介護現場でフィリピン人を採用!必要なビザと採用の流れ、問題を防ぐ注意点

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

日本では高齢化が進み、介護現場の人手不足が深刻化しています。人材確保に向けて、フィリピン人の介護スタッフを採用するのもひとつの手段です。しかし「介護現場でフィリピン人を採用するのは不安」「採用方法がわからない」といった悩みがあるでしょう。

この記事では、介護現場でフィリピン人を採用するべき理由や、採用のステップについて詳しく解説します。介護施設の人事担当や経営者は、検討する際の資料としてお役立てください。

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目次

1.介護現場で働くフィリピン人の割合

介護現場で働くフィリピン人の割合は、高いといえます。就労ビザ別の割合では「特定技能ビザ」が多く、そのビザで働く外国人を国籍別に確認すると「フィリピン人」は3番目に多く2,053人という結果でした。

<介護現場で働く外国人|就労ビザ別の人数>

※数値は公益社団法人国際厚生事業団から提供された介護の特定技能協議会の入会申請状況から、
 厚生労働省が令和5年7月13日時点で編集したもの

<介護の特定技能外国人の国籍>

※出典:介護の特定技能外国人の国籍|外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について|厚生労働省

調査結果によると国内にある複数の介護施設では、フィリピン人の採用により人手不足の解消を図っていることが明らかです。

2.介護現場でフィリピン人を採用するべき理由     

多くの介護施設はなぜフィリピン人を採用しているのか、気になるでしょう。その理由は、フィリピン人が介護現場で活躍できる人材だからです。ここでは、フィリピン人を採用するべき理由について解説します。

2-1.フィリピンには介護士育成の教育機関が多い

フィリピンには多くの介護士育成の教育機関があり、高度な専門知識と技術を持つ介護士を育成しています。一部の学校では、日本の介護技術と日本語の授業が組み込まれています。これにより、日本の介護施設で働くフィリピン人介護士は、高い技術力と知識を持って即戦力として活躍できます。

2-2.日本語スキルの高い人材を探しやすい

個人差はありますが、フィリピン人は日本語のスキルが高いといわれています。フィリピンには、多くの日本企業が進出しており、その影響で日本語教育が盛んです。一部の大学や専門学校では、日本語学科や日本語コースが開設されており、日本語を学ぶ機会も多い傾向にあります。

日本語スキルの高いフィリピン人を採用すれば、業務を覚えてもらいやすいため即戦力になるでしょう。一定のコミュニケーションスキルがあると、職員同士の情報共有や利用者との会話がスムーズです。

2-3.熱心でホスピタリティ精神が強い

一般的にフィリピン人は熱心で、高いホスピタリティ精神を持っています。介護現場において、施設の患者や利用者に対する親切で思いやりのある対応は必要不可欠です。特に高齢者の入浴介助は、ケガや事故のないように特別な配慮をします。フィリピン人に研修をする、または経験者を採用すれば、難易度の高い業務も任せられる可能性があります。

3.介護現場でフィリピン人の採用に必要なビザ

介護現場でフィリピン人を採用する場合、選択肢として4つのビザがあります。それぞれビザ発給の目的や在留期間、任せられる業務が異なるためチェックしましょう。

ビザの種類目的在留期間任せられる業務
特定技能国内の人材確保最長5年・身体介護
・関連業務
(例:レクしエーション・機能訓練など)
・想定業務
(例:掲示物や物品の管理)
技能実習
※新制度「育成就労制度」に移行中
働きながら技能を習得最長5年 (新制度:3年)事業所単位の介護業務全般
※訪問介護は除く
※夜勤業務は2年目移行
特定活動(EPA)日本とフィリピン間に
おける経済活動の強化
最長4年介護施設での就労・研修
介護ビザ介護福祉士として働ける最長5年(更新可)業務の制限なし
(夜勤・訪問介護も可)

※参考:技能実習「介護」における固有要件について|厚生労働省
※参考:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)|出入国在留管理庁
※参考:経済連携協定に基づく受入れの枠組|厚生労働省
※参考:在留資格「介護」|出入国在留管理庁

どちらのビザを持つフィリピン人を雇用するべきか迷ったら、以下を参考にしてみてください。

<選ぶ基準>
新事業所での採用を考えている、入国後すぐに就労してほしい →特定技能
応募数も多く集めたい、人材に研修を実施して定着を図りたい →技能技能
ある程度のスキルがある人材を公的な支援を受けて採用したい →特定活動(EPA)
業務範囲と在留期間の制限なく働いてほしい →介護ビザ

3-1.特定技能

特定技能ビザは、人手不足の業界で人材確保のために設置されたビザです。取得には日本語能力試験(JLPT)N4以上の合格が必要です。また、特定技能評価試験にも合格することが条件となります。ビザの有効期間は1年間ですが、更新が可能で、最長5年まで滞在できます。

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3-2.技能実習

技能実習ビザは、外国人が日本の企業で働きながら技能を習得するためのビザです。介護分野での技能実習ビザでは「ある程度、日本語を理解できる能力」「手順に沿って基本的な介護を実践できる能力」が求められます。ビザの有効期間は、最長で5年です。技能実習を修了した後は、特定技能ビザに移行することも可能です。

ただし技能実習は、不当な就労環境に置かれた外国人の失踪が相次ぎ、制度の廃止と新制度への移行が報告されています。名称を「育成就労制度」に変更して、在留期間を最長5年から3年に短縮。技能を習得した外国人に対しては、「特定技能ビザ」への移行や他企業への「移籍」に関する条件も見直されました。※2027年に新制度開始予定

※参考:技能実習生制度を廃止 「育成就労制度」に名称変更 最終報告書|NHK

詳しくは、以下をご覧ください。

3-3.特定活動(EPA)

EPAビザは、日本とフィリピンの経済連携協定に基づいて発給されるビザです。ビザ取得には、フィリピン国内で介護士の資格を取得し、日本語能力試験(JLPT)N5以上に合格する必要があります。EPAビザの有効期間は3年間ですが、更新が可能です。

3-4.介護ビザ

介護ビザは、特定技能ビザや技能実習ビザとは異なり「介護福祉士」として働くためのビザです。取得には、日本の介護福祉士の国家資格を取得する必要があります。資格取得後、介護施設で業務の制限なく働くことができます。介護ビザの有効期間は最長5年で、更新も可能です。

5.介護現場でフィリピン人を採用する方法

フィリピン人の採用には、独自のルールがあります。以下の2つを確認して、適した手順で採用活動を進めましょう。

5-1.DMW(旧POEA)・MWO(旧POLO)での手続きと審査

フィリピン人を採用する介護施設は、DMW(旧POEA)の審査を受ける必要があります。審査を受けるにあたり、MWOの拠点である東京の六本木にある「フィリピン大使館」と、大阪にある「在大阪フィリピン総領事館」に出向かなければなりません。

<フィリピン人採用に関する機関>

DMW(旧POEA) /移住労働者省出稼ぎをするフィリピン人を送り出す機関で、2023年にPOEAはDMW(フィリピン移住労働省)に統合された。フィリピン人を雇用したい企業の審査をしている
DOLE /労働雇用省フィリピンの労働や雇用について監督を行う官庁。雇用についての問題が発生した場合は、DOLEに不服の申し立てをする
MWO(旧POLO) /出先機関上記で紹介した2つの機関「DOLE」「MWO(旧POLO)」の出先機関(本局の補助的位置づけ)。日本で働くフィピリン人とその家族を福祉的に保護・支援している

5-2.現地採用ならエージェントと契約

フィリピン人の現地採用は、DMW(旧POEA)が認定したエージェントを介する必要があります。日本の介護施設は、エージェントからDMW(旧POEA)の審査書類を受け取り、必要事項を記入して提出します。合格するとOEC(海外雇用許可証)を受け取ることができます。

エージェントを介さない直接雇用は原則禁止のため、注意しましょう。

6.介護現場でフィリピン人を採用する流れ

以下では、大まかな採用の流れをまとめました。


STEP1:ニーズの確認・応募要件の決定・面接
介護施設は、人手不足の部署や求める人材を把握して応募要件を決める (例)介護経験〇年

STEP2:労働者の選定・面接
求職者を選定したら書類選考・面接へと進む

STEP3:雇用契約の締結
フィリピン人労働者と介護施設との間で、合意のうえ雇用契約を結ぶ

STEP4:ビザ申請の準備
選定された求職者のために、必要なビザの申請を準備する(特定技能や技能実習、EPAビザなどがあるため、ビザの要件と応募要件に応じて決定する)

STEP4:ビザ(在留資格)申請 
在留資格の認定・変更申請書類の準備をする(海外に求職者がいる場合は必要書類を郵送して、日本大使館に申請書を提出する) 

STEP5:ビザの取得・日本への渡航
ビザが発行されたら、労働者は日本に渡航する

STEP6:受け入れ準備・オリエンテーションと研修
介護施設側は、労働者の住居確保、職場環境の整備、初期オリエンテーションを実施する

STEP7:勤務開始
オリエンテーションと研修が終了したら、労働者は正式に勤務を開始する

STEP8:継続的なサポート
フィリピン人を受け入れた施設は、定期的な面談を実施して、労働者が安心かつ円滑に働けるようにサポートする

<現地採用の場合>

現地のフィリピン人を採用するには、エージェントを介して採用しなければなりません。大まかな採用の流れは以下のとおりです。

  1. DMW(旧POEA)の認定を受けたエージェントと契約
  2. MWO(旧POLO)に書類を提出して登録申請を行う
  3. 東京もしくは大阪にあるMWO(旧POLO)に出向いて面接を行う
  4. MWO(旧POLO)から許可書類が届いたらエージェントに送る
  5. エージェントがDMW(旧POEA)に書類を出して認可
  6. エージェントがフィリピンで募集や面接などを行う
  7. 雇用契約を結び在留資格認定証明書(COE)を取得
  8. 在留資格認定証明書(COE)とパスポートを提出してビザを申請
  9. ビザ取得後OEC(海外雇用許可証)を取得し出国

※引用:

フィリピン人を日本の介護現場で採用する際、厳密にいうと、就労ビザの種類によって受入れの仕組みが異なります。在留資格別の流れは、画像を参考にしてみてください。

※出典:介護の特定技能外国人の国籍|外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について|厚生労働省  

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7.介護現場でフィリピン人を採用するときの注意点

日本では業務上の重大なミスがあった際に、人前でも従業員を叱る場面があるでしょう。しかし、フィリピンの場合、人前で叱るのはプライドを傷つけてしまう行為です。ささいな注意でも、他の人がいる前でするのはタブーになるため避けましょう。

フィリピン人は、ひとつの仕事に集中するのが得意です。一度に多くの仕事を振らず、1タスク単位で明確な指示を心がけるとよいでしょう。

フィリピン人は家族を非常に大切にするため、仕事中でも家族の健康状態を気にして連絡を取ることがあります。時には、家族の集まりを優先して仕事を休む場面があるかもしれません。フィリピン人の従業員に対しては、家族を思う文化を尊重しつつ、日本のビジネスマナーをやさしく説明することが重要です。

8.まとめ  

介護現場でフィリピン人を採用するなら、要件を満たすビザ取得が必要です。受け入れる介護施設の人事担当は、フィリピン人がスムーズに取得できるようにサポートします。また現地からフィリピン人を採用する際には、独自ルールがあります。各種機関での手続き・審査を受けるだけでなく、エージェントとの契約も必須です。

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