【採用担当向け】外国人の採用面接での質問項目・NG質問決定版!

執筆者:松本(JapanJobSchool 講師兼就職支援室長)

日本で働く外国人の数は2022年10月の時点で1,822,725名と過去最高を記録しております。

年間200件以上の外国人の面接に同席している筆者から、これから外国人採用をお考えの方、および既に外国人採用をされている方にも、本記事で面接での注意点やよりよい面接方法のご提案ができたらと思います。
(弊社で外国人面接のガイドブックを作成し、企業様にお配りしております。よろしければご覧ください。)

目次

1. 外国人の採用面接での質問項目

面接での質問につきまして、基本的なルールは日本人でも外国人でも変わりません。
しかし、気を付けないといけない点として、「曖昧な質問」は辞めたほうがいいでしょう。
理由は「○○ですけど、大丈夫ですか?」という文章ですと、質問の意図がわからなくても「大丈夫です。」と答えがちです。
イエスノーで答えられる質問ではなく、なるべく本人に話をしてもらう形での聞き方がいいと思います。

こちらでは外国人の面接の際に聞くべき質問項目とその意図を解説していきます。

1-1. 最近母国に帰ったのはいつか

そんなに頻繁に帰国する人は飛行機代等の金銭的な理由であまり多くありませんが、一度帰国したらなるべく長く母国で過ごしたい、と考える方が多いです。
こちらの質問とあわせて、「帰国の際はどのくらいの期間帰っているか」を聞くといいでしょう。

1-2. 残業の希望はあるか

外国人労働者の来日理由のなかに「母国よりお金が稼げるから」というのが入っている方が多いです。
なので、残業したくない方より、残業してたくさん稼ぎたい方のほうが多いです。
残業の有無で退職に繋がるケースもありますので、必ず確認をしてください。

1-3. 日本に来て困ったことはあるか

日本での困った経験を聞くことで、本人のストレス耐性や性格をみる、ということのほか、どうやってその困った状態を解決したか、という努力のタイプを見ることができます。

1-4. 休みの日は何をしているか

「友達と遊んでいます。」という方は、その友達と離れてしまうことが大丈夫であるかの確認が必要です。場合によっては友達のいない環境に耐えられず、退職してしまう方もいるからです。

1-5. 日本語の勉強はどれくらいしているか/日本語能力試験は何級を取得しているか?

日本語レベルを図るうえで、わかりやすいのはJLPTなどの資格を所持しているか、どうかです。
N1~N5の5つのレベルがあり、N1が一番日本語能力が高く、N5が一番低くなっております。
(JLPTの各級の詳しい目安につきましてはこちらをご覧ください。)

「外国人の日本語レベルはどのくらい?」日本で働いている、もしくはこれから働こうとしている外国人はどのくらいの日本語力を持っているのか解説している資料ダウンロードはこちらから
参考_日本国際教育支援協会「日本語能力試験JLPT N1~N5:認定の目安」

資格を持っていなくても会話の能力が高い外国人もいますが、資格という目標に向けて努力をした、という評価をしてあげていいかと思います。
また、どのくらいの学習機関でどのくらいの日本語レベルか、という点も地頭の良さだったり、学習意欲を図ることが可能です。

しかし、一つお伝えしたいのは、JLPTをはじめとする日本語能力の資格は筆記試験です。ですので、中国などの漢字圏の国の方のほうが圧倒的に資格を取得しやすいです。
ですので、N1を持っている漢字圏の国の方とN2を持っているそれ以外の国の方ですと、後者のほうが会話の能力が高いということも珍しくありません。
資格は重要なファクターのひとつではあると思いますが、それのみで判断をするのではなく、可能であれば一度面接をしてみる、という方法がおススメです。

1-6. 母国にどれくらい送金をしているか

送金額の把握は、お給料の確認をする上で重要です。外国人がお給料の額を勘違いしていたり、送金額が多い場合は残りのお金で生活が可能なのかを見る必要があります。(仕送り金額の割合が多いと離職やお給料アップを求めてくる可能性があります。)

1-7. なぜ日本を選んだのですか

こちらは面接でよく聞かれる質問です。
ここでの回答で応募者のイメージが決まることがあります。

「日本のほうがお給料が高いから」と答えるケース、「日本の文化に興味があったから」と答えるケースなどがありますが、もちろん後者のほうが良いイメージを持たれる面接担当官が多いと思います。
ただ、こちらの質問が良く聞かれる、ということはもう外国人の方も知っている方が多いので、練習をして「日本の文化に興味があったから」と答えがちです。
ですので、「日本の文化のどのような点に興味を持ちましたか?」など深掘りして、真偽を確かめましょう。

1-8. (日本で働いたことがある場合)なぜ職種を変えたいのか?または なぜ同じ業種で企業を変えたいのか?

この質問をすると、どれだけ仕事に思い入れがあるのか、仕事に対する忍耐があるのかなどを知ることが出来ます。
また、経験がある人の場合は日本の時間感覚や報・連・相をすでに理解できており、日本の働き方になれているという点で評価ポイントとなります。しかし、逆にデメリットもあります。
それは、日本での就労経験があると前の企業との比較ができてしまうので、後々不満が出てきて辞めてしまう方もいるという点です。
転職の理由として、前の会社の悪口を挙げる方は転職しても長続きしない傾向にあります。

1-9. (日本で働いたことがない場合)なぜその業種・企業を選ぶのか

こちらに関しても、仕事に対する熱意や意欲を知ることができます。
日本での就労経験者にはないメリットとしては、初めて日本で働く方のほうが、ゼロからの教育ができるため企業ごとのルールを教えることができます。
そのため、他の企業と比べることがないため、長期的に働いてくれる可能性が高いです。

あまり良くない回答の例として
「お給料が高いから」
→ 勤務開始後も他にもっと待遇が良いところがないか探して、あればそちらに転職をしようとします。
「同じ国籍の先輩がいるから」
→ その先輩が辞めるタイミングで一緒に辞めてしまうリスクがあります。

1-10. 日本であと何年働きたいですか?

将来のキャリアプランをより具体的に聞いている内容になります。
仮にここで「あと3年くらい働きたい」と答えたこの場合は、3年働いたら国に帰ってしまうという
ことであり、今後の企業での教育の必要性はあまりなくなってしまいます。

ただ、当然、現段階でイメージをしているだけという方も多くいますので、3年で帰国を予定していた方が5,6年働いているケースもありますし、逆もまた然りです。

面接では、とにかく相手とコミュニケーションを取りながら企業側にも相手にもミスマッチが無いようにしなければいけません。面接中で外国人を採用した後も長く働いてもらうために良好な関係を築く必要があります。外国人とのコミュニケーションの取り方についてこちらで解説しています。是非ご参考にしてください。

2. 外国人の採用面接でのNG質問・注意事項

厚生労働省が発表している採用選考の基本的な考え方につきまして

  • 応募者の基本的人権を尊重すること
  • 応募者の適性・能力に基づいた基準により行うこと

を考え実施することが大切です。
実際に筆者が厚生労働省および東京労働局に電話をして聞いた内容もあわせて、こちらでお伝えいたします。
参考_厚生労働省「公正な採用選考の基本」

2-1. NG質問

こちらに配慮すべき事項が記載されております。

次のaやbのような適正と能力に関係がない事項を応募用紙等に記載させたり、面接で尋ねる、作文の題材とするなどによって把握することや、cのような採用選考の方法を実施することは、就職差別につながるおそれがあります。

a. 本人に責任のない事項の把握

  • 本籍・出生地に関すること(注:「戸籍謄本」や本籍が記載された「住民票(写し)」を提出させることはこれに該当します)
  • 家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
  • 住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
  • 生活環境・家庭環境などに関すること

b. 本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握

  • 宗教に関すること
  • 支持政党に関すること
  • 人生観、生活信条などに関すること
  • 尊敬する人物に関すること
  • 思想に関すること
  • 労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
  • 購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

c. 採用選考の方法

  • 身分調査などの実施(注:「現住所の略図等を提出させること」は生活環境などを把握したり身元調査につながる可能性があります)
  • 本人の適正・能力に関係ない事項を含んだ応募書類の使用
  • 合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施

こちらは基本的に聞くべきではない項目になりますが、労働局に確認をしたところ、「合理的な理由があって」、「面接時にその質問の意図をしっかり求職者に説明をする」、という形であれば認められる、とのことでした。

人種・国籍・宗教に関する偏見を含む質問

人種、国籍、宗教で差別をする、というのはあってはなりませんが、例えば、「うちのお客さんにベトナム人がとても多いので、ベトナム語話せますか?」や「毎日仕事の日は賄いを用意しているので、宗教上食べられないものはありますか?」などの質問は必要だと思います。

講師|松本

その場合は、質問の前にしっかり意図を説明しなければなりませんし、その返答によって選考結果が変わるのは望ましくありません。

相手の人格を否定するような質問

外国人の面接でよくあるのが、この国の人は、協調性がない、時間にルーズだ、など、国ごとに先入観を持って決めつけてしまうことです。
あくまで個人の能力や適性を見てあげましょう。

個人のプライベートに関する質問

家族のことや結婚のことは原則聞いてはいけない項目に該当します。
ただ、企業によっては独身者用の寮しか用意できない等、合理的な理由があって質問をしているケースもあります
その場合は、繰り返しになりますが、その質問をする前にしっかりと質問をする意図をつたえましょう。

2-2. 注意事項

最近は外国人の方たちの中でも「どんな仕事でもいいから働きたい。」というのは少数派で、大体の求職者が複数の企業で面接を受けています。
こちらでは外国人の求職者が選んでくれるための注意点を説明していきます。

威圧感を与える態度を取らない

こちらは日本人でもそうですが、外国人の方々のほうが細かい日本語がわからない分、表情や態度に敏感です。
実際に外国人が会社を選ぶ理由として「職場環境や社風が合う」を挙げる方が37.0%と2番目に多くなっています。面接時の態度には注意しましょう。

参考_PR TIMES「【アンケート結果】外国人留学生から見た日本の就職活動について」

日本の当たり前を基準で話を進めない

「ボーナスは会社の売り上げによって金額が増減する。」「昇給は本人の能力、仕事の出来具合によって、人によって差がある。」「有給が付与されるのは基本、勤務開始後6ヶ月が経過してから。」など、日本人なら言わなくても大体わかっていることも、外国人はそのルールを知りません。

我々のような人材紹介会社が間に入っているケースですと、このような後々トラブルになりやすい項目がわかっていますので面接前、または採用後に必ず確認を行っていますが、自社ですべて採用を行っている企業様にはかなり強めに確認をしていただくことをおすすめいたします。

なるべく早めに合否の連絡をする

外国人の方々には在留資格の期限、というものがあります。

日本人であれば、入りたい仕事が見つかるまで探す、というのが可能ですが、外国人の場合は在留資格の期限までに仕事を見つけないと、母国への帰国を余儀なくされます。
また、転職等では在留期限内であっても「3ヶ月以内に次の就職先を決めないと、入管が在留資格の取消しができる。」というルールもあります。

参考_出入国在留管理庁「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」

なので、オンラインですぐに面接をしてくれる企業や、その場で即内定をだしてくれる等、なるべく早めに合格をくれた企業を選ぶ、という傾向があります。

3. より良い面接にするために

面接は日本語のテストをする場ではないので、実際に面接にきた外国人の求職者がどのくらいの能力と意欲を持っているか、そちらを確認しましょう。

3-1. 簡単な日本語での質問を心がける

「なぜ日本に来ようと思いましたか?」という質問は面接できかれることが多いですが、面接官によって「日本に来たきっかけはなんですか?や「日本に来た経緯を教えてください?」と同じ質問なのに聞き方が何パターンもある、というのが他の言語にはない日本語のややこしい部分になります。

企業様によっては、日本人と同等の日本語能力を求めるので答えてもらわないと困る、といったケースもありますが、もう少し外国人の方たちがどんな考えなのか、分かりやすい日本語で聞き出してあげるのがいいと思います。

3-2. メリットだけでなくデメリットをしっかり伝える。

面接をして採用しても、すぐに辞めてしまっては意味がありません。
そのために企業側は働くメリットのほかにデメリット(周辺環境が田舎、重い荷物を持つ仕事があります等)も面接時に必ず伝えましょう。

講師|松本

そこで内定辞退になってしまうかもしれませんが、そういう方は内定しても長くは続かない可能性が高いです。

4. まとめ

いかがでしたでしょうか?

外国人の面接について繰り返しになりますが、「曖昧な表現」をせずに相手のわかる言葉で伝える、といったことが一番大切になります。

我々日本人は曖昧な表現に慣れすぎてしまって、「このくらいは言わなくてもわかるでしょう」と相手に委ねがちです。外国人にその日本人の常識は通用しません。
これからも就職先として日本を選んでもらうためには、日本人のほうから変わっていく必要があると感じています。
ここまでお読みいただきありがとうございました。

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この記事を書いた人

株式会社JJS(JapanJobSchool)の講師兼就職支援室長。
所有資格:行政書士・外国人実習雇用士

今まで500名以上の「技術・人文知識・国際業務」外国人を就職に導く。外国人との対話は笑顔とフランクさを信条に、外国人生徒からの人気No1の先生。

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