障害者施設で外国人を雇用する方法|メリットと課題、注意点まで解説

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

「障害者施設でも外国人を雇用できるのだろうか」と疑問に思ったことのある施設の人事担当者はいるのではないでしょうか。

結論から言うと、障害者施設でも外国人を雇用できます。雇用する際の在留資格は「技能実習」「特定技能『介護』」「EPA(特定活動)」です。

この記事では障害者施設で外国人を雇用する方法、メリット、課題をわかりやすく紹介します。
人手不足を解消するために障害者施設でも外国人採用を始めたい人事担当者の方はぜひ最後までお読みください。

3分で分かる!採用までの流れを簡単解説

外国人を採用する前に必要な事とは?そもそも在留資格とは?など外国人を採用する際に気になることを分かりやすく解説

目次

1. 障害者施設で外国人を採用するメリットと課題

障害者施設で外国人を採用するメリットと課題は以下の通りです。

メリット△課題点
高い意識と介護スキルを持つ人材
人手不足の解消につながる

施設の多様性が向上する
偏った見方をする外国人もいる

文化の理解が必要となる

それぞれ詳しく説明します。

1-1. 採用のメリット

高い意識と介護意識を持つ人材

「特定技能『介護』」、「EPA(特定活動)」などの在留資格を持つ外国人は介護施設で働いているイメージがあるかもしれませんが、実はこれらの在留資格で働ける施設に障害者施設も入っています

分野参考様式第1-2号  介護分野における業務を行わせる事業所の概要書」と「別紙8 施設種別コード表」を参考にしてください。

「特定技能『介護』」、「EPA(特定活動)」の在留資格を得るためには、知識・技能要件があります。そのため、知識と経験を十分に持った外国人を採用することができます。

日本で介護系の資格を持って働く外国人は、国で介護に従事したことがあり、日本で働きながら経験をさらに積んで、介護福祉士の国家資格を得たいと考えている人が多いです。そのため、現場の業務からも積極的に知識や技能を吸収しようとしています。

慣れない言語や習慣のある日本でも、笑顔を絶やさずに真面目に働くため、入居者からも評判がいい場合が多いです。

📍特定技能「介護」で外国人を採用した施設のインタビュー記事もぜひ参考にしてください。

人手不足の解消につながる

障害者支援団体の「きょうされん」は2023年に障害のある人に介護や自立訓練などのサービスを提供する事業所への実態調査を実施しました。その結果、それらの事業所では正規職員の充足率が5割ほどだと明らかになりました。

原因は低賃金と重労働だと言われていますが、人手不足のせいで、送迎の打ち切りや、入浴の回数を減らすなど、サービスを提供できない事業所も増えています。

一方で、特定技能「介護」や、「EPA(特定活動)」で働く外国人の人数は増加しています。

まだ人手が足りている施設も、日本人だけでサービスの提供が回らなくなる前に外国人採用を始めることで、将来の人手不足を防げるでしょう。

施設の多様性が向上する

外国人を採用すると、日本人にとっては当たり前のことが、外国人にとっては全く新しいことである場合があります。逆に外国人にとって当たり前の習慣・文化が日本人にとっては新鮮で、いい影響を与えることも多いです。
多様な価値観や文化に触れることで、施設をよりよく変えていく可能性が見つかります。

1-2.課題点

偏った見方をする

障害者に対する価値観は国によって異なります。
特定技能やEPAに多い東南アジアの国でも、障害のある人の権利を保障し差別を撤廃する法律がありますが、個人レベルでは障害者に対する偏った見方をする人もいます。

面接で障害者介護についてどう考えているか、障害者施設で働くことへの心構え等を聞くことで、障害者への差別的な見方をしない人を採用する必要があります。

文化の理解が必要になる

外国人従業員の母国の文化・習慣は新鮮でいい影響を施設に与える一方で、外国人従業員と日本人従業員、さらには外国人従業員と施設の利用者の間で、文化理解が不十分でトラブルに発展することがあります。

外国人を採用するときには、日本の習慣や働き方の研修が必要不可欠です。外国人の母国の習慣と比較すると分かりやすくなります。

さらに日本人従業員も新たに採用される外国人の母国の習慣を知っておかなければなりません。お互いの不可解な言動の裏には文化・習慣の違いがあることを、日本人外国人双方が自覚しておくといいでしょう。

外国人への理解が雇用成功の秘訣?

外国人と働くうえでの心構えや国籍別の特徴など、外国人を採用
するなら知っておきたい内容を分かりやすくまとめています

\ 外国人の理解は定着率につながる /

[出典:法務省「特定技能ガイドブック」]
[出典:厚生労働省「インドネシア、フィリピン及びベトナムからの外国人看護師・介護福祉士候補者の受入れについて」]
[出典:東京新聞「障害者施設の『存続の危機』深刻な職員不足で入浴や送迎を削るケースも…『単なるサービスではないのに』」]

2.  課題解決のための受け入れサポートと職場環境作り

文化や習慣が違う異国で働く外国人従業員をサポートするために、施設でできることを「研修・教育制度」、「職場の雰囲気作り」、「福利厚生」の3つの観点から紹介します。

2-1.研修・教育制度

初めて日本で働く外国人も少なくないため、研修制度が充実していることは外国人従業員にとって非常に魅力的に感じられるそうです。

新人・中堅・管理職、それぞれの立場の研修がありますが、外国人従業員にとってはまず初任者研修が整っていることが非常に大切です

特に「障害者福祉とは」、「知的障害者とは」など、基本的な障害者介護の知識から確認することが必要です。

同時に障害者介護でよく使う専門的な日本語を勉強できる機会を提供することも重要となるでしょう。

2-2.職場の雰囲気

外国人従業員を採用する前に、職場全体で外国人を受け入れる雰囲気を作ることは非常に重要です。新たな外国人従業員の母国の文化・習慣を事前に調べて、理解を深めておきましょう。

施設の利用者も外国人が働いていると驚いて、じろじろ見てしまうかもしれません。じろじろ見られると外国人従業員も働きにくさを感じてしまうので、日本人従業員と同じように自然に溶け込めるようにする必要があります。

仕事関連の話題だけでなく、雑談を外国人従業員と日本人従業員の間で積極的にすることで、気軽に話せる関係を構築できます。

2-3.給料や福利厚生制度の充実

契約内容を確認するとき、給料は額面だけでなく手取りを確認するようにしてください。どんなお金がいくら引かれたのか分からないと、従業員の不満につながる可能性があります。

また、日本で働く外国人は日本企業の福利厚生制度に魅力を感じている人が多いです。他社にはない独自の福利厚生があると、大きなアピールポイントになります。

📍法定福利厚生

  • 健康保険
  • 厚生年金保険
  • 雇用保険
  • 介護保険
  • 労災保険
  • 子ども・子育て拠出金

📍法定外福利厚生(主な例)

  • 住宅補助金
  • 慶弔・災害関連
  • 通勤手当
  • 食事補助代
  • 子育てや介護に関する福利厚生
  • 余暇やレクリエーションに関する福利厚生

2-4.職員への手厚いケア

外国人従業員は日本人に比べて疑問に思うことが多いです。特に初めて日本で働く外国人の場合は、仕事内容だけでなく、日本式の働き方や習慣にとまどうことも多いでしょう。

外国人がどうしてそのような質問をしたのか、外国人の文化背景を考えながら質問に答えることを心がけると、分かりやすく説明ができるようになります。

3.  必要となる資格

外国人が障害者施設で働く場合は、介護系の資格、又は在留資格が必要となります。ここでは3つの在留資格を紹介します。

  1. 技能実習
  2. 特定技能「介護」
  3. EPA

3-1.技能実習

日本から途上国への技能移転を目的とした在留資格です。技能実習生は最長5年同じ施設で働くことができます。成熟してきた制度で、採用人数が最も多いため、採用のノウハウを知っている企業が多い制度です。

一方で、仕事上の制約が多く、受け入れ先の施設とのトラブルが起きやすいです。

3-2.特定技能「介護」

特定技能制度は、特に人手不足が深刻な産業で就労できる外国人を採用する制度です。特定技能制度の中でも、介護は4番目に多くの外国人を受け入れています。

📍特定技能「介護」についてはこちらも参考にしてください。

受け入れ可能な業務は「身体介護等」「支援業務」です。さらに2024年6月の有識者検討会で訪問介護」のサービスにも特定技能外国人が従事できるようになることが決定しました

日本の産業の人材不足を解消するために始まった制度であるため、比較的業務内容などの制限が少ない点がメリットです。

外国人が特定技能制度で日本で就労するための要件は以下の通りです。

  • 基本的な日本語能力の要件(日本語能力試験N4以上)
  • 介護日本語能力試験に合格(介護に特化した日本語表現やコミュニケーション能力が問われる)
  • 介護技能試験に合格

これらの要件は技能実習2号を良好に修了していれば免除になります。

特定技能外国人は日本語要件・技能要件ともに試験で判断されるため、一定の日本語力、知識を持つ外国人を採用できることが大きなメリットです。

3-3.EPA

EPA(経済連携協定)に基づき、日本の介護施設で研修と就労をしながら、日本の介護福祉士取得を目指す外国人を「EPA介護福祉士候補者」と言います。

現在はインドネシア、ベトナム、フィリピンの3か国との間で行われています。

EPAで日本に滞在する外国人は、最長4年間日本で働くことができます。

母国で看護系の学校を卒業したか、介護福祉士の資格を持っている外国人がEPA介護福祉士候補者となれるため、能力が高い人が多いです。

4.  雇用するうえでの注意点

採用した外国人と日本人従業員との間で起きやすいトラブルとその対処法について、3つのポイントから説明します。

  • 日本語のトラブル
  • 労働時間の問題
  • 生活習慣の違い

4-1.日本語のトラブル

障害者施設で就労を始める外国人は、特定技能「介護」の場合は日本語能力N4程度、EPAの場合は日本語能力試験N3程度の日本語力を持っています。

JLPT N4基本的な日本語を理解することができる
読む 基本的な語彙や漢字を使って書かれたに非常生活の中でも身近な話題の文章を、
      読んで理解することができる。  
聞く 日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
JLPT N3日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる
読む 日常的な話題について書かれた具体的な内容を表す文章を、読んで理解すること
ができる  
聞く 日常的な場面で、やや自然に近いスピードのまとまりのある会話を聞いて、話の
具体的な内容を登場人物の関係などとあわせてほぼ理解できる。

しかし、日本語能力試験は「読む」、「聞く」の能力しか測れないため、会話力は実際に話してみないと分かりません。

JLPT N3以下であれば、なるべく長文は短く切って、ゆっくり話すことで伝わる場合が多いです。

また、外国人従業員には「分からないときには、『分からない』と必ず伝える。」ということを徹底させることをおすすめします。分かっていないのに「わかりました。」と言うことが多いためです。本当にわかっているかは、相手に内容を説明してもらうことで確認することができます。

4-2.労働時間の問題

外国人労働者の労働環境の悪さが度々ニュースで取り上げられることがありますが、外国人従業員と受け入れ施設との間で問題となりやすいのが労働時間についてです。

労働基準法では法定労働時間について「休憩時間を除き、1日8時間、1週間で40時間」と定められています。夜勤がある場合でも同様です。

障害者施設では夜勤があるため、雇用契約を結ぶ時点で外国人本人と受け入れ施設の間で契約内容の理解にすれ違いがないようにしなければなりません。雇用契約は日本語だけでなく、外国人従業員の母国語でも作成するようにしましょう。

4-3.生活習慣の違い

生活習慣の違いは職場には持ち込まれないと思われることも多いですが、実は日本人と外国人の生活習慣の違いは業務にも影響を及ぼす場合があります。

例えば入浴・洗髪頻度です。日本人の多くは毎日お風呂に入り髪を洗いますが、東南アジアの国では毎日シャワーを浴びても、髪を洗うのは週に3~4回という人もいます。

その分、独特のにおいのする香水をする場合があります。外国の香水のにおいは、人によっては不快に感じてしまいます。障害者施設で働く場合、外国人従業員に気を付けてもらわなければなりません。

掃除の仕方も、障害者施設で働く場合はやり方を確認したほうがいいです。気候が違えば掃除の仕方や頻度が異なるためです

5.  まとめ

今後も人手不足が続くと予想される障害者施設で、外国人従業員を採用してみるのはいかがでしょうか。

特に「特定技能外国人」は現在人数も増えており、日本語・介護の知識ともに一定のレベルを持つ外国人を採用することができます。

当スクールでは、現在までに1,500人以上の外国人を紹介してきました。

外国人採用に興味のある障害者施設の人事担当者様はぜひ一度お問い合わせください。

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この記事を書いた人

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