強制送還とは?|強制送還のリスクを避けて外国人を雇用する方法をご紹介

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

不法に日本に滞在している外国人を強制的に国外に退去させることができる措置を強制送還と言います。
この記事では、外国人雇用に興味がある企業の方に向けて、強制送還が適用される事例と、その手続きについて分かりやすく解説します。

強制送還のリスクを避ける方法を理解して、安心して外国人を雇用しましょう。

目次

1.強制送還とは?

強制送還とは通称で、実際には「強制退去」と「出国命令」の2つの手続きがあります。

1-1. 強制退去

強制退去とは、審査を経た後に強制退去令書が出された外国人に、本人の意思に関わらずすみやかに国外退去の措置が取られる手続きです

例えば、不法在留(オーバーステイ)している外国人が入国警備官の違反調査によって不法在留を摘発された場合は強制退去の対象になります。
(自ら不法在留を申告した場合は出国命令の手続きが取られます。)

退去強制令書が出された外国人がすみやかに日本から送還することができない場合は、以下の施設に外国人を収容することができます。

  • 入国者収容所
  • 地方出入国在留管理局の収容場
  • 法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所

強制退去を受けた外国人は、送還後5年間(事情によっては10年間)日本への入国が不可となります。

1-2. 出国命令

出国命令とは、不法在留(オーバーステイ)している外国人が帰国を希望して自ら地方出入国管理局に出頭した場合のみ、収容所に収容せず出国をさせる手続きです。

強制送還手続きが適用される事由(不法在留、犯罪、テロ組織に関与)のうち、法在留にのみ出国命令は適用できます
つまり、適当なビザを取得せず日本に入国した外国人や、刑事処分を受けた外国人は出国命令で出国することはできず、必ず退去強制の対象となります。

出国命令の手続きを踏むには、外国人が以下の要件を満たしている必要があります。

  • 速やかに出国することを希望して、自ら地方出入国在留管理局に出頭したこと。
  • 違反が不法残留のみであること。
  • 窃盗その他一定の罪により懲役刑等などの判決を受けていないこと。
  • これまでに強制送還されたり、出国命令により出国したことがないこと。
  • 速やかに出国することが確実であること。

出国命令で出国した場合、日本への入国ができないのは1年間だけです。

[出典:出入国在留管理庁「出国命令制度について」]

2.強制送還(退去強制)が適用される場合とは

出国命令が適用されるのは「1-2.出国命令」で書いた通り不法在留(オーバーステイ)している外国人が帰国を希望して自ら地方出入国管理局に出頭した場合です。

この章では退去強制が適用される場合について解説します。

2-1. 犯罪行為に関与した場合

ここで言う「犯罪行為に関与した」とは刑事事件に限られます。個人間の金銭のやり取りから発展したトラブルなどは民事事件なので、強制退去の対象とはなりません。

〈強制退去に該当する刑罰違反者〉

  • 薬物事犯等により、罰金以上の刑に処せられた者
  • 無期懲役又は1年を超える懲役・禁錮の実刑に処せられた者
  • 活動資格を有する者で、殺人・傷害等の粗暴犯、窃盗等の財産犯、偽変造に係る犯罪等により、懲役・禁錮の刑に処せられた者
  • 中長期在留者で、虚偽届出等の罪により,懲役刑に処せられた者

これ以外にも売春に従事した人など、反社会的行為者も強制退去の手続きが取られます。

2-2. 不法滞在(オーバーステイ・不法入国)をしている場合

在留期限を超えて日本に在留していた場合も、不法滞在として強制退去の対象となります。
在留資格を持つ中長期在留者は、在留期間の満了する3か月前から在留資格更新の手続きが可能です。出張や妊娠出産などの特別な理由がある場合には満了日の6カ月前から更新の手続きができます。

うっかりして在留資格を更新し忘れた場合であっても不法滞在となってしまいますので、手続きの管理は徹底して行いましょう。

ただし、在留期間満了日までに更新申請を行い、申請の審査が満了日までに終わらない場合のみ、満了日から2か月間まで当在留資格で滞在できます。
また、入国審査官からの上陸の許可を得ないで日本に上陸した人を不法入国者と言います。正規の手段ではなく密入国をしたり、偽造パスポートで入国審査を受けた外国人などです。

不法入国者は入国警備官の違反調査後、速やかに収容所に収容され、入国審査官による違反審査が行われます。

2-3. 不法就労をしている場合

不法入国・不法上陸者が日本で働いて収益を得たり、正規の方法で入国していても就労の許可がない在留資格を持つ外国人が許可を得ずに働いた場合は不法就労となります。

〈不法就労の具体的な事例〉

  • 入国審査官からの上陸許可を得ず日本に上陸した外国人(不法上陸者)が収入を得る
  • 短期滞在ビザで日本に滞在している外国人がコンビニなどでアルバイトをする
  • 留学生が「資格外活動許可」を得ずにアルバイトをしている
  • 在留資格「留学」「家族滞在」を持つ外国人が「資格外活動許可」を得て28時間を超えてアルバイトをする
  • 在留資格「特定技能」を持つ外国人が指定書に記載された企業以外で働く

雇用した外国人が不法就労していた場合、企業も不法就労助長罪で罰則が科されてしまいます。
外国人従業員には不法就労に当たる行動を漏れなく共有しておかなければなりません。
[出典:法務省「平成25年版犯罪白書」]

不法就労助長罪についてはこちらの記事も参考にしてください。

3.強制送還の手続きの流れ

強制送還(退去強制と出国命令)の手続きの流れは大きくこのようになっています。

強制送還の手続きの流れ

3-1. 退去強制の流れ

強制退去は不法滞在者を本人の意思に関わらず強制退去させる非常に重い行政処分です。そのため、その審査には慎重に行われます。(Step.3からStep.5)

STEP
入国警備官による違反調査

…退去強制の対象になると思われる外国人について調査します。

STEP
当外国人を収容所に収容

…入国警備官は外国人を拘束してから48時間以内に入国審査官にその容疑者を引き渡さなければなりません。容疑者となった外国人は収容所に収容されます。

STEP
入国審査官の違反審査
STEP
特別審理官の口頭審理
STEP
法務大臣の裁決
STEP
退去強制令書発布

…容疑者が退去強制を認め帰国を希望するときは、主任審査官によって退去強制令書が発布されます。

STEP
当外国人を送還

3-2. 出国命令の流れ

STEP
不法滞在をした外国人が自ら地方出入国在留管理局に出頭する

…出頭するときには旅券(パスポート)が必要です。紛失した場合には身分を証明できるものを持参しなければなりません。

STEP
出国命令書を交付する
STEP
出国

…出頭してから出国命令書を交付され出国するまでに、概ね2週間程度かかります。

出国命令を受けるためには、帰国のための航空券や航空会社が発行した航空券予約確認書が必要になります。ただし、不法残留の状態によっては調査に時間がかかり、予約した飛行機に乗れない場合があります。

出頭後でも航空券の問い合わせは可能なので、まず近くの出入国在留管理庁に出頭してください。

[出典:出入国在留管理庁「退去強制手続きと出国命令 引渡・違反審査・口頭審理・異議申出・裁決・在留特別許可」]
[出典:出入国在留管理庁「出国命令制度について」]

4.強制送還に掛かる費用とその負担者

強制送還にかかる費用は主に送還時の飛行機の運賃です。被送還者のほとんどは送還費を自己負担する「自費出国」をしますが、被送還者の中には所持金を持たないために「国費出国」をさせざるを得ない場合もあります。

送還費用

4-1. 自費出国

「自費出国」は外国人が自分の所持金で航空券等を買って送還することです。送還される外国人の90%以上が自費出国で送還されています。

国費送還が国民の税金で賄われている点、今後の不法入国や不法滞在を防ぐという点から、出入国在留管理庁は自費出国ができる被退去強制者には自費出国を促しています。

ただし自費出国するには

  • 有効なパスポートを所持していること
  • 送還先までの航空券が購入可能な金額の所持金を持っていること
  • その他状況を鑑みて、自費出国が具体的で可能であることを確認できること

といった要件を満たさなければなりません。

4-2. 国費送還

「国費送還」とは、国民の税金から賄われる国費で外国人を送還することです。

帰国費用の工面ができずに送還が困難となっている場合、または人道的配慮から早期の送還が求められる場合にのみ行われます。重い疾患がある場合、様々な理由で送還を忌避している場合などがこれに当たります。

4-3. 運送者の負担による出国

運送者の負担による出国の対象となるのは

  • 一般の上陸審査の過程において上陸を拒否された
  • 入管法第24条第5号から第6号の2までのいずれかに該当して本邦から退去強制される者です。

入管法第24条第5号から第6号の2の内容はこちらです。

  • 上陸を拒否されたけれども仮上陸の許可を得た人で、条例に違反し逃亡したり正当な理由なく呼び出しに応じない場合
  • 難民旅行認定書などを持つ外国人が、退去命令を受けたにもかかわらず遅延なく日本から退去しない場合
  • 船舶観光上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、又は一時庇ひ護等が理由で上陸の許可を受けた者で、パスポート・許可書等に記載された期間を経過して日本に残留している場合
  • 船舶観光上陸の許可を受けた者で、旅客船から下船した後、当該出入国港から当該指定旅客船が出港するまでの間に帰船することなく逃亡した場合

[出典:出入国在留管理庁「退去強制の執行・送還・自費出国」]

5.外国人が強制送還されないよう企業が気を付けるポイントとは

退去強制であれ、出国命令であれ、強制送還の措置を受けた外国人を雇用していたとなると企業の信用がなくなってしまう可能性が高いです。

ここでは雇用している外国人が強制送還されないように、企業が日々気を付けることを紹介します。

  • 在留カードの確認を行う
  • 資格外活動許可の確認を行う
  • 雇用している外国人に不審な動きが無いか周囲を確認する
  • 外国人労働者とのコミュニケーションを日頃から心がける

の4点です。

5-1. 在留カードの確認を行う

在留カードの表面下部には在留カードの有効期限が書かれています。

在留カード 有効期限

在留期限がない在留資格(永住者等)を除いて、在留カードの期限がその外国人の在留期間の満了日です。在留カードの有効期限は必ず確認して、忘れずに更新するようにしましょう

また、外国人が提示した在留カードが偽造でないかの確認も必要です。

在留カード 目視での確認

これらの方法で目視でも確認ができます。
また、在留カードに記載されている番号から「在留カード等番号失効情報照会」のページで確認することもできます。

在留カードについてはこちらの記事も参考にしてください。

5-2. 資格外活動許可の確認を行う

資格外活動許可とは、すでに一つの許可を持っている外国人が別の許可を受けようとするときに、すでに持っている在留資格の活動を妨げない範囲で行い得ると判断された場合に、もう一つの活動が許可されることです

資格外活動許可の具体的な事例は以下の通りです。

  • 「留学」「家族滞在」等を持つ外国人が、1週間に28時間以内の収入を伴う活動(アルバイト等)をする
  • 「特定活動」等を持つ外国人が、継続就職活動又は内定後就職までの在留を目的に活動する
  • 「教育」「技術・人文知識・国際業務」または「技能(スポーツインストラクターに限る)」を持つ外国人が、地方公共団体等との雇用契約により活動する

資格外活動許可は、在留カードの裏面にその許可が与えられている場合は記載があります

資格外活動許可

外国人がそもそも資格外活動をできる在留資格を持っているのか、資格外活動ができる在留資格の場合も資格外活動許可が与えられているのかを確認しましょう。

これら資格の確認や、その他雇用上の確認事項については、面接時に行っておくことが望ましいです。
外国人の採用面接では、日本人とは異なる質問を聞く必要があり、この際どれだけお互いに条件を擦り合わせることが出来ていれば、採用後のミスマッチは防げます。

外国人の採用面接において心構えや評価ポイントについて解説した「外国人採用面接質問シート」のダウンロードはこちらから

5-3. 雇用している外国人に不審な動きが無いか周囲を確認する

日本で暮らす外国人は、同じ国出身者によるコミュニティの中で過ごしている場合が多いです。犯罪を犯してしまう場合、このコミュニティ内の知人から誘われたという事例が少なくありません。

外国人従業員の会社内のコミュニティだけでなく、社外のコミュニティでトラブルがないか等定期的に確認するのもいいでしょう

5-4. 外国人労働者とのコミュニケーションを日頃から心がける

外国人従業員と共に働く日本人従業員であっても、日本語があまり得意でない外国人とは、なかなか話が盛り上がらずに仕事上のコミュニケーションのみに留まってしまうことがあるかもしれません。

しかし外国人従業員は日本という慣れない文化・習慣の国で働いており、仕事だけでなく日常生活でも困ることや不安に思うことは多いでしょう。同僚の中に日々の困っていることを話せる相手がいるというだけで、外国人は安心して生活を送れる可能性が大きくなります。

天気の話や、休日にしたことなど身近な話題から外国人従業員ともコミュニケーションをとってみてください。

外国人労働者と良い関係を築くための「コミュニケーションマニュアル」のダウンロードはこちらから

[出典:出入国在留管理庁「在留カード等番号失効情報照会」]
[出典:出入国在留管理庁「資格外活動許可について」]

6.強制送還に関するよくある質問

強制送還後いつから入国ができますか

退去強制の場合は強制退去日から5年後(退去強制の理由によっては10年後)、再入国ができます。

出国命令の場合は出国日から1年後、再入国が可能になります。

強制送還を拒否することはできますか

自費出国による退去強制を拒否し、収容所に留まっている外国人もいます。本来退去強制を受けた外国人は「送還可能のときまで」収容されることが定められていますが、健康上の理由または出国準備などで仮放免を請求できる制度もあります。

ただし原則として退去強制は”強制的”な行政措置です。退去強制を受けた外国人はすみやかに送還されなければなりません。

強制送還について、その他の質問はこちらも参考にしてください。
[出典:出入国在留管理庁「退去強制手続と出国命令制度Q&A」]

7.まとめ

強制送還は外国人当人にとっても、当外国人を雇用していた企業にとっても非常に重い行政措置です。外国人従業員には、犯罪行為をした場合や不法滞在となってしまった場合には強制送還の手続きが取られる可能性を伝え、外国人従業員と企業側が共に回避するように努めましょう。

強制送還を未然に防ぐために相談したい場合はぜひ当スクールへご相談ください。外国人採用の専門スタッフが対応いたします。

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