外国人労働者の有給休暇について基本情報から長期定着の職場環境作りまで詳しく解説
「外国人従業員に有給休暇を希望されたけど、外国人従業員の有給休暇の条件は何なのだろう。」
「外国人従業員への有給休暇の付与日数は、日本人従業員と同じなのだろうか。」
外国人を雇用している企業の方は、このような疑問を抱いたことがあるかと思います。
外国人従業員も、日本人従業員と同様に有給休暇を消化することが義務付けられています。付与日数も原則日本人従業員と同様です。
この記事では、外国人従業員の有給休暇についての基本情報から、有給休暇を使って外国人従業員にも長く働いてもらえる環境の作り方を紹介します。
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有給休暇に関してご不明点がございましたらお気軽にお問い合わせください
1. 有給休暇について
年次有給休暇とは厚生労働省のHPでこのように説明されています。
有給休暇の取得は、付与される要件を満たしたすべての労働者が行使できる権利です。そのため、就労ビザで働く外国人従業員も日本人従業員と同様に有給休暇を取得することができます。
また、有給休暇は労働法第39条に定められています。
2019年4月から、有給取得日数が10日以上の労働者には、基準日から1年以内に5日以上の有給の取得が義務付けられました。
企業から違反者が出た場合、企業は30万円以下の罰金を課されることになります。
1-1.有給休暇を取得するための要件
労働法39条によると、有給休暇を取得するための労働者の要件は以下の2つです。
- 雇用から継続して6カ月以上勤務している
- 全出勤日のうち8割以上出勤している
有給休暇を取得する権利を得るための雇用期間は入社日から起算します。
例えば、入社日が4月1日で初出勤日が4月4日であった場合、雇用期間は4月1日から計算します。
1-2.有給休暇の付与日数
「雇用から継続して6カ月以上勤務している」、「全出勤日のうち8割以上出勤している」労働者には有給休暇を取得する権利が与えられますが、付与日数は継続勤務年数によって異なります。
従業員が有給休暇の日数をしっかり把握していない場合もあります。特に東南アジアの企業では権利としては存在しても、実際に使われていないこともあるそうです。
外国人労働者は、有給休暇制度に慣れていない可能性があるため、いつ有給休暇が付与され、労働者はいつまでに実際に休暇を取得しなければならないのか、企業側が確実に把握する必要があります。
なお、有給休暇には有効期限があり、付与されていたとしても原則2年以内に消化できなかった場合は消滅してしまいます。
派遣社員・パートタイム従業員との違い
正社員や派遣社員、パートタイムなどの雇用形態に関わらず、全従業員は有給休暇を取得する権利があります。
派遣社員、パートタイム従業員が同一の職場で週5日のフルタイムで働く場合は、正社員と同様の日数の有給休暇が付与されます。
ただし、週の所定労働日数が1~4日の場合は、1年間の所定労働日数によって、付与される有給休暇の日数が異なります。
技能実習生の場合も他の労働者と同様、有給休暇を与えなければなりません。勤続勤務年数は1号、2号は「講習」修了後、3号では入国時から起算します。
有給休暇は半日・時間単位での取得も可能
労使協定を締結していれば、年5日を限度として、時間単位で年次有給休暇を与えることができます。
時間単位で有給休暇を取得した場合の賃金額は、「平均賃金」、「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」又は「標準報酬日額(労使協定が必要)」をその日の所定労働数で割った額になります。
なお、労使協定が締結されていない場合でも、労働者が希望し使用者が同意した場合であれば、半日単位で有給休暇を付与することができます。
1-3.有給休暇の時期
年次有給休暇は労働者が希望した日に取得させなければなりません。
しかし一方で、そもそも特定技能外国人を雇用した背景には慢性的な人手不足を解消するためであり、繁忙期に特定技能外国人に休まれると困る場合があります。
このように「事業の正常な運営を妨げる場合」においては、企業が有給休暇を取得させる時期を変更させることもできます。これは労働基準法第39条5項に「時季変更権」として定められています。
ただし、労働者からの有給休暇の希望日をむやみに変更すると、労働者の不満につながる可能性が高いです。時季変更権を行使する場合は慎重に検討し、労働者にその理由を丁寧に説明しなければなりません。
特定技能外国人の有給休暇は、一時帰国の際に使うことが一般的です。詳しくは「3.一時帰国のシーズン」で説明していますので、そちらも併せてご覧ください。
[出典:厚生労働省「3.年次有給休暇の時間単位付与」]
[出典:厚生労働省「よくある質問『年次有給休暇とはどのような制度ですか。』」]
[出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」]
2. 有給休暇のメリット
有給休暇の取得・使用を特定技能外国人にもさせることは、将来的に企業の人手不足を解決する大きなメリットとなります。
2-1.外国人従業員の定着率アップ
特定技能外国人に多い東南アジアや南アジアでは、有給休暇という制度があっても形骸化している場合が多いです。そのため、一時帰国や有事の際に有給休暇を取得させてくれる日本の企業に長く勤めたいと思う外国人が多いでしょう。
慢性的な人手不足を解消するために外国人従業員を雇用している企業がほとんどなので、有給休暇のように特定技能外国人が長く働いてくれるような制度は積極的に活用していくといいでしょう。
長く働いてもらうためにも有給休暇の取得は外国人にとってのイメージアップにつながります。
他にも定着率を上げる秘訣を知りたい方はこちらをご参考ください。
2-2.企業のイメージがよくなる
日本で働く外国人のコミュニティでは、常に働いている企業の情報を密に共有しています。そのため、雇用している従業員が「自分の働いている会社では、快く有給休暇を取得させてくれた。」といったいい口コミを話した場合、その口コミは瞬時にコミュニティ内部で広がります。
その口コミを聞いて、他の企業で働いている特定技能外国人が応募をしてくるかもしれません。なるべく多くの能力の高い特定技能外国人が集まるようにするためにも、有給休暇は積極的に取得させた方がいいでしょう。
3.一時帰国のシーズン
特定技能外国人は一時帰国が可能です。そして多くの特定技能外国人が有給休暇を取得するのは、一時帰国のシーズンです。
📍特定技能外国人の一時帰国の費用・期間についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
年次有給休暇は半年間継続で勤務した場合10日間、それ以降は継続勤務年数が増えていくごとに有給休暇の日数も加算されます。有給休暇は連続して取得することが可能であるため、10日程度一時帰国することが可能です。
一時帰国の費用(渡航費・空港までの送迎費など)は、基本的に特定技能外国人本人が支払います。特定技能外国人にとって大きな支出となるため、その期間に有給休暇を取得したいと考える外国人従業員が多いです。
実際特定技能外国人を採用している企業では、一時帰国は最長10日間としている企業が多いですが、ベトナムのお正月は2月に2週間ほどあります。有給休暇の日数を超える場合は無給の休暇を認めることになります。
また、ミャンマーは現在国内情勢が不安定なため、帰国すると日本に戻ってこられない可能背があります。そのため、ミャンマー人は帰国しない人が多いです。
3-3.時季変更権の存在
特定技能外国人の有給休暇取得を認めることで、事業の継続に大きな影響を与える場合があります。例えば繁忙期に全員のベトナム人従業員が帰国してしまったら、日本人やその他外国人従業員でカバーできなくなる可能性があります。
年次有給休暇制度において、企業側には「時季変更権」というものが認められています。労働基準法第39条第5項で定められています。
【時季変更権】
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。ただし、請求された時季に有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季にこれを与えることができる。
これは繁忙期に有給休暇を使うのを避けるのに用いられています。別の時期に有給休暇を取得してもらう形になります。
また、お正月などの行事で、一つの国の特定技能外国人が全員帰国したい場合は、帰国日を2~3日ずらすことで対応も可能です。
時季変更権を行使するためには外国人従業員との良好な関係性が不可欠です。
⇒「外国人従業員とのコミュニケーションマニュアル」をぜひご参考にしてください。
4.有給休暇を与えない場合の罰則
「1.有給休暇について」で少し触れた通り、2019年4月から、有給取得日数が10日以上の労働者には、基準日から1年以内に5日以上の有給の取得が義務付けられました。この有給休暇義務化に違反した場合、企業に罰則が科されます。
罰則が発生する条件は以下の2点です。
①有給休暇取得から1年以内に5日以上の有給休暇を取得していない
…有給休暇の日数が足りていないということです。「繫忙期のために有給休暇を後ろ倒しにしたことで期限内に取得できていない」という事態にならないように注意が必要です。
②企業の就業規則に「時季指定」が記載されていない
…「3-3.時季変更権の存在」で解説したこの権利ですが、企業がこの権利を行使したい場合、あらかじめ就業規則への記載が定められています。
この2つのいずれかに違反した場合、1件につき30万円以下の罰金が科されます。
これは一人の従業員が違反した場合の金額なので、もし100人の従業員が違反した場合、最大3000万円もの罰金がかされます。
有給休暇という制度に慣れていない特定技能外国人には、日本人従業員以上に有給休暇を忘れずに取得するよう伝える必要があります。
4-1.労働者への不利益な扱いの禁止
企業は有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額や、賞与や手当の免除など不利益な扱いをしてはならないと定められています。
精皆勤手当てや賞与の額の算定の際に、年次有給休暇を取得した日を欠勤に準じて取り扱うことも禁止されています。
特定技能外国人に対して「有給休暇を取得したら、ボーナスの額が少なくなる」といった嘘の情報を話して有給休暇の取得を留まらせるなども、労働基準法違反に当たります。
[出典:厚生労働省「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説」]
5.まとめ
有給休暇は、就労ビザで働く外国人も当然行使できる権利です。企業は、長く特定技能外国人に働いてもらうためにも有給休暇を有効に使ってみてください。
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