特定技能「建設」|費用・JAC・制度の内容・受入の流れを簡単解説
技能実習と同様に日本で外国人が就労するための資格「特定技能」。
「技能実習とどこが違うの?」、「どうすれば特定技能の受入ができるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、特定技能「建設」の制度や受入にかかる費用、手続きの流れについて解説していきます。
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1. 特定技能「建設」とは?
2019年4月に創設された新しい在留資格「特定技能」では建設の他、介護や製造業など12の分野で外国人労働者の就労が認められています。
ここでは、12分野の中でも特に深刻な人手不足に悩まされてきた建設分野で外国人受入が可能となる特定技能「建設」が創設された背景と現在の受入状況についてご説明します。
1-1.特定技能「建設」ができた背景
総務省の統計局労働力調査によると、建設業界の就業者数は1997年の685万人がピークとされ、2021年時点では485万人にまで減少しています。
建設業界における人手不足の背景には、建設業就業者の高齢化による退職の他、過酷な労働環境や不安定な雇用といった待遇面の問題から若者が建設業を志望しないといった現状があると言われています。このような建設業界における深刻な人手不足の問題を打破するため、一定程度の技能を持ち、即戦力となる外国人の就労を認める特定技能制度が2019年に創設されました。
特定技能には、在留期間の通算が5年までの「特定技能1号」と在留期間更新の上限がなく、家族帯同も認められる「特定技能2号」の2種類があります。特定技能2号への移行ができれば、最大5年と上限のある技能実習や特定技能1号とは異なり、在留期間更新の回数に制限なく長期にわたって就労してもらうことが可能です。
特定技能について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
1-2.特定技能「建設」の現状と受入見込み人数
特定技能が創設された2019年には特定技能「建設」で就労する外国人の人数は267人でしたが、2021年には6,360人とその受入人数は年々大幅に増加しています
建設分野における特定技能外国人数
2019年 | 2020年 | 2021年 |
267人 | 2,116人 | 6,360人 |
2022年6月末時点では、建設分野は12ある特定技能の分野のうち、5番目に特定技能外国人の受入人数が多い分野となっています。
特定技能制度が設立した当初は建設分野における特定技能外国人の受入人数は4万人が上限とされていました。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を考慮し、2022年8月30日の閣議決定により、2023年3月末までは受入人数の上限を3万4千人とする方針に変更されています。
参考:出入国在留管理庁|「特定技能における受入れ見込数の見直し及び制度の改善について(令和4年8月30日閣議決定)」
また特定技能建設では事業所あたりに受け入れられる外国人の人数が決まっています。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
2. 建設分野における特定技能と技能実習の違い
建設業界で外国人の受入ができる点で似ている特定技能と技能実習ですが、2つの制度は目的や受入に関わるルールが異なります。
ここでは特定技能と技能実習の違い、両者のメリット・デメリットについてご説明します。
2-1.建設分野における特定技能と技能実習の5つの違い
建設分野における特定技能と技能実習には、大きく分けて5つの違いがあります。
特定技能 | 技能実習 | |
制度の目的 | 国内での人材確保が困難な産業分野の人手不足解消 | 日本の技術や知識を開発途上地域に移転する国際貢献 |
在留可能な期間 | 特定技能1号:最大5年 特定技能2号:無期限 | 技能実習1号:1年 技能実習2号:2年 技能実習3号:2年 |
業務範囲 | 3つの業務区分のうち、特定技能の資格を取得した区分内の作業すべてに従事できる。 | 建設分野の22職種33作業のうち、技能実習計画で認定を受けた作業のみに従事できる。 |
転職・転籍 | 可 | 不可 |
支援を行う団体・機関 | 登録支援機関 ※支援業務を委託する場合 | 監理団体 |
以下で各項目について詳しく解説していきます。
制度の目的
特定技能も技能実習も日本で外国人に働いてもらうための在留資格と思われがちですが、制度の目的が全く異なります。
技能実習制度は開発途上国の外国人に技能実習を通じて日本の高い技術を習得してもらい、その技術や知識を母国の経済発展に活かしてもらうという国際貢献を目的として創設されました。そのため、技能実習生は人手不足を補うための労働力ではありません。
一方、特定技能制度は国内での人材確保が困難な産業分野において、一定の専門性や技能を持ち、即戦力となる外国人を受け入れ、日本の人手不足解消を目的とする制度です。特定技能制度の創設により、これまで外国人労働者の従事が認められていなかった単純労働を含む幅広い業務に携わってもらうことが可能となりました。
在留可能な期間
技能実習では優良な企業と監理団体に認められる技能実習3号を含めて、最大5年間しか在留ができませんでした。しかし、特定技能制度が創設されたことにより、技能実習修了者は6年目以降も在留することができるようになりました。
特定技能制度では特定技能1号の在留期間は通算で5年と制限されていますが、熟練した技能を要する業務に従事する外国人に認められる特定技能2号になると、在留期間更新の上限がなくなります。そのため、優秀な外国人を長く雇用することが可能です。
業務範囲
技能実習生が従事できる作業は技能実習計画で認定を受けた33作業のみのうちの1作業のみと非常に限定的です。
一方、特定技能「建設」では土木、建築、ライフライン・設備の3区分のうち、特定技能の資格を取得した区分内のすべての作業が可能となり、より幅広い業務に従事してもらうことができるようになりました。
転職・転籍
技能実習では原則として転職や転籍が認められていないため、技能実習2号までは同じ企業で同じ作業に従事しなければなりません。ただし、技能実習2号から3号への移行時のみ転籍が可能です。
しかし、特定技能では日本人労働者と同様に転職や転籍が認められているため、本人が希望をすれば自由に転職や転籍ができます。
日本で就労する外国人労働者の場合、SNSなどでより待遇の良い企業の情報を収集し、現在よりも好待遇の企業が見つかるとすぐに転職や転籍を決めてしまうケースも少なくありません。特定技能で働く外国人を低賃金で雇用できる労働力と考え、職場環境の整備や待遇面の改善を怠っていると外国人労働者が定着しなくなってしまいます。
外国人労働者と良好な雇用関係を築き、長く働いてもらうためには、賃金や働き方、日頃のコミュニケーションの取り方などの改善が欠かせません。
支援を行う団体・機関
特定技能と技能実習では受入企業や外国人を支援する団体にも違いがあります。
技能実習生の場合、必ず監理団体を通じて技能実習生を採用する必要があります。監理団体は採用から入社後のフォローまでを行い、技能実習生の受入企業を監理する義務を負っています。一方、特定技能の場合は登録支援機関が監理団体のような役割を担っていますが、外国人を適切に支援できる環境が整っていれば、登録支援機関を利用せずに外国人を受け入れることも可能です。
2-2.特定技能と技能実習のメリット・デメリット
特定技能と技能実習の受入には次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット | デメリット | |
特定技能 | 若手人材を採用できる 即戦力となる人材を確保できる 基礎的な日本語能力があり、日本語でのコミュニケーションが取りやすい 長期雇用が可能 業務範囲が広い | 転職・転籍のリスクがある 技能実習と比べて求職者を探しにくい |
技能実習 | 若手人材を採用できる 転職・転籍ができないため、雇用が 安定する 特定技能に比べて求職者を探しやすい | 従事できる作業が限定的 日本語や日本での生活に慣れていない ため、指導に時間がかかる |
技能実習生は監理団体を通じて募集をすると、送り出し機関で候補者を集めてもらえる体制が整っているため、特定技能に比べると求職者を探しやすいというメリットがあります。また、原則として転職ができないことから、雇用が安定します。
一方、特定技能は募集方法が多岐にわたり、求職者を探すまでに手間や時間がかかる反面、基礎的な日本語能力を持つ若い人材を即戦力として活用することができます。また、技能実習生は従事できる作業が限定されていますが、特定技能では技能実習よりも幅広い業務に携わってもらうことが可能です。
特定技能と技能実習の違いについてはこちらの記事でさらに詳しく解説しています。
2-3.登録支援機関とは?
登録支援機関は特定技能外国人の受入企業に代わり、以下の業務を行います。
- 支援計画に基づいて外国人の支援を行う
- 出入国在留管理局へ各種届出を行う
特定技能外国人の受入企業は特定技能外国人受入のための支援計画を策定し、受入後にはこの計画に基づき、出入国時の送迎や住居の確保、公的手続きへの同行などの支援を行わなければなりません。
また、支援計画の策定はどの企業でもできるわけではなく、中長期在留者の受入実績があり、外国人が十分に理解できる言語(通常は母国語)による支援ができるなど、さまざまな要件を満たす必要があります。
支援計画策定に必要な条件をすべて満たし、日常の業務と並行して支援計画の内容を実施できるだけの体制を自社内で整えられる企業は少ないと言えます。そのため、特定技能外国人を受け入れる多くの企業が登録支援機関へ支援業務の一部または全部を委託しています。
登録支援機関について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
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3. 特定技能「建設」で受入ができる職種・業務区分
これまで特定技能「建設」は19の業務区分に分かれていました。この制度ではある区分で特定技能の資格を取得すると、それ以外の区分の業務はできず、業務範囲が限定されることや建設業に関わる作業の中で特定技能の対象となっていない作業があるなどの問題がありました。これを受け、2022年8月30日に業務区分の再編と特定技能の対象となる作業の見直しが行われました。
この結果、業務区分は3つに統合され、1つの区分で特定技能の資格を取得すると同一区分内の作業すべてに従事できるようになりました。
以下で再編後の3つの区分とそれぞれの区分で従事できる作業についてご説明していきます。
3-1.土木区分
土木区分では、指導者の指導・監督を受けながら、主に以下の作業に従事することができます。
型枠施工 | コンクリート 圧送 | トンネル 推進工 | 建設機械 施工 | 土工 |
鉄筋施工 | とび | 海洋土木工 |
3-2.建築区分
建築区分では、指導者の指導・監督を受けながら、主に以下の作業に従事することができます。
型枠施工 | 左官 | コンクリート圧送 | 屋根ふき | 土工 |
鉄筋施工 | 鉄筋継手 | 内装仕上げ | 表装 | とび |
建築大工 | 建築板金 | 吹付ウレタン断熱 |
3-3.ライフライン・設備区分
ライフライン・設備区分では、指導者の指導・監督を受けながら、主に以下の作業に従事することができます。
電気通信 | 配管 | 建築板金 | 保温保冷 |
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「外国人受入れマニュアル」
参考:国土交通省「土地・不動産・建設業」
4. 特定技能「建設」で受入をするための企業の要件
特定技能「建設」で外国人を受け入れるためには、受入企業が満たさなければならない要件があります。
ここでは、特定技能「建設」で外国人を受け入れるための4つの要件についてご説明します。
4-1.建設業許可の取得
軽微な建設工事のみを請け負う場合は不要の建設業許可ですが、外国人を採用する場合には建設業許可の取得が必須となります。
建設業許可の種類と受入予定の外国人が従事する職種が一致している必要はなく、何らかの建設業許可を取得して入れば特定技能の受入が可能です。
4-2.建設キャリアアップシステムへの加入
特定技能「建設」で外国人を受入予定の企業は一般財団法人建設業振興基金が運営する建設キャリアアップシステムの事業者登録をする必要があります。
また、日本に在留する外国人を特定技能として受け入れる場合には、外国人本人も建設キャリアアップシステムの技能者登録をする必要がありますので、事業者登録後に忘れずに登録を行いましょう。
事業者登録、技能者登録ともに、登録申請はインターネットまたは行政書士法人などの認定登録機関窓口で申請可能です。
4-3.JAC(一般社団法人建設技能人材機構)への加入
特定技能「建設」で外国人を受け入れるためには、JAC(一般社団法人建設技能人材機構)に正会員団体の会員またはJACの賛助会員として加入する必要があります。
特定技能「建設」の受入にはどちらの加入方法を選んでも問題ありませんが、会員となるために必要な費用が異なります。詳細は、6.特定技能「建設」の受入にかかる費用をご確認ください。
4-4.JACとは?役割・費用・正会員と賛助会員の違い
JACとは、低賃金、長時間労働といった問題を抱える建設業界の労働環境改善や職業紹介、技能評価試験の実施などを行い、建設業界で働く特定技能外国人の受入や育成をサポートする機関です。
JACは特定技能の他の分野で加入が必要となる「協議会」の役割も兼ねています。
JACに加入するためには、正会員団体の会員となる方法とJACの賛助会員となる場合の2つの方法があります。
正会員団体の会員となる場合、JACの正会員である建設業者団体の会員となることで間接的にJACに加入したことになるため、JACへの年会費は発生しません。しかし、所属する建設業者団体の会員となるための費用を負担しなければなりません。
一方、JACの賛助会員となる場合は、JACへ直接的に加入することになります。そのため、JACへ年会費を納める必要があります。
また、JACに加入するとJACまたは正会員団体に納める年会費の他に、特定技能外国人1人につき負担する必要のある受入負担金が発生します。
4-5.国土交通省による建設特定技能受入計画の認定
出入国在留管理局へ特定技能としての資格取得に必要な申請を提出する前に、特定技能「建設」では国土交通省による建設特定技能受入計画の認定を受ける必要があります。
建設特定技能受入計画の申請は外国人就労管理システムを通じてオンラインで行います。
建設特定技能受入計画では申請から認定までにかかる標準的な審査期間は2ヶ月程度とされています。しかし、審査は非常に細かく、修正などの対応も多く発生するため、期間に余裕をもって申請することをおすすめします。
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「外国人受入れマニュアル」
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「外国人受入れマニュア」
5. 特定技能「建設」で受入をするための外国人の要件
外国人が特定技能の資格を取得するためには技能実習の経験者と未経験者で要件が異なります。
技能実習経験者は技能実習2号を良好に修了していれば、特定技能になることができます。一方、技能実習未経験者の場合は技能検定3級の水準に相当する技能評価試験と日本語能力を測る試験の両方に合格する必要があります。
ここでは、技能実習未経験者が特定技能になるために必要な2つの要件について詳しくご説明します。
5-1.各分野・業種ごとの技能評価試験への合格
建設分野で特定技能になるための要件の1つがJACの実施する建設分野特定技能1号評価試験への合格です。
建設分野特定技能1号評価試験には学科試験と実技試験があります。
学科試験
問題数 | 30問 |
試験時間 | 60分 |
出題形式 | 〇×および択一式 |
実施方法 | CBT方式 |
合格基準 | 合格点の65%以上 |
実技試験
問題数 | 職種ごとに異なる |
試験時間 | 職種ごとに異なる |
実施方法 | 作業試験、判断試験など、職種ごとに異なる |
合格基準 | 職種ごとに異なる |
試験日程と試験場所は職種ごとに異なりますので、JACホームページの建設分野特定技能1号評価試験情報をご確認ください。
また、建設分野特定技能1号評価試験は海外でも受験でき、2021年3月にはベトナムとフィリピンで建設分野では初めてとなる海外での技能評価試験が実施されました。しかし、海外での2度目以降の試験日程についてはまだ公開されていないため、海外に居住している外国人がすぐに技能評価試験を受験したい場合には日本で受験する必要があります。
5-2.日本語能力を測る試験への合格
建設分野で特定技能になるための2つ目の要件が日本語能力を測る試験への合格です。
技能実習未経験者が特定技能として就労するためには、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上のどちらかに合格する必要があります。
日本語試験の合格は日本で生活したり、就労したりする上で必要な日本語能力を有していることの証明となります。
国際交流基金日本語基礎テストはアジア10ヶ国で受験でき、日本語能力試験は世界各国で受験することができます。
参考:JFTbasic 国際交流基金日本語基礎テスト・日本語能力試験JLPT
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「外国人受入れマニュアル」
6. 特定技能「建設」の受入にかかる費用
特定技能「建設」として外国人を受け入れる際には、関係する団体や機関に支払う費用と特定技能外国人へ支払う給与が発生します。
特定技能外国人を採用する方法や就労してもらう地域によっても費用や給与額は異なりますが、関連する団体や機関に支払う費用と特定技能外国人へ支払う給与のおおよその金額についてまとめました。
6-1.団体・機関ごとにかかる費用
特定技能「建設」で外国人を採用する場合、主に以下の費用が発生します。
JAC年会費 | 賛助会員:24万円 正会員の会員:所属する団体により異なる |
JAC受入負担金 | 1人あたり年額15~24万円 ※技能評価試験の受験有無などにより異なる |
建設キャリアアップシステム | 事業者登録料:0~24万円(5年有効) ※資本金により異なる 技能者登録料:2,500~4,900円(9年有効) ※申請方法により異なる 管理者ID利用料:1IDあたり年額11,400円 |
特定技能外国人の紹介費用相場 | 1人あたり10~60万円 |
出入国在留管理局への申請代行費用相場 | 1申請あたり10~20万円 |
登録支援機関への支援委託料相場 | 1人あたり月額1万5千~3万円 |
団体・機関ごとにかかる費用のうち、特定技能外国人の紹介費用や出入国在留管理局への申請代行費用、支援委託料については、依頼する団体・機関によって大きく異なります。特に支援委託料については料金設定に関するルールがないため、月額固定で設定している場合や支援する項目ごとに費用を設定している場合など、団体・機関によってさまざまな料金体系が存在します。
そのため初めて特定技能外国人を受け入れる際は、どのようなサービスにいくらかかるのか、費用は固定なのか変動するのかなどについて、特定技能外国人受入前に把握しておくことが重要です。
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「年会費と受入負担金」
参考:建設キャリアアップシステム「ご利用方法・料金」
特定技能外国人の受入に必要な費用全般が知りたい方は「特定技能外国人コスト一覧表」をダウンロードください
6-2.特定技能外国人の給与について
特定技能「建設」で外国人を受け入れる際に必要となる国土交通省への建設特定技能受入計画の申請では、特定技能として受入予定の外国人の給与について他の分野に比べて厳しく審査されます。これには低賃金や外国人労働者には日本人に付与される手当を付けないなどといった不当な扱いをする企業を排除する目的があります。
建設特定技能受入計画の認定を受けるためには以下のポイントを押さえて給与額を設定する必要があります。
- 基本給、手当ともに同等の技能を持つ日本人従業員と同等以上であること
- 特定技能外国人が就労する地域における建設業の賃金水準と比較し、低額でないこと
特定技能外国人が就労する地域における建設業の賃金水準については、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」で都道府県・産業分類別の賃金水準を確認できます。
7. 特定技能「建設」を採用する方法
特定技能「建設」で外国人を採用する場合には、大きく分けて3つの方法があります。
7-1.技能実習から特定技能への移行
特定技能「建設」で外国人を採用する1つ目の方法は、技能実習を修了しているまたは修了予定の技能実習生を採用する方法です。自社ですでに技能実習生を受け入れている場合、技能実習生本人が希望すれば、技能実習修了後に在留資格の変更を申請し、特定技能として就労してもらうことができます。
技能実習生の受入がない場合には、他社で受け入れている技能実習生を採用することも可能です。この場合、技能実習生本人は特定技能への移行を希望しているものの、技能実習を行っている企業では特定技能としての雇用を検討していない場合のみ採用ができます。
技能実習生を採用する場合には、特定技能の期間中に一時帰国する可能性があることにも注意が必要です。技能実習期間の3年または5年の間、多くの技能実習生が母国に一時帰国することなく技能実習を修了します。そのため、特定技能への移行後に母国にいる家族に会うためや日本で納めた年金保険料の一部返金の手続きを行うために一時帰国を希望するケースが多くあります。
受入企業は特定技能外国人から一時帰国の申し出があった場合には、やむを得ない事情がある場合を除き、有給休暇を使って一時帰国してもらえるよう、配慮しなければなりません。
特定外国人を複数人受け入れる場合などは業務に支障が出ないよう、早めに一時帰国スケジュールを立てておくと安心です。
7-2.留学生から特定技能への移行
特定技能「建設」で外国人を採用する方法の2つ目は日本で学ぶ留学生を採用する方法です。留学生の場合、技能評価試験と日本語試験の合格が要件となる上、住民税や社会保険料を納めていることを証明する書類の提出が必要となるため、技能実習生と比べると申請上のハードルは高いと言えます。
また、留学中に一時帰国できなかった留学生の場合も特定技能への移行後に一時帰国を希望することが考えられます。そのため、留学生を採用する場合にも一時帰国希望の有無や予定をあらかじめ確認しておくとよいでしょう。
7-3.海外からの採用
特定技能「建設」で外国人を採用する3つ目の方法は、海外にいる技能評価試験と日本語試験の合格者を採用する方法です。しかし、特定技能「建設」の場合、現時点では海外での技能評価試験がほとんど実施されていないため、両試験の合格者を探すのは困難と言えます。
そのため、現時点では建設分野の技能実習を修了して本国へ帰国している元技能実習生を採用する方法が現実的です。技能実習から特定技能への移行のケースと同様に、自社で技能実習生を受け入れたことがない場合でも、他社で技能実習を修了した元技能実習生を特定技能として海外から呼び寄せることが可能です。
参考:出入国在留管理庁「特定技能のガイドブック(外国人の方向け)」
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「外国人受入れマニュアル」
8. 特定技能「建設」を採用するまでの流れ
特定技能「建設」は他の分野と比べて必要な手続きが多くあります。
特定技能「建設」で外国人を採用する際は、手続きの種類や流れを把握し、早めに準備することをおすすめします。
日本に居住する技能実習生や留学生を採用する際は、上記ステップ8の出入国在留管理局への申請で許可が下りると、特定技能「建設」に移行できます。
一方、海外にいる人材を採用する際は、出入国在留管理局での許可後、本国の日本大使館や日本領事館で査証(ビザ)を取得し、日本へ入国します。
参考:法務省「特定技能ガイドブック(事業者用)」
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「外国人受入れマニュアル」
9. まとめ
国内の人材を募集してもなかなか人が集まらない建設業において、外国人を雇用する企業が年々増加しています。そのような状況の中で注目を集める特定技能「建設」での外国人の受入は、若い労働力の長期的な確保や労働環境の整備につながるなど、メリットが多くあります。
一方、特定技能制度には複雑なルールも多い上に、特定技能「建設」は他の分野と比べて煩雑な手続きを伴うため、自社ですべての手続きを行うのは難しいと感じる方も多いでしょう。そのため、特定技能外国人を採用する際は知識や経験豊富な外国人雇用のプロに相談することをおすすめします。
当スクールでは特定技能外国人の受入に関するご相談も承っていますので、特定技能「建設」での外国人受入を検討されている方や具体的な採用方法、手続きについて知りたい方は無料オンライン相談をおこなっているのでお気軽にお問合せください。