特定技能「外食」で採用をするまでの具体的な7つのステップを解説
コロナ禍以降人手不足に苦しんでいる飲食業界では、「特定技能「外食」で外国人を採用したい、でも具体的になにをすればわからない」といった悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では特定技能「外食」で外国人を採用する一連の流れを具体的、かつ分かりやすく説明しています。さらに、特定技能「外食」での採用を検討している企業では、社内の説明資料としても使えます。ぜひ最後まで読んで、参考にしてください。
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そもそも特定技能「外食」とは?
「特定技能」とは特定の職種に対する人手不足を解消する目的に2019年に新たに新設された在留資格です。
特定技能が設置される前までは、外食業において「技術・人文・国際(技人国)」もしくは「留学」の在留資格で外国人を雇用することが可能でした。しかし、「技人国」は外国人に現場労働してもらうことが不可能で、「留学」は週28時間以内という就業時間の制限がありました。
特定技能「外食」の在留資格では、
- フルタイムでの勤務
- 現場労働
- 最大5年間の雇用
といったことが可能になり、まさに人手不足で苦しんでいる飲食業界で、外国人を雇用しやすい在留資格になっています。
特定技能「外食」については以下の記事でも詳しくまとめられています。
STEP1. 企業の要件を確認
特定技能「外食」では、飲食店(受け入れ機関)が満たさなければならない要件があります。1つずつ確認しましょう。
1-1. 外国人と結ぶ雇用契約が適切である
「外食」に限らず、特定技能ビザで外国人を雇用するとき、その雇用契約の内容は日本人と同等かそれ以上である必要があります。
例)
- 報酬額が日本人と同等以上
- 外国人であることを理由として,報酬の決定,教育訓練の実施,福利厚生施設の利用その他の待遇について,差別的な取扱いをしていないこと
詳しくは「STEP4. 雇用条件・給与を決める」で解説しています。
1-2. 企業自体が適切である
特定技能で外国人を採用するためには、外国人を受け入れるための基準要件を満たしている必要があります。これら要件は雇用後も出入国在留管理局からチェックをされるので、「雇用後も継続して守ることができそうか?」という視点で見ていただければと思います。
特定技能ビザの受入れ要件は以下の8つです。
- 労働,社会保険及び租税に関する法令を守っていること
雇用後も定期的に出入国在留管理局からのチェックが入るので、守っていることが必須条件です。 - 1年以内に特定技能外国人と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
こちらは日本人も対象になるので注意が必要です。 - 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により行方不明者を発生させていないこと
技能実習生を雇用していた企業には稀にあるので、過去に行方不明者がいなかったかはチェックしましょう。 - 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
過去5年以内に違反がないかチェックしましょう。 - 外国人等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
例えば、外国人本人の早期退職や失踪を防ぐために、あらかじめ金品などを預かる等の行為はできません。 - 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
外国人本人の早期退職や失踪を防ぐために、違約金等を定める等の行為はできません。 - 支援に要する費用を,直接又は間接に外国人に負担させないこと
雇用するに当たっての費用や雇用後の支援にかかる費用を外国人本人に負担させることはできません。 - 報酬を預貯金口座への振込等により支払うこと
原則、銀行口座への振込になります。
1-3. 外国人を支援する体制があり、計画が適切である
外国人を受け入れる企業(飲食店)は、当該外国人が「特定技能1号」の活動を安定的かつ円滑に行うことができるようにするための職業生活上,日常生活上又は社会生活上の支援の実施に関する計画(1号特定技能外国人支援計画)を作成し,当該計画に基づいて支援を行わなければなりません。
雇用前後の義務的支援は以下の通りです。
ただし、入国から帰国までの一連の外国人への支援は、業務が複雑かつ膨大で、特に初めて特定技能外国人を採用する企業の方にとっては「難しい…」と感じられるかもしれません。実際は多くの企業が、これらの支援を「登録支援機関」へ委託しています。詳しくは「STEP3. 支援業務を委託するか選ぶ」で解説しています。
1-4. 食品産業特定技能協議会へ加入
特定技能で外国人を受け入れるすべて企業は、特定産業別に設置されている協議会の構成員になることが義務付けられています。特に特定技能「外食」では食品産業特定技能協議会(以下、協議会)に加入しなければなりません。
協議会加入のタイミングは、就労する外国人が特定技能の在留カードを受け取った日から4か月以内です。(事前加入制ではありません)
また、当面の間入会金や年会費は無料です。(2023年2月現在)
1-3-1.食品産業特定技能協議会への入会方法
提出が必要な書類は以下の通りです。
STEP2. 外国人の要件を確認
特定技能「外食」で採用する外国人は2つの試験に合格しなければなりません。
2-1. 日本語能力を測る試験
日本語能力検定試験(JLPT)のN4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2以上に合格する必要があります。JLPTの実施は7月と12月の年に2回、JFT-Basicの実施は2か月に1回の年に5回です。国際交流基金によると、これらの試験の日本語レベルは「基本的な日本語を理解できる」です。
もう少し具体的にすると、
読む力:基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。
聞く力:日常的な場面でややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる
となります。
もっと詳しく合格者の日本語レベルを知りたい方は、こちらを参考にしてください。
2-2. 外食業に関する実務的な知識をはかる試験
特定技能ビザの大きな特徴の一つが、各分野の専門試験(技能測定試験)に合格する必要があるということです。「外食」の場合は、外食業特定技能1号技能測定試験です。
この試験は年に3回、各都道府県と海外(ネパール・ミャンマー・フィリピン・タイ・カンボジア・インドネシア・スリランカ)で行われます。
試験概要は以下の通りです。
合格基準は満点の65%です。
合格率は約50%と決して高い数字ではありません。事前にテキストを解くなど、万全な対策をして試験に臨む必要があります。
一般社団法人「日本フードサービス協会」からテキストを見ることができますので、受験の際はご活用ください。
2-3. 海外在住者を雇用する場合
海外在住者を雇用する場合、日本語をはかるテストは日本語能力試験(JLPT) N4以上または国際交流基金日本語基礎テストA2以上に合格する必要があります。 また、外食業特定技能1号技能測定試験は、国外だとネパール・ミャンマー・フィリピン・タイ・カンボジア・インドネシア・スリランカに限られます。
2-4. 国内在住者を雇用する場合
国内在住者を雇用する場合、日本語をはかるテストは日本語能力試験(JLPT) N4以上に合格する必要があります。
技能実習修了予定者を雇用する場合
国内で特定技能ビザに切り替えることが多いのが、技能実習修了者です。技能実習2号を良好に修了した外国人は、外食業特定技能1号技能測定試験が免除されます。
STEP3. 支援業務を委託するか選ぶ
STEP1. 1-2を読んで、「特定技能「外食」で外国人を受け入れたいが、外国人の支援計画を作成し、実行するのは不安だ」と感じている企業の方もいるかと思います。
しかし、安心してください。
実は、今現在すでに特定技能で外国人を受け入れている多くの企業が、特定技能外国人への支援をその専門機関に委託しています。
支援機関に一部委託をすることも可能ですが、それは以下の条件を満たしている場合に限られます。
- 直近2年間で就労ビザを保有している外国人の受け入れた実績がある
- 3-1に記載されている3つの支援を行う体制が社内で確立している
この2つの条件を満たしている企業が少ないため、登録支援機関に支援業務を委託する場合が多いのです。
3-1. 登録支援機関の業務
支援業務を行う「登録支援機関」が行う業務は以下の通りです。
- 外国人への支援を適切に計画・実施する
STEP1. 1-2で記載した、1号特定技能外国人支援計画を作成、実施する必要があります。 - 出入国在留管理庁への各種届出を行う
契約変更、契約終了などがあった場合に入管に報告します。 - 入管への定期的な報告
四半期に一度、支援責任者が外国人及びその上司と面談します。もし労働基準法に違反等があれば、通報する必要があります。
3-2. 登録支援機関への委託方法
出入国在留管理庁のホームページにて、登録支援機関登録簿が掲載されております。
以下に合わせて、条件に合った支援機関を選ぶことができます。
- 任意的な支援があるか
- 対応可能言語
登録支援機関の選び方について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
STEP4. 雇用条件・給与を決める
STEP1で触れたように、特定技能で外国人を雇用するときは、日本人と同等またはそれ以上の条件で雇用契約を結ぶ必要があります。
4-1. 直接雇用
特定技能とよく混同される技能実習制度では監理団体を通じて外国人を雇用する間接雇用をすることができます。しかし、特定技能は外国人と受け入れ機関(企業)が直接契約を結ぶ直接雇用のみです。
4-2. 待遇
給与・労働条件ともに、同ポジションで雇用をしている日本人従業員等と同等以上の条件である必要があります。
また、外国人であることを理由として、報酬の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、差別的な取扱いをしてはいけないことも定められています。
〈同ポジションで雇用している日本人がいない場合は?〉
- 受入れ機関に労働規定・賃金規定がある場合
規定に基づいて判断します。 - 受入れ機関に労働規定・賃金規定がない場合
特定技能外国人が従事する業務と近い業務等を担う日本人労働者の労働条件・賃金と照らし合わせ、当該日本人労働者の役職や責任の程度を踏まえた上で、特定技能外国人との報酬差が合理的に説明可能か,年齢及び経験年数を比較しても報酬額が妥当かなどを検討して判断します。
STEP5. 求人募集を開始
求人募集を出すときに注意する点は、技能測定試験合格者以外も選考することです。というのも、技能測定試験は年に3回(2021年度は7月、10月、1月)しか行われないため、技能測定試験合格者に絞って選考すると、応募者がかなり少なくなってしまいます。 そこで、おすすめの求人・選考方法を以下に記載します。
以下のような文言で募集をかけることをおすすめします。
- 日本語能力試験(JLPT)N4以上、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2以上を保持・またはそれと同等の日本語力を有し、これらの試験に合格するために勉強できる人
- 技能測定試験(筆記・実技)のために勉強ができる人(試験に合格した人大歓迎)
- 技能実習2号修了者(又は修了予定者)
また、現在留学ビザでアルバイトをしている外国人に、「留学が終わった後も特定技能ビザで継続して働いてみないか」聞いてみるのもおすすめです。特定技能の仕組みを知らない外国人もまだまだ多いです。
技能測定試験の日程は、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構のホームページで公開されています。入社までの残りの試験回数と、合格率50%前後ということを見込んで、多めに採用内定を出すことをおすすめします。
STEP2で解説したとおり、内定を出した外国人を採用するには、外国人に技能測定試験・日本語能力試験(N4以上)に合格してもらう必要があります。試験の申し込み手続きは複雑なので、企業が代理登録をすると、確実に試験を受けてもらうことができます。
※特定技能1号技能測定試験 外食業国内試験 についてはこちら
STEP6. ビザ申請
ビザ申請は、当該外国人が日本在住の場合と、海外在住の場合で手続きが異なりますので、分けて説明します。
とはいっても、ビザ申請も外国人の支援同様、必要書類が多く、手続きが難しいため、登録支援機関や行政書士などの第三者に任せる方が多く、弊社もそうすることをおすすめしています。
もちろん自社で申請することもできるため、その場合の必要書類などを以下に記載しております。
6-1. 日本国内に在留している外国人を採用する場合
在留資格変更許可申請を地方出入国在留管理局へ行います。原則外国人本人による申請のみ受け付けていますが、地方局長に申請等取次者として承認を受けた場合のみ、企業からの取次ぎが可能です。
申請等取次者の申請方法
地方出入国在留管理局で申請等取次の申出を行ってください。申出は、地方出入国在留管理局及び管下出張所の窓口または郵送にて受け付けています。
必要書類は以下の通りです。
- 申請等取次申出に係る提出書類一覧・確認表
- 申請等取次申出書(第1号様式)
- 承認を受けようとする者の写真(3.0㎝×2.4㎝)2葉
- 承認を受けようとする者の経歴書及び在職証明書
- 在留カードの写し(申請する人が外国人の場合)
- 入国・在留手続に関する知識を有していることの疎明資料
- 出入国管理行政に関する研修会等の受講(修了)証明書を提出する場合は、原則発行から3年以内のものを提出してください。
- 登記事項証明書(法人の場合(登記事項証明書が提出できない場合は、会社等の概要が記され たパンフレット等))又は住民票の写し(個人の場合)
- 本人確認資料の写し(本邦の公的機関が発行した身分証明書、健康保険証、住民票(外国人の場合は在留カード、特別永住者証明書)の写し)※郵送の場合のみ
- 返信用封筒(定型封筒に宛先を明記の上、404円分の郵便切手(簡易書留用)を貼付したもの)※郵送の場合のみ
在留資格変更許可申請方法
〈必要書類など〉
以下、在留資格に関わらず共通
- 手数料4000円(収入印紙で納付)手数料納付書
- 在留資格変更許可申請書(1通)
- 申請人名簿(申請取次者を介して、複数の申請人について同時申請する場合)
- 写真 1葉
以下、在留資格「特定技能」に変更する場合に提出
- 申請人のパスポート及び在留カード(提示)
- 申請人に関する必要書類 「特定技能1号」に係る提出書類一覧表
- 所属機関に関する必要書類
- 分野に関する必要書類(外食)外食業分野に関する必要な書類
以上の書類を持参のうえ、各地域の出入国管理局へ提出してください。
6-2. 海外から来る外国人を採用する場合
在留資格認定証明書交付申請を地方出入国在留管理局へ行う必要がありますが、これも6-1と同様、地方局長に申請等取次者として承認を受けた場合のみ、企業からの取次ぎが可能です。 在留資格認定証明書を受領できたら、海外にいる外国人に送付し、外国人本人が在外公館で査証(ビザ)申請をします。
STEP7. 入社
7-1.入社前に行うこと
事前ガイダンス
特定技能外国人へ義務付けられている支援の一つです。
雇用契約を締結した後、かつ、在留資格に関する申請をする前に行います。
内容は主に下記の4点です。
- 労働条件|給与や勤務時間などの労働条件について説明する。
- 活動内容|特定技能1号で定められている活動内容について説明する。
- 入国手続き|入国のために必要な手続きを説明する。
- 保証金徴収の有無|特定技能の履行に関する保証金を結んでいないかどうか確認する。
※当該外国人が理解できる言語で行う必要があります。
生活オリエンテーション
こちらも、特定技能外国人へ義務付けられている支援の一つです。
約8時間分のオリエンテーションが必要です。日本のルールやマナー、公共機関の利用法や連絡先、災害時の対応等について、円滑に社会生活を営めるように説明します。
※当該外国人が理解できる言語で行う必要があります。
7-2. 入社後継続して行うこと
入社後継続して行わなければいけないのは、省令で定められた外国人の定期的な支援です。詳しくは「STEP1. 企業の要件を確認」を参考にしてください。
主だった項目は3か月に一度の定期面談と、入管への報告です。また、特定技能は1年ごとのビザ更新になることも覚えておく必要があります。 また、受け入れ企業の義務として以下の事項も随時行う必要があります。(支援機関に委託している場合は支援機関が行います。)
よくある質問
- 外国人が日本語試験・技能測定試験に合格する前に、雇用契約を結ぶことはできますか?
-
外国人が日本語試験・技能測定試験に合格する前に、雇用契約を結ぶことはできません。しかし、各試験の合格前に内定を出すことは問題ありません。特定技能雇用契約を締結した上で,受験することもできますが、各試験に合格しなければ,受入れが認められないことに留意してください。
- 受け入れ機関等による事前ガイダンス・健康診断・生活オリエンテーションはいつ行う必要がありますか?
-
事前ガイダンス・健康診断は雇用契約締結後に行ってください。外国人本人の理解できる言語で行います。生活オリエンテーションは、特定技能ビザの活動許可後から行うことができますので、勤務開始後に速やかに行ってください。
- 特定技能外国人を雇用したいと考えていますが,どのように求人すればよいですか。
-
国内外の職業紹介機関を活用する企業が多いです。国内の募集であればハローワークを通じて採用することも可能ですし、外国人採用に特化した職業紹介サイトなどに掲載することもできます。
最後に
特定技能「外食」で外国人を採用するイメージはつきましたでしょうか。特定技能ビザで外国人を採用するためには義務的支援が必須あったり、ビザの手続きが煩雑であったり、最初はハードルが高いかもしれません。しかし、複雑な手続きは支援機関など外部に委託することもできますし、特定技能「外食」で外国人を採用することは、それ以上の大きなメリットがあります。
人手不足を解消し、さらに外国人観光客にも対応できるグローバルな飲食店として成長するためにも、特定技能「外食」での採用をご検討ください。当スクールでは特定技能外国人の採用に関するご相談を承っていますので、特定技能で外国人を採用したい方や具体的な採用方法について知りたい方はお気軽にご相談ください。