外国人新卒採用のビザはどうする?手続きと注意点も徹底解説

現在日本には30万人以上の外国人留学生がいます。人手不足を解消するために留学生を新卒で採用することを考えている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
留学生など新卒で外国人を採用する際に気になるのが在留資格の手続きです。
この記事では代表的な就労系在留資格とそれぞれの在留資格の申請方法ついてわかりやすく解説します。外国人の新卒採用を考えている経営者の方や採用ご担当者の方はぜひ最後までお読みください。
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1. 外国人新卒採用の概要
株式会社キャリタスが実施した「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査」によると、高度外国人材雇用企業のうち、2024年度に外国人留学生を採用した企業は全体の25.6%でした。また、2025年度に外国人留学生の採用を見込んでいる企業は約40%であり、2024年度に比べて多くの企業が外国人留学生を採用する予定です。
1-1. 2パターンの採用ルート
日本企業が新卒の外国人を採用する場合、日本に留学に来ている外国人から募集する場合が多いですが、実は
もう1つ、海外の大学を卒業した外国人を招聘するというルートもあります。
それぞれの採用の流れを紹介します。
1-1-1. 日本の大学・専門学校を卒業した留学生を採用
2023年5月時点で日本の大学・専門学校に在籍する外国人学生の人数は以下の通りです。
大学院 | 55,539人(前年度比4.5%増) |
大学(短期大学含む) | 82,317人(前年度比11%増) |
専門学校 | 51955人(前年度比10.8%増) |
コロナ禍の影響で外国人留学生の人数は大幅に減少しましたが、その後人数は回復・増加してきています。
国地域別留学生数の上位5か国は中国、ネパール、ベトナム、韓国、ミャンマーです。特にネパール、ミャンマーからの留学生が増えています。
2023年度に外国人留学生のうち日本国内で就職した学生の人数・割合はこのようになりました。
学種 | 日本国内で就職した人数 | 学種内での割合 |
大学院(博士課程) | 1,244人 | 33.8% |
大学院(修士課程) | 3951人 | 32.4% |
大学(学部) | 6062人 | 39.6% |
短期大学 | 558人 | 75.8% |
専門学校 | 10,206人 | 43.9% |
特定の職業に特化した知識・技能を身につけられる短期大学や専門学校を卒業した留学生は、大学卒以上の留学生に比べて就職する割合が高いです。
大学卒以上の高度人材となる外国人留学生は、研究・開発関連、またIT・ソフトウェア関連の職種に就職することが多いです。特に理系の外国人留学生は、日本人では確保できない専門分野の人材を補うために採用が進められています。
外国人留学生を新卒採用する場合に必要なのが、在留資格変更許可申請です。
外国人留学生は「留学」の在留資格で日本に滞在しているため、この在留資格を、就労を目的とした在留資格(「特定技能」、「技術・人文知識・国際業務」など)へ切り替える必要があります。
1-1-2. 海外の大学を卒業後日本へ招へい
海外の大学を卒業したばかりの新卒外国人を呼び寄せ、日本で採用することもできます。海外大学の多くの卒業時期は9月であるため、卒業後すぐに採用したい場合は10月入社となります。
〈海外から招へいすることのメリット〉
・海外大学を卒業した優秀な学生を採用することが可能
・特に理系の専門職に就ける人材を見つけられる可能性が高い
〈海外から招へいすることのデメリット〉
・日本語での意思疎通が難しい場合がある
・日本の文化や働き方に慣れていないため、問題が起きやすい
日本語や日本の文化への理解は日本国内の大学・専門学校を卒業した外国人に比べて不十分な場合が多いですが、コンピューター関連の仕事や、機械系のエンジニアなどの人材が不足している職種に、大学で専門的にこれらを勉強した大学生を採用できるという大きなメリットがあります。
また、国内の大学・専門学校を卒業した外国人を採用した場合の在留資格の手続きは在留資格変更許可申請ですが、海外から招へいする場合は在留資格認定証明書交付申請をすることになります。この手続きはすべて外国人を雇用する企業が行います。
1-2. 企業側の手続き
外国人を新卒で採用したときに企業がしなければならない手続きは大きく4つの場面に分けられます。
まずは新卒採用の求人を掲載します。求人を自社のHPに掲載するだけでなく、外国人がよく見る求人広告サイトに求人を掲載することで多くの学生に見てもらえます。
国内の日本人学生と同じ枠で募集・採用するか、別枠での採用にするかもそれぞれの企業によって異なります。「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する企業調査」によると、日本人学生と同じ枠で採用している企業が7割を超えています。
面接を行う際の注意点として、在学時のアルバイトを必ず確認するようにしましょう。留学生は資格外活動許可を得た場合に限り週28時間以内でアルバイトをすることが認められています。留学生の中にはこの資格を取得しないでアルバイトをしている留学生や、週28時間の制限を超えて働いている留学生もいます。
これらの行為は不法就労に該当し、在留資格変更許可申請を入管に提出した際に不許可になる可能性が高いです。
そのため、面接時に在留カードに資格外活動許可やアルバイトの状況を確認する必要があります。
選考を通過した学生に内定通知を送ります。学生から内定承諾書が提出されたら、労働条件について話し合い、雇用契約書を作成します。雇用契約書は日本語だけでなく、外国人学生が完全に理解できる言語(外国人学生の母語など)でも作成する必要があります。
日本の大学・専門学校を卒業した留学生を採用する場合は在留資格変更許可申請、または海外大学を卒業した学生を招へいする場合は在留資格認定証明書交付申請を行わなければなりません。
海外から招へいする場合はもちろん企業が申請書類を作成しますが、国内の留学生を採用した場合も、留学生本人に書類を作成してもらうのではなく企業が申請取次者として申請を行うことをお勧めします。留学生が行うと書類不備などで何度も書類が差し戻しになり、入社時期までに在留資格が変更できない可能性があるためです。
国内の留学生を採用する場合は、申請後審査の問題がなければ1~3か月で審査が終了し、通知ハガキが送られてきます。通知ハガキなどの必要書類を持って出入国在留管理局へ行くと新しい在留資格が交付されます。オンラインで在留資格変更許可申請を場合は、郵送で新しい在留カードを受け取ることができます。
海外大学を卒業した外国人を招へいする場合は、在留資格認定証明書が交付された後、これを海外在住の外国人に送付し、現地の日本大使館又は総領事館で査証申請を行います。
日本人の新卒社員と同様に新人研修を行います。日本人と一緒に行うか、外国人従業員のみ追加で日本語・日本研修を行うかなども決めなければなりません。
特定技能1号で採用した場合は、特定技能外国人への支援義務に含まれている定期的な面談を行う必要もあります。
[出典:独立行政法人日本学生支援機構「2023(令和5)年度外国人留学生進路状況調査結果」]
[出典:株式会社キャリタス「外国人留学生/高度外国人材の採用に関する調査」]
2. 在留資格について
新卒の外国人が働ける在留資格を紹介します。
2-2.(就労可能な)在留資格一覧
在留資格は「就労系」、「身分系」、「就労が認められていない在留資格」の大きく3つに分けられます。
外国人が日本で就労できる「就労系」の在留資格は以下の通りです。
・外交
・公用
・教授
・芸術
・宗教
・報道
・高度専門職
・経営・管理
・法律・会計業務
・医療
・研究
・教育
・技術・人文知識・国際業務
・企業内転勤
・介護
・興行
・技能
・特定技能(1号、2号)
・技能実習(1号、2号)
2-3. 代表的な就労ビザ
上記の中でも新卒の外国人が取得する代表的な就労系在留資格(就労ビザ)は、高度専門職、技術・人文知識・国際業務、特定活動46号、特定技能(1号・2号)の4つです。
2024年6月時点でそれぞれの在留外国人数は以下のようになっています。
高度専門職 | 26,803人 |
技術・人文知識・国際業務 | 394,295人 |
特定活動46号 | 不明※ |
特定技能(1号・2号) | 251,747人 |
※正確な人数は直接公表されていませんが、2021年に日本企業に就職した留学生のうち約6%が「特定活動」で就労したというデータがあり、その大半は特定技能46号と考えられています。
高度専門職
高度専門職は、日本の学術研究や経済の発展に寄与することが見込まれる高度の専門的な能力を持つ外国人が取得できる在留資格です。
学歴・職歴・年収等の項目毎にポイントを付け、その合計が一定以上に達した人が取得できます。

大学を卒業したばかりの新卒の学生は職歴がないため高度専門職は取得できませんが、修士号や博士号を持っている場合は将来取得できる可能性が高いです。
高度専門職についてはこちらの記事も併せてお読みください。

技術・人文知識・国際業務
外国人がこれまで学んできた知識や経験、母国の文化の知識などを活かして、それらに関連する業務に従事するための在留資格です。
システムエンジニア、企画、営業、コンサルティング、通訳、翻訳、貿易などの業務に従事することができます。
新卒の学生であれば、大学の専攻に関連している業務に従事する場合のみ在留資格の申請が認められます。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」についてはこちらも併せてお読みください。


特定活動46号
在留資格「特定活動46号」とは、「特定活動」内に新しく2019年に創設された在留資格であり、日本の大学や専門学校を卒業した高度な日本語力を持つ外国人に、技術・人文知識・国際業務に該当しない職種でも働けるようにした在留資格です。
創設当時は大学、大学院卒業者のみにしか与えられませんでしたが、2024年の改正により、新たに短大、高等専門学校、4年制の専門学校の留学生にも与えることが可能となりました。
特定活動46号が技術・人文知識・国際業務と大きく異なる点は、技術・人文知識・国際業務で認められていない現場作業やサービス業務などの幅広い業務に従事できる点です。
例えば飲食店で、技術・人文知識・国際業務では接客は単純労働と見なされるため認められていませんが、特定活動46号であれば、飲食店で外国人客への通訳を兼ねた接客が認められています。
しかし単純労働のみや、日本語を使わない業務は認められていません。
また、特定活動46号は申請要件の中でも特に日本語の要件が厳しくなっています。
〈特定活動46号を取得するための留学生側の要件〉
- 大学・大学院・短大・4年制の専門学校(一定の条件あり)を卒業して学位を授与されたこと高度な日本語能力を有していること
→日本語能力試験N1を取得、BJTビジネス日本語能力テスト480点以上 - 大学・大学院・短大・4年制の専門学校で学んだことを活かせる業務に従事すること
特定技能
特定技能は国内人材を確保することが困難な分野の人手不足解消を目的に、一定の専門性・技能を有する即戦力の外国人を雇用する制度で、2019年4月に開始しました。
特定技能は1号と2号に分かれています。
特定技能1号 …特定産業分野に関する相当程度の知識又は経験を必要とする技能に従事する
特定技能2号…分野に関する熟練した技能を要する業務に従事する
技術・人文知識・国際業務や特定活動46号と大きく異なる点は、外国人が単純労働をすることが認められている点です。
建設業や製造業、外食業などの分野で幅広い業務に従事できる外国人を採用できます。
新卒の外国人が特定技能1号を取得する場合は、専門学校などでその分野について勉強した人材を優先的に募集するといいでしょう。
特定技能1号取得のための外国人側の要件は「3. 在留資格変更の手続きと流れ」で解説します。
[出典:文部科学省 令和5年度「全国キャリア教育・就職ガイダンス」資料 外国人留学生の就職促進について]
[出典:法務省「令和6年6月末現在における在留外国人数について」]
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3. 在留資格変更手続きと流れ
以下4つの在留資格について、留学ビザからの在留資格変更許可申請の流れを解説します。
・特定技能
・技術・人文知識・国際業務(技人国)
・高度専門職
・特定活動46号
これら4つへの在留資格変更許可申請の大きな流れは同じです。
- 新卒外国人を募集・選考し、内定を出す
- 在留資格変更許可申請をする
この2つの段階における注意点を解説します。
3-1. 特定技能
特定技能1号へ在留資格を変更する場合、新卒外国人が特定技能評価試験を受験し、合格する必要があります。
技能実習未経験者の外国人が特定技能1号外国人になるためには、「特定技能評価試験」と「日本語試験」の2つの試験に合格する必要があるためです。
日本語試験は日本語能力試験N4以上の合格または、国際交流基金日本語基礎テストA2相当以上の証明が必要です。日本国内で留学していた学生であれば、いずれかの資格を持っている可能性が高いです。面接の際に日本語能力の証明になる書類を必ず持ってきてもらいましょう。
また、技能試験は特定産業分野ごとに分かれています。産業分野ごとに試験の実施団体が様々なため、試験内容や実施状況なども産業分野によって異なります。
毎月技能試験を実施している分野もあれば、年に数回しか実施していない分野もあるため、新卒外国人の入社時期、その前の在留資格変更許可申請に間に合うように試験に合格してもらう必要があります。
技能評価試験についてはこちらの記事も参考にしてください

在留資格変更許可申請に必要な書類は、申請人(外国人側)に関する書類、所属機関(企業側)に関する書類、分野に関わる書類の3種類に分けられます。
注意点として、外国人本人の書類については課税証明書などの公的義務を正しく履行していることの証明書が必要です。それまで留学生として日本で生活していたためです。
その他必要書類の具体的な内容についてはこちらを参考にしてください。
3-2. 技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)
技人国ビザで新卒の外国人を採用するには、面接で留学生として在学していた学校での成績や、アルバイトに従事していた時間も確認しなければなりません。
技人国ビザの審査においては、業務内容が学歴と関連していることはもちろん、留学生として在籍していた大学などでの成績も判断材料となります。大学在学時の成績が芳しくない場合、専門的な知識・技能が習得できていないと見なされて申請が不許可になる場合があります。
また、在学時にアルバイトをしていた学生に対しては、アルバイトの時間が週28時間を超えていなかったかの確認が必要です。特にアルバイトを掛け持ちしている学生は、合わせた時に週28時間を超えてしまうケースがあります。必ず複数のアルバイトの合算した時間を尋ねるようにしてください。
技人国ビザへの在留資格変更許可申請における注意点は、受入企業のカテゴリーによって必要書類が異なるという点です。
詳しくはこちらの記事で解説しています。

3-3. 特定活動46号
特定活動46号を取得するための外国人側の要件は学歴と日本語能力の要件のみで、実務要件はありません。
国内の大学卒以上で日本語能力試験N1以上の資格を持っている新卒外国人であれば、取得できる可能性が高いです。
3-4. 高度専門職
高度専門職への在留資格変更許可申請をする場合は、高度人材であるという証明になるポイント計算表とポイントを立証する資料を提出しなければなりません。
それ以外の資料は技人国ビザなどの就労系ビザと同様の書類を提出し、行おうとする活動が高度専門職の活動に当てはまることを証明します。
4. 注意点
最後に新卒外国人の在留資格に係る申請をする際の注意点を2点紹介します。
・ビザが下りない
・ビザが間に合わない
4-1. ビザが下りない
在留資格に係る申請をしても申請が必ずしも許可されるとは限りません。様々な理由で不許可になる場合があります。新卒外国人の過去の滞在歴や、企業側が受入れ機関になる要件を満たしていないこと、技人国ビザであれば業務と学歴の関連性がなかったことなどが挙げられます。
在留資格の申請をする前に新卒外国人とは雇用契約を結びます。雇用契約を結ぶ際に、新卒外国人本人の過去の滞在歴などが理由で不許可になった場合には解雇となってしまうことを必ず説明しなければなりません。
専門学校からの新卒留学生を特定技能ビザで採用するために雇用契約を締結しましたが、在留資格変更許可申請が不許可になってしまいました。不許可の理由は、留学生が大学在学中に週28時間を超えるアルバイトをしていたためです。企業は面接時に一部のアルバイトしか確認しておらず、入管の審査で発覚しました。
4-2. ビザが間に合わない
出入国在留管理局への在留資格変更許可申請は、混雑緩和のために入社日のおよそ4か月前から認められています。
そのため12月から1月に申請を出す企業が多いですが、この期間は出入国在留管理局が非常に混雑するため結果通知が入社日に間に合わない可能性があります。
結果通知が間に合わない場合は外国人への就労ビザがおりていないため、申請した業務内容で新卒外国人を働かせることはできません。入社時期を遅らせるなどの措置を講じる必要があります。
国内の大学を3月に卒業予定の外国人と雇用契約を締結し、技人国ビザへの変更許可申請をした。まだ卒業していないため、在留資格変更許可申請には卒業見込証明書を提出した。申請は許可されたが、新しい在留カードを受け取る際に卒業証明書の原本が必要となった。卒業証明書は3月下旬に発行されるため、在留資格の変更手続きが全て完了するのが4月1日以降になってしまった。
在留資格変更のための手続きは様々な理由で遅れることがほとんどです。余裕を持って12月中には申請を出すようにしましょう。
5. まとめ
大学や専門学校を卒業した新卒外国人は高度な日本語力と専門的な知識・技能を持っているため、即戦力として企業の人手不足を解消する助けとなるでしょう。
弊社JapanJobSchoolでは、特定技能外国人材の紹介だけでなく、
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新卒外国人の採用についてご質問などございましたらお気軽にお問い合わせください!