外国人労働者も年金への加入は必要?年金手帳・帰国時の対応、脱退一時金について解説

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

日本の各業界は今、慢性的な人手不足に陥っています。そこで今では外国人材を採用している企業も多く、日本人雇用と同じように外国人人材にも社会保険を採用している企業もほとんどです。また一部雇用条件では、社会保険を必須としている場合もあり、外国人人材に対する年金等の社会保険制度の重要性や知識が注目を浴びています

この記事では外国人採用を考えている方が把握しておきたい年金制度に関するポイントをご紹介しています。

外国人のマネジメントに関してご質問があればお気軽にお問い合わせください

目次

1. 外国人労働者も年金への加入は必要?

そもそも外国人労働者も日本の年金への加入は必要なのか?その義務や各年金の制度についてご紹介していきます。外国人労働者を雇用する予定の企業や外国人労働者の年金に関して知りたい企業担当者の人はぜひ参考にしてみてください。

1-1.厚生年金

日本の年金の種類は2種類あり、厚生年金はその一つです。厚生年金は国民年金の第2号被保険者(主に会社員や公務員)が国民年金とプラスで加入する年金となっています。

これは外国人労働者も同様で、日本の企業(法律によって厚生年金・健康保険への加入が義務付けられている「強制適用事業所」)で働く限り外国人労働者も国民年金にプラスして、厚生年金を支払う必要があります。また厚生年金の保険料は会社が半分負担することとなっており、外国人労働者でも日本人の労働者と同様の年金支払いと企業側の負担が必要となってきます。

1-2.国民年金

2種類の年金のうちの一つが国民年金です。国民年金は日本に住む全ての20歳以上60歳未満の人の加入が必要なため、外国人労働者も対象となってきます。基本的に強制適用事業所に指定されている企業であれば日本人従業員と同様、給料から天引きされるため、外国人労働者自身で手続きや支払いをする必要もなく、会社が請け負うこととなります。

2.国民年金の定義【外国人も同様】

上記の通り、日本国内に住むすべての20歳以上60歳未満の方は、日本人従業員と同様で、国民年金に加入する義務があります。

国民年金には、職業などによって3つの被保険者の種別に分けられており、保険料の納付方法もそれぞれ異なります。日本人、外国人問わず、被保険者は第1、第2、第3と3つに分類されています。下記で3つの分類について詳しくご紹介していきます。

第1号被保険者

  • 日本に住んでいること【必須条件】
  • 加入する制度:国民年金
  • 対象者の例:自営業者、学生、農業者、フリーターの方など
  • 保険料の納付方法:納付書による納付や口座振替などで、自分で納める(納められない場合は免除や納付猶予の仕組みがある)

第2号被保険者

  • 日本国内での居住が必須ではない【国外居住者も可】
  • 加入する制度:国民年金と厚生年金保険
  • 対象者の例:会社員、公務員の方など
  • 保険料の納付方法:給料から天引きされる形でお勤め先を通じて納付される

第3号被保険者

  • 日本に住んでいること【必須条件】
  • 加入する制度:国民年金
  • 対象者の例:国内に居住し、配偶者に扶養されている方(一時的に海外に滞在する場合は、特別な条件により第3号被保険者になることがある。)
  • 保険料の納付方法:自己負担はない(第2号被保険者の加入制度が負担する)

3. 年金の支払いが免除になる外国人労働者

国民年金や厚生年金の加入は外国人労働者も対象になると先ほどお伝えしましたが、場合によっては加入・支払いの必要がなく免除されるケースもあります。そこでここからは、どのような場合に年金の支払いが免除になるのか、外国人労働者を年金へ加入させる際の注意点として参考にしてみてください。

3-1.年金の二重加入を防ぐための社会保障協定

外国人の年金問題に関して、年金の二重加入問題を解消するために、日本と諸外国で結ばれた「社会保障協定」があります。各国には国ごとに、厚生年金など日本のような年金制度があり、自身の国でも年金を支払っていながら日本に滞在している人もいます。日本でも年金を支払うとなると今滞在している日本と自国の両国に年金を支払うことになるため、「年金の二重支払い」が発生してしまいます。

そこでこのような二重支払いを防ぎ、支払った年金が無駄にならないよう解消するのが、「社会保障協定」です。この社会保障協定があることにより、年金の支払いが免除され年金の掛け捨てを防ぐことができます。

3-2.社会保障協定を締結している国

現在日本では、既にこの「社会保障協定」を発行している国、署名のみをしている国、交渉中の国があり以下のような国で「社会保障協定」を締結済み、または今後動きがある国とされています。

【発行済の国】
ドイツ/イギリス/韓国/アメリカ/ベルギー/フランス/カナダ/オーストラリア/オランダ/チェコ/スペイン/アイルランド/ブラジル/スイス/ハンガリー/インド/ルクセンブルク/フィリピン

【署名済みの国】
イタリア/スロバキア/中国/スウェーデン

【交渉中の国】
トルコ/フィンランド/オーストリア/ベトナム

3-3.社会保障協定対象外の国の対応方法

年金の支払い免除を受けるためには、その労働者が出身の国と日本とで「社会保障協定」を締結している必要があります。そのため、採用する際は締結国を参考にしながら採用を進めるのが良いでしょう。

もし、採用している労働者の国で締結交渉中や締結がされていない国の場合は、今後動きがある可能性があるため、適宜日本年金機構等の情報をチェックしながら対応していくのが良いでしょう。

4. 帰国時に使える脱退一時金制度とは

国民年金や厚生年金と言った日本の年金に加入していると、もし自国へ帰国するとなった際に支給を受けることができる一時金が存在します。では、その制度はどんなものか、支給の条件などをご紹介していきます。

年金の画像

4-1.脱退一時金制度

日本で年金を支払っている外国人労働者が帰国時に支給を受けることができる制度に「脱退一時金」があります。「脱退一時金」とは、年金に関する外国人の不利益を防ぐための制度で、社会保障協定とは別の観点で設けられています。

この「脱退一時金」は、国民年金や厚生年金といった日本の年金に加入した外国人労働者が帰国する際に、一定の額を受け取ることができる制度で、年金を受け取る前に帰国するものに限ります。

社会保障協定とは別の観点で設けられているので、社会保障協定を締結していない国の出身でも受け取ることができるため、帰国する際に受け取るかどうか年金に加入している全ての外国人従業員へ、トラブル防止のために確認することをおすすめします。

また、この脱退一時金は日本滞在中に負担した額よりもらえる金額は少なくなるため、その点もあらかじめ本人に確認しておく必要があります。

4-2.2021年の制度改正により支給上限が5年に引き上げ

2021年の制度改正により、日本の脱退一時金制度における支給上限が5年に引き上げられました。これは、以前は3年までしか支給されなかった一時金の支給期間を、保険料を支払った期間に応じて最大5年まで拡大したものです。

この制度改正は、特に2019年に新たに導入された在留資格「特定技能(1号)」の在留期間が最長で5年であることや、短期滞在から長期滞在への傾向の変化などを背景に行われました。具体的には、特定技能1号の創設により、外国人労働者の在留期間の上限が5年に設定されたことがその一因であり、また、短期滞在から長期滞在への傾向が見られるようになったことも要因の一つです。

従来の制度では、保険料を3年以上納めた場合でも、支給上限は3年であったため、長期間にわたって保険料を支払った人でも、受け取れる一時金の額に変化はありませんでした。しかし、2021年の改正により、最大5年分の保険料を支払った人も支給の対象となりました。

この改正は、外国人労働者の増加や在留期間の変化に対応するとともに、より公平な保険制度の実現を目指したものと言えます。

4-3.支給の条件

「脱退一時金」を支給される条件は以下の通りです。以下の条件に当てはまり、厚生年金・国民年金の被保険者資格を喪失し、日本に住所を有しなくなった日から2年以内に請求する必要があります。

  1. 日本国籍を持っていないこと
  2. 国民年金の第1号被保険者としての保険料納付済期間の月数と保険料4分の1免除期間の月数の4分の3に相当する月数、保険料半額免除期間の月数の2分の1に相当する月数、及び保険料4分の3免除期間の月数の4分の1に相当する月数とを合算した月数、又は厚生年金保険の被保険者期間の月数が6ヶ月以上あること
  3. 日本に住所がないこと
  4. 障害年金などの年金を受ける権利を持っていないこと

出典:日本年金機構「脱退一時金の制度」

4-4.手続き方法

「脱退一時金」の申請方法は、日本年金機構で指定の書類を提出する必要があります。申請の際に提出する書類は以下の通りです。

  • 脱退一時金請求書
  • パスポートのコピー
  • 日本国内に住所を有しなくなったことを確認できる書類(住民票の除籍の写しなど)
  • 請求者本人の口座名義であることが確認できる書類
  • 国民年金手帳

外国人の年金に関してご不明点やご質問があればお気軽にお問い合わせください。

5. 外国人が年金に加入する方法

ここまで外国人労働者も年金の加入が必要なのかを解説してきました。加入は必要と言っても、では外国人が日本の年金に加入するにはどのような手続きが必要なのか、手続き方法と必要な書類についてご紹介していきます。

5-1.外国人だからといって特別な手続きは必要ない

外国人労働者が日本の年金に加入する際には、外国人だからといって特に特別な手続きはありません。

必要な書類を本院に提出してもらい、会社側から日本人労働者の年金手続きと同様に、必要期間に提出し年金加入手続きを進めるだけで加入することができます

5-2.国民年金に加入する際に必要な書類

外国人が年金に加入する際に必要な種類は、「国民年金被保険者関係届出書」在留カードやパスポートといった「身分証明書」の2種類が必要になってきます。この2つを用意すれば、あとは特別な手続きは必要なく、日本人労働者が年金加入の手続きをする時と同様に手続きをするだけで大丈夫です。

在留カードについてはこちらの記事で解説しています。

6. 脱退一時金制度について企業が注意すべきこと

日本の年金を支払う外国人労働者であれば、帰国時に申請し損することが防げる「脱退一時金」。しかし、申請する際に企業が注意しなければならないポイントがあるので、そちらを解説していきます。

6-1.本人または代理人が行うもの

脱退一時金の申請は、企業ではなく本人または代理人を通じて請求手続きを行うことが可能です。代理人が申請を行う際は、委任状を添付して、請求書を提出することが必要となってきます。そのため、会社からではなく本人または本人による手続きが不可能な場合は、代理を立てての申請になることを理解してもらう必要があります。

また、委任状は自由形式のため、自身で用意したものまたは日本年金機構に掲載しているので、そちらを使用して記入・提出でも可能なことも必要であれば伝えてあげても良いかもしれません。

6-2.脱退一時金を受け取ると、対象となった年金加入期間は加入していなかったものとして取り扱われる

社会保険協定国の出身で条件を満たせば「脱退一時金」を受け取ることができますが、受け取ると日本の年金に加入していないことになり、その期間は年金加入期間の通算がされないため、長く日本い滞在する人やすぐに戻ってくる予定の人は注意が必要です。

6-3.実際の支給額と多少誤差があることを伝える

脱退一時金は、支払い済みの保険料の一部が返金される制度なので、全額戻ってくることはありません。受け取ることのできる金額は、年金に加入していた期間など人それぞれ異なるので、事前にどのくらいもらえるのか該当者の加入歴をチェックしておくことが必要です。

【脱退一時金支給例】

最終月が2021年(令和3年)4月以降の場合

被保険者であった期間支給率計算に用いる数支給率
6月以上12月未満60.5
12月以上18月未満121.1      
18月以上24月未満181.6
24月以上30月未満242.2
30月以上36月未満302.7
36月以上42月未満363.3
42月以上48月未満423.8
48月以上54月未満484.4
54月以上60月未満544.9
60月以上605.5
出典:日本年金機構

6-4.日本で暮らすことになって日本の年金に加入した場合、納付期間は一からのスタートになるため注意

脱退一時金を一度受け取った場合、日本に保険料を納めていた期間はリセットされゼロとなります全く保険料をおさけていないということになり、納付期間も一からスタートになってしまいます。

そのため、短期的な一時帰国で日本に戻ってくる可能性のある場合などは特にこの点を事前に知らせた上で、脱退一時金を受け取るかどうか検討してもらう必要があるので注意が必要です。

6-5.脱退一時金を受け取るために、退職が流行っている?

この脱退一時金を巡って、脱退一時金を受け取るための退職が流行しているとも言われています。脱退一時金は、基本的に年金に加入してから半年以上経つと対象となるため、半年働いて受け取りすぐに帰ってしまうと言ったことも懸念されるので注意が必要です。

7. よくある質問

7-1.脱退一時金の請求手続きを出国前に行うことはできますか

脱退一時金の申請は、出国前に行うことも可能です。日本で居住している市区町村に住民票の転出届を提出することで、申請をすることができます。

その後、転出届を提出した上で転出届に記載された転出予定日以降に脱退一時金請求書および必要な添付書類を日本年金機構など各機関に到着するように郵送することで申請手続きを行うことができます。

7-2.脱退一時金の請求書を提出したのですが、受取までにどれくらい時間がかかるか

脱退一時金の受け取りまでの期間は、提出した書類に不備や確認事項がなければ請求書の提出後から約4ヶ月後に支払いがされ、受け取ることができます

また脱退一時金の支払いの際には、「脱退一時金支給決定通知書」が送付されるため、そちらで支給されているかどうか確認するのがおすすめです。

万が一、書類に不備がある場合には脱退一時金の支給額の決定や支払いまでに4ヶ月以上かかることもあるので、そちらを考慮しておくことも必要になってくるでしょう。

8. まとめ

今後、日本の年金に加入する予定のある外国人労働者既に加入している外国人労働者で帰国予定のある労働者を雇用している企業の担当者の方は、今回解説した手順や注意点など加入手続きや一時金の申請など、外国人労働者へ伝えていく際の参考にしてみてください。

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