかない

3つ目は、技能実習は転職ができないため、「ブラック企業」に就職してしまった際失踪するしかないことです。

在留資格「技能実習」ではいわゆる転職が認められていません。技能実習制度は元々日本で技術を習得し、母国にその技術を持ち帰って日本の技術を広めていくために存在しています。そのため、転職を想定した制度ではありません。人権侵害などの例外を除いては転職ができず、結果的に失踪する技能実習生が少なくないのです。

日本経済新聞の報道では、2023年4月時点で1万人以上が所在不明になっていることが明らかになっています。賃金が少ないなど様々な理由から失踪し、所在が分からなくなり、不法就労・不法滞在の状態になっている技能実習生が増えています。

近年問題視されているのが「ボドイ」と呼ばれる人たちです。ボドイはベトナム語で兵士を意味し、技能実習生だったベトナム人が失踪して不法滞在を行うことになり、犯罪に手を染めて金を稼ぐ人たちをボドイと呼ぶようになっています。

ボドイを追ったノンフィクション本も発売されるなど、今後社会問題になる可能性も秘めているボドイ。当初は真面目に働いていたものの、様々な要因から失踪してきたケースが多いのが実情です。

6.ベトナム人技能実習生の犯罪を防ぐには

ボドイなど、現役のベトナム人技能実習生を始め、失踪した技能実習生などの犯罪が今後増える可能性も十分に考えられます。ベトナム人技能実習生の犯罪を防ぐ方法についてご紹介していきます。

6-1.法律に則り日本人と同等かそれ以上の給与を支払う

1つ目は日本人と同等かそれ以上の給与を支払うことです。

そもそも技能実習制度を活用する際には、法律で日本人と同等、もしくはそれ以上の給与を支払わなければならないことになっており、何らかの理由を付けて搾取することは認められていません。しかしながら、実際は何らかの形で賃金を支払わないなど、搾取する形で技能実習制度を使ってきたケースは多く、報道も相次いでいます。

技能実習制度を活用するには正しく制度を活用し、悪用した場合には厳罰にするなどの処置も今後必要になってくるでしょう。少なくとも日本人と同じ収入を得られるようになれば、真面目に働き、母国のために頑張るベトナム人技能実習生が増え、犯罪に手を染める必要はなくなります。

6-2.仕事にやりがいを持たせる

2つ目は仕事にやりがいを持たせることです。

主に地方で働くベトナム人技能実習生が多く、街に出るのもなかなか大変で、自然に囲まれた環境の中で働き続けるほか、重労働な仕事も少なくないため、仕事がきついと感じる人も出てきます。しかし、仕事がきつかったとしても、仕事にやりがいがあれば失踪する可能性は低くなるでしょう。

誰でもできる仕事を安い賃金でやってもらうという形では、誰が担ってもやりがいを感じられない仕事だと感じやすいです。仕事にやりがいを持ってもらうよう、達成感を与える形にしていけば、仕事がきついからと投げ出すベトナム人技能実習生は減るでしょう

6-3.コミュニケーションを大切にする

3つ目はコミュニケーションを大切にすることです。

ベトナム人に限らず、日本で働く外国人は同じ国の人たちと行動を共にしやすく、同じコミュニティの中で過ごそうとします。また、同僚と仲のいい外国人は辞めない傾向にあるため、いずれにしてもコミュニケーションを大切にしていくことが求められます。

コミュニケーションを大切にするには、できるだけ分かりやすい日本語で話しかけるほか、日本語の理解が進んでいない外国人労働者に対し、日本語がわからないことを許容する環境にしていくことが必要です。そして、技能実習生たちの表情から察して、できるだけ柔らかい表情で穏やかに話しかければ、コミュニケーションは取りやすくなります。

このあたりを疎かにすると、怖い印象を技能実習生に与えてしまい、より雰囲気は悪くなり、自分たちを受け入れてくれないと思われてしまいます。そうならないためにも分かりやすい日本語で話しかけて、少しずつ日本語を知ってもらうことも必要です。

外国人とのコミュニケーションの取り方、良い環境づくりに関してはこちらの資料にまとめてあります。

7.まとめ:しかし外国人の犯罪率は日本人が思っているほど高くない

ベトナム人技能実習生に関する報道を見る限りは確かに外国人の犯罪率は高いかもしれないと感じる人もいるはずです。しかし、実際のデータを見る限り、日本人が思っているほど外国人の犯罪率は高くないことがわかります

しかも、外国人は借金をして日本にやってきて働くケースや円安の影響を強く受けているケースなど、技能実習生にとって酷な状況であると言えるでしょう。分かりやすい日本語をゆっくりと話してコミュニケーションをとっていくなどの対策が必要です。

今回ご紹介した内容を踏まえて、外国人の犯罪率に関して正しい認識を持ち、真面目に日本で働きたいと考える外国人労働者を積極的に採用し、人手不足の改善に結び付けていきましょう。弊社では特定技能人材の採用などに関する無料相談も実施しており、気になる方はぜひともお気軽にお問い合わせください。

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