介護業界での人手不足を解消する秘訣とは?定着まで見据えた採用活動を事例と共に徹底解説

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

介護業界は長年にわたり人手不足だと言われていますが、「本当に人手不足なのか?」「どうして人手不足が解消しないのか?」と疑問を感じたことがある人もいるでしょう。

この記事では介護業界の人手不足をデータと共に示し、人手不足を解消する対策を外国人採用を中心に紹介します

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目次

1.介護業界の人手不足

少子高齢化は2040年にピークを迎えると言われています。
2040年には約272万人の介護士が必要で、2022年の介護士の人数(約215万人)から約50万人も増やさなければなりません。

1-1.どれくらい人手が足りていないのか

日本の少子高齢化は急速に進行しており、特に団塊ジュニア世代が75歳以上になる2040年には全人口の約35%が65歳以上となります。

高齢化に伴い要介護認定者数の数も増加しており、ピークとなる2040年には要介護認定者数は約1000万人になるとも言われています。

予測できる高齢化社会に対して介護業界も人手不足を解消しようと試みてきましたが、必要な介護職員数には至っていないのが現状です。

2022年時点での介護職員数は約215万人ですが、2040年には約57万人増の272万人の介護職員が必要になります。
このためには1年で約3.2万人の介護職員を増員しなければなりません。

1-2.人手が集まらない原因

厚生労働省は介護業界の人手不足の原因を以下の5つだと定め、人材確保対策を発表しています。

職員の処遇が改善されない →【対策】職員の収入を約2%引き上げる措置を2024年から実施
キャリアアッププランが明確ではない →【対策】キャリアアップのための研修費負担や代替職員の確保支援
離職率が高い →【対策】職員の相談窓口の設置、週休3日制の導入、オンライン研修の導入支援
若者のなり手不足 →【対策】介護職の魅力を学生やその保護者に伝える。テレビやSNSで取組を発信する
日本人だけではなり手が不足している →外国人材の受け入れ環境整備。海外12か国で特定技能試験を実施等

人材確保対策について、「2.人手不足を解消するためにできること」で詳しく解説しています。

[出典:厚生労働省「我が国の人口について」]
[出典:厚生労働省「介護福祉士の登録者数の推移」]
[出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」]

2.人手不足を解消するためにできること

介護業界の人手不足解消のために、1事業所ができることもたくさんあります。ここでは主に3つの対策を紹介します。

多様な募集方法や雇用形態を取り入れる (→人材紹介を活用する、 外国人労働者を採用する )
職場環境・待遇の改善
資格取得の支援を行う

それぞれ詳しく説明します。

2-1.多様な募集方法や雇用形態を取り入れる

介護施設の人事部の方はどんな媒体で求人広告を出していますか。インターネットやSNSが普及している現在、紙媒体やハローワークだけではなく様々な方法で募集をすることができます。

2-1-1.人材紹介を活用する

介護職員に特化した人材紹介会社が複数あります。人材紹介会社ごとに「正社員募集がメイン」、「未経験向け求人を出せる」など、募集する人材の性質が異なります。
募集したい人材の性質にあった人材紹介会社を探すといいでしょう。

人材紹介会社はハローワークに比べて、求人掲載までの手続きや面接までの流れをスピーディーに行うことができます。そのため、「すぐに就職したい!」という熱量の高い求職者が応募する場合が多くなり、定着率も高くなるでしょう。また、不特定多数の人の応募の中から決めるハローワークでの採用とは違い、人材会社によるフィルタリングを通じた質の高い候補者から採用することができるため、定着率もアップするでしょう。

2-1-2.外国人労働者を採用する

人手不足を解消するために高齢者や女性の採用を積極的に行っている事業所もありますが、介護の業務の中では体力や力が必要となる職種も少なくありません

そこで体力、力のある外国人の若年層を採用するのはいかがでしょうか。
外国人従業員を採用している介護施設は増えてきており、介護分野の在留資格を持っている在留外国人は約4万人います

介護分野の在留資格は「介護」「特定活動(EPA)」「技能実習」「特定技能」の4種類があり、国が介護分野の外国人採用に力を入れていることが分かります。

介護分野の4種類の在留資格の違いについては、以下の記事も参考にしてください。

外国人介護福祉士を採用することで、職場全体の雰囲気やシステムが改善されたという事例もあります。

介護業界の外国人採用については「3.外国人労働者が人手不足解消のカギとなる」と「4.外国人を雇用している介護施設の事例」で詳しく説明しています。

2-2.職場環境・待遇の改善

介護士の人手不足の原因は高い離職率だと言われてきました。平成19年には離職率が20%を超え、他業界と比較してもかなり大きな数字でした。しかし、離職率はゆるやかに改善しており、令和4年には14.4%にまで下がりました

しかし、離職率をある程度改善しても人手不足を解消するには至っていません。現段階以上に職場の人員の定着が求められるでしょう。

「令和4年度 介護労働実態調査結果」によると、採用が良好な事業所は、賃金・勤務体制などの労働環境を整えること職場内のコミュニケーションを円滑にすることで早期離職を防止しています。

具体的な労働環境改善の内容には以下のようなものがあります。

残業を少なくする、有給を取りやすくする等の労働条件の改善に取り組む
業務改善や効率化で、働きやすい職場作りに力を入れている
仕事内容の希望を聞いて配置している
能力開発を充実させている(社内研修実施、社外研修等の受講・支援)

特に効果のあった方策は「残業を少なくする、有給休暇を取りやすくする等の労働条件の改善に取り組んでいる」で、ついで「本人の希望に応じた勤務体制にする等の労働条件の改善に取り組んでいる」でした。

また、職員同士が円滑なコミュニケーションを取れるように、以下のような対策を行っている事業所が多いです。

定期的なミーティング、意見交換会、チームケア等を実施する
悩み、不満、不安などの相談窓口を設けている
新人の指導担当・アドバイザーを置いている
経営者・管理者と従業員が経営方針、ケア方針を共有する機会を設けている

業務に関わるコミュニケーションだけでなく、雑談のように気軽に話せる関係を作れることで、職員の定着率を上げることもできるでしょう。

外国人労働者との関係性の築き方、コミュニケーションの取り方については、こちらの資料をぜひご活用ください。
👉外国人労働者と良い関係を築くためのコミュニケーションマニュアル

2-3.資格取得の支援を行う

職員を採用する際に「介護資格や経験の有無にこだわらないようにしている」とする事業所は少なくありません。

無資格・未経験の人材を採用した場合、事前研修やサポートを充実させることはもちろん、資格取得を支援すること(金銭面・知識経験面)も重要です

介護の主な資格は以下の3つです。

介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級)
介護の入門資格です。介護の基礎的な知識・技術を習得します。最短1か月で取得することができます。
実務者研修
…初任者研修の上位互換の資格です。2016年度以降の実務経験者の介護福祉士国家試験の受験要件にもなっています。
介護福祉士
介護分野唯一の国家資格です。介護のエキスパートとして新人の職員に指導やアドバイスをすることもできます。

[公益財団法人 介護労働安定センター 「令和4年度介護労働実態調査 」]

3.外国人労働者が人手不足解消のカギとなる

2040年までに約60万人増員が必要な介護業界では、外国人の介護士・介護福祉士が人手不足解消に必要な存在となっていくでしょう

3-1.外国人労働者を採用するメリット

介護士はケアする高齢者の方と密にコミュニケーションを取らなければならないため、外国人労働者には不向きな仕事かと思われることが多いですが、実は外国人労働者を採用することで、施設に大きなメリットをもたらします。

外国人介護士を採用する一番のメリットは採用できる母体数が多いことです。「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)によると、「社会保険・社会福祉・介護事業」に従事する外国人は約6万人います。
今後さらに外国人採用は進んでいくと予想されますので、外国人介護士の割合も増えていくでしょう。

さらに、外国人が日本で介護士になるためには、介護の知識・技能と日本語の知識・技能について、研修を受けたり、試験に合格したりしなければなりません。つまり日本で働く外国人介護士は介護の技能と日本語能力が高く、日本人介護士と同等、またはそれ以上の質の高さで業務ができます。

外国人が介護分野の業務に従事できる在留資格は4つ(介護、EPA、特定技能、技能実習)がありますが、その中でも特に人手不足解消に繋がるのは「特定技能」でしょう

3-2.特定技能制度について

そもそも在留資格「特定技能」は、生産性向上や国内人材確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業分野で、一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人を受け入れていくために2019年に始まった制度です。

現在では介護・建築・農業などの16分野で外国人労働者の受入れが進んでいます。

在留資格「特定技能」について詳しくはこちらの資料をダウンロードして確認してください。

介護は特定技能1号の分野別受け入れ人数は約36000人で、全体の3位(14.6%)です。(令和6年6月末時点)

外国人労働者が特定技能「介護」で就労するには、技能実習からの移行か、日本語試験・介護日本語試験・介護技能試験を取得する必要があります。そのため、圧倒的な母体数から一定の日本語力、介護の知識がある人材を採用できることが大きなメリットです。

3-3.特定技能外国人採用の流れ

特定技能「介護」で外国人を採用する流れは以下の通りです。

施設・外国人双方の要件を確認
…施設は外国人が就労可能な施設であるか確認され、外国人側は日本語試験と技能試験に合格する必要があります。
登録支援機関を選ぶ
…受入施設は特定技能外国人受入れのための支援計画を策定し、支援を行わなければなりませんが、受入施設の多くは支援業務を登録支援機関に委託しています。
雇用条件・給与の設定
…給与・手当ともに同等の技能を持つ日本人従業員と同等またはそれ以上であることに留意しながら設定します。
求人募集を開始
…ハローワークだけでなく、人材紹介会社などを利用しながら条件にあった外国人を募集します。
ビザ申請
…外国人がすでに日本でビザを持っている場合は在留資格変更申請、海外在住者の場合は在留資格認定証明書交付申請を提出します。オンラインでも申請できます。
入社
…外国人も雇用保険加入の手続きが必要です。受け入れ企業が雇用保険加入の手続きを行った場合「外国人雇用状況の届出」の提出が不要になります

特定技能外国人の採用の流れについて、詳しくはこちらの記事も参考にしてください。

[出典:法務省「特定技能ハンドブック」]

3-4.外国人を採用する際の注意点

外国人を採用する際には、彼らも自身の国の文化・習慣・宗教観を持っていることを留意しなければなりません。

例えばイスラム教の人は豚肉を食べませんし、東南アジアの人の中には頭に触られることをタブーだとする人もいます。外国人職員日本人が考えられないような行動や考えをして、日本人職員とトラブルになるケースは少なくありません。

その際は、「どうしてその考え方をするのか」、「どうしてそのような行動をしたのか」理由を聞いて、お互いの認識をすり合わせるといいでしょう

4.外国人を雇用している介護施設の事例

弊社JJSが運営するスクールの学生を採用した介護施設に、外国人介護士を採用後どのような変化があったのか、事例とともに紹介します。

4-1.異なる価値観を持つ人と働けるのは大きなメリット

弊社からはベトナム人2名を受け入れている「社会福祉法人東京聖労院 特別養護老人ホーム 清雅苑」様の事例です。

インタビュー記事はこちらからも確認できます。

外国人と働く上で一番大きな壁であるのは言語だと感じたものの、「本当に言葉の意味を分かっているのか(細かいニュアンスなど)」を何度も確認することで、コミュニケーションのミスが減ったそうです。

言語の壁はあるものの、違う価値観を持つ人と働くことで日本人従業員も大きな刺激を受けたということです。言いたいことや聞きたいことをはっきりと伝えたり、時間内でぱっと仕事を終わらせたりするなど、日本人側が学ぶことも少なくありません。

また、外国人従業員は定期的に母語でJJSのスタッフと面談をしています。母語で話してこそ本人の気持ちが分かるので、施設側も安心して外国人従業員を受け入れられていると言っていただきました。

4-2.勤勉で熱い夢を持った外国人従業員と働ける

弊社からはミャンマー人1人、ベトナム人2名を受け入れている「社会福祉法人きらめき会 八潮いこいの里」様の事例です。

インタビュー記事はこちらからも確認できます。

日本人と外国人では、特に時間の捉え方が違います。この施設でも就業時間ギリギリの出勤を繰り返す外国人従業員がいました。「時間に余裕を持って行動してください」と、何回も繰り返し伝えることで日本の習慣に慣れてもらう必要があります。

しかし文化や習慣の差はあれども、真面目で優しいが外国人従業員が多いです入居者の方にも「最初は肌の色が違ったためとまどったが、実際に話してみると優しい人だ」と感じてもらえるそうです。

5.人材が定着する介護施設の特徴

日本人従業員に限らず、外国人従業員も定着しやすい介護施設の特徴を3つ紹介します。

5-1.職場の雰囲気が良い

業務の話題だけでなく、休憩時間には日本人外国人問わず気軽に雑談できるような雰囲気作りが大切ではないでしょうか。

特に東南アジアの人は家族を非常に大切にしており、家族についての雑談をすることが多いです。日本人同士では職場で家族の話をしない場合もあるかもしれませんが、ぜひ外国人従業員には母国にいる家族について聞いてみてください。

5-2.給料や福利厚生が充実している

他施設と比較して給料や福利厚生が充実していることはもちろん、それが分かりやすく明文化されていることを外国人は好みます。同時に評価基準も明確にあれば日頃の業務のモチベーションアップにも繋がります

5-3.職員への手厚いケア

外国人は日本で異文化に接して戸惑うことが少なくありません。そのような状況でどんな小さなことでも気軽に質問できる人がいることで、外国人従業員が安心して働くことができます

また、日本で病気になったときに病院を紹介するなど、生活で困っていることがあれば遠慮なく相談してもらう体制を作るといいでしょう。そうすることで外国人従業員が日々の仕事に集中できます。

特定技能外国人の定着率に悩んでいる方、こちらの資料をぜひご活用ください。

6.まとめ

少子高齢化社会がピークとなる2040年にかけて、介護士の需要は高まっていくでしょう。日本人だけではなく、若くて体力のある外国人従業員を採用することも視野に入れてみてはいかがでしょうか。

弊社JJSでは、日本人理解・日本文化理解の教育を受けた生徒のみを企業様に紹介しています。

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この記事を書いた人

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