東京|介護の外国人採用で使える補助金・助成金まとめ
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介護現場の深刻な人手不足を背景に、「外国人介護職員の採用を検討している」という施設も増えています。しかし一方で、「採用コストが高い」「採用のための業務が自社できるか不安」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、各自治体、国の制度をうまく活用することで、採用や研修にかかる費用の一部を補助してもらうことができます。
この記事では、外国人介護人材を採用する際に利用できる補助金・助成金をわかりやすくまとめました。コストを抑えながら安定した人材確保を目指したい介護事業者の方は、ぜひ参考にしてください。

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1. 外国人労働者の人数は増加傾向

コロナ禍以降、外国人労働者数は増え続けています。
総務省によると、2023年から2024年の1年間あたりでの増加数は過去最多の253,912人となりました。
同時期の日本人を含めた国内の就業者数の年間増加数が約42万人だったため、日本全体の就業者増加数の60%を外国人が占めていることがわかります。
1-1. 介護業界では人手不足が課題
外国人労働者が増えている日本全体の傾向の中で、介護業界は特に人手不足が深刻です。
人手不足の原因として以下のようなことが考えられています。
| ・日本の高齢化率の急激な上昇(2070年には39%になる。) →要認定者介護者の増加に伴い、介護職員の必要数も増加する ・仕事に対して賃金が低く、心身への負担が大きい |
1-1-1. 要認定者介護者の増加に伴い、介護職員の必要数も増加する

2022年に策定された「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、
- 2026年には約240万人
- 2040年には約272万人
の介護職員が必要だとされています。
2023年時点で介護職員数は212.6万人であるため、2040年までに年間3.2万人の職員を増やさなければなりません。
1-1-2. 仕事に対して賃金が低く、心身への負担が大きい
介護職のイメージとして、「賃金が低い」、「夜勤もあって大変そう」ということを感じている方も多いでしょう。
平均賃金は30.64万円で、平均よりも低いのが現状です。多くの方のサポートを行う社会的意義の大きい仕事でもあるにもかかわらず賃金が低いことは、人手不足に繋がります。
1-1-3. 介護職員の高齢化
介護労働安定センターが毎年行っている「介護労働実態調査」によると、介護労働者の平均は48.7歳です。
他業種の平均年齢が30代後半から40代前半であることからも、介護職の高齢化が顕著であることがわかります。
介護職は自分より身長や体重が重い方の介助をすることもあり、ある程度の筋力や体力が必要です。介護職員の高齢化が進むと、入浴介助などの身体介護をできる職員が少なくなってしまいます。
1-2. 外国人を雇うことで人手不足を解消することができる
介護業界の人手不足を解消するために多くの介護施設が取っている解決策が、外国人介護福祉士の採用です。
現在、全事業所の約42%の介護施設が外国人介護士を受け入れているという調査結果があります。
また、外国人雇用状況のまとめによると、2024年10月末現在、「医療・福祉」分野で働く外国人は11万6350人で、そのうちの85,537人が「社会保険・社会福祉・介護」事業で働いています。
以下、介護分野で働ける在留資格別の人数です。
| 介護ビザ | 8093人(2023年6月末) |
| EPA介護福祉士 | 11,610人(2023年6月末) |
| 技能実習 | 15,011人(2022年6月末時点) |
| 特定技能 | 54916人(2025年7月末) |
特に2019年に特定技能ビザで外国人を雇用できるようになり、介護分野でも外国人が働きやすくなりました。それ以前にもあった介護ビザ、EPA介護福祉士は国や資格による取得のハードルが高く、人手不足の直接的な解決策にはなっていませんでした。

2024年3月に特定技能制度の受入れ見込数が再設定され、2026年4月から2031年3月末までの5年間で13万5000人を受け入れるとしています。
日本人の介護福祉士を採用するのは年々難しくなっている一方で、外国人の介護福祉士は着実に増えています。そのため、外国人介護福祉士を採用することで、事業所の人手不足を一気に解消できる可能性が高まっています。
[出典:厚生労働省社会・援護局「介護人材確保の現状について」]
[出典:公益社団法人 全国⽼人福祉施設協議会「令和4年度外国人介護人材に関する実態調査結果」]
2. 補助金と助成金を利用することで経費削減
外国人介護福祉士の受け入れが施設の人手不足を解消するといっても、外国人介護福祉士を採用するコストや、業務の負担が大きくなることを考えて、なかなか外国人採用に踏み切れない事業所もあるかと思います。
実際、採用には1人90~150万円ほど、イニシャルコスト(初期費用)がかかります。

採用経費に悩んでいる事業所の方は、ぜひ補助金と助成金の利用を検討してください。
補助金と助成金を利用することで採用経費を削減できます。
2-1. 補助金と助成金のちがい
| 補助金 | 助成金 | |
| 財源 | 主に経済産業省・地方自治体の予算(法人税) | 主に厚生労働省・労働局の雇用保険財源(雇用保険) |
| 目的 | 新規事業・設備投資・生産性向上の支援 | 雇用促進・人材育成・職場環境改善の支援 |
| 申請時期 | 公募期間中のみ(期限あり) | 通年受付が多い(制度により異なる) |
| 採択方式 | 審査・選考制 | 条件を満たせば原則受給可能 |
| 競争性 | 高い(採択率に左右される) | 低い(条件充足で受給できる場合が多い) |
| 返済義務 | なし | なし |
| 注意点 | 申請書や事業計画の質が重要 | 労働条件・就業規則などの整備が必要 |
2-1-1. 補助金
補助金は、国や自治体が企業の新しい取り組みを支援するために交付する資金です。
主に経済産業省や地方自治体の予算から出され、設備投資やICT導入など「事業拡大・生産性向上」を目的としています。申請期間が限られ、審査・採択制で競争率は高いものの、採択されれば支給額は大きく外国人を採用した際の介護施設の運用設備を充実させることができます。
2-1-2. 助成金
助成金は厚生労働省などが雇用や人材育成を促すために支給する返済不要の資金です。
雇用保険の財源をもとにしているため、対象は雇用保険に加入している企業です。職員の正社員化や教育訓練、職場環境改善を行う事業所が対象となります。条件を満たせば原則受給できるため、補助金よりも利用しやすく、外国人介護人材の定着支援に適しています。
つまり、
- 補助金=事業の拡大支援
- 助成金=雇用の継続支援
と考えると両者の違いが明瞭になります。
[出典:厚生労働省「令和7年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」]
3. 介護でつかえる助成金
助成金は主に雇用保険を財源に厚生労働省が実施している制度です。そのため、雇用保険に加入している全国の企業が利用できる可能性があります。
3-1. 全国で使えるおすすめの助成金
この章では介護分野で外国人を雇用する場合に使えるおすすめの助成金を4つ紹介します。
・外国人介護人材受入施設等環境整備事業
・人材確保等支援助成金(外国人労働者就労支援環境整備助成コース)
・人材開発支援助成金
・キャリアアップ助成金
3-1-1. 外国人介護人材受入施設等環境整備事業
この事業は、外国人介護人材を受け入れる施設や事業所が、外国人従業員が安心して働ける環境を整えるために活用できる助成金です。具体的には外国人職員とのコミュニケーションを円滑にしたり、資格取得や生活支援の体制を整えたりするための費用をサポートしてくれます。
都道府県ごとに実施されており、補助率や上限額は地域によって多少異なりますが、全国で利用可能です。外国人の定着や早期離職防止に役立つ制度として注目されています。
【受給要件】
・介護保険法に基づく介護施設・事業所である
・「特定技能(介護)」や「技能実習(介護)」など、在留資格を持つ外国人介護職員を受け入れている、または受け入れる予定がある
・外国人職員のコミュニケーション支援、資格取得支援、生活支援などの取組みを実施している
・申請時に事業計画書や報告書を提出できる
【受給額】
・補助率:対象経費の3分の2
・上限額:1施設あたり20万円前後(都道府県により異なる)
・対象経費の例:・外国人向けの多言語マニュアルや掲示物の作成費
・通訳・翻訳サービスの利用料
・オンライン通訳アプリや機器の導入費
・資格取得や日本語学習のサポート費用
・生活支援・交流イベントの実施費
3-1-2. 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労支援環境整備助成コース)
この助成金は、外国人特有の事情に配慮した就労環境の整備を行うために設けられた制度です。
外国人労働者は、日本の労働法制や雇用慣行などに関する知識の不足や言語の違いなどから、労働条件・解雇などに関するトラブルが生じやすい傾向にあるためです。
就業規則の多言語化や相談体制の整備、一時帰国制度の導入など、外国人スタッフの働きやすさを高める取り組みが対象となります。
【受給要件】
・雇用保険の適用事業所である
・外国人労働者を雇用しており、「就労環境整備計画書」を作成・提出している
・計画実施後6か月間の外国人離職率が15%以下である
・外国人雇用状況の届出を行っている
・以下の取組みを行う
<必須項目>
・外国人職員の相談を受ける「雇用労務責任者」を選任する
・就業規則や社内ルールを多言語化する
<選択項目(上記に加え、1つ以上実施)>
・外国人向けの相談・苦情対応体制を整える
・一時帰国休暇制度を導入する
・掲示物・マニュアルなどを多言語化する
【受給額】
基本助成:1制度に導入につき20万円(上限80万円)
※この助成金は企業単位で支給されるものです。事業所単位ではない点に注意。
<対象経費の例>
・就業ルールやマニュアルの翻訳費用
・専門家(社労士やコンサルタント)への委託費
・相談窓口設置や多言語対応のための環境整備費
[出典:厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク(公共職業安定所)「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)ガイドブック」]
3-1-3. 人材開発支援助成金
この助成金は、企業が従業員に対して職務に関連する専門スキルや知識を学ばせるための研修を行ったとき、訓練費や訓練期間中の賃金の一部を助成してくれる制度です。
受給要件としては、事業主が計画を立てて訓練を実施することや、雇用関係助成金共通の条件をクリアすることが必要です。
以下の7つのコースがあり、受給要件や受給額はコースによって異なります。
1. 人材支援育成コース
2.教育訓練休暇等付与コース
3.人への投資促進コース
4.事業展開等リスキリング支援コース
5.建設労働者認定訓練コース
6.建設労働者技能実習コース
7.障害者職業能力開発コース
介護技能の向上研修や日本語研修を行った場合は人材支援育成コースの対象になります。また、「介護福祉士国家試験の勉強期間」や「日本語能力試験受験日」に休暇を与えた場合は教育訓練休暇等付与コースの対象となります。
支給額や対象コースの詳細は厚生労働省のサイトをご覧ください。
3-1-4. キャリアアップ助成金
この助成金は、パートや契約社員などの非正規職員を正社員化したり、処遇を改善したりする事業所に支給される制度です。
介護分野でも多くの事業所が利用しており、外国人職員を長く安定的に雇用するためのサポートとして活用できます。例えば、有期雇用の外国人介護スタッフを正社員に登用した場合や、賃金・賞与制度を整備した場合が対象です。
中小企業の場合、重点支援対象者では80万円まで受給できるケースもあります。詳細な要件や申請手続きは本助成金のパンフレット(令和7年度版)を参照してください。
4. 地域ごとに実施している補助金制度
続いて、各地方自治体が支援している補助金制度の例を紹介します。
| 1.東京都 2.目黒区 3.渋谷区 4.世田谷区 5.立川市 |
4-1. 東京都
中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金
この助成金は、都内の中小企業が外国人従業員の日本語教育などを実施し、定着を図るための制度です。日本語能力試験 N2 レベル以下の外国人従業員を対象に「日本語教員による教育」「教材作成」「ビジネスマナー講座」「異文化理解講座」等の研修を行った場合、所定の経費の一部が助成されます。(講師への謝礼、外部への委託料、印刷製本費など。)
受給要件には、都内に本社または主たる事業所があること、外国人雇用状況届出を適正に行っていることなどが含まれます。
助成率は一般コースで対象経費の 1/2、上限額は標準プランで 25万円、短時間プランでは 15万円です。
[出典;東京都「令和7年度 中小企業の外国人従業員に対する研修等支援助成金」]
4-2. 目黒区
目黒区では、介護人材の確保・育成・定着を支援するため、
- 介護職員初任者及び実務者研修受講費補助事業
- 介護福祉士資格取得費補助
などを実施しています。
受給要件には、区内の介護サービス事業所に勤務している介護職員が、区が定める研修・資格取得を行うこと、法人を通じて申請することなどが含まれます。
「介護福祉士資格取得費補助事業」の補助対象経費は下表のとおりです。上限は10万円です。

初任者研修の受講費補助では、消費税・分割払い手数料を除いた本体価格が対象経費となり、上限6万円です。実務者研修の場合は補助の上限が9万円となります。
[出典:目黒区「令和7年度目黒区介護福祉士資格取得費補助事業」]
[出典:目黒区「令和7年度目黒区介護職員初任者研修受講費補助事業」]
[出典:目黒区「令和7年度目黒区介護職員実務者研修受講費補助事業」]
4-3. 渋谷区
渋谷区の制度として、介護職員等の宿舎借り上げ支援事業があります。外国人介護職員については「確保・定着を図るため、在留資格を保有する者は助成上限戸数の対象外」などの特例が設けられています。
受給対象は、区内に所在する介護サービス事業所で、職員のために区内に宿舎を借り上げている事業所です。
受給額は要件によって異なります。基準額は宿舎1戸あたり月82,000円、もしくは月58,000円で、それに助成率を掛け合わせて受給額を計算します。
4-4. 世田谷区
世田谷区は「令和7年度 介護福祉士資格取得費用の助成事業」を実施しています。
この助成制度は、世田谷区内で働く介護職員が「介護福祉士」資格を取得する際の費用を支援するものです。受験料や登録料、講座受講料などの負担を軽減し、介護人材の定着とスキルアップを促進することを目的としています。
【受給要件】
以下のすべてに該当することが必要
・国家試験合格後3か月以内に資格登録し、登録証を受けている
・資格登録後6か月以内に、区内の事業所等に介護職員等として就労している
・その事業所にて登録後6か月以上継続して就労しており(登録ヘルパーの場合は180時間以上)である
【受給額】
対象となる経費(受験対策講座受講料、受験手数料、資格登録手数料、介護技術講習料)に対し、総額の9割が助成対象。
・経費が「受験対策講座・介護福祉士国家試験受験手数料・登録手数料(A〜C)」の場合 → 上限 61,000円。
・経費に「介護技術講習料(D)」を含む場合 → 上限 115,000円。
申請日の3年前の日付から申請日までの間までに支払った費用が対象です。それ以前に支払った費用は対象にならない点にご注意ください。
[出典:世田谷区「令和7年度 介護福祉士資格取得費用の助成事業」]
4-5. 立川市
立川市の「外国人介護人材受入支援事業補助金」は、主に日本語学習支援や職場への定着促進にかかる経費を対象としています。
【受給額(学習支援事業)】
・補助対象経費:受入れ調整機関を利用した際の委託料(ただし「人材紹介」に係る部分に限定)
・補助の対象となるのは、事業者が自己負担した額のうち 50,000円を超える部分
・支給上限は 特定技能外国人1名につき100,000円まで(交付は予算の範囲内、1,000円未満は切り捨て)
[出典:立川市「立川市外国人介護人材受入支援事業補助金について」]
5. 注意点
この章では助成金、補助金を申請する際の注意点を3つ紹介します。
5-1. 補助金・助成金は精算払い
補助金や助成金は、基本的に「精算払い(後払い)」の仕組みで支給されます。つまり、事業開始前にはお金が入らず、いったん自分たちで費用を立て替える必要があります。
申請が採択された後、まずは自社の資金で事業を実施し、その後に経費の一部が助成される流れです。そのため、申請が通ってもすぐに資金が得られるわけではありません。支給までに数カ月かかることもあります。
補助金をうまく活用するには、手元資金の準備や「つなぎ資金」を確保する計画が必要でしょう。
5-2. 外国人の不法就労
外国人雇用に関連する助成金を利用する際は、不法就労の防止が特に重要です。万が一、在留資格の範囲外で働かせていた場合、助成金の返還だけでなく、企業側が処罰の対象となることもあります。
不法就労には、在留期限切れのまま勤務を続けるケースや、資格外活動、別企業での無断就労などがあります。特に特定技能・介護ビザなど、在留資格の種類によって就労可能な業務が異なるため、採用時および在職中に資格内容を定期的に確認するようにしましょう。

5-3. 補助金と助成金の併用について
補助金と助成金の併用は、条件を満たせば可能です。
しかし、同じ経費を対象にした補助金と助成金の併用はできません。
つまり、「介護福祉士の国家資格」を取得するための補助金を申請しているときに、同時に介護福祉士の資格のための助成金を申請することは不正受給と見なされます。
一方で、異なる費用区分であれば補助金と助成金の併用は可能です。
- 補助金=事業の拡大支援
- 助成金=雇用の継続支援
という明確な区別があるため、介護施設の設備投資と、外国人介護福祉士のキャリアアップのための人件費支援は両立が認められています。
補助金と助成金をうまく併用することで、外国人介護福祉士を採用するときの資金調達の幅が広がります。
6. まとめ
「どの補助金や助成金が、自分の介護施設に適しているのか分からない…」という方はぜひ当スクールにご相談ください。
外国人を企業に紹介した経験が豊富なスタッフが、初めての外国人採用及び、補助金と助成金の選び方・申請までサポートいたします。

