フィリピンにはタブーが沢山!?|フィリピン人と関わる際に知っておきたいタブーとは
現在、在留資格「特定技能」でも国別割合3位になるほど、日本で働く外国人の中でフィリピン人の割合は多いです。
フィリピン人労働者と働く際に、フィリピンの文化・習慣・マナーを知っておくことは非常に重要になります。
フィリピン人を雇用したことがある企業の採用担当の方や、これから外国人採用を始めようと思っていて、フィリピン人を採用したい方は多いかと思います。
業務指導だけでなく、パフォーマンス評価やキャリア相談といった場面でも日本とフィリピンの違いを理解していないと、思わぬトラブルに繋がってしまう可能性があります。
そこでこの記事ではフィリピン人の文化・習慣・考え方・タブーを詳しく解説します。フィリピン人と働いている方はもちろん、これからフィリピン人の採用を考えている方もぜひ最後まで読んで、円滑な職場環境作りに役立ててください。
1.フィリピンの宗教事情と割合
フィリピンはASEAN唯一のキリスト教国です。国民の約83%がカトリックを信仰しています。その他10%が他のキリスト教の宗派、約5%がイスラム教(大半がスンニ派)を信仰しています。
ただしミンナダオという地域は人口の20%以上がイスラム教徒です。ミンナダオ出身のフィリピン人に会ったときには、特に宗教の確認を忘れずにしたほうがいいでしょう。
キリスト教はフィリピン人の生活に大きな影響を与えています。例えばフィリピンの休日の多くはキリスト教に関係するものです。これは2024年のフィリピンのキリスト教に関連する祝祭日です。
また、カトリックを信仰する人が多いフィリピンでは避妊や人工中絶はタブーとされています。人工中絶は法律で禁じられているほど、厳しい国です。
最近では家族計画などを理由に避妊をする人も増えていますが、避妊・人工中絶に対する拒否感を持つ人も多いです。フィリピン人従業員の前では話題にしないほうがいいかもしれません。
[出典:外務省「フィリピン共和国 基礎データ」]
[出典:JETRO「フィリピン 祝祭日」]
2.フィリピンの文化・風習
フィリピンの文化、特に時間に対する考え方や、食事のマナーは日本人と大きく異なります。
ここでは以下の3点について紹介します。
- フィリピンタイムがある
- 交通マナーが悪い
- 食事の際はスプーンとフォークを使用する
2-1. フィリピンタイムがある
フィリピン人は日本人から見れば時間にルーズだと思われることが多いです。
それはフィリピン独特の「フィリピンタイム」と呼ばれるものがあるからです。
フィリピンでは「10時集合ね。」と約束した場合、「10時から10時59分の間に来るもの」と捉える人が多いです。
日本人からすると、10時集合と捉える時間の幅が広く感じますよね。
また、友人や知人に誘われてパーティーに行くとき、日本人なら時間の少し前、または時間通りに行くのがマナーとされていますが、フィリピンでは逆に集合時間より遅くいくことがマナーだとされています。
これは、集合時間より早めに行った際に、相手方の準備が終わっていない場合を考慮しているからだそうです。
そのような状況で行くのは失礼だと考えられているので、フィリピン人はあえて集合時間より遅く行きます。
また、フィリピンの交通事情も集合時間に到着できない一つの原因になっています。
フィリピンは、道路が完全に整備されているわけではないので、交通量が多い都市部などでは渋滞することも多いです。このように、本人のせいではなく、周りの環境のせいで遅れることが多いので、フィリピン人は約束していた相手が時間に遅れても厳しい対応を取る人は少ないです。
フィリピンの時間の考え方は日本人と大きく異なるため、フィリピン人を雇用する際には、「約束の時間前には着くようにすること」、「時間に遅れるとしたら必ず連絡を入れること」など、日本人が当たり前だと思っている文化も改めて伝えるように心がけましょう。
2-2. 交通マナーが悪い
フィリピンの道路は歩行者ではなく車優先です。
そのため、制限速度を無視する車や、歩行者がいても交差点に進入してくる車がいるのが普通です。
因みに、フィリピンで取得した免許は日本で切替申請をすることができます。
切替申請をして日本で運転することができるようになったフィリピン人従業員がいる場合は、歩行者優先の日本の交通ルールを必ず伝えてください。
特に速度違反や一時不停止などの比較的軽微な交通違反も取り締まられることを、伝えたほうがいいでしょう。
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2-3. 食事の際はスプーンとフォークを使用する
フィリピンの食事マナーは左手にフォーク、右手にスプーンを使うのが一般的です。
フィリピンの料理で箸を使うことはないので、日本に来て日が浅いフィリピン人従業員と食事するときには、フォークとスプーンで食べられる料理にするなど、配慮が必要です。
ただしフィリピンには多くの日本食レストランがあります。そこで箸を使ったことがある、和食を食べたことがある、という人も少なくありません。
フィリピンの食事のメニュー構成は
- 主食の米
- 野菜料理
- 1~2品の魚介、又は肉料理
となっていることが多いです。
日本と同じようにテーブルに大皿で盛りつけられ、それを取り分けて食べています。
3.フィリピンの文化・風習に起因するタブー
フィリピンの文化・風習に起因するタブーは大きく以下の3つが挙げられます。
- 人前で叱ってはいけない
- 子供の頭を叩いてはいけない
- 社会的な地位やお金に関する話はしない
日本とは異なるものが多いので、これらを念頭に置いてフィリピン人従業員と接する必要があります。
3-1. 人前で叱ってはいけない
日本の場合、仕事で重大な間違いをしたときや、マナー違反をしたときには、つい従業員を他の従業員のいる大部屋で叱ってしまうことがあるかもしれません。
しかしフィリピンでは、会社の上司や先輩であっても人前で叱られることは、その人のプライドを大きく傷つけてしまうため、タブーとされています。
小さな注意でも、それがその人のイメージを悪くしてしまうものであるなら、他の人がいる場所ではしないほうがいいです。過去には人前で叱られたフィリピン人が、叱ってきた日本人を警察に訴えたこともあります。
そのためフィリピン人従業員を注意する、叱る場合は必ず個室で1対1で話すようにしましょう。
他の従業員が人前で叱られているのを見ることさえも不快に感じるフィリピン人従業員もいるので、「注意するときは個室で1対1で話す」というのを、会社のルールとして周知させた方が良いでしょう。
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3-2. 子供の頭を叩いてはいけない
フィリピン人は「子どもの頭には神が宿る」と考えています。そのため、子どもの頭に触れることは大きなタブーだとされています。これはフィリピンに限らず、タイ・インドネシア・ベトナムなど多くの東南アジアの国で考えられていることです。
「子どもの頭に触ると頭にいる神様が逃げてしまう」、「子供の成長が止まってしまう」ということを信じている人が多いので、子どもがかわいいからといって、子どもの頭を撫でるのは避けたほうがいいでしょう。
ましてや、子どもが悪いことをしたからといって子供の頭を叩くのはフィリピン人にとっては考えられません。
もし会社に自分の子供を連れて行ってフィリピン人従業員と会わせるときには、こんなタブーにも気を付けなければなりません。
3-3. 社会的な地位やお金に関する話はしない
フィリピンでは収入に関する話は極めてプライベートなこととされており、他人と共有することはほぼありません。
フィリピンは経済格差が大きい国なので、社会的地位の話や収入の話をすると不公平感や差別の意識を生んでしまう可能性があるからです。
4.宗教に関するタブー
フィリピンは国民の約90%がキリスト教を信仰しており、実は欧米に比べても熱心なキリスト教徒が多いです。
日本では馴染みのない宗教のタブーがあるため、注意が必要です。
- 宗教について否定的な発言をしてはいけない
- 恋愛について詳細な話はしない
- 離婚や浮気は基本的にNG
4-3. 宗教について否定的な発言をしてはいけない
日本人の多くは、多神教の神道と仏教を信じており、他の宗教のイベント(クリスマス・ハロウィン)なども取り入れるなど、比較的宗教に対しての考え方が緩いです。
一神教で、生活での行事・制約が比較的多いキリスト教徒を見て「どうしてそこまで熱心に信仰するのだろう」と疑問に思う方もいるかもしれません。
日本人の宗教に対する考え方と異なるからといって、決してフィリピンの人の宗教の考え方や実践(一神教、日曜礼拝など)を否定的するようなことを言わないように注意が必要です。
4-2. 恋愛について詳細な話はしない
フィリピンでは親しい友人同士であっても、恋愛の詳細なことを話すことは少ないそうです。
恋愛事情は極めて個人的なことだと捉えられているためです。
最近の日本では仕事とプライベートを分ける人が増えているため、同僚と恋愛の話をする場面は多くないと思いますが、特にフィリピン人の同僚に深く恋愛について聞くことは避けたほうがいいでしょう。
4-3. 離婚や浮気は基本的にNG
「1.フィリピンの宗教事情と割合」で紹介した通り、フィリピンはキリスト教カトリックを信仰している人が多いですが、カトリックの教えでは離婚は認められていません。
カトリックの教えがフィリピンでは大きな影響力を持ち、カトリックの教えがあるためフィリピンには離婚の手続きをする法律が定められていません。
現在はアナルメント制度で婚姻関係の無効化ができますが、この手続きは誰でも使えるわけではありません。
この制度を利用するためには「脅迫による婚姻」などの相応の理由が必要で、手続きにも2~3年程度かかります。
また、浮気をした場合は日本よりもかなり重い刑罰が科せられます。
フィリピン人は日本人に比べて、浮気や離婚をタブー・重大なものと考えています。仕事やプライベート関係なく、フィリピン人と関わる機会がある際にはなるべくこの話題は避けるようにしましょう。
5.フィリピンの食事に関するタブー
日本では問題ないとされている食事マナーでも、フィリピン人にとってはタブーとなる場合があります。
- 年上の人が料理を取るまで待たなければいけない
- 料理を一度に取りすぎてはいけない
5-1. 年上の人が料理を取るまで待たなければいけない
フィリピンの食卓では、大皿に盛られている料理を個人の皿に取り分けるというスタイルを取っています。
こう聞くと日本と変わらないだろうと思う方もいると思いますが、フィリピンでは大皿から料理を取るときに、年上の人より先に取ってはいけないというルールがあります。
同じ部署の人たちで食事に行くとき、日本では若手社員が取り分けるといったことをすることがありますが、フィリピン人の同僚と一緒のときは「年上の人から食事を取ってもらうようにする」または「日本の食事のスタイルを教えてあげる」などの配慮をするようにしましょう。
5-2. 料理を一度に取りすぎてはならない
フィリピンでは料理は一口大に切って、少しずつ食べるのがマナーだとされています。
一口で食べられないと思ったときには、必ず切ってから食べてください。
大皿からの料理の取り方も同様で、一度に取り皿いっぱいになるくらい取るのはマナー違反です。
他の人が食べることに配慮しながら、少しずつそれぞれのおかずを取るようにしましょう。
6.フィリピンのジェスチャーに関するタブー
日本では普通に使うジェスチャーでも、フィリピン人にとっては失礼になる場合があります。
- 「おいで」のジェスチャーはNG
- 親指と人差し指で作る「OK」サインはNG
6-1. 「おいで」のジェスチャーはNG
日本人は相手を呼ぶときに手のひらを下にして振ることが多いと思います。
しかし、このジェスチャーはフィリピン人にとっては反対の「あっちに行け」という意味になってしまいます。
フィリピン人を呼ぶときには、手のひらを上に向けて振ると「こっちに来てください」という意味が伝わります。
「おいで」のジェスチャーがフィリピンと日本で反対になることは、フィリピン人従業員に早めに伝えたほうがいいでしょう。
日本人からすると、フィリピンのジェスチャーの方が失礼に当たると考えてしまいますが、ジェスチャーひとつとっても国によって意味が違ってくることを頭に入れておきましょう。
6-2. 親指と人差し指で作る「OK」サインはNG
日本では「大丈夫です。OKです。」という意味のあるこのジェスチャーは、フィリピンでは「お金」を意味します。
つまり、「お金をくれるなら、いいですよ。」という傲慢な意味になってしまいます。
誤解を生まないためにも、フィリピン人に対して「大丈夫です。OKです。」と言いたいときは、親指を立てるOKサインを出すようにしましょう。また、フィリピン人従業員に親指と人差し指で作る「OK」サインに「お金」の意味がないことを伝えることも重要です。
7.まとめ
フィリピンは東南アジア唯一のキリスト教国なので、他の東南アジアの国々の人と価値観が異なることが多いです。
一方で、フィリピン人は明るく陽気で、仕事にも笑顔で取り組む人が多いです。
どの国でもその国独自のタブーが存在します。日本の常識を基準に考えるのではなく、他国の文化・風習・タブーを理解することで、必然的にフィリピン人従業員と円滑なコミュニケーションを取れる可能性は高くなります。
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