特定技能「介護」採用の流れ5ステップ|必要書類や企業要件、注意点まで

執筆者:大路(JapanJobSchool CSマネージャー)

少子高齢化により、介護業界は深刻な人手不足に直面しています。厚生労働省によると2040年までに現在比+約47万人の約280万人の介護職員が必要になります。

まだ外国人介護職員を採用したことがない施設でも「そろそろ外国人介護職員を雇わないといけない」「でも採用方法が分からない」「特定技能で採用するメリットが知りたい」と考えている方が多いと思います。

この記事ではすぐ実践できるように、特定技能「介護」の採用方法を解説します。ぜひ最後までお読みください。

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目次

1.特定技能「介護」の現状

現在、日本の高齢化問題を背景に、介護分野における特定技能制度は重要な役割を果たしています。ここでは、特定技能「介護」の受け入れ見込み人数と、技能レベルを解説しました。

1-1.受け入れ見込み人数

特定技能制度の受入れ見込み数は、2024年3月の閣議決定により大幅な引き上げがありました。新たな目標として、2024年度〜2028年度までの5年間で、介護分野は135,000人の受入れを見込んでいます。前回(2019年度〜2023年度)の60,000人と比べて約2.25倍という大幅な増加です。

※参考:特定技能制度の受入れ見込数の再設定(出入国在留管理庁)

1-2.外国人の介護技術・日本語能力のレベル

特定技能外国人の採用にあたって、どのくらいの技能レベルか気になるでしょう。外国人が特定技能「介護」ビザを取得するには、3つの試験に合格している必要があります。求められるレベルと試験内容は、下記表のとおりです。

試験の種類求められるレベル試験内容
介護技能評価試験介護現場での基本的な知識と技能介護の基本1/こころとからだのしくみ/コミュニケーション技術/生活支援技術/判断等試験等の形式による実技試験課題
介護日本語評価試験介護現場で必要な基本的な日本語能力介護のことば/介護の会話・声かけ/介護の文書
日本語試験 (JFT-basic・JLTPのうちいずれか)個人情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、よく使われる文や表現が理解できる文字と語彙/会話と表現/聴解/読解

試験内容からは、特定技能「介護」外国人が一定の「介護技術」と「日本語能力」を備えているとわかります。ただし「熟練」とは、いえないかもしれません。採用計画を立てる際には、現場での研修を念頭に置いておくとよいでしょう。現場に早く慣れてもらうために、企業側のサポートも必要です。

▼特定技能「介護」試験について、例題と一緒により詳しく説明しています。


2.特定技能「介護」採用の流れ5ステップ

2-1.採用準備・計画 

求める人材像を具体的にイメージすることが採用の第一歩です。

どの国の人材が適しているか検討する際には、国民性日本での在留数を参考にします。

例えばミャンマー人は、「温厚な性格で仏教徒が多く、お年寄りを大切にする国民性」だといわれています。日本の介護で働くミャンマー人は、8,083人(特定技能ミャンマー人19,059人のうち)と他業種に比べて、多いのもポイントです(2024年6月末現在)。外国人の介護スタッフを採用するなら、「ミャンマー人」も候補に入るでしょう。

採用計画においては、支援の担当者やチーム決めが重要です。例えば外国人の生活サポートや現場研修では、誰が何を担当するのか計画段階で決めておきます。具体的な役割分担を明示して、円滑に採用計画を進めましょう。

▼ミャンマー人の特徴・採用方法は、以下の記事をご覧ください。

2-2.採用活動・選考 

採用活動は、自社のホームページやSNS(主にFacebook)を活用して直接採用する方法、または登録支援機関に人材紹介を依頼する方法があります。「登録支援機関」とは特定技能外国人の支援を代行する機関です。

▼登録支援機関についてはこちらの記事で詳しく解説しております。

採用面接では、日本を選んだ理由や介護職への志望動機、将来の目標、日本語学習歴などを質問しましょう。「自社との相性」や「日本語能力の伸びしろ」を見極めるように心がけてみてください。来日後に日本語が上達するケースも多いため、面接時の日本語力を気にしすぎないことが大切です。

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2-3.在留資格申請・入国 

採用した外国人材が入国できるように、必要な在留資格を申請します。

在留資格申請の流れ

特定技能「介護」ビザ申請の流れは、以下のとおりです。

STEP
申請書類準備

申請人(外国人)に関する書類・所属機関に関する書類(企業が法人である場合)・分野に関する書類を用意する

STEP
在留資格認定証明書の交付申請

出入国在留管理庁へ提出して、審査後に認定証明書が発行される

STEP
ビザ取得

認定証明書を持参して日本大使館や領事館でビザを申請する

STEP
入国

企業は空港から外国人の送迎をする

外国人が特定技能「介護」のビザ取得をするための試験については、以下で詳しく解説しました。

在留資格申請の必要書類

在留資格認定のために必要な書類は3種類に分けられます。

申請人(外国人)に関する書類

1.「特定技能1号」に係る提出書類一覧表(在留資格認定証明書交付申請用)
2. 在留資格認定証明書交付申請書
3. 特定技能外国人の報酬に関する説明書
4. 特定技能雇用契約書の写し
5-a. 雇用条件書の写し
⁻b. 賃金の支払
6. 雇用の経緯に係る説明書
7. 徴収費用の説明書
8⁻a. 健康診断個人票
⁻b. 受診者の申告書
9. 1号特定技能外国人支援計画書
10. 登録支援機関との支援委託契約に関する説明書
11. 二国間取決において定められた遵守すべき手続に係る書類

所属機関(企業)に関する書類

1. 特定技能所属機関概要書
2. 登録事項証明書
3. 業務執行に関与する役員の住民票の写し
4. 特定技能所属機関の役員に関する誓約書
5. 労働保険料等納付証明書(未納なしの証明)
6. 社会保険料納入状況回答票または健康保険・厚生年金保険料領収書の写し(申請月の前々月までの24か月分)
7. 税務署発行の納税証明書(その3) 8. 法人住民税の市町村発行の納税証明書(直近1年分)

分野に関する書類

下記のいずれかを用意する
1. 外国人が介護福祉士養成施設修了者であることの証明書
2. 外国人がEPA介護福祉士候補者として在留期間(4年間)を満了した者であることの証明書
3. 外国人が技能実習2号良好修了者であることの証明書
4. 外国人が上記のいずれにも該当しない場合は
 ・各種試験の合格証明書の写し
 ・介護分野における特定技能外国人の受入れに関する誓約書【分野参考様式第1-1号】
 ・介護分野における業務を行わせる事業所の概要書【分野参考様式第1-2号】
 ・協議会の構成員であることの証明書  

書類の数は多いですが、出入国在留管理庁より「参考様式」「記載例」が公開されている書類も多くあります。
出入国在留管理庁のこちらのサイトから確認できます。

2-4.就労開始・初期支援 

就労開始後は、職場に慣れるための初期支援が欠かせません。日本での生活サポートや、配属先でのオリエンテーションを実施しましょう。安心して業務に取り組める環境を整えることで、定着率が上がります。

具体的な支援方法は、以下を参考にしてみてください。

生活支援住居の手配、生活必需品の購入方法の案内、医療機関の利用説明
職場環境の整備日本人職員との交流会、国際交流イベント企画

2-5.定着・戦力化 

長期的な成功のためには、相互の歩み寄りの努力が必要です。
コミュニケーションに配慮し、従業員の母国文化への理解を深めることで信頼関係が育まれます。職場の重要な戦力として活躍できる環境を築き上げましょう。

また外国人労働者に対する、定期的な面談も必要です。勤務状況や生活に関する相談窓口を設置し、ストレスや悩みを解消できるようにサポートします。

特定技1号外国人は通算5年、2号に移行すれば半永久的に雇用できます。

しかし多くの特定技能外国人が転職してしまうのも現状です。

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3.特定技能「介護」受け入れ企業の要件    

特定技能外国人の受入れには、要件があります。自社の施設で受け入れが可能か、確認してみましょう。

3-1.介護福祉士国家試験の「実務経験対象施設」

外国人の就業場所は、介護福祉士国家試験の受験資格要件において「介護」の実務経験として認められる施設に限ります。

コラム|訪問介護の解禁について

以前まで、訪問系介護サービスはすべて対象外でした。しかし2025年4月21日、特定技能外国人による訪問介護が解禁に。新たに特定技能外国人受け入れ対象となる分野は「訪問介護」「訪問入浴介護」「夜間対応型訪問介護」「介護予防訪問入浴介護」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」「訪問型サービス(総合事業)」です。

▶関連記事:特定技能の訪問介護が解禁!企業・外国人の要件と採用方法など詳しく解説 

※参考:厚生労働省「介護分野の1号特定技能外国人を受け入れる対象施設について」

3-2.特定技能協議会に参加する

特定技能外国人を受け入れる企業は、その分野における特定技能協議会への加入が義務付けられています。この協議会は、構成員同士の連携を強化し、適正な受け入れ体制を構築することを目的としています。

企業は、特定技能外国人の入社後4か月以内に、介護協議会事務局のオンラインシステムにて申請を行わなければなりません。加入手続きは「介護分野における特定技能協議会」の仮アカウント作成から始まり、申請時には以下の書類をアップロードします

加入手続きは「介護分野における特定技能協議会」入会申請のための仮アカウント発行申請」画面から、仮アカウントの作成から始めましょう。

申請時には下記の書類のアップロードが必要です。

1.特定技能の雇用条件書ビザ申請書類のひとつ
※申請書類作成を行政書士に依頼した場合は、行政書士に確認ください
2.特定技能外国人の支援計画書
3.事業所の概要書等
4.日本語能力水準を証明する書類介護日本語評価試験・日本語能力試験・介護技能評価試の合格証明書、介護福祉士国家試験結果通知書、技能実習評価試験の合格証明書等
5.技能水準を証明する書類
6.在留カード

詳しい手続き方法は、介護分野における特定技能協議会事務局の「介護分野における特定技能協議会」加入の流れ」をご確認ください。

3-3.受け入れ機関の適正を満たす

特定技能外国人の受け入れ機関は、その適正を出入国在留管理庁からチェックされます。適切の基準は、下記の1〜4のポイントです。

  1. 社会保険、租税関係の法令順守ができている
  2. 1年以内に非自発的に離職(解雇)がない
  3. 5年以内に出入国・労働法令違反がない
  4. 特定技能外国人を支援できる体制が整っている

※4については、次で詳しく解説します。

3-4.外国人の支援計画を立てる 

在留資格「特定技能」で受け入れを行う企業は、特定技能外国人ごとに支援計画書を作成し、支援計画に基づいて、以下の10の支援を行う義務があります。

うち①④⑦⑩は「外国人が理解できる母国語」での対応が求められています。

※出典:特定技能外国人の受け入れる際のポイント(出入国在留管理庁)

ただし、これらの支援は特定技能1号でのみ必要であり、介護ビザに移行をしてからは必要ありません。

支援体制を整えていくのが受け入れ企業の必須要件です。

支援方法には、「自社支援」「登録支援機関への委託」の2パターンがあります登録支援機関とは、支援計画書の作成や外国人の支援業務を全部もしくは一部委託できる機関です。出入国管理庁から認定された機関のみが、登録支援機関に登録できます。

委託費用はかかりますが、多くの書類作成や支援の業務の負担を考え、登録支援機関へ委託をする企業も多くいます。

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また在留カードに関してはこちらの記事で詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。

4.特定技能「介護」採用における注意点

特定技能「介護」人材を採用する際には、法的な要件を遵守することはもちろん、実務上の配慮も重要です。採用を円滑に進めるために、具体的な注意点をいくつか解説します。

4-1.給与水準 

給与・労働条件はともに、同ポジションで雇用している日本人従業員等と同等以上の条件にします。外国人であることを理由にして、差別的な扱いをしてはいけません。

「最低賃金法」では、すべての労働者に対して、都道府県ごとの地域別最低賃金や産業別最低賃金を満たす給与を支払う義務が定められています。
「労働基準法」の下では、国籍による差別が禁止されており、給与水準において不公平があってはならないとされています。

4-2.受け入れ人数の上限 

介護分野では、事業所ごとに明確な制限が設けられています。受け入れ可能な特定技能外国人の数は、「日本人等の常勤介護職員の総数」を超えてはなりません。

「日本人等」は、具体的に下記の3つの在留資格で滞在する外国人が含まれます。

  • 介護福祉国家試験に合格したEPA介護福祉士
  • 在留資格「介護」により在留する外国人
  • 永住者や日本人の配偶者など、身分・地位に基づく在留資格により在留する外国人

※技能実習生・EPA介護福祉士候補者・留学生は含まれない

具体的には、事業所内の常勤介護職員の人数をもとに、受け入れる外国人の人数を計算します。

<受け入れ可能な特定技能外国人の人数>

  • 常勤介護職員が10人いる場合:最大10人まで
  • 常勤介護職員が25人いる場合:最大25人まで
  • 常勤介護職員が50人いる場合:最大50人まで

4-3.文化・宗教の理解 

日本人と同様に、外国人も独自の文化や習慣、宗教観を持っています。例えば、イスラム教の人は豚肉が食べられませんし、1日に数回礼拝をする人もいます。文化・宗教に理解を示さないと、トラブルになるかもしれません。

外国人スタッフと信頼関係を築くには、異文化に対してどのように配慮したらよいか話し合う必要があります。すべてに対応できなくても、理解の姿勢を持ち、働きやすい職場環境を整えるように努めましょう。

▼関連記事:外国人雇用には宗教的配慮が必要?主なトラブルと事例もご紹介!

5.特定技能「介護」の受け入れ事例

JJSでは、特定技能「介護」で外国人を受け入れた企業さまにインタビューしています。外国人受け入れのメリットや課題、今後の取り組みについて尋ねました。今後、受け入れ体制を整えるのに参考になるでしょう。​

▼今ではユニットを束ねるリーダーに。外国人が安心して働ける環境づくりを
埼玉県 特別養護老人ホーム|特定技能・介護ビザ ミャンマー人・ベトナム人

最初は消極的だった外国人採用。真面目に努力する姿勢から現在は即戦力に
千葉県 特別養護老人ホーム・デイサービスセンター・地域密着型特養・養護老人ホーム|特定技能 ミャンマー人

▼異なる価値観の人と働くことで大きな刺激に。本人の力に合わせてステップできる環境を
東京都 特別養護老人ホーム|特定技能 ベトナム人

▼目を見張るほどの素直さと努力を惜しまない姿勢で、スタッフも利用者も活性化
 福島県 グループホーム・訪問介護|特定技能 ベトナム人

6.まとめ

要介護者が増加する一方、国内で介護職を希望する人材が減っている日本において、外国人介護職員は今後欠かせない存在となります。まだ外国人介護職員を採用したことがない施設であっても、今後外国人介護職員を採用する必要がある可能性は高いです。

一方で、ビザの種類が複数あり、手続きが煩雑な外国人採用に踏み切れない施設も多いかと思います。そのため、外国人介護職員を採用する際は、知識や経験豊富な外国人雇用のプロに相談することをおすすめします。

当スクールでは特定技能外国人の採用に関するご相談を承っていますので、外国人介護職員を採用したい方や具体的な採用方法について知りたい方はお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

主に「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」「外国人マネジメント」「企業・外国人インタビュー」などの情報をこれから外国人を採用したい企業様向けに発信しています。編集部は外国人の人材紹介と支援を行っているJapanJobSchoolの社員で構成されており、専門家ならではの視点からお届けします。

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