仏教とヒンドゥー教の違いとは?バラモン教や世界4大宗教の特徴と外国人労働者への配慮ポイントも解説


執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

仏教とヒンドゥー教には「輪廻転生」という共通の考え方があります。そのため、思想が似ていると感じるかもしれません。しかし両者には、多くの違いがあります。この記事では、仏教とヒンドゥー教の違いについてまとめました。

企業が外国人雇用を進める場合、宗教観への理解が必要です。仏教とヒンドゥー教だけでなく、世界4大宗教についても学んでおきましょう。記事の後半では、宗教的配慮のポイントも述べているので要チェックです。

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目次

1.仏教とヒンドゥー教の違い【比較表】

仏教とヒンドゥー教は、ともにインドで生まれた宗教です。仏教の開祖である釈迦は、ヒンドゥー教のもとになったバラモン教の出身でした。

両者には共通点があるものの、思想や戒律、広まった地域に違いもあります。仏教は釈迦を開祖とし、唯一神はいません。それに対してヒンドゥー教は特定の開祖をもたず、自らが信じる神を崇める多神教の傾向があります。

2.仏教

仏教とは、紀元前5世紀ごろにインドで生まれた宗教です。インドからアジア各地に広がり、さまざまな宗派や文化が生まれました。

2-1.成り立ち 

仏教の成り立ちを知るには、釈迦(ガウタマ・シッダールタ)の生涯を見る必要があります。釈迦は、紀元前5~6世紀にインドの王族として生まれました。

順風満帆な生活をしていた釈迦ですが、19歳になったとき、人間の苦しみに気付きます。老いや病気、死などの現実に悩んだ釈迦は、進むべき道を見出し出家しました。6年間の厳しい修行の末に、悟りの境地に至ります。そのときに釈迦は仏となり、その後45年間にわたって人々に教えを説きました。

2-2.宗教人口 

仏教は、世界で4番目に多い宗教です。2020年時点で、世界の仏教徒は約5億人で、世界人口の6.3%を占めています。仏教徒の多くはアジアに住んでおり、特に中国、タイ、ミャンマー、日本などで多く見られます。

仏教は、19~20世紀にかけてアメリカやヨーロッパなどの西洋にも広まりました。西洋の仏教徒は、移民や難民として来たアジア人だけでなく、西洋人も含まれています。仏教は、世界各地で多くの人々に受け入れられている宗教です。

2-3.主神 

仏教には、主神という概念はありません。「仏」という存在を最高の目標として尊敬します。悟りという真理を見つけて、苦しみから解放された者が仏です。

仏は神ではなく、悟りを開いた人間です。自分の力で悟りに達した釈迦や、釈迦の教えに従って修行した弟子たちにも仏の道が開かれたとされています。

2-4.宗教観 

仏教の宗教観は、4つの真理(四諦)と8つの正しい道にまとめられます。

<4つの真理(四諦)>
人生には苦しみがあること、苦しみの原因は執着や無知にあること、苦しみを止めるには執着や無知を断つこと  

<8つの正しい道(八正道)>
正しい見解、正しい思考、正しい言葉、正しい行為、正しい生活、正しい努力、正しい念力、正しい瞑想

仏教では、4つの真理と8つの正しい道を理解し、実践することで、苦しみから解放されて悟りに達すると考えます。

仏教の宗教観は、人間の心の問題に焦点を当てており、神や創造主に頼ることはありません。仏教では、人間は自分の行いによって自分の運命を決めると考えます。

2-5.解脱の方法  

仏教の目的は、無知と執着から解放されて、苦しみを終わらせることです。これを解脱といいます。解脱するには、無知と執着を断ち切るための修行が必要です。仏教では、この修行の方法を四聖諦と八正道という教えで説きます。

2-6.タブーな食べ物 

仏教のタブーな食べ物には、主に肉類と五葷という二つの種類があります。生き物を殺して食べることは、「不殺生の戒律に反する」と考えられているからです。ただし厳格な仏教徒でなければ、肉食をする人も少なくありません。

五葷とは、ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキというネギ科の植物のことです。仏教では、これらの植物は、臭いが強く、気を乱したり、欲望を刺激したりすると考えられています。ただし、さまざまな宗派や流派があり、考え方も一様ではありません。

2-7.カースト制度

仏教のカースト制度とは、インドにおいて仏教徒の間にも存在する身分制度のことです。仏教は、カースト制度に対して批判的な立場をとってきましたが、インドの社会や文化に影響されて、仏教徒のなかにもカーストの意識が残っているといわれます。

※出典:仏教|国土交通省

3.ヒンドゥー教

ヒンドゥー教とは、インド亜大陸で発祥した世界で3番目に信者数の多い宗教です。特定の開祖や教義がなく、多様な神々や思想を包括する複合的な信仰体系です。

3-1.成り立ち 

ヒンドゥー教の起源は紀元前約4000年から紀元前1500年の間にさかのぼります。この時期、インドのインド=ヨーロッパ語族のアーリア人がインドに移住し、先住民のドラヴィダ人との文化的交流が生じました。

この交流によって、ヒンドゥー教の基盤となる古代の宗教的・哲学的な概念が形成されました。その後、ヒンドゥー教は仏教やジャイナ教などの新しい宗教や思想に影響を受けながら、多くの神々や教派を取り込んで発展していきました。現代のヒンドゥー教は、その多様性と寛容性を特徴としています。

3-2.宗教人口 

ヒンドゥー教は世界で3番目に信者数の多い宗教で、約11億人の信者がいます。インド人の8割が信仰しており、全世界の中で1番ヒンドゥー教徒の数が多い国です。インドだけではなく、ネパールやモーリシャスなどの国でもヒンドゥー教徒が多数を占めています。

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3-3.主神 

ヒンドゥー教は多神教であり、数千もの神々が信仰されています。しかしそのなかでも重要なのは、創造・維持・破壊の三つの機能を司る3柱の主神です。

3柱の主神とは、ブラフマー神 (創造)、ヴィシュヌ神 (維持)、シヴァ神 (破壊) です。それぞれさまざまな化身や配偶者を持ち、多くの物語や伝説に登場します。ヒンドゥー教徒は、自分の好みや傾向によって、崇拝対象を決める傾向にあります。

3-4.宗教観 

ヒンドゥー教の宗教観は、カルマと輪廻という2つの概念に基づいています。カルマとは、人間の行為が善行・悪行に応じた、前世の報いとされる法則です。例えば今世で苦しい思いをしているのは、前世の悪行が影響していると考えます。

輪廻とは、人間の魂が死後に別の肉体に生まれ変わるというサイクルです。ヒンドゥー教では、「カルマによってどのような人生を送るのかが決まる」と信じられてきました。

3-5.解脱の方法(モクシャ) 

ヒンドゥー教では、モクシャを人間にとって最大の目標とします。カルマや輪廻から解放された状態がモクシャです。人間は無知や欲望によって、自分の本当の姿を見失ってしまいます。そのため、魂は輪廻のなかで苦しみ続けます。しかしモクシャを達成することで、永遠の平和を得ると信じられているのです。

3-6.タブーな食べ物 

ヒンドゥー教での食事のタブーは、牛肉の禁食です。牛はヒンドゥー教では神聖な動物とされており、牛肉を食べることは宗教的な冒涜とみなされます。そのためインドでは、多くの地域で牛肉の販売や消費が法的に禁止されている状況です。

また厳格な教徒は、牛肉だけでなく、他の肉や魚、卵などの動物性の食べ物も口にしません。ヒンドゥー教徒の食事は、主に穀物や豆類、野菜、果物、乳製品などの植物性の食べ物で構成されています。

3-7.服装のルール 

ヒンドゥー教の人たちは、服装にも気をつけています。特に女性は、肌の露出を良しとしません。肩や足首を見せることは、はしたないと考えられているからです。そのため、女性はサリーやサルワール・カミーズという服を着ます。

※出典:ヒンドゥー教|国土交通省

4.バラモン教とヒンドゥー教の違い

ヒンドゥー教は、バラモン教がインドの土着の神や思想を取り入れて変化した宗教です。現在では、バラモン教の教えを引き継ぎながらも、多様な宗派や流派が生まれています。

バラモン教は、紀元前2千年頃にインドに侵入したアーリヤ人が持ってきた宗教で、ヴェーダという聖典に基づいて神々や儀式を重視しました。司祭階級のバラモンが最上位で、四姓制度という身分制度が存在します。

5.世界4大宗教について

世界4大宗教には、仏教やヒンドゥー教のほかにキリスト教やイスラム教があります。

5-1.世界4大宗教とは

世界4大宗教とは、仏教・ヒンドゥー教・キリスト教・イスラム教のことです。これらの宗教は、世界中で多くの人々に信仰されており、人類の歴史や文化に大きな影響を与えてきました。

それぞれの宗教には、神や教え、歴史、文化などの特徴があります。例えば信仰により罪からの解放を目指すのが「キリスト教」、アッラーに従い平和を目指すのが「イスラム教」です。

5-2.全世界の主な宗教分布

※出典:第8回 世界のさまざまな暮らしとは?~言語・宗教と生活~|NHK

世界の主な宗教分布を地図で見ると、上記のとおりです。

  • ピンク:キリスト教
  • 緑:イスラム教
  • 水色:仏教
  • オレンジ色:ヒンドゥー教
  • 赤:ユダヤ教
  • 灰色:その他

地図からわかるように、キリスト教はヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなどに広がっています。イスラム教は中東や北アフリカ、インドネシアが中心です。

仏教は東アジアや東南アジア、チベットで信仰され、ヒンドゥー教はインドやネパール、バングラデシュが多数を占めています。また無宗教や民間宗教、その他の宗教も世界各地に存在していると分かるでしょう。

6.キリスト教

キリスト教とは、イエス・キリストを救い主として信じる宗教です。カトリック、プロテスタント、正教会などさまざまな宗派があります。

6-1.成り立ち 

キリスト教の起源は、イエス・キリストの生涯にあります。イエスは紀元前4年頃にユダヤのベツレヘムで生まれました。

イエスは30歳頃からガリラヤで宣教を始め、神の国の福音(ふくいん)を説きました。ユダヤ教を批判し処刑されたイエスですが、神の子として人間の罪のために死んだと信じられています。

イエスは十字架にかけられて死んだ後、三日目に復活したと言われています。イエスの弟子たちはイエスの復活を証言し、イエスこそが旧約聖書で予言された救世主(メシア)であると信じました。これがキリスト教の始まりです。

6-2.宗教人口 

キリスト教の人口は約23億人おり、世界で最も信者数の多い宗教です。現在、世界の人口の約32%がキリスト教を信じています。

信仰しているのはヨーロッパ、アメリカ、オセアニアなど世界中に広がっています。信者数の多い国は、アメリカ合衆国、ブラジル、ロシア、メキシコなどです。日本にも約95万人のキリスト教徒がいるといわれています。

6-3.主神 

キリスト教の主神は、三位一体という概念で理解されます。三位一体とは、父なる神、その子キリスト、聖霊の三つの位格がひとつの神であるという考え方です。

父なる神は天地万物を創造した神で、その子キリストは神の化身として人間の姿になり、十字架で死んで人々の罪を贖いました。聖霊は神の働きを人々に伝える力で、キリスト教徒の心に宿ります。

6-4.宗教観 

キリスト教の宗教観は、神と人との関係に重点を置いています。人間は神のかたちに似せて創造された存在ですが、アダムとイヴが罪を犯したことで神との関係が断たれました。

しかし神は人間を愛して、自分の子キリストを人間のために犠牲にしました。キリストの死と復活によって、人間は神との関係を回復することができます。

キリストを信じて神の愛も受け入れることで、神の子として救われるというのがキリスト教の考え方です。

6-5.タブーな食べ物 

キリスト教全体には、タブーな食べ物がありません。しかし、キリスト教には、食べ物に関する規則や制限がある宗派もあります。例えばローマ・カトリック教会や東方正教会では、肉やアルコールの制限期間を設けているのです。

「四旬節」と呼ばれるイースター(復活祭)の前には、断食をします。期間中の最初の水曜日「灰の水曜日」と、最後の金曜日「聖金曜日」が断食をする日です。

7.イスラム教

イスラム教とは、唯一神アッラーを信仰し、その教えに従う宗教です。預言者ムハンマドが神から啓示を受けたとされる、「クルアーン」を聖典としています。イスラム教は信仰するだけでなく、政治や社会、経済、法律など、生活のすべてに影響を与えている宗教です。

7-1.成り立ち 

イスラム教は預言者ムハンマドから始まりました。ムハンマドは、紀元570年頃にメッカで生まれています。

ムハンマドは商人として働きながら、ユダヤ教やキリスト教などの一神教に興味を持っていたようです。40歳のとき洞窟で瞑想していたムハンマドは、神の言葉を伝えられたといいます。これがイスラム教の始まりです。

神からの啓示をメッカの人々に説き始めましたが、多くの反発にあいました。そこで622年にメディナに移住したところ、指導者として迎えられたようです。

メディナでは多くの戦闘を経験しながら、イスラム教の教えを確立し共同体を形成しました。630年にはメッカを征服し、イスラム教の聖地としたと語られています。

7-2.宗教人口 

イスラム教は世界で2番目に多い宗教で、約18億人の信者がいます。信者はムスリムと呼ばれ、世界の約4分の1を占めています。

主に西アジアや北アフリカ、中央アジア、南アジア、東南アジアなどに広がっており、多様な民族や文化を持つムスリムがいます。

イスラム教の最大の人口を持つ国はインドネシアで、約2億3千万人のムスリムがいます。また日本でも、約20万人のムスリムがいると報告されました(早稲田大学の店田廣文名誉教授らの調査結果)。イスラム教の人口は今後も増え続けると予測されています。

7-3.主神 

イスラム教の主神はアッラーです。アッラーとはアラビア語で「神」を意味する言葉で、イスラム教では唯一絶対の神を指します。アッラーは全知全能で、創造主であり、慈悲深く、正義であり、すべてのものに対して支配権を持っています。

7-4.宗教観 

イスラム教の宗教観は、神の絶対的な唯一性です。神の意志は「クルアーン」という聖典に示されており、その教えに従って生きることが求められます。クルアーンには、信仰や礼拝、食事など、人間の生活のすべてに関する指示や規則が含まれています。

イスラム教では、ムスリムは六信五行が生活の基盤です。

<信じるべき6箇条(六信)>
アッラー(唯一絶対の神)、天使(神の使い)、啓典(クルアーン:神の声の記録)、預言者(神の言葉を伝える人)、来世(復活や死後の生命)、天命(神が定めた運命)

  <5つの義務(五行)>
信仰告白(シャハーダ)、礼拝(サラート)、喜捨(ザカート)、断食(サウム)、巡礼(ハッジ)

7-5.タブーな食べ物 

イスラム教では、豚肉とアルコールの飲食が禁止されています。豚肉は不浄な動物とされており、アルコールは人の理性を奪うものとされています。牛や羊は許可されていますが、特別な食肉処理が必要です。

これをハラール(許されたもの)といい、ハラールの方法で屠殺された肉しか食べることができません。イスラム教では、食事は神からの恵みであり、感謝の気持ちを持って摂るべきものです。

8.外国人労働者に宗教的配慮をするポイント3つ

外国人労働者を雇用するとき、宗教に関する知識や配慮が必要です。なぜなら、外国人労働者の生活や働き方に大きな影響を与えるからです。

宗教上の決まりを無視したり、侮辱したりすると、トラブルや不満の原因になりかねません。ここでは、外国人労働者に宗教的配慮をするポイントを3つ紹介します。

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8-1.食事

外国人労働者のなかには、宗教の戒律によって食事の制限があります。例えば、ヒンドゥー教の信者は牛肉を食べません。食事の禁止事項を無視すると、外国人労働者は不快に感じたり、信仰を侵害されたと感じたりするでしょう。食事への配慮として、原材料や調理法の提示をして選択できるようにしましょう。

8-2.お祈り

信仰している宗教によって一定の時間や回数、場所でお祈りをする人がいます。例えば、イスラム教徒は1日に5回、聖地メッカの方向に向かってお祈りをします。

普段から礼拝の習慣がない日本人にとって、見慣れない光景でしょう。しかし理解を示すことで、外国人労働者も安心して働ける職場になります。お祈りに備えて休憩時間の調整やスペースの確保をするなど、必要に応じて働きかけてみましょう。

8-3.服装

宗教の戒律によって着るべき服にも決まりがあります。 例えばイスラム教徒の女性は、家族以外の男性に対して肌や髪を見せないようにするため、ヒジャブやブルカを着用するのが基本です。

外国人労働者にとって服装の決まりは、信仰心を示す役割があります。社内の服装規定があるかもしれませんが、柔軟に対応しましょう。

外国人雇用における宗教的配慮については、以下の記事で詳しく解説しています。

外国人雇用には宗教的配慮が必要?主なトラブルと事例もご紹介!

9.まとめ

外国人労働者によっては、何らかの宗教を信仰している可能性があります。信仰心が強い場合、宗教的な食事やお祈り、服装のルールに対して企業側も理解が必要です。

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