特定技能「飲食料品製造業」とは?仕事内容・条件・取得方法&受け入れ可能な事業かどうかがひと目で分かる

執筆者:井上道夫(行政書士井上法務事務所所長)
飲食料品製造業の人材確保について、お困りではありませんか。少子高齢化による若手の不足や、業界イメージ(厳しい労働環境)により人材確保に悩んでいる企業が多いでしょう。そのため働きやすい環境の整備と、積極的な採用活動が求められます。
人手不足を解消する方法として、多くの企業が外国人材に目を向けるようになっています。この記事では、特定技能「飲食料品製造業」ビザで受け入れる方法を解説しました。任せられる仕事内容や受け入れ企業の条件、外国人の条件にも触れているので、採用活動を進めるのにお役立てください。
厚生労働省の雇用動向調査によると、令和3年1月時点で「食料品、飲料・たばこ・飼料製造など」の分野で働く常用労働者数は約133万人です。令和10年度には就業者数が140万人ほどに増える見込みですが、それでも約21万人の人手が足りなくなると予測されています。 ※飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針 |

ゼロからでも学べる!図解付きで解説
【2025年最新版】そもそも特定技能とは何なのか?
特定技能外国人を採用したいとお考えの方必見!
これを読めば特定技能マスターになれる!
1.特定技能とは?
外国人材を採用する場合、適したビザを取得してもらう必要があります。飲食料品製造業なら、「人手不足解消」を目的とした「特定技能」ビザが必要です。
特定技能には1号と2号があり、1号で通算5年を修了すると2号に移行でき、永続的に雇用できます。
特定技能に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

特定技能「飲食料品製造業」とは飲食料品(酒類を除く)の製造、加工、安全衛生などの飲食料品を製造する過程全般で働く外国人のためのビザです。
2 .特定技能「飲食料品製造業」の現状
実際に、どのくらいの人材を受け入れているのか気になるかもしれません。ここでは、特定技能「飲食料品製造業」の受け入れ状況を紹介します。
2-1.特定技能「飲食料品製造業」の受け入れ人数

分野別特定技能在留外国人数の推移をみると、「飲食料品製造業」は連続1位です。
過去数年間の統計をみても、安定して高い割合を維持しています。 飲食料品製造業は、他の業種と比べても、特定技能外国人材の受け入れが積極的にされているとわかります。
(※令和5年12月末・令和6年6月末・令和6年12月末時点、出入国在留管理庁の調査結果「特定技能制度運用状況①」より)

特定技能2号のみの調査では、建設、農業に続き3番目で全体の19.0%(158人)でした。外国人労働者からみて、特定技能2号の需要が高いといえます。
※令和5年12月末の調査結果
企業視点でみると管理業務も任せられる人材を長期間雇用できるのが、特定技能2号の魅力です。
2-2.技能実習ビザから特定技能への移行77.7%

※出典:特定技能制度の現状について|法務省
特定技能ビザの取得は、技能実習からの移行が圧倒的に多いです。令和4年時点12月末時点、法務省の調査結果は以下のとおりです。
- 技能実習ビザからの移行:77.7%(3万3,042人)
- 技能試験を受けて特定技能ビザを取得:22.3%(9,463人)
技能実習2号を優秀な成績で修了した人は、「特定技能評価試験」と「日本語試験」を受けなくても、特定技能1号へ在留資格を移行できます。試験が免除されるので、企業にとっても手続きがスムーズになり、費用負担が軽減されます。
技能実習からの移行なら現場に慣れた人材なので、即戦力として雇用できるのもポイントです。
関連記事:


3.特定技能「飲食料品製造業」で任せられる仕事内容
特定技能1号は製造・加工・衛生管理業務を担当し、2号はさらに全体の管理業務を担えます。

※引用:特定技能1号の各分野の仕事内容(Job Description)
※引用:特定技能2号の各分野の仕事内容(Job Description)
ただし「清涼飲料製造業」および「茶・コーヒー製造業」に、酒類の製造業は含みません。したがって、酒類と塩の製造以外の飲料・食料の製造業が対象です。
<最新情報>
スーパーマーケットでも特定技能外国人が惣菜等の製造が可能になりました。
令和6年7月23日、上乗せ基準告示の改正により、特定技能外国人の受け入れが認められる事業所を追加し、食料品スーパーマーケットおよび総合スーパーマーケットの食料品部門における惣菜等の製造も可能となりました。
※引用:特定技能の受け入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)
4.受け入れが可能な業態かチェック!

飲食料品製造業では、具体的にどのような事業が対象なのか気になるでしょう。 ここでは、特定技能外国人の受け入れが可能・不可能な区分を紹介します。
4-1.受け入れ可能な区分
受け入れが可能な事業は、以下のとおりです。
精肉加工、鶏卵の選別・包装工場(GPセンター)、水産加工のプロセスセンター、と畜場併設の食肉加工場、野菜カット工場、お弁当・惣菜製造、スーパーマーケットのバックヤード、セントラルキッチン(プロセスセンター)
4-2.受け入れ対象外の区分
受け入れが不可能な事業は、以下のとおりです。
畜場単体、野菜の軽微な加工、野菜栽培、持ち帰り飲食サービス、施設給食業、配達飲食サービス、店頭販売している弁当店、パック詰め・検品・箱詰め・運搬のみの業務、スーパーマーケットの接客関連業務
5.特定技能「飲食料品製造業」受け入れ企業の条件
特定技能「飲食料品製造業」の外国人を企業が受け入れるためは、次の4つの条件すべてを満たす必要があります。
- 農林水産省、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者で構成される「食品産業特定技能協議会」(以下「協議会」と略します。)の構成員になること
- 上記協議会に対し、必要な協力を行うこと
- 農林水産省またはその委託を受けた者が行う調査等に対して、必要な協力を行うこと
- 登録支援機関に「1号特定技能外国人支援計画の実施」を委託するに当たって、上記1、2及び3の条件を全て満たす協議会の構成員となっており、さらに農林水産省及び協議会に対して、必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
<協議会とは>
協議会とは、飲食料品製造業分野と外食業分野が共同で設置した機関のことです。その目的は、機関の構成員同士の連携の緊密化を図り、制度や情報を周知すること、法令遵守を啓発することのほか、地域ごとの人出不足の状況を把握した上で、必要な対応等をすることです。
参考:農林水産省|食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について
6.特定技能1号「飲食料品製造業」外国人の条件
外国人が、飲食料品製造業に受け入れるためには、以下の2つ要件を満たす必要があります。
なお、飲食料品製造業分野の第2号技能実習を修了した外国人については、以下の試験は免除されます。
外国人はどのくらい日本語力があるのか知りたい方
⇒こちらの資料をダウンロードください。
6-1.技能測定試験に合格する
技能評価試験、具体的には「飲食料品製造業技能測定試験」に、合格する必要があります。
「飲食料品製造業技能測定試験」は、飲食料品製造業分野で業務をする場合に必要な能力を持っていることを確認する試験です。
<試験科目>
満点 | 試験項目 | |
学科試験 | 100 | 一般衛生管理の基礎 製造工程管理の基礎 HACCPによる衛生管理 労働安全性の知識 | 食品安全・品質管理の基本
実技試験 | 50 |
<合格基準>
満点の65%以上です。
6-2.日本語能力試験に合格する
「国際交流基金日本語基礎テスト」、あるいは「日本語能力試験」に合格する必要があります。
「国際交流基金日本語基礎テスト」とは、「ある程度日常会話ができて、日常生活に支障がない程度の能力があるかどうか」を判定するためのテストです。2か月に1回 実施され、テスト内容は、「文字と語彙」、「会話と表現」、「聴解」、「読解」で構成されています。
「日本語能力試験(N4以上)」は、日本語を母語としない人向けのテストです。テストは、難しい「N1」からやさしい「N5」までの5つのレベルに分かれています。毎年7月と12月にテストが実施されていますが、海外では7月のみ実施している都市、12月のみ実施している都市があります。注意しましょう。
試験Webサイト▶︎国際交流基金日本語基礎テスト
試験Webサイト▶︎日本語能力試験
6-3.技能実習2号ビザから移行する
技能実習2号ビザから移行するには、要件を満たしたうえで書類を提出します。なお、特定技能試験と日本語能力試験は、免除されるため受験が不要です。
<要件>
- 技能実習2号をしっかり修了している
- 従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性が認められる
<書類提出の流れ>
技能実習から特定技能に移行するには、地方出入国管理局に必要書類を提出します。必要な書類の一覧は、特定技能総合支援サイトから確認しましょう。
詳しくは、下記の記事にある「3.技能実習から特定技能に移行できる!そのやり方は?」をご覧ください。

JapanJobSchoolは登録支援機関として特定技能ビザを申請するサポートも行っています
▶「3分でわかるJapanJobSchool」のダウンロードはこちら
▶「JapanJobSchool価格表」のダウンロードはこちら
6-4.HACCAP(ハサップ)の知識が必要
企業・外国人のどちらも、「HACCP」の知識と取り組みが望まれます。
2021年6月1日から、飲食業や飲食料品製造業の事業者は、「HACCP」の導入が義務付けられました。HACCPとは、製造工程全体で安全性を確保する衛生管理の仕組みです。
具体的には、食中毒菌の汚染や異物混入などのリスクを事前に把握して対処します。例えば原材料の入荷から製品の出荷に至るまでの各工程を分析し、特に重要なポイントを重点的に管理します。結果、危害要因の発生を防ぐ、またはその影響を最小限に抑えます。
▶参考:厚生労働省
特定技能外国人は、特定技能の試験内容に「HACCP」が含まれているため、別途テストを受ける必要はありません。
企業には、「HACCP」を取り入れた衛生管理が求められます。HACCP(ハサップ)にて、「小規模な営業者等が実施すること」が確認できます。
7.まとめ
特定技能制度を活用すれば、即戦力となる外国人材を確保し、長期的な雇用につなげられます。制度を活用して、人手不足を解消し、企業の成長を目指しましょう。
ただし外国人にとってビザの取得はハードルが高く、人事や事務担当のサポートを必要とします。そのため、担当者は手続きに負担を感じるかもしれません。
当社JJSでは、登録支援機関として外国人材の紹介から採用後までサポートいたします。用意する書類や定期報告もトータルで引き受け可能です。日本人理解やビジネスマナー研修を実施しており、現場に慣れるための支援もできます。 飲食料品製造業での外国人採用を検討されていれば、無料相談ができます。まずはお気軽にお問い合わせください。