外国人労働者受け入れ研修|内容・注意点などをわかりやすく解説
監修者:趙(外国人就労アドバイザー)
「外国人社員が入社したものの、どのように教育すれば良いのか?」と悩んでいる方は多いのではないでしょうか。
また、「せっかく外国人社員を採用したのに、入社後活気がなくなり、1年未満で退職してしまった」とがっかりされている方も少なくないと思います。
そこで、本記事では、「外国人労働者受け入れ研修」の方法・注意点を解説していきます。外国人社員の定着率の向上や戦力化の参考になれば幸いです。
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1.日本の外国人労働事情
本章では、日本における外国人労働者の基本状況をご紹介し、また、その雇用をめぐる問題点をご説明します。
1-1.概要
グローバル化の進展と超高齢化社会の形成・人手不足の深刻化は相まって、日本政府・企業は外国人材の活用に積極的になり、日本において外国人労働者が逐年増加しています。
2022年10月現在、日本での外国人労働者数は1,822,725人で、前年比で95,504人増加し、過去最高を更新しました。労働者の中で最も多いのはベトナム人ですが、中国人、フィリピン人、ブラジル人も多いです。
また、外国人労働者を受け入れた事業所も総298,790所となり、前年比で13,710所増加し、同じく過去最高を更新しました。但し、最も多いのは、「30人未満」の中小規模の事業所です。
図1-1 国籍別外国人の割合
図1-2 事業所規模別外国人雇用事業所の割合
参考:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)
1-2.外国人労働者雇用の問題
ところが、外国人労働者の人数、それを受け入れた事業所数が増加している反面、外国人労働者の離職率は高いです。約20年前に厚生労働省が発表した「外国人雇用状況報告」では、過去1年間の外国人労働者の離職率が45.9%まで登りました。それ以降でも、外国人労働者の離職率は、基本的に日本人労働者よりも10%~20%高くなっています。
参考:厚生労働省|外国人雇用状況報告結果(平成13年6月1日現在)
離職しなくても、多くの外国人労働者は入職後、モチベーションダウンを経験し、企業とトラブルが発生するものもいます。2020年に佐賀労働局がまとめた「外国人労働局をめぐる現状と課題」では、「外国人労働者数・外国人雇用事業所数は過去最高を記録し続けているが、外国人労働者は(中略)労働条件等のトラブル等が生じやすい」と明記しているのです。
図1-3 佐賀県がまとめた外国人雇用の課題と対策
どのように外国人労働者の生産性と定着率を高めるべきでしょうか。外国人労働者受け入れ研修は、その重要かつ有効な手段の一つです。次章から、外国人労働者受け入れ研修のメリット、及び具体的な内容・行い方をご解説します。
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2.外国人労働者受け入れ研修のメリット
本章では、外国人労働者受け入れ研修のメリットをお伝えします。大きく言えば、以下の3点のメリットがあげられます。
- マナー・知識・スキルの習得と戦力化の促進
- トラブルの防止と定着率の向上
- 職場内のイノベーションの促進
以下、詳しくご説明します。
2-1.マナー・知識・スキルの習得と戦力化の促進
外国人労働者受け入れ研修の基本的なメリットは、外国人労働者に社会人としてのマナー及び仕事に必要な知識・スキルを身につけさせる、ということです。
新卒者は勿論、社会人の経験をもった外国人労働者でも、必ずしも日本の社会人としてのマナー、及び仕事に必要な知識・スキルを十分に把握しておりません。日本のマナーや仕事の作法には日本独自のものが多く(たとえば上座・下座)、外国人労働者の母国の常識と真逆したものも少なくないからです。
研修によって、外国人労働者は確実に日本社会のマナーを勉強し、仕事に必要な知識・スキルを把握できます。研修は、外国人の戦力化を促進します。
2-2.トラブルの防止と定着率の向上
言語の壁もあり、外国人労働者は仕事内容や労働環境に不明点・不平不満があっても自分の意見を言い表すことができず、また、日本人社員と十分にコミュニケーションをとれないことが多いです。
そのため、外国人労働者は同僚・企業とトラブルが起こりやすく、最悪の場合、短期退職してしまいます。弊社が経験した例を一つあげれば、ある外国人労働者は、社宅を利用し、ほかの2名の社員と1部屋で住んでいました。ところが、この労働者は、夏にエアコンをつけると、鼻詰まりや頭痛になりました。労働者は1人用の部屋の用意を企業に依頼しようとしたが、日本語能力の問題でうまく意見を担当者に伝えることができませんでした。結局、労働者は約1か月の後、退職してしまいました。
そこで研修を通じて外国人労働者は系統的に仕事内容・社風を理解し、日本人社員と話し合うチャンスも得ます。その結果、外国人労働者は同僚との関係が円滑になり、企業に対する信頼も高まります。労働者は落ち着いて企業で努力することができます。
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2-3.職場内のイノベーションの促進
さらに、外国人労働者受け入れ研修は、職場にいい刺激を与えられます。
外国人労働者は日本人社員と違った価値観・習慣をもっています(既述)。そのため、彼らは研修の中で、これまで「当たり前」とされてきたことの問題点を指摘し、また新しいアイデアを提示することができます。研修は、職場内のイノベーションを促進します。
3.外国人労働者受け入れ研修の内容・方法
それでは、外国人労働者受け入れ研修をどのように行うべきでしょうか。以下、研修の具体的な内容・方法をご解説します。
3-1.研修の内容
研究の主な内容として、以下の4つがあげられます。
- 企業のミッション・ビション
- 日本の法律制度、社会人としてのマナー
- 社内規則、労働条件
- ビジネスマナー、担当業務の知識・技術
以下、そのそれぞれをご解説します。
企業のミッション・ビジョン
研修においてまず外国人労働者に伝えるべきなのは、企業の価値観及び将来の目標です。
自分が担った仕事の意義・価値及び自分の企業における将来性が分かれば、外国人労働者はモチベーションを高め、主体性を持って仕事に精進できます。さらに、企業の価値観に沿い、新しいアイデアを積極的に出してくれる可能性があります。
日本の法律制度、社会人としてのマナー
また、研修において外国人労働者に日本の法律制度、社会人としてのマナーを伝えたほうがよいです。「これは常識でわざわざ言わなくてもいいのではないか」と思われるかもしれませんが、既述のように、外国人労働者は必ずしもこれを十分に把握していません。
具体的にいえば、外国人労働者にビザ変更・更新の制度、住民税・保険・年金などの税制度、時間厳守や相手への配慮の意識など、日本での滞在及び生活・仕事全般と密接な繋がりを有する法律制度、マナーを伝えるべきです。
この部分の研修は内容が多岐にわたります。企業は自らそれを行いにくい場合、職業紹介事業者や社会教育事業者に委託しましょう(後述)。
社内規則、労働条件
なお、就業規則、賃金規定などの社内規則の解説、及びそれをふまえる労働条件の解説も、外国人労働者受け入れ研究に組み入れられるべき内容です。外国人労働者は、異郷で身を守るため、日本人社員より何倍も社内規則、労働条件に注意しているからです。辞書を引きながら、社内規則と自分の労働条件通知書を細かく読み比べる労働者は少なくないです(筆者も以前、このようなことをしたことがあります)。
解説は、外国人労働者の母国語で行われたほうが良いです。母国語で社内規則、労働条件を労働者に丁寧に解説してあげると、労働者の企業に対する信頼が高まり、トラブルも予防できます。労働者は企業で安心して仕事することができます。
ビジネスマナー、担当業務の知識・技術
最後に、ビジネスマナー及び外国人労働者に担当してもらう業務の知識・技術は、研修の必要不可欠な内容です。これらの内容は3-1-2と同じく、日本人社員にとっては常識である部分でも、外国人労働者にとっては必ずしも常識ではありません。
したがって、名刺交換やサービス用語のような基本から、丁寧に外国人労働者に教えてあげる必要があります。逆に言えば、外国人労働者は確実にこれらの内容を勉強できれば、自信をもって正確かつ能率的に作業でき、生産性を高められます。
3-2.研修の方法
続いて、外国人労働者受け入れ研修の方法を
- 実施機関
- 形式
- テキスト・資料
という3点に絞り、ご解説します。
実施機関:職業紹介事業者や社会教育事業者の活用をお勧め
研修の主な実施機関は勿論企業です。しかし、既述の通り、日本の法律制度など、企業は自ら行いきれない部分があります。その際、ビジネススクールなどの社会教育事業者に委託したほうが、効率的なやり方です。
さらに、現在、職業紹介事業者や在日外国人支援事業者の中で、サービスの一部として授業・講座・ゼミナールを行うものが多いです。無料でこのようなサービスを提供する事業者も少なくないです。弊社も、日本の法律制度やビジネスマナーの授業を合計8時間、無料で弊社の斡旋で就職できた外国人労働者全員に提供しております。外部機関に、研修の委託を相談しましょう。
図3-1 弊社授業のスケジュールの一部
形式:現場の見学や仕事の体験が重要
外国人労働者に向けての研修の場合、座学は必ずしも良い形式ではありません。日本語能力の問題もあり、労働者は長期間の座学に集中できず、あるいは勉強の内容を十分に理解できないことがあるからです。
座学と比べて、現場の見学ひいては仕事の体験が、よりよい研修の形式です。実際に現場の状況を見、作業を試みれば、外国人労働者は異郷で働くための不安感を和らげます。また。仕事に興味を高め、身をもって確実に知識・技術を勉強できます。
テキスト・資料:実例の多いものが望ましい
同じく言語の壁で、長文かつ理論中心のテキスト・資料は、外国人労働者のための研修にふさわしくないです。
一方、文章が短く、実例が多く導入されるテキスト・資料は実用的なものです。労働者は興味深く実例を読み、また事例の模倣から、正しい行動の仕方を容易に身につけることができるからです。
4.外国人労働者受け入れ研修の注意点
本記事の最後に、外国人労働者受け入れ研修の注意点をご紹介します。
4-1.外国人労働者の価値観・習慣の尊重
研修の組織・実施に当たりもっとも注意すべきなのは、外国人労働者の価値観・習慣の尊重です。たとえ日本では常識・正論である内容であっても、研修の中で外国人労働者に一方的に押しつけると、労働者が聞き流し、ひいては反発します。
したがって、外国人労働者の気持ちに配慮しながら、研修の日程・内容を決め、また背景や理由を含め、詳しく各項目を解説する必要があります。外国人労働者から質問・異論を受ければ、丁寧な対応が必要です。
さらに、質問・異論をきっかけにこれまでのルールや慣習が正しいかどうか、再検討することをお勧めします。2-3で述べたように、質問・異論の中で、確かにこれまで発見されていない問題点が含まれている可能性があるからです。
4-2.研修内容の繰り返しが必要
また、外国人労働者に向けた研修は、一回で終わりにするのではなく、繰り返して行うことが大切です。一回だけ研修の内容を教えると、外国人労働者はその場である程度理解できても、後で忘れる可能性が高いです。
そのため、重要な内容を、研修の各回で繰り返す必要があります。さらに、外国人労働者の入社前後だけではなく、入社後も定期的に研修を行うべきです。繰り返しの中で、外国人労働者は確実に研究の内容・その重要性を理解できます。
4-3.日本人社員にも研修
最後に、外国人労働者受け入れについて、日本人社員に対しても研修を行うべきことを、ご注意ください。外国人労働者に対していくら丁寧に研修を行っても、人数が多い日本人社員に対して外国人労働者受け入れの知識を普及しなければ、社内のコミュニケーションの円滑化、外国人労働者が安心して働ける労働環境の形成が十分に達成できないからです。
日本人社員に向けた研修の具体的な内容として、英語や外国人労働者の母国語の勉強、外国人労働者の母国の価値観・習慣の紹介があげられます。さらに、多様性の尊重の教育も、研修に取り入れるべき内容です。
5.まとめ
以上、外国人労働者受け入れ研修についてご解説しましたが、いかがでしょうか。
外国人労働者受け入れ研修は一見なじみのない言葉ですが、内容・方法・注意点に分解してみれば、それほど複雑なものではありません。現在、研修を提供する外部機関も増えていますので、研修の組織・実施は行いやすくなります。
ぜひ、外国人労働者受け入れ研修を積極的に行い、外国人材を活用していただければと思います。
また先ほどもご説明しましたが、弊社では外国人の就職支援、また採用後も外国人への支援も行っております。ですのでご興味がありましたらぜひお気軽にお問い合わせください。