不法就労助長罪は知らなかったでは済まない|罰則や事例、注意すべきこと

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

日本での就労許可がない外国人を雇ったり、仕事を紹介したりすると、「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。この罪は、知らなかったでは通用しません。雇用した側も重い罰金や懲役に処されることもあります。

この記事では、法的トラブルを防ぐために不法就労助長罪の定義や罰則について解説しました。実際に起きた事例、企業が注意すべき点もまとめたのでぜひ参考にしてください。

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目次

1. 「不法就労助長罪」とは

外国人を雇用するときには、法律を守って適正に雇用しなければなりません。もし不法就労をさせてしまったり、仕事を紹介したりすると、不法就労助長罪という罪になります。ここではどのような罪なのか、詳しく解説しました。

1-1.不法就労とは

日本で働くには、在留資格という許可が必要です。不法就労とは、日本で働いてはいけない外国人が働く行為をさします。在留資格には種類があり、就労が許可されているか確認が必要です。

例えば観光の在留資格で訪れた外国人は、日本で働けません。また、留学や家族滞在は許可を得ても週28時間までしか働けません。

在留資格に反して働いたり、在留期限が切れたりしたら、不法就労に該当します

どの在留資格がどのように働くことができるのかはこちらの記事で詳しく解説しています。

1-2.不法就労助長罪とは

不法就労助長罪とは、不法滞在者に仕事をさせたり、許可された就労の範囲外で業務をさせたりした場合に問われる罪です。故意に雇用した場合だけでなく、事実を知らなかったとしても適用されます。

不法就労助長罪は外国人だけでなく、雇用した企業にも罰則・罰金が課されます。在留資格や在留期間の未確認や誤認識により、雇用したときも該当するので注意しましょう。

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2. 不法就労助長罪になる3つのケース

具体的にどのようなケースが不法就労助長罪に該当するのか、気になるかもしれません。ここでは成立要件と該当する3つのケースを見ていきましょう。

2-1.不法就労助長罪の成立要件

出入国管理及び難民認定法(入管法)の第七十三条の二によると、不法就労助長罪の成立要件は以下のとおりです。

  1. 事業活動に関し、外国人に不法就労活動をさせた者
  2. 外国人に不法就労活動をさせるために、これを自己の支配下においた者
  3. 業として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関し斡旋した者

※引用:出入国管理及び難民認定法(入管法)の第七十三条の二

成立要件で注意したい点は、以下の2つです。

  • 不法就労の仕事を紹介しても罪に問われる
  • 不法就労になると知らなくても罪に問われる

2-2.不法就労助長罪に該当する3つのケース

不法就労助長罪を防ぐために、対象になるケースをチェックしましょう。

① 不法滞在者や被退去強制者が働くケース

不法滞在者や被退去強制者とは、日本に滞在できない外国人です。例えば、以下のような場合には、不法滞在者や被退去強制者になります。

  • 在留期限が切れたまま日本に滞在している
  • 在留資格を取り消された
  • 退去強制処分を受けた
  • 入国管理局から出国勧告を受けた

これらの外国人は、日本に滞在すること自体が違法です。そのため、働くこともできません。

② 日本政府から働く許可を受けていないのに働くケース

日本政府から働く許可を受けていないのに働くケースとは、以下のような場合です。

  • 観光など、働くことができない在留資格で働く
  • 在留資格の変更申請中に、新しい在留資格で働く

上記の場合は、日本政府から働く許可を受けていません。

③ 日本政府から認められた範囲を超えて働くケース

日本政府から認められた範囲を超えて働くケースとは、以下のような場合です。

  • 就労ビザ規定の働ける時間を超えて働く
  • 就労ビザ規定では働けない業種や職種で働く

例えば「特定技能」の在留資格は、就労できる業種が限定されています。また留学生の働ける範囲は、週28時間以内です。就労範囲を超えてしまうと、知らずに働いていた場合でも不法就労助長罪に該当します。

※参考:不法就労防止に|法務省

3. 不法就労助長罪の罰則

不法就労助長罪に問われると、外国人に「最高懲役3年」または「300万円の罰金」が科せられます。単に「資格外活動許可」を得ずに働いて、報酬・収入が発生した場合も「1年以下の懲役」または「200万円の罰金」が課される決まりです。

外国人だけでなく雇用したり職業を斡旋したりした法人や、雇用主も罰則の対象です。この罪は、外国人が不法就労者であることを知らなくても、過失があったとされます。

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4. 不法就労助長罪の事例ニュース

不法就労助長罪は、実際に多くの事例が報告されています。令和2年の不法就労助長事犯の検挙状況を国籍別にみると、中国40人、フィリピン17人、韓国17人、タイ17人、ベトナム11人、日本人275人になっていました。

ここでは、警視庁が公表している不法就労助長罪の事例を見てみましょう。これらの事例から、不法就労助長罪になるケースや、そのリスクを学ぶことができます。

※参考:令和2年における 組織犯罪の情勢|警察庁

4-1.スリランカ人を在留資格外で働かせた疑いにより社長ら3人逮捕

2023年11月、東京都渋谷区恵比寿の飲食店で「資格外活動」無許可のスリランカ人男性を雇用したとして社長ら3人が逮捕されました。在留資格外であるにも関わらず、社長らが共謀して雇用していた事例です。最大で月31日出勤させ、304時間働かせたとされています。

同署はスリランカ人とネパール人の8人を同法違反の容疑で取り調べており、うち6人が書類送検になりました。同社は、恵比寿や中目黒、麻布十番を中心に約35店舗を構えています。

資格ないスリランカ人男性働かせた疑い 恵比寿の飲食店の社長ら逮捕|朝日新聞

4-2.ベトナム人の不法残留者を就労させ判決「懲役3年・執行猶予5年」

石川県金沢市の会社役員が、不法残留していたベトナム人3人を違法に働かせたとして罪に問われた事例です。被告は運転免許証を不正に取得していた疑いもあり、裁判で起訴された内容をすべて認めました。

その結果、不法就労助長罪で「懲役3年・執行猶予5年に加えて罰金50万円」の判決を受けています。判決では、金沢地方裁判所の川内真里裁判官により「在留資格を確認する体制は極めてずさんで、不注意の程度は大きく、今回の件で一定の利益を得ていたことも踏まえると相応の刑事責任を負うべきだ」との指摘もありました。

不法就労助長の会社役員に懲役3年・執行猶予5年の判決|NHKニュース

5.【最新情報】技能実習廃止による不法就労助長罪の「法定刑」引き上げ 

政府は技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労制度」を導入する方針です。これに伴い、不法就労助長罪の「法定刑」が引き上げられます。

育成就労制度が誕生した背景には、外国人受け入れ後の過酷な労働環境や失踪といった課題がありました。新制度の導入により課題の解決を目指し、不法就労の罰則・罰金も重くなるとされています

これは、不法就労を防ぐための厳罰化の一環です。新しい制度になっても、不法就労助長罪にならないように注意しましょう。

外国人雇用に関する最新情報は、以下をご覧ください。

「技能実習制度の廃止」に関する記事は、以下をご覧ください。

6. 違反しないよう企業が注意すべきこと

不法就労助長罪を防ぐためには、外国人の在留カードを確認することが大切です。在留カードとは日本に中長期間、在留する外国人に交付されるカードで、氏名や在留資格、在留期間などが記載されています。ここでは、在留カードの確認方法と偽造の見極め方についてまとめました。

6-1.在留カードを確認

カードの表面で身分確認をする

引用:法務省「在留カード及び特別永住者証明書の見方」

在留カードの表面には、外国人の顔写真や氏名、生年月日、性別、国籍、住居地、在留カード番号、在留資格、在留期間などが記載されています。これらの情報を確認して、外国人の身分を確かめましょう。特に、氏名と顔写真が一致しているかどうかをチェックしましょう。

在留カード裏面で「資格外活動許可欄」を確認する

引用:法務省「在留カード及び特別永住者証明書の見方」

在留カードの裏面には、資格外活動許可欄があります。この情報を確認して、外国人が働くことができるかどうかを判断しましょう。記載内容として「許可」が確認できれば、許可範囲内で就労できます。

例えば在留資格が留学の場合、資格外活動許可欄に「許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く)」と記載されるのが基本です。その場合、許可された時間内で外国人をアルバイト雇用できます。

6-2.偽造された在留カードの見極め方

引用:法務省「在留カード及び特別永住者証明書の見方」

日本で働きたい外国人は、偽造された在留カードを所持している可能性があります。偽造されているかを見極めるには、目視での確認が大切です。例えば、カードの表面の虹彩模様や文字の浮かび上がり方により本物か偽物かを判断します。

またアプリを使って確かめることも可能です。在留カード読取アプリをインストールし、カードのICチップ情報を読み取って本物かをチェックします。

見極め方はいくつかあるので、詳しくはこちらの記事をご参考ください。

7. 不法就労が発覚したときの対処法

万が一、不法就労が発覚したときには、どのように対処すべきか分からないかもしれません。ここでは、不法就労が発覚したときの対処法について紹介します。冷静に対応するために、前もって確認しておきましょう。

7-1.解雇する

不法就労が発覚した場合は、速やかに解雇手続きを行いましょう。雇用し続けると、不法就労助長罪の罪が重くなる可能性があります。

ただし不法就労者の解雇は、雇用した状況に応じて対処方法が異なります。

不法就労だと知らなかった就業規則等に「採用時の経歴詐称が解雇の対象である」と記載していれば懲戒解雇
不法就労だと知っていた普通解雇の扱いになり、30日前の解雇予告または30日分以上の賃金支払いが必要

解雇手続きには、解雇理由の通知や解雇予告期間の遵守などが必要です。解雇手続きに不安がある場合は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談しましょう。

7-2.出頭を促す

不法就労者を解雇した後は、出入国在留管理局へ出頭するように促しましょう。出入国在留管理局へ出頭することで、自らの身分を正し、日本から出国することができます。

出頭しない場合は、逮捕や収容などの厳しい措置を受ける可能性があります。反対に自ら出頭すれば「出国命令制度(入管法24条3第1項第1号)」により収容されずに済むかもしれません。

 雇用した企業は、不法就労者に対して出入国在留管理局へ出頭することのメリットやデメリットを説明し、自主的に出頭するように促しましょう。出頭を促す際には、出入国在留管理局の連絡先や所在地などを伝えると丁寧です。

8. まとめ

不法就労助長罪は、雇用した企業にもペナルティが課せられます。外国人雇用にあたって法的トラブルに発展しないために、事前に在留カードを目視で確認しましょう。 外国人採用に不慣れな場合、必要な手続きや確認事項が分からず戸惑うかもしれません。

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この記事を書いた人

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