介護業界の人手不足の解決策は?データを基にした現状と原因、対策も含めてわかりやすく解説

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門
アドバイザー:佐藤彩子(公立大学法人公立鳥取環境大学経営学部准教授)

国内の介護業界において、人手不足が叫ばれています。人手不足になると新人育成やリーダー育成も満足にできず、激務により職場の人間関係もぎくしゃくして悪循環になってしまうでしょう。

人手不足に悩む介護業界において、政府は新しい働き方を推進しています。また一部の介護事業所では、外国人採用を始めました

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目次

1.介護業界の人手不足の現状

介護業界は、高齢化社会において重要な役割を担っています。しかし介護業界には、人手不足という課題があります。ここでは、介護職員数の推移と必要数について、データや事実に基づいて解説します。

1-1.介護職員数の推移

図1 介護職員数の推移

介護人材の処遇改善について|厚生労働省

厚生労働省の調査によると、介護保険法の施行から16年間で「介護職員数」は3.3倍に増加しています。こちらは平成12年度(2000年度)〜平成28年度(2016年度)のデータです。

また令和元年度(2019年度)の介護職員数は約211万人でした。これは平成12年度(2000年度)の約55万人から約4倍に増えたことを意味します。しかしグラフを見て分かるとおり、要介護者等の数も増加し続けているのが現状です。つまり要介護者等の増加に対して、介護職員の増加は追いついていません。

図2 地域別の状況

介護人材の処遇改善について|厚生労働省

介護関係職種の有効求人倍率を都道府県別に見ると、東京都6.97倍、愛知県6.49倍との結果が出ており、都市部では特に求人数に対して働き手が少ない状況です。地域によって人手不足に差が出てしまうと、介護サービスの質や量にも影響があるかもしれません。

また人手不足の状態では採用に成功しても、十分な研修・教育をする余裕がない可能性もあるでしょう。その結果、離職率を高め、悪循環に陥ることも予想できます。現状を打破するための対策を講じなければ、現場で働いている職員への負担を大きくしてしまうでしょう。
※参考:第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について|厚生労働省

1-2.介護職員の必要数

図3 介護職員の必要数

介護人材の確保、介護現場の生産性向上の推進について|厚生労働省

介護職員の必要数は、都道府県が作成する「第8期介護保険事業計画」に基づいて推計されています。必要数の算出では、今後も進む国内の高齢化に考慮していました。

事業計画の結果、介護職員数の必要数は、以下のとおりです。

  • 2023年度には約233万人(+約22万人)
  • 2025年度には約243万人(+約32万人)
  • 2040年度には約280万人(+約69万人)

これは2019年度時点の211万人を基準にした必要数です。

しかし現状で必要数を満たすのは、難しいでしょう。実際に、令和元年の10月1日~令和2年9月30日までの1年間において、離職率は14.9%(訪問介護員・介護職員)となりました
(公益財団法人介護労働安定センターが実施する介護労働実態調査より)

図4 都道府県別介護職員数と今後の必要数
鳥取環境大学准教授|佐藤

また、介護職員の必要数も地域によって異なるのが現状です。図4では、都道府県別に2019年度の介護職員数(実数)と2040年度の介護職員必要数を比較しました。福井県を除く46都道府県で今後、さらに介護職員は必要とされていますが、その実態には地域差がみられます。介護職員の2019年度に対する2040年度の伸び率が全国平均(33.1%)と同じかそれを上回るのは、高い順に沖縄県(53.8%)、埼玉県(49.7%)、滋賀県(47.4%)、岐阜県(46.7%)、神奈川県(46.3%)、栃木県(45.3%)、東京都(44.0%)、千葉県(41.3%)、福岡県(40.7%)、奈良県(40.2%)、宮城県(39.0%)、兵庫県(38.6%)、茨城県(38.3%)、愛知県(36.1%)、石川県(33.1%)の15都県であり、これらの地域は大半が大都市圏や地方ブロックの拠点となる地域です。したがって、今後は人口規模が大きい大都市圏や地方ブロックの拠点となる地域ほど介護職員の確保がより一層求められ、人手不足問題は早急に取り組むべき課題であるといえます。

この理由の1つとして、65歳以上人口が今後、これらの地域ほど急増すると予想されているという事情があります。この点については、見出し2の「介護業界の人手不足が解消されない原因」の2-1高齢者人口の増加の箇所で解説します。

2.介護業界の人手不足が解消されない原因

介護業界の人手不足は、介護サービスの質や量に影響を与えるだけでなく、介護職員の負担やストレスも増やします。では、なぜ介護業界は人手不足が解消されないのでしょうか。

2-1.高齢者人口の増加

図5 高齢者人口及び割合の推移

高齢者の人口|総務省統計局

日本は世界で最も高齢化が進んだ国です。令和3年10月1日時点、総人口の29.1%が65歳以上となりました。70歳以上人口は総人口の23.0%で前年より39万人増、75歳以上は総人口15.5%で前年より72万人増、80歳以上は総人口の9.9%で前年より41万人増になっています。

高齢者人口は今後も増加し続け、令和47年には38.4%に達すると推計されています。高齢者人口の増加は、介護サービスの需要を高めます。しかし介護サービスを提供する人材は、十分に確保されていません。
※参考:高齢化の現状と将来像|内閣府

図6 都道府県別に見た「老人福祉・介護事業」就業者割合と65歳以上人口の伸び率との関係
鳥取環境大学准教授|佐藤

この高齢者人口の増加にも地域差が存在し、今後は大都市圏や地方ブロックの拠点となる地域ほどその増加率が高まると予想されています。図6では、都道府県別にみた第3次産業就業者に占める「老人福祉・介護事業」就業者割合と65歳以上人口の2020年に対する2040年の伸び率との関係を示しました。「老人福祉・介護事業」就業者割合が低い都道府県ほど、65歳以上人口の伸び率は高い傾向が読み取れます。より詳しくみると、「老人福祉・介護事業」就業者割合が低い上位10都道府県は、順に東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、沖縄県、愛知県、京都府、福岡県、茨城県、宮城県であり、沖縄県を除き三大都市圏と地方ブロックの拠点となる地域です。他方、65歳以上人口の伸び率が高い上位10都道府県は、順に沖縄県、東京都、神奈川県、滋賀県、愛知県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、宮城県であり、こちらも沖縄県を除き三大都市圏と地方ブロックの拠点となる地域です。これらのことから、今後、人口規模の大きい大都市圏や地方ブロックの拠点となる地域ほど65歳以上人口は急増すると予想されますが、「老人福祉・介護事業」就業者割合は低く、介護業界における労働力確保は喫緊の課題です。

2-2.採用が困難である

介護職員の人材を確保できていない理由には、採用が困難であることも挙げられます。採用活動において「同業他社との人材獲得競争が激しい」「他産業に比べて労働環境が良くない」といった状況です。

同業他社との人材獲得競争が激しい

図7 介護サービス事業所における従業員の過不足の状況

介護人材の処遇改善について|厚生労働省

従業員の過不足の状況では、年々介護職員の不足感が強くなっている状況です。不足している理由として、「採用が困難である」と回答したのは88.5%でした。 介護業界は、高齢者人口の増加にともない、介護サービスの需要が高まっています。しかし、介護サービスを提供する人材は不足しています。そのため、介護事業所は、同業他社との人材獲得競争に巻き込まれています。介護業界全体が、他業界との採用競争に敗れてしまっているのも人手不足の原因です。

鳥取環境大学准教授|佐藤

この点に関して、介護サービス事業所で働く従業者の直前の勤務先での仕事内容を明らかにしたデータがあります。図8をみると、直前の仕事内容が「介護関係の仕事」である者は5,978人(38.7%)と最も多く、このことも同業他社との人材獲得競争が激しいことを一部裏付けていると考えられます。

図8 直前の勤務先での仕事内容

他業界との人材獲得競争が激しい

図9 介護関係職種と職業計の有効求人倍率の推移
鳥取環境大学准教授|佐藤

また、介護業界全体が、他業界との採用競争に敗れてしまっているのも人手不足の原因であると考えられます。図9では、介護関係職種と職業計の有効求人倍率の推移を示しています。「職業計」は1前後で推移していますが、「社会福祉専門職業従事者」は1~3前後、「介護サービス職業従事者」は2~4前後で推移しており、他産業他職種との人材獲得競争が激しいことがうかがえます。

介護業界は、他産業に比べて「労働条件などが良くない」というイメージがあります。例えば給与は低く、労働時間は長く、休日も少ないというイメージです。実際に厚生労働省の調査によると、介護職員の平均年収は約350万円であり、全産業平均の約420万円(30代の平均年収)よりも低い金額です。

また介護職員の月間実労働時間は、平均148時間です。介護サービス事業所で働く他の職種(理学療法士・管理栄養士・看護師など)を含めた月間実労働時間の129.1時間より、大幅に19時間長く働いていました。

さらに介護職員の平均有給休暇取得日数は年7.3日であり、全産業平均10.1日よりも約2.8日少ない日数です。このように、介護業界は他産業に比べて労働条件などが良くないということが、採用が困難である原因のひとつとなっています。

令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果|厚生労働省
 民間給与実態調査(令和2年)|国税庁
 平成17年度介護労働実態調査について|介護労働安定センター
 年次有給休暇の平均取得日数は7.3日|介護労働安定センター
 令和2年就労条件総合調査|厚生労働省

良質な人材の確保が難しい

図10 介護サービス事業を運営する上での問題点(上位3項目)
鳥取環境大学准教授|佐藤

介護業界では、サービス提供を行う上での経営課題の上位に人材問題が挙げられています。図10では事業所が介護サービス事業を運営する上での問題点を示していますが、3項目の中でも「今の介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を払えない」と「良質な人材の確保が難しい」の2項目が高い割合で推移しています。ただ前者は減少傾向にあるのに対し、後者は若干の変動はありますが、2017年度以降、前者を上回り直近の2022年度では51.6%となっています。

3.人手不足解消に向けた政府の取り組み

介護業界の人手不足解消に向けて、政府もさまざまな取り組みを始めています。これらの対策が実を結ぶことで、より良い状況になることを期待している方もいらっしゃるでしょう。ここでは、主な政府の取り組みとして、3つを紹介します。

3-1.【最新情報】訪問介護を特定技能外国人も従事可能に

厚生労働省が外国人人材の介護訪問サービスについて、今は認められていない在留資格「特定技能」の人も従事できるようになります。2024年3月22日、厚生労働省の有識者検討会で大筋了承され、2025年度の実施を見込んでいます。

訪問介護サービスでは、介護を必要とする個人宅を訪れ、直接サービスを提供する形態が基本です。これまでは、在留資格「介護」の保持者、または介護福祉士の資格をもつ経済連携協定(EPA)の出身者に限られていましたが、今回の検討で特定技能に加え、技能実習とEPAに基づく介護福祉士の候補者が解禁されます。この3資格で介護現場で働いているのはおよそ4万6000人に上ります。

訪問介護に関する人手不足は深刻化しており、訪問介護のサービスを受ける人は介護サービス全体の2割程度ですが、需要は年々増えいています。訪問系の22年度の有効求人倍率は15.5倍で、施設勤務の介護職員はおよそ4倍にもなっています。

厚生労働省は、検討会での議論を踏まえて、特定技能などの訪問介護の解禁について要件を具体化し、順次実施する予定です。

3-2.未経験者への入門的研修の実施

政府は、未経験者への入門的研修を実施しています。入門的研修とは、介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)の一部を受講することです。入門的研修では、基本的な介護技術や知識を学ぶことができます。受講後に介護サービス事業所で就職を希望する場合、マッチング支援を受けられるのも特徴のひとつです。また上位資格を受けるとき、入門的研修で受講した科目は免除されます。

一般的には介護職員になるためには、介護福祉士やヘルパーなどの資格が必要です。しかし資格を取得するには、時間や費用がかかります。「未経験で介護職員になる」というハードルを下げるために、入門的研修を実施しているという背景があるのです。

※参考:入門研修の概要|厚生労働省

3-3.介護事業者の認証評価制度の実施

政府は、人材育成等に取り組む介護事業者に対して「認証評価制度」を実施しています。こちらは、基準に基づく評価をして、一定水準を満たしている場合に認証を与える制度です。評価の基準として、以下のような内容が挙げられます。

  • 給与支給基準の策定
  • ハラスメント対策
  • ICT活用
  • 新規採用者への育成手法、明確な計画の策定
  • OJT指導者等の設置
  • キャリアパスの策定
  • 介護福祉士等資格取得のためシフト調整、休暇付与、費用援助
  • トラブル対応マニュアル化、第三者評価の受審

人材育成や人材確保に向けた取り組みの「見える化」により、働きやすい環境の構築や、介護業界全体のスキルアップ向上を図ります。また介護職員に対して評価制度を導入すれば、仕事へのモチベーションを高めて離職防止や定着促進につながるでしょう。

介護職員は、自分の仕事に対する評価や報酬が低いと感じる傾向にあります。しかし現在の介護業界では、処遇の水準や基準が明確ではありません。人材育成において明確な基準を設けて、仕事の内容や環境に応じた適切な処遇を用意することが重要です。

参考:老人ホーム・介護施設の検索は施設入居特化のクチコミ | スマートシニア

3-4.多様な働き方の推進

介護職員は、仕事と生活のバランスを取るのが難しい職種でもあります。例えば夜勤や残業が続くと、家庭や子育てとの両立ができなくなるでしょう。そこで政府は、多様な働き方を推進しています。多様な働き方として、以下の勤務形態を図っています。

【柔軟な勤務形態】

  • 朝夕のみ、夜間のみ、季節限定のみ
  • 兼業、副業
  • 選択的週休三日制

また柔軟な勤務形態に適応する効率的な事業運営や、リーダー的介護職員の育成も推進しています。具体的な取り組みを以下で確認してみましょう。

  • 地域の特性をふまえた求人活動の検討・改善
  • キャリアや専門性に応じた業務の機能分化
  • チームメンバーの役割に応じたOJT・OFFJTの運用
  • 介護福祉士等がリーダーシップを発揮するチームマネジメントの構築

介護事業所は都道府県等と連携し、事業の報告をします。それを受けて都道府県等は、企画・分析・報告を国にする流れです。各自治体で本取り組みの効果測定・検証を進めて、国は事業による成果を全国に周知するといった展開になります。

※参考:介護人材確保に向けた取組|厚生労働省
※参考:介護現場における多様な働き方導入モデル事業|厚生労働省

3-5.特定技能1号の導入

表1 産業別特定技能1号外国人数の推移(人数:人、割合:%)
鳥取環境大学准教授|佐藤

人手不足解消を目的に国が表立って外国人の受入れを初めて認めたのが、特定技能1号外国人です。表1では、産業別特定技能1号外国人数の推移を2019年6月末~2023年6月末までほぼ3か月ごとに示しています。2023年6月末では全産業で173,089人が就業していますが、「飲食料品製造業」が53,282人と最も多く、次いで「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」が35,641人、「介護」が21,915人と続きます。ただ12産業すべてで受入が確認された2020年6月末から2023年6月末までの伸び率を計算すると、「介護」は12,791.2%と「航空」(17,000.0%)に次いで2番目に高く、急速に受入が進んでいます。

4.介護事業所ができる人手不足への解決策

人手不足を解消するためには、国や地方自治体の対策だけでなく、介護事業所が自らできる取り組みもあるでしょう。ここでは、人手不足解消に役立つ、3つの取り組みを紹介します。職場環境の改善を図る際に、参考にしてみてください。
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4-1.挨拶などの小さなことからコミュニケーションを増やしてみる

コミュニケーションは、職場の雰囲気や人間関係を良くするために重要です。事業所内でのコミュニケーションが円滑になると、帰属意識を高めて離職防止にもなります。また仕事の悩みも打ち明けやすくなるため、トラブルの早期解決に有効です。

コミュニケーションを増やすためには、小さなことから始めてみましょう。毎日の挨拶や感謝の言葉を伝えることも、より良い関係づくりにつながります。日常的なやり取りの積み重ねによって、職員間における信頼関係の構築や、チームワークの強化が期待できるでしょう。

4-2.アンケートや定期面談などで相談できる場を作る

仕事の悩みを抱える介護職員は、業務内容や環境に不満や不安を抱えている可能性があります。しかし相談したくても、上司や同僚に話す機会が少ないと感じているかもしれません。相談できずにいる介護職員へのアプロ―トとして、アンケートや定期面談なども有効です。匿名で答えるアンケートなら、素直な意見が出しやすいでしょう。

また定期面談では「相談しやすい雰囲気づくり」を考えて、面談の場を設定してみてください。周りに話の内容が漏れず、落ち着ける場所が好ましいでしょう。

4-3.外国人を積極的に採用する

介護事業所の人材不足解消に、外国人材が貢献しているケースもあります。外国人材は、国によって日本人よりも介護職への興味や意欲が高いことも。また多様な文化や価値観を持っており、新しい視点での支援やアイデアが見つかるかもしれません。

ただし外国人を採用するためには、国が定めた制度や条件に従わなければなりません。例えば介護分野の技能実習生や特定技能などは、日本語の習得だけでなく介護の教育や研修も必要です。また雇用する際に、生活や就労のサポートを要します。採用を検討する際は、制度の条件や必要な手続きをチェックしておきましょう。

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弊社から外国人を採用していただいた企業様に行ったインタビュー記事になります。
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5.人手不足解決のための外国人採用

一部の介護事業所では、人手不足を図るために、外国人採用を進めています。そこで実際にどれくらいの事業所が外国人を採用しているのか、また受け入れるメリットについて解説しました。

5-1.外国人を採用している介護事業所数

図11 外国籍労働者の受け入れ方法(事業所調査、複数回答)

令和元年度「介護労働実態調査」の結果|公益財団法人介護労働安定センター

外国人を採用している介護事業所は、年々増加しています。介護労働安定センターの調べによると、令和元年、外国人労働者を受け入れている介護事業所数は6.6%で、昨年に比べて増加していました。また受け入れ方法は「技能実習生」「留学生」が22.2%で最も多く、次いで「在留資格・介護」が21.5%という結果です。

鳥取環境大学准教授|佐藤

この点について、近年の介護業界における在留資格別外国人の受入れ状況の変化を調べたものが表2です。後述するように、介護業界では(a)EPA(経済連携協定)による受入れ、(b)在留資格「介護」、(c)技能実習生、(d)在留資格「特定技能1号」、(e)留学生の5つで主に受入れが進み、直近の2022年度では(c)技能実習生が378と最も多く次いで(d)在留資格「特定技能1号」が306と続きます。ただ2019年度に対する2022年度の伸び率を算出すると、(d)在留資格「特定技能1号」が1,940.0%と最も高く、2番目に高い(c)技能実習生の184.2%を大きく上回ります。したがって、介護業界では近年、(d)在留資格「特定技能1号」での受入が特に顕著に進んでいると考えられます。

表2 介護業界における在留資格別外国人の受け入れ状況の変化(事業所単位、箇所)
図12 外国人労働者の活用に関する評価について(事業所調査、複数回答)

令和元年度「介護労働実態調査」の結果|公益財団法人介護労働安定センター

上記の図を見て分かるとおり、外国人労働者を受け入れている事業所は「労働力の確保ができる」「職場に活気がでる」と活用に関して高評価でした。反対に受け入れていない事業所は「利用者等との意思疎通において不安がある」「生活、習慣の違いに戸惑いがある」と不安を感じている印象です。

5-2外国人を採用するメリット

外国人労働者を採用した経験がない場合、具体的なメリットが気になるかもしれません。ここでは、主に2つのメリットを紹介します。

若くてやる気のある人材を確保できる

日本で働くことを選択する外国人は、若くてやる気のある人材です。また平均年齢が日本人よりも若く、体力や活力があるといえるでしょう。これらの特徴は、介護職員にとって重要な要素です。介護職員は高齢者や障害者の身体的な支援をするシーンも多く、体力的にも精神的にも負担がかかります。そのため若くてやる気のある人材を確保することは、介護サービスの質や量を向上させることにつながります。

国から助成金の支援がある

外国人を採用した場合、国から介護事業所に対して助成金が支給されます。人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人の就労環境を整備するために、事業主に対してその経費の一部を助成するものです。ただし受給要件を満たしている必要があります。受給要件をチェックしたうえで、申請手続きを進めましょう。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)|厚生労働省

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実際に「特定技能 介護」で働いている方にインタビューをおこないました

5-3.外国人が介護職で働くことができる在留資格

外国人が介護職で働くためには、在留資格が必要です。在留資格とは、日本に滞在する外国人の「活動の範囲」「滞在期間」を定めた入管法上の法的な資格です。介護職で働くことができる在留資格は、いくつかあります。ここでは、代表的な5つの在留資格について解説しました。

技能実習 

技能実習とは、日本の技術や知識を学ぶために、外国人が日本の企業や団体で実際に働く制度です。介護分野であれば最長5年間、日本で働けます。1年目は「技能実習1号」、2~3年目は「技能実習2号」、4~5年目は「技能実習3号」として対象施設で働ける仕組みです。事前の講習では、介護の基本だけでなく日本語を習得するための科目も含まれています。

※技能実習「介護」における固有要件について|厚生労働省

特定技能

特定技能とは、介護業界の人手不足を解消するために、2019年4月に新設された在留資格です。基本的に特定技能は1号と2号に分かれており、それぞれの要件は異なります。

  • 1号:基本的な技能や知識を持っている外国人が対象、最長5年間は日本で働ける
  • 2号:高度な技能や知識を持っている外国人が対象、更新可能な期間限定で日本で働ける

特定技能では、入浴・食事・排泄などの身体介護やレクリエーション・機能訓練などの幅広い業務が可能です。

こちらのビザを取得するために、外国人は「特定技能評価試験」に合格しなければなりません。そのため、合格者には即戦力となるレベルの技能と日本語が備わっています。即戦力がほしい介護事業所にとって、特定技能は適した制度だといえるでしょう。
特定技能ガイドブック|出入国在留管理庁

特定技能についてJJSが独自にまとめた「特定技能まるわかり資料」のダウンロードはこちらから
特定技能外国人を雇いたいけど費用が気になるという企業様向けに作成した「特定技能外国人コスト一覧表」のダウンロードはこちら

在留資格「介護」

在留資格「介護」とは、介護福祉士の所持に関わらず介護または介護の指導をする外国人が対象です。在留期間は最長5年で、更新可能な期間限定で日本で介護の仕事ができます。この在留資格で働く場合、日本の介護事業所と雇用契約を結び、「労働条件通知書」や「勤務先の詳細が記載された案内書」の提出が必要です。
在留資格「介護」|出入国在留管理庁

特定活動「EPA介護福祉士」

特定活動「EPA介護福祉士」とは、日本と経済連携協定(EPA)を結んだインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国から来日した介護福祉士(または看護系大学の卒業生)が対象の制度です。対象となる外国人は、日本での介護福祉士の資格取得を目指して滞在できます。そのため「EPA介護福祉士」の候補生として来日するのが一般的です。

特定活動「EPA介護福祉士」の対象者は、介護技術や知識を提供できる人材の可能性が高いでしょう。しかし対象となる国やスキルが限定されているため、母数が少ない在留資格です。
在留資格「特定活動」(EPA看護師・EPA介護福祉士の家族)|出入国在留管理庁

留学生

日本の大学や専門学校などに在籍している留学生も、一部日本での就労が認められています。留学生の場合、学業と両立しながら一定の条件下でアルバイトとして介護職に就くことが可能。アルバイトの時間は週28時間以内で、長期休暇中は1日8時間以内であれば働けます。留学生をアルバイトとして雇用すれば、介護事業所の人手不足を補うことにつながるでしょう。
Q4.留学生をアルバイトとして雇うことは可能ですか。|東京労働局|厚生労働省

6.まとめ

外国人採用を検討しているものの「何から着手したらいいのか分からない」「要件を満たしているか確認できていない」という場合、当スクールへご相談ください。当スクールでは外国人の人材紹介だけでなく、雇用契約のサポートもしています。入社後の日本語教育、ビジネスマナー研修も実施しているため、受け入れ体制を整えている段階の事業所でも雇用しやすい状況です。

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この記事のアドバイザー

佐藤 彩子(さとう あやこ)
公立大学法人公立鳥取環境大学経営学部准教授。
九州大学大学院経済学府経済システム専攻博士後期課程単位修得退学。
博士(経済学)。専門は地域経済学・経済地理学。
大学院在学中より、介護サービス労働力と地域との関係を研究。
主な論文に「介護サービス労働力の質的不足の地域差」(『公立鳥取環境大学紀要』第 16 号、2019年)、「「介護」の特定技能 1 号外国人の受入実態と課題―大都市圏集中傾向に焦点をあてて―」
(『日本地域政策研究』(日本地域政策学会)第 29 号、2022 年)など。

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この記事を書いた人

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