特定技能「介護」と他の在留資格を比較!資格取得の条件・採用の流れまで徹底解説
介護スタッフの人手不足を解消するため、外国人採用を考えていませんか。外国人の介護スタッフを採用するには、在留資格を取得してもらう必要があります。
介護分野では「特定技能」「技能実習」「介護ビザ」「EPA介護福祉士候補者」の4つの在留資格があります。そのため他の在留資格と比較して、検討することが重要です。この記事では、各在留資格との比較や、特定技能「介護」をおすすめする理由について解説しました。
実際に外国人の介護スタッフを受け入れるために、ビザ取得の条件や採用の流れも紹介しています。ぜひお役立てください。
3分で分かる!採用までの流れを簡単解説
外国人を採用する前に必要な事とは?そもそも在留資格とは?など外国人を採用する際に気になることを分かりやすく解説
1.特定技能「介護」の特徴
介護分野で外国人を採用するとき、どちらの在留資格で受け入れるべきか迷うでしょう。ここでは特定技能「介護」の特徴について紹介します。
1-1.特定技能「介護」とは
在留資格「特定技能」は、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れるために2018年に新設されました。生産性向上や国内人材確保の取り組みをしても、人材確保が難しい産業分野が対象です。
令和6年4月から5年間における各特定産業分野の受け入れ見込み人数は「製造業」「飲食料品製造業」に続いて、介護分野が3番目(12の分野の中)に多い13万5,000人でした(出入国管理庁が発表)。上位3分野のみ受け入れ見込みが「10万人」を超えており、外国人の採用が急務であると示しています。
介護分野での外国人採用は、2017年から可能でした。しかし既存の在留資格「介護」と「特定活動(EPA)」は母数が少なく、「技能実習」は介護の知識が何もない外国人を育成しなければなりません。
介護分野での外国人採用数は伸び悩んでおり、2018年に新たに「特定技能(介護)」ビザが導入され、外国人の採用が可能になりました。
※参考:厚生労働省「介護人材確保に向けた取り組み」
在留資格「特定技能」について
1-2.受け入れ見込み人数
厚生労働省は、国内における特定技能「介護」の受け入れ見込み人数について以下のように発表しました(特定技能制度の受け入れ見込数の再設定「令和6年3月29日閣議決定」)。
※参考:参考資料(特定技能制度の受入れ見込数の再設定等について)|厚生労働省
介護分野では、令和7年には35万人の人手不足が見込まれます。令和6年3月までは、人材確保のために特定技能「介護」資格で、上限5万1,000人を受け入れる方針でした。
しかし介護業界における人材不足が深刻化するなか、関係閣僚会議決定・閣議決定。上限13万5000人とする2倍以上の増加が見込まれています。
なお令和6年6月末時点で、実際に受け入れている特定技能「介護」の人数は約3万6,000人です。
※参考:特定技能制度運用状況(令和6年6月末)(PDF : 944KB)|出入国在留管理庁
【H3】1-3.任せられる業務内容
外国人を特定技能「介護」で受け入れ可能な業務内容は以下の通りです。
1-4.【最新】訪問介護も従事可能に!
厚生労働省によると、特定技能「介護」でも「訪問介護サービス」に従事できるようになります。2024年3月22日に厚生労働省の有識者検討会にて実施の方針を示し、2025年度の開始を見込んでいます。※議事録[PDF形式:339KB]
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2.介護職で採用できる在留資格3つを比較
外国人介護職員を採用しようと思ったときに、大きな障壁となるのが、介護職で採用できる在留資格が複数あることです。現在では特定技能「介護」のほか、在留資格「介護」、EPA介護福祉候補者、技能実習生の3つの在留資格があります。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
EPA | 基礎知識がある 日本語研修6か月受講した人材を採用できる | 母数が少ない 4年目に介護福祉士の試験に合格しなければならず、そのための研修や教育が必要 |
介護 ビザ | 国籍に制限がない 唯一、訪問介護の従事が可能 知識や技術レベルが高い 長期雇用や転職者の確保も可能 | 即戦力人材のため探すのが困難 人材紹介会社を経由した場合、紹介料が高額になりやすい |
技能 実習 | 10年の雇用が可能 (技能実習2号を終えていれば無試験で特定技能1号に移行可能なため2つを合わせた場合) | 実技試験や学科試験に合格しないと継続ができない |
特定 技能 | 母数が増えている 転職可能で比較的確保しやすい | 介護福祉士試験に合格しなければ、5年で帰国 |
2-1.EPA(介護福祉士候補者)
EPAは、インドネシア、フィリピン、ベトナムの3か国の二国間経済連携強化のために作られました。日本での介護福祉士の資格取得を目標に、4年間日本で働ける在留資格です。
母国で看護系の学校を卒業したか、介護福祉士の資格を持っている外国人が取得できます。そのため在留資格「介護」に次いで技能が高いといえます。
一方で、3か国からしか外国人を募集できないため母数は少なめです。またフィリピン・インドネシアは「日本語能力試験N5程度」が基準で、十分にコミュニケーションを取れるとは限りません。
2-2.在留資格「介護」
他の在留資格とは異なり、唯一、介護福祉士の資格を持った外国人を採用できるため、即戦力になるのがメリットです。他の在留資格だとできない訪問系介護サービスの業務にも従事できます。
ただし介護福祉士試験に合格できる外国人は少なく、2022年末で1,000人以下です。同じ時期の特定技能「介護」(約1万6,000人)の10分の1以下の人数しかいません。
2-3.技能実習
本国への技能移転を目的とした在留資格です。発展途上国から人材を受け入れて、日本で介護の技能を習得してもらい、母国で活かしてもらうために始まりました。
技能実習生は採用人数も最も多く、成熟してきた制度です。しかし技能実習生には制約が多く、受け入れ先の介護施設とのトラブルが起き、問題視する声もありました。
不当な就労環境に置かれた外国人の失踪が相次ぎ、制度の廃止と新制度への移行が報告されています。
名称を「育成就労制度」に変更して、在留期間を最長5年から3年に短縮。技能を習得した外国人に対しては、「特定技能ビザ」への移行や他企業への「移籍」に関する条件も見直されています。※2027年に新制度開始予定
3.特定技能「介護」がおすすめな理由
特定技能の一番のメリットといえるのが、人材を見つかりやすいことです。他の在留資格は母数が少なく、人材を見つけづらいといえます。特定技能は、現在コロナによる規制の緩和もあり急激に増えています。
以下は、短期間での増加が顕著に現れている図です。
※参考:特定技能制度運用状況(令和6年6月末)(PDF : 944KB)|出入国在留管理庁
特定技能「介護」を取得するには技能実習からの移行か日本語試験、介護日本語試験、介護技能試験を取得する必要があります。日本語レベルは、N4以上(日常会話が可能なレベル)です。簡単な業務連絡やコミュニケーションが取りやすい外国人を採用すれば、早く仕事に慣れてもらえます。
特定技能の場合、他の在留資格に比べてイニシャルコストとランニングコストともに安く抑えられる傾向があります。「人手は必要だけど、費用をそんなにかけられない」という企業は、特定技能「介護」の採用がおすすめです。
4.特定技能「介護」の取得と条件(外国人側)
特定技能「介護」の試験では、技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。
4-1.特定技能「介護」の試験
特定技能「介護」として働くために、技能を証明する試験3つに合格しなければなりません。
- 介護技能評価試験
- 国際交流基金日本語基礎テストA2以上(または日本語能力試験N4以上)
- 介護日本語評価試験
4-2.試験が免除される条件
特定技能「介護」では、外国人が現在持っている在留資格(ビザ)の種類によっては、上記の試験が免除されます。
技能実習2号を良好に修了した
介護分野の技能実習2号を良好に修了した場合、「介護技能評価試験」と「日本語能力試験」が免除に。そのため、特定技能「介護」にすばやく移行できます。
なお良好に修了したとなるのは、技能実習2年10か月以上を終えているのが条件です。加えて、以下のうちいずれかに該当していなければなりません。
- 技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験に合格している
- 技能実習生に関する評価調書がある
EPA介護福祉士候補者として4年間の在留期間を満了
EPA介護福祉士候補者が「介護福祉士国家試験」に合格すると、在留資格「介護」に移行できます。また試験の結果通知にて、合格基準点の5割以上得点があり、すべての試験科目にも得点があると試験免除の対象です。
介護福祉士養成施設を修了した
介護福祉士養成施設を修了した人は、試験が免除されます。
4-3.在留資格「介護」へ移行する場合
一定数の特定技能外国人は、いずれ介護福祉士の資格を取得してのち在留資格「介護」に移行して、日本に永住することを望んでいます。
特定技能の5年の間に介護福祉士の資格を取れば、在留資格「介護」に移行できます。介護福祉士試験を受けるためには介護の実務経験が3年必要なので、特定技能外国人は4~5年の間で試験を受け、移行することが多いです。
5.特定技能「介護」の条件(介護施設側)
特定技能で外国人を受け入れる場合、施設側の条件を満たす必要があります。具体的にいうと、適切な雇用契約の締結や支援体制の整備などです。
また施設内リソースのみで外国人採用を進める場合、以下の条件も加わります。
<特定技能外国人採用の企業条件>
- 過去2年以内に外国人労働者の雇用または管理をした実績があること
- 過去2年以内に外国人労働者の⽣活相談等をしたことのある社員のなかから支援責任者や支援担当者を任命していること
- 外国人が十分理解できる言語(基本母国語対応)で支援を実施することができる体制を確保していること
- 支援状況に関する書類を作成し、雇用契約終了日から1年以上保管すること
- 支援責任者⼜は支援担当者が、支援計画の中立な立場で実施を行うことができ、かつ、欠格事由に該当しない者であること
- 5年以内に支援計画に基づく支援を怠ったことがないこと
登録支援機関に委託すれば、スムーズに外国人採用が進められます。
施設内の支援状況に合わせて上手に登録支援機関に委託をするようにしましょう。
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6.特定技能「介護」で採用する流れ
以下では、大まかな採用の流れをまとめました。
※画像出典:介護現場でフィリピン人を採用!必要なビザと採用の流れ、問題を防ぐ注意点
特定技能外国人を採用する具体的なステップについては、以下記事で詳しく解説してました。
7.特定技能「介護」の必要書類
特定技能「介護」では、以下の書類が必要です。
<外国人側が用意する必要書類> ※状況に応じて異なる
書類の種類 | |
介護福祉士養成施設修了した外国人 | 介護福祉士養成施設の卒業証明書の写し |
在留期間を満了した外国人(4年間) | EPA介護福祉士候補者として 直近の介護福祉士国家試験の結果通知書の写し |
(2年10か月以上) | 技能実習2号良好に修了した外国人 次のいずれか ・介護技能実習評価試験(専門級)の実技試験の合格証明書の写し ・技能実習生に関する評価調書 |
上記のいずれにも該当しない外国人 | 介護技能評価試験の合格証明書の写し |
介護日本語評価試験の合格証明書の写し | |
次のいずれか ・日本語能力試験(N4以上)の合格証明書の写し ・国際交流基金日本語基礎テストの合格証明書(判定結果通知書)の写し |
<介護施設が用意する必要書類>
受入れに関する誓約書 | 介護分野における特定技能外国人の分野参考様式 第1-1号 |
事業所の概要書 | 介護分野における業務を行わせる分野参考様式 第1-2号 |
協議会の構成員であることの証明書 | 手続きの完了後、申請システムからダウンロードする |
詳しくは法務省のホームページにてご覧いただけます。
<施設内のみで外国人を支援するときの必要書類>
- 支援計画の変更に係る届出書(参考様式第3-2号)
- 新しい支援計画書(参考様式第1-17)
- 特定技能所属機関による支援委託契約に係る届出(参考様式3-3-2)
- 特定技能所属機関概要書(参考様式第1-11号)
- 企業の組織図(必須ではない)
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8.特定技能「介護」注意点
特定技能「介護」では、特有の注意点があります。
8-1.対象施設に制限がある
特定技能「介護」で受け入れができるのは、「介護福祉士国家試験の受験資格要件において介護の実務経験として認められている施設」です。
8-2.事業所の受け入れに上限がある
特定技能「介護」における外国人の受け入れ人数は、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限です。
※参考:特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針(分野別運用方針)|厚生労働省
8-3.特定技能協議会への加入
令和6年6月15日以降、在留申請前に介護分野の「特定技能協議会」への加入が必須となります。協議会では、制度や情報の周知、法令遵守の啓発、各地域の実態把握・対応をしている状況です。
介護施設は、特定技能「介護」で外国人を受け入れたあと、4か月以内に協議会の構成員になっている必要があります。
入会方法は、協議会申請システムを利用した「オンライン手続き」です。協議会申請システムの操作方法は、厚生労働省のホームページで解説されているので参考にしてみてください。
※参考:介護分野における特定技能協議会|厚生労働省
9.まとめ
要介護者が増加する一方、国内で介護職を希望する人材が減っている日本において、外国人介護職員は今後欠かせない存在となります。まだ外国人介護職員を採用したことがない施設であっても、今後外国人介護職員を採用する必要がある可能性は高いです。
一方で、ビザの種類が複数あり、手続きが煩雑な外国人採用に踏み切れない施設も多いかと思います。そのため、外国人介護職員を採用する際は、知識や経験豊富な外国人雇用のプロに相談することをおすすめします。
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