【中国人が教える】日本人に知ってほしい中国人の性格・価値観の違い

執筆者:趙(外国人就労アドバイザー)

中国と日本とは「同文同種」(同じ文字を使い、同じ祖先を有する)であると言われている一方、「中国・中国人ってよくわからない」という声が頻繫に耳にします。「中国人を雇用したいもののよい関係を築けるか」という心配される人事担当者・事業主も少なくないようです。

そこで日本で10年住む私が、本記事において、中国の一般事情、中国人の性格及び中国人と接するときの注意点をご紹介していきたいと思います。

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目次

1. 中国の人口・民族・国土面積・苗字

1-1. 中国の人口・民族・国土面積

中国は約14億人の人口を有し、人口数が世界1位を占めています。

日本は人口が約1億2500万人ですから、中国の人口が日本の約14倍です。約14億の人口の中で、56の民族があります。中国の人口の約92%が漢民族ですが、そのほか、55もの少数民族が中国で暮らしています。ほぼ単一民族国家の日本と違い、中国は多民族国家です。

中国の国土面積は約960万平方キロメートルで、世界4位を占めています。日本は国土面積が約38万平方キロメートルで、中国の国土面積の約1/26です。

【中国の基礎情報】

  • 面積:約960万平方キロメートル(日本の約26倍)
  • 人口:約14億人
  • 首都:北京
  • 民族:漢民族(総人口の約92%)及び55の少数民族
  • 公用語:中国語
  • 宗教:仏教・イスラム教・キリスト教など
  • 略史:1911年、辛亥革命発生;1912年、中華民国成立;1921年、中国共産党創立;1949年10月1日、中華人民共和国成立。

参考:中国基礎データ|外務省

1-2. 中国人の苗字

漢民族の姓(漢姓)を中心に、中国人の苗字のあり方をご紹介します。中国人の姓の数は日本ほど多くなく、現在、使われている漢姓が約3000種類あり、この中でよく使われているものが100ぐらいです。

日本人の姓は、2文字以上のものが多いですが、中国人の姓には、1文字の姓が多数を占めています。2020年11月現在、中国人の上位5姓は王(オウ)、李(リ)、張(チョウ)、劉(リュウ)、陳(チン)となり、すべて1文字の姓で、合計全国人口の約28%を占めています。2文字以上の姓は「複姓」とよばれます。三国時代の英雄の諸葛亮(孔明)は、姓の「諸葛」が2文字の複姓です。 中国人の姓の由来は、原始社会の部落の首領名を姓としたものや、爵位、官職名、職業を姓としたもの、出身地・周りの景物を姓としたものなど、さまざまです。

参考:中国人の姓と名|福山大学孔子学院コラム「学思堂」

2. 知っておきたい中国の政策・社会問題

2-1. 中国の政治体制

中国の憲法では、中国の政体を「人民民主独裁」と規定しています。人民民主独裁とは、支配者の「人民」は内部で民主を行いながら、「敵」に対して独裁を加える、という意味です。但し、1980年代以降、「人民」はほぼ国民全体とされています。

また、周知の通り、中国は共産党一党独裁の国家です。ほかの政党は存在していますが、政権を入手できません。中国の国家主席と共産党の総書記は常に同じ人物です(現在は習近平)。

参考:土屋英雄『<資料>中華人民共和国の各憲法の全訳および関係法令』、『築波法政』34巻、2003年3月。

2-2. 市場経済の導入

1978年から中国は「改革開放」を行い、その主な内容が市場経済の導入です。中国は社会主義国家で、これまで経済体制が計画経済でしたが、「改革開放」が始まると、民間企業の建設などが積極的に進められました。さらに1990年代、市場経済の導入が憲法に組み入れられました。  

現在、中国では市場経済が発達し、その経済体制も「社会主義市場経済」となっています。一方、労働環境の悪化、貧富格差の拡大などの問題も出てきています。そのため、労働環境の改善や給与アップ、キャリアアップを目指し、外資系企業での就職ひいては海外への出稼ぎを希望する労働者が増えています。

2-3. 一人っ子政策とその撤廃

1979年から2014年まで、中国では一人っ子政策が実施されました。この政策は、一組の夫婦につき子供は一人まで、という内容です。一人っ子政策は、特に都市部で確実に進められました。1980、90年代に生まれ、「80後」、「90後」と呼ばれた中国の若者は、ほとんど一人っ子です。彼らは、家族の愛情を独占して育てられたため、高いレベルの教育に恵まれ、自信も強いです。一方、自己中心的で挫折・失敗に弱いと指摘されています(後述)。

ところが、近年、一人っ子政策自体が撤廃されつつあります。2015年から二人目の子、2021年から三人目の子の出産が認められました。その背景には、中国の結婚率・出産率の低下と社会の高齢化があります。但し、一人以上の子の出産が許されても、都市部の結婚・出産率が依然として低いです。

3. 中国人の性格・国民性

国土の特徴や政府の政策は、中国人の性格・国民性を形成させます。以下、中国人の性格・国民性について解説します。

3-1. 地域によって異なる性格・国民性

中国人の性格・国民性は、個人差ありますが、エリアによって変わります。とりわけ北エリアと南エリアの中国人は、性格・国民性が大きく異なります。

北エリアの中国人の性格・国民性

北エリア(=長江の北の地域)の中国人は、颯爽とした性格を有しています。また、プライドが高く、道理や大義名分を重視しています。歴史・政治に興味をもつものが多いです。

南エリアの中国人の性格・国民性

一方、南エリア(=長江の南の地域)の中国人は、性格が繊細で、現実主義的な考えの持ち主が多く、対外に積極的な姿勢をとっています。南エリアは、古代から商業が繁栄し、改革開放以来、たくさんの外国企業が進出しています。住民の合理的な考え方や、開明的な姿勢が育てられています。

3-2. 「80後」、「90後」の性格・国民性

地域のほか、中国人の性格・国民性におけるもう1つの影響要因は世帯です。とりわけ一人っ子政策の下で生まれ育った「80後」、「90後」は、それ以前の世帯と性格・国民性が大きく異なります。

「80後」、「90後」は兄弟姉妹がなく、両親ひいては祖父母の愛情を独占して育てられました。子供の時期から自由に金銭を使え、高いレベルの教育を受けさせられ、いろいろな趣味・ファッションを試みることができました。海外旅行、外国への留学も経験できました。その結果、「80後」、「90後」の性格・国民性として、チャレンジ精神・自信が強く、知識や教養に優れ、多様性を理解し受け入れることができます。一方、失敗・挫折に弱い「イチゴ族」、自己中心的な言動を振るう「小皇帝」、金銭感覚が麻痺した「月光族」が多いと指摘されています。

近年、「80後」、「90後」の性格・国民性はさらに変化しました。彼らは30代に入り、社会の中堅になっています。そのため、性格・国民性の長所を生かしながら、堅実な性格で、他人と協力する能力や集団・組織に対する責任感が出ていています。

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4. 日本に住む中国人について

4-1. 中国人留学生が多い理由

日本の外国人留学生の中でもっとも多いのは、中国人留学生です。2022年5月1日現在、日本の外国人留学生は総231,146人ですが、中国人留学生が103,882名で、総数の45%も占めています。

中国人留学生の多さの主な理由は、日本の文化から魅力を感じることです。2019年3月、北陸大学の研究者が中国北エリアの大学生180名に対して日本留学の意識調査を行い、最も多くの学生が留学先日本の魅力として「日本社会の生活様式や文化、慣習」を選びました。それに次ぐ、「大学の教育の質の高さ」、「将来の就職に有利になること」、「留学費用の安さ」をあげた学生も多いです。

参考:「2022(令和4)年度外国人留学生在籍状況調査結果|日本留学情報サイト」

   森田聡「中国人留学生における日本留学への意識調査」、『北陸大学紀要』第49号、2020年9月。

4-2. 日本で働く中国人

人事担当者・事業主がもっとも関心をもたれるのは、日本の中国人労働者でしょう。ここで、中国人の日本就労事情及び中国人労働者が日本に行く理由を詳しく説明します。

中国人の日本就労事情

日本の外国人労働者の中でもっとも多いのも、中国人労働者です。2022年10月現在、日本における中国人労働者が385,848人であり、総数の21.2%を占めています。

出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)

在日中国人労働者の半分近くは「技能実習」と「専門的・技術的分野」の在留資格をもち、また前者は減少し、後者は増加しています。「専門的・技術的分野」の中国人には、IT人材など、レベルが高い人材がいます。一方、留学生のアルバイトも中国人労働者の20%を占めています。

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中国人が日本で働く理由

なぜ中国は経済大国になっても、多くの中国人が日本での就労を選びましたか。これには、以下の理由があります。

① 中国国内の政治・社会事情

中国では戸籍制度及び地域間格差の原因で、労働者が容易に農村から都市へ、地方から首都へ移動できません。農村、地方出身者は、国内での就職・転職の選択肢が限られているため、日本での就労を選びます。

② 日本の生活・労働環境の安心・安全さ

生活しやすさに着目して日本に行った中国人労働者が多数います。日本は大気汚染などの環境問題が少なく、街や水道もきれいです。また、治安の良さが世界中でも上位であるからです。

意外かもしれませんが、中国に比べて、日本は労働環境も優れています。2-2で述べたように、市場経済の導入につれ、中国では労働環境が悪化しています。一方、日本ではホワイト企業が増えています。その結果、快適な労働環境を追求するために、中国人労働者が日本に行きます。

③ 給与水準の高さ・キャリアアップの可能性

中国全体は経済大国になりましたが、貧富格差が大きいため、80%以上の国民は月収が5000元(約10万円)以下です。したがって、日本の給与水準は、大多数の中国人にとってなお魅力的です。

また、日本で働くことを通じて、自然に日本語に身につけ、日本の技術を学び、多様な価値観・働き方に出会うことができます。日本での就労は給与アップに止まらず、キャリアアップのチャンスでもあるので、名門大学の卒業生などのレベルが高い人材も、就職・転職のために日本に行きます。

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5. 中国人と日本人の価値観の違い・あるある

ここからは、中国人と接するときの注意点、中国人とよい関係を築く方法を説明します。まず、中国人の価値観・習慣について、日本人と比べながら説明します。

5-1. 家族を大切にする

中国人と日本人の価値観の主な違いの1つは家族観です。日本人も家族を重視していますが、主に祖父母、両親、子供を家族成員と考えています。また、日本人にとって両親を介護施設に送ったり、子供を一人にして単身赴任したりすることが普通です。 それに対して、中国人は両親、子供にとどまらず、親族全員を等しく家族とみなしています。中国人は、家族成員の世話に力を尽くしながら、中秋節や旧正月のとき、必ず一家団欒します。出稼ぎの中国人が旧正月の帰郷・一時帰国にこだわるのは、そのためです。

5-2. 簡単に謝らない?

「中国人はなぜ謝らないか」と頭を抱いた日本人が多いですが、日本とは違い、中国では本来「謝罪」の文化がありません。中国では、「謝罪」は「自分の非を認める」、「すべての責任をとる」ことを意味し、非常に重さがあります。したがって、中国人は謙虚アピールやその場しのぎのため、「申し訳ございません」を口に出すことができません。

もう一つ、中国人は普通メンツを重視し、「80後」、「90後」は、とりわけ自尊心が高い。「謝り」を、メンツやブランドに傷づける行為として、中国人は認識しています。

5-3. クチャラーと食事のマナー

中国人には、クチャクチャ、ペチャペチャ音を立てて食べるものが多いとよく言われています。それは、中国では音を立てて食べてはいけないというマナーが基本的にないからです。むしろ、中国人は「食事中音が立てられる」=「食べ物がおいしい」、「会食する人と親しい」と考えています。  但し、大都市出身者の中で、「静かに食事すべき」と躾を受けた人もいます。ちなみに筆者自身が子供の時期、クチャラーが絶対してはいけないと、両親に厳しく注意されたことがあります。

6. 中国人との会話のタブー

中国人と接するとき、具体的に何を注意すべきでしょうか。会話の場合に絞り注意点を説明します。中国人と会話するとき、以下のことに触れてはいけません。

6-1. 日中戦争は禁物

中国人と会話するとき、日中戦争及び近代以来の日本と中国の衝突・戦争(日清戦争など)に触れてはいけません。これらの戦争は、中国人にとって「国の恥」、「民族の傷」であるからです。また、戦争に関する日本人の発言が、「自分の罪を否定」、「侵略を支持」と聞こえ、喧嘩を導く恐れが高いです。

6-2. 政治・社会問題も避けましょう

そのほか、中国の社会主義体制の優劣及び現実の政治・経済・社会問題も避けたほうがよいでしょう。政治体制をめぐる議論・論争自体は、中国人にとって必ずしも問題ではありませんが、多くの中国人が政治体制の検討に真剣であるため、会話の雰囲気が悪くなる可能性があります。

一方、中国人は必ずしも自国の政治・社会の現状に満足していませんが、外国人によってその問題点が指摘されると、「母国が攻撃されている」と思って不愉快になります。激しく反論する中国人もいます。したがって、中国の現実の政治・経済・社会問題も、話の種としてはふさわしくないです。

7. 中国人との会話の話題

それでは、どのような話題で中国人と話すべきでしょうか。本記事の最後に、いくつの話の種を紹介します。

7-1. 中国古代の歴史

中国古代史、特に三国時代の歴史や遣唐使の話は、中国人との会話のよい種です。中国人の中で歴史に興味を持つ人が多いので(3-1-1既述)、歴史の話を持ち出すと、中国人は興味深く会話に参加してくれます。「唐王朝のとき、たくさんの日本人が中国に行きましたね」だけでも、中国人と30分~1時間楽しく話し合うことができます。

7-2. 日本のアニメ・ファッション

一方、中国の若者の中で日本のアニメ・ファッションが流行り、アニメ・ファッションに魅了されて日本に行った中国人は少なくないです。そのため、中国人と会話するとき、好きな漫画やコスパの良い化粧品もよい話題です。会話の中で「好きなキャラが同じ」ということがわかれば、中国人との距離が一気に小さくなります。

7-3. 日常生活中の習慣・ルール

そのほか、料理の作り方やお正月の過ごし方など、日中両国の日常生活中の習慣・ルールを議論してもいいかもしれません。筆者は、両国のそれぞれの餃子の作り方について職場の日本人同僚と20分話し合ったことがあります。  但し、両国の習慣・ルールの違いに触れてもかまいませんが、中国の習慣・ルールに対して「これはおかしい」、「日本のもののほうが優れた」と言ってはいけません。多様性尊重を常に念頭に置き、会話を進めましょう。

8. まとめ

以上、中国の一般事情、中国人の性格及び中国人と接するときの注意点をご紹介いたしましたが、いかがでしょうか。

確かに中国・中国人には独自の制度・価値観・習慣がありますが、中国・中国人は決して非常識・不可解なものではありません。むしろ日本に行く中国人には、ジャパンドリームを抱える努力家が多いです。

本記事を参考にし、積極的に中国人と接し、中国人材をご活用いただければ幸いです。

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この記事を書いた人

株式会社JJS(JapanJobSchool)のビザ担当

中国・北京出身、2012年来日。法学・政治学の大学院を修了した後で教師に就職し、高度人材として永住権も取得。10年間日本で生活・仕事してきた経験から「日本で努力している外国人を助けたい」と強く希望し、教育業界から転職し、株式会社JJSに入社。現在、法学の専門知識を生かして外国人のビザ申請・更新をサポート。

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