特定技能「農業」とは
執筆者:竹村(JapanJobSchool講師兼就職支援室マネージャー)
この記事では、農業分野における特定技能外国人の受入れについて解説しています。特に、採用方法や採用活動の際の注意点、よく似た制度である技能実習との違い、受入企業側・外国人側の要件などをまとめています。
そもそも特定技能について詳しく知りたい方は「特定技能まるわかり資料」をダウンロードください
1. 特定技能「農業」とは
「特定技能」とは2019年4月に新しく創設された制度(在留資格)です。今まで外国人をフルタイム雇用する場合、基本的に現場で働くことはできませんでした。しかし、特定技能の登場により、人手不足とされる14業種においてのみ、外国人が現場で働くことができるようになりました。
日本における農業の現状
農業における人手不足は深刻化しています。農林水産省が発表している「2020年 農林業センサス結果の概要(確定値)」によると、農業経営体数は107万6千経営体で5年前と比べて約21.9%減少、農業の就業人口は約152万人で5年前と比べて約23%もの減少幅となっています。
団体経営体数は1千経営体数で5年前に比べて約2.8%増加したものの、個人経営体数は30万3千経営体で5年前と比べて約22.6%の減少になっています。経営者の高齢化や人手を募集しても集まらなかったり、定着しないといった問題が指摘されています。
出展:農業従事者 5年で46万人減 49歳以下8.5万人減 新規就農定着へ検討会-農水省|ニュース|農政|JAcom 農業協同組合新聞
参考:2020年農林業センサス結果の概要(確定値)(令和2年2月1日現在):農林水産省 (maff.go.jp)
農業従事者 5年で46万人減 49歳以下8.5万人減 新規就農定着へ検討会-農水省|ニュース|農政|JAcom 農業協 同組合新聞
日本の農業分野で働く特定技能労働者(人数、平均給与等)
出入国在留管理庁が発表している特定技能外国人数によると、令和4年12月の段階で農業分野に従事している外国人は20,882人となっています。これは特定技能全16分野の内、第4位の人数となっています。
出展:特定技能在留外国人数の公表 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
特定技能の人数についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
また、厚生労働省が発表している特定技能外国人の平均賃金は、令和4年の段階で205,700円となっています。特定技能で外国人を受け入れるには、日本人の同職位の方と同等以上の賃金の支払いが必要となっています。
2. 技能実習と特定技能の違い
農業における外国人材受入れの方法として、特定技能のほかに技能実習もあります。両者はよく似た制度となっており混同する方も多いため、主な違いを以下で解説します。
受入れ期間
技能実習の場合、受入れ期間は原則3年間で、その後2年間延長することができます。
特定技能1号の場合は、最長5年間となっていて、半年契約や1年契約ということも可能です。また、特定技能は2023年6月に2号への移行が可能になったことで上限なし(但し、3年、1年、または6か月ごとに更新が必要)となりました。
参考:特定技能運用要領・各種様式等 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
転職
技能実習では、当初の3年間は原則として転職ができない仕組みになっています。3年間は確実に仕事をしてもらえると言えます。
一方、特定技能は転職が自由となっています。1年契約や3年契約で採用したとしても、途中で他社や別業種に転職してしまうという可能性もあります。
参考:[PDF]特定技能制度に関するQ&A 目次 Q 1 申請書や申請書に必要 …
特定技能外国人の転職についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
費用
技能実習生を受入れる際には、監理団体というところに監理をしてもらわなければなりません。監理団体は技能実習生の生活サポートや書類手続きを代行してくれますが、毎月監理費を2〜4万円支払わなければなりません。監理団体への入会金や現地訪問費用などの初期費用も別途発生します。
特定技能の場合、監理団体などの機関を利用することなく、自社のみで雇用することも可能です。ただし、法律で定められている「支援」や定期報告を自社でしていると時間がいくらあっても足りませんので、特定技能外国人と受け入れ企業を支援する登録支援機関にサポートしてもらう方式が一般的です。
※各ビザによりかかる費用(1人あたり。おおよその相場のものも含む)
技能実習 | 初期費用500,000円~(実習開始まで/団体管理型の場合)管理費など2,000円~/月 |
特定技能1号 | 採用費300,000円~(人材紹介会社経由の場合)登録支援料20,000円~/月 |
特定技能外国人にかかる費用を詳しく知りたい方は「特定技能外国人のコスト一覧表」をダウンロードください
※特定技能と技能実習の違いについて詳しく知りたい方はこちらをご参照ください
技能実習と比べた特定技能のメリット
両制度を比べた際、特定技能のメリットとして、主に下記が挙げられます。
①即戦力人材を確保できる可能性がある |
②比較的コストが低い |
③受け入れ可能人数や国籍など制約が少ない |
④特定技能2号へ移行すれば受け入れ期間の制限なし |
⑤技能実習より運用しやすい |
⑥寮の手配が必須ではない |
⑦内定から入社まで早い |
⑧失踪のリスクが少ない |
①即戦力人材を確保できる可能性がある
特定技能の場合、「特定技能評価試験」に合格することが資格取得の必須条件の為、ある程度その分野の専門的知識を有しています。「各分野で即戦力となれるレベル」を基準とされた試験の為、指導すれば相応の理解が可能な知識を有していると見て良いでしょう。
また、日本語能力試験N4もしくはJFT-Basic(A2レベル以上)に合格することも必須条件の為、基本的な日本語は理解できるレベルであることもメリットに挙げられます。
参考:農業技能測定試験 (asat-nca.jp)
N1~N5:認定の目安 | 日本語能力試験 JLPT
②比較的コストが安い
両制度を比較した際に、特定技能の方が5年間で20~30万円ほど割安となっています。
特定技能の場合は管理団体への加入は必要ない為、入会金や年会費は必要ありません。また、特定技能は実習生ではなく労働者の為、入国前後の講習も必要なく講習費も発生しません。
特定技能外国人を受け入れるための費用をまとめた「特定技能外国人コスト一覧表」のダウンロードはこちら
参考:外国人技能実習制度について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
特定技能制度 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
③受け入れ可能な国籍、人数や自社採用の可否など制約が少ない
現状、技能実習生を受け入れできる国は14ヵ国となっているのに対し、特定技能の場合はごく一部の国を除きそのような制限はありません。また、建設と介護以外の分野では各企業ごとの受け入れ人数の制限もありません。(※但し、出入国在留管理庁の方針として、特定技能「農業」の場合、「令和5年度末までは、当面、1号特定技能外国人の受入れ見込数を最大3万 6,500 人とし、これを1号特定技能外国人の受入れの上限として運用する」とありますので、この上限に達した場合はどの企業も受け入れできなくなる可能性があります。)
採用方法も技能実習は送り出し機関や管理団体を通すのに対し、特定技能は直接採用活動を行うことが可能です。
参考:外国人技能実習制度について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
特定技能制度 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
・別紙11 農業(PDF)
④特定技能2号へ移行すれば受け入れ期間の制限なし
現在、介護以外の分野に関しては特定技能2号への移行が可能になり、期間に制限なく雇用することが可能になりました。介護分野のみ介護福祉士試験に合格し、介護の在留資格に変更することで期間の制限が無くなります。
参考:特定技能2号の対象分野の追加について(令和5年6月9日閣議決定) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
⑤技能実習より運用しやすい
技能実習に必要な技能実習指導員や生活指導員の選任、実習内容の記録などは特定技能では必要ありません。特定技能では3ヶ月に1回、出入国在留管理庁に定期報告書の提出が必要ですが、支援業務を登録支援機関に代行してもらうことが可能な為、より運用しやすいと言えます。
参考:届出手続 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
⑥寮の手配が必須ではない
技能実習で必須の寮の手配ですが、特定技能では寮が無くても雇用が可能です。但し、日本から母国へ少しでも多くお金を仕送りしたいと思っている人が多い為、寮や社宅を用意した方がより人材を確保しやすいと言えるでしょう。
⑦内定から入社まで早い
技能実習は内定から実際の入社まで6ヶ月以上かかることが多いです。管理団体への申し込みや責任者講習や現地での教育などの手続きが必要です。対して、特定技能は入国前後の講習は必要ない為、最短2ヶ月程度、国外人材でも4~6ヶ月程度で勤務開始可能です。
参考:外国人技能実習制度について |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
申請手続 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
⑧失踪のリスクが少ない
出入国在留管理庁の最新データにて技能実習生の失踪者数は年間3,798人となっていますが、対して特定技能は76人しかいません。技能実習生は転職ができず、残業代未払いなどの劣悪な労働環境の企業に当たってしまった場合、失踪という選択肢を取ってしまう可能性があります。対して、特定技能は転職が認められており、失踪してしまうリスクは低いと言えます。失踪者を出してしまうと、次回の外国人雇用が認められないなどのペナルティを科せられてしまう可能性があります。
参考:技能実習生の失踪者数の推移(平成25年~令和4年上半期 …
技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第1回) | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
※技能実習と特定技能の比較に関してはこちらの記事もご参照ください。
3. 特定技能「農業」受け入れ可能な人材・業務
対応している人材
対応している人材として、特定技能1号の人材、技能実習2号から特定技能1号へ移行した人材、派遣人材の3パターンがあります。
特定技能1号の人材
まず候補として挙がるのが、特定技能1号の在留資格を取得する資格を有している人材、または他社で特定技能1号で勤務していた人材です。
後ほど5の項目で述べますが、国内外で開催されている特定技能制度専用の農業に関する試験(技能測定試験)と日本語に関する試験に合格していれば特定技能1号の在留資格申請が可能です。
また、他社で特定技能1号で働いていた人材を中途採用するという方法もあります。但し、同じく日本で働ける在留資格として代表的な「技術・人文知識・国際業務」は在留期間が残っていれば在留資格申請をせずに勤務開始できるのに対し、特定技能の場合は転職時に再度在留資格申請で許可を得なければ勤務開始できないという違いがあります。
参考:特定技能制度 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
在留資格「技術・人文知識・国際業務」 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
技能実習2号から特定技能1号へ移行した人材
特定技能1号の在留資格は原則として、技能測定試験と日本語能力を証明する試験に合格している必要がありますが、現役の技能実習生もしくは元技能実習生で技能実習2号を良好に修了している場合は試験が免除されます。
一部分野は対象外となっていますが、農業は耕種農業、畜産農業共に対象となっています。
出展:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -農業分野の基準について
参考:[PDF]技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務 …
「特定技能1号」に移行予定の方に関する特例措置について | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
派遣人材
特定技能制度での外国人雇用は原則としてフルタイム正社員雇用となっていますが、農業と漁業のみ派遣が認められています。技能実習生などの受入れ実績があるか、都道府県労働局が行う講習を受講するなどすることで、派遣雇用が認められるようになります。
農業は収穫量が天候などによって左右されたり、作物によって繫忙期や閑散期の季節が違う為、派遣が認められていると言われています。
出典:在留資格「特定技能」について (農業分野):農林水産省 (maff.go.jp)
[PDF]特定技能制度に関するQ&A 目次 Q 1 申請書や申請書に必要 …
※特定技能での派遣について詳しく知りたい方はこちらをご参照ください。
対応している業種・業務
特定技能制度といえども、特定技能外国人に従事させることができる仕事の範囲は限定されています。特定技能「農業」において認められている業務区分は「耕種農業全般」、「畜産農業全般」となっています。技能実習では不可能だった稲作、肉牛、ブロイラーなどの業務にも対応可能です。
耕種農業全般の作業
栽培管理、農産物の集出荷・選別等が対応業務になっています。
また、関連業務として以下の項目も担当可能です。
- 自社で生産した農畜産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工の作業
- 農畜産物の生産に伴う副産物(稲わら、家畜排泄物等)を原料又は材料の一部として使用する製造・加工の作業
- 農畜産物の運搬、陳列又は販売の作業
- 農畜産物を原料又は材料として製造・加工された物の運搬、陳列又は販売の作業
- その他日本人が通常従事している作業(冬場の除雪作業に従事する場合等)
参考:外国人特定技能制度| 公益社団法人 日本農業法人協会 (hojin.or.jp)
特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -農業分野の基準について
畜産農業全般の作業
飼養管理、畜産物の集出荷・選別等が対応業務になっています。関連業務に関しては耕種農業全般と同上です。
参考:外国人特定技能制度| 公益社団法人 日本農業法人協会 (hojin.or.jp)
特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -農業分野の基準について
注意するべきポイント
関連業務のみに従事させるということは認められていません。主な業務を中心に仕事を割り振ることが求められます。例えば、選果や加工・製造作業のみに従事させることはできないということです。
参考:特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領 -農業分野の基準について
[PDF]新たな外国人材受入れ制度に関するQ&A(農業)目次 – 農林 …
4. 特定技能「農業」の企業側の要件
特定技能においては業種別に様々な要件が課せられていますが、農業については業種特有の要件はありません。すべての業種に共通の要件(法定の「支援」を適切に実施する、入管法・労働法などに違反していないなど)を満たしていれば、特定技能外国人の受入れが可能です。
また、初めて特定技能外国人を受入れる場合は、受入れから4カ月以内に「農業特定技能協議会」へ加入し、農林水産省が行う調査や指導に対し必要な協力を行わなければならないこととされています。
農業特定技能協議会とは
農業特定技能協会とは、「特定技能外国人の適正な受入れ及び保護」を行うことを目的として組織された機関です。この記事を掲載した時点では入会金や年会費などは不要ですが、法律上強制加入となっています。協議会の加入期限は特定技能外国人を受入れ始めて4カ月以内です。適切に加入手続きをしておかなければ特定技能外国人の在留資格の更新ができなくなりますので、注意が必要です。
なお、協議会への加入申請は農林水産省のウェブサイトから行うことができます。法人と個人で申込フォームが異なりますので間違えずに申請してください。
- 「農業特定技能協議会」入会申込みフォーム(個人用)
- 「農業特定技能協議会」入会申込みフォーム(法人用)
- 参考:農業分野特定技能協議会規約
- 在留資格「特定技能」について (農業分野):農林水産省 (maff.go.jp)
外国人労働者の労務管理・支援
特定技能で外国人を雇用するには、最低限必要な支援を適切なタイミングで行っていく必要があります。支援は自社、もしくは登録支援機関に支援を委託するかの二択となります。
主に下記のような支援が必要ですが、母国語で対応が必要な項目があり、支援内容も10項目と多岐にわたっています。日常業務と並行して支援を行うのはかなりの労力が必要になりますし、自社で支援する為の条件を満たしている必要もある為、支援に関しては登録支援機関に委託するのをおすすめします。
出展:特定技能制度 | 出入国在留管理庁 (moj.go.jp)
※登録支援機関に関してはこちらの記事もご参照ください。
5. 特定技能「農業」の外国人側の要件
特定技能制度は、即戦力となる外国人を受け入れる制度です。その為、受入れる際には、その外国人が農業に関する一定の技能と、日本で生活できるための日本語能力を身につけていることが求められています。
国内外で開催されている特定技能制度専用の農業に関する試験(技能測定試験)と、日本語に関する試験に合格することで、技能を有していることを証明します。
まずは、主に2種類用意されている日本語に関する試験について説明します。
外国人の日本語レベルはどのくらいか知りたい方はこちらの資料をダウンロードしてください
日本語能力試験の試験内容
「日本語能力試験」は外国人向けの日本語を測る試験としてもっともメジャーなものです。特定技能外国人が取得することが必要な日本語能力試験のN4とは、「日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」レベルとされています。語彙や文法、リスニングなどの問題が出題され、180点満点中90点以上獲得で合格です。
日本語能力試験の試験日程
毎年7月と12月の第一日曜日に試験が実施されます。試験会場については日本国内だけでなく世界各国でも行われているため、海外で受験することが可能です。
国際交流基金日本語基礎テストの試験内容
「国際交流基金日本語基礎テスト」は、「就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定し、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力があるかどうかを判定することを目的」とした試験です。語彙や会話、リスニングなどの問題があり、250点満点中200点以上得点すると合格です。
参考:JFT-Basicとは | JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト (jpf.go.jp)
国際交流基金日本語基礎テストの試験日程
国際交流基金日本語基礎テストはCBT方式で行われる試験で、日本国内ではほぼ毎日どこかの都市で実施されています。海外でも、特定技能外国人の割合が多いインドネシアやフィリピンなどでは1カ月に数回の頻度で開催されていて、受験しやすい環境が整備されています。
参考:JFT-Basicとは | JFT-Basic 国際交流基金日本語基礎テスト (jpf.go.jp)
6. 特定技能「農業」の試験
ここからは、技能測定試験について説明します。
技能評価試験の試験内容
試験は一般社団法人全国農業会議所が実施しており、実技試験と学科試験があります。
出題範囲については、以下のようになっています。
耕種農業全般
学科
- 耕種農業一般
- 安全衛生
- 栽培作物の品種・特徴
- 栽培環境(施設・設備・資材・機械)
- 栽培方法・管理
- 病害虫・雑草防除
- 収穫・調整・貯蔵・出荷 等
実技(イラスト・写真による判断)
- 土壌の観察
- 肥料・農薬の取扱い
- 種子の取扱い
- 環境管理、資材・装置・機械の取扱い
- 栽培に関する作業
- 安全衛生 等
日本語
- 日本語で指示された農作業の内容等の聴き取り
畜産農業全般
学科
- 畜産農業一般
- 安全衛生
- 品種
- 繁殖・生理
- 飼養管理 等
実技(イラスト・写真による判断)
- 個体の取扱い
- 個体の観察
- 飼養管理、器具の取扱い
- 生産物の取扱い
- 安全衛生 等
日本語
- 日本語で指示された農作業の内容等の聴き取り
上記の出題範囲から70問程度が出題されます。難易度は「日本国内での実務経験が3年以上の者であれば、7割程度が合格する水準」となっています。
技能評価試験の問題・解答テキスト
実技試験のサンプル問題や学習テキストは、一般社団法人全国農業会議所が運営する公式ウェブサイトで公開されています。リスニング問題の練習のための音声ファイルもダウンロードが可能です。
学習用テキストは、ベトナム語やインドネシア語だけでなく、ネパール語やビルマ語など13言語で公開されていて、幅広い国からの受験に対応しています。
参考:学習用テキスト – 農業技能測定試験 (asat-nca.jp)
試験の合格率
令和4年12月末のデータにて、試験の合格率は73.7%となっています。受験地の国別に見ますと、インド(同100%)、ミャンマー(同97.6%)、日本国内(同88.7%)、スリランカ(同88.0%)の順で高くなっています。
技能評価試験の日程
技能評価試験は、日本全国各地で毎日行われています。海外でも月に数回実施されており、受験しやすい環境が整えられています。
具体的な日程については以下のウェブサイトをご参照下さい。
7. 特定技能「農業」のおすすめ採用方法
ここまで見てきたように、特定技能「農業」での外国人材受入れの選択肢は複数用意されています。
ここでは、より確実・スムーズに特定技能「農業」で外国人を採用するためのおすすめの方法を解説します。
登録支援機関を利用する
自社ホームページで募集する、ハローワークなど求人媒体を利用する、といった採用方法もありますが、実際に特定技能に対応する可能性がある外国人からピンポイントで応募が来るとは限りません。より確実な方法として、登録支援機関の利用が挙げられます。
ピンポイントな人材から応募が来る可能性が高い
実地で接していて感じますが、日本で就職を希望する外国人材の中には特定技能や技術・人文知識・国際業務などの制度について、よく理解していない人も少なくありません。せっかく面接して内定通知も出したのに特定技能1号に適さない人材だった、となってしまう可能性もあります。
登録支援機関は母国語で対応できるスタッフを配置している為、制度や業務内容などを母国語で説明することが可能です。つまり、制度や業務内容を理解しており、在留資格の面でも特定技能1号で勤務できる可能性が高い人材から応募が来ると言えます。
派遣も依頼できる
特定技能「農業」では派遣人材の雇用も可能です。農業の場合、季節や作物によって収穫物の状況も変動があるかと存じますので、直接雇用だけでなく派遣を利用するメリットも大きいでしょう。
登録支援機関が労働者派遣事業の許可を得ている機関であれば、派遣人材の募集も行うことが可能です。但し、特定技能「農業」の場合は、派遣事業者に対し「農業関連業務を行っている事業者」などの要件が定められていますので、基準を満たしているのか確認が必要です。
参考:[PDF]新たな外国人材受入れ制度に関するQ&A(農業)目次 – 農林 …
同時に支援も依頼出来る
4-2の項目で述べましたように、特定技能で外国人を雇用するには、最低限必要な支援を適切なタイミングで行っていく必要があります。母国語で対応が必要な項目があり、支援内容も10項目と多岐にわたっている為、登録支援機関に依頼するのをおすすめします。採用から支援までワンストップで依頼できるので手間を省けると言えるでしょう。
求人募集の際は、技能測定試験合格者以外も選考対象にする
技能測定試験の合格者のみを選考対象にすると、選考できる人数がぐっと少なくなります。そのため、まずは技能測定試験合格者以外も選考することをおすすめします。 現在アルバイトで雇用している外国人の方にも、特定技能での就職を勧めてみるべきです。その際にはぜひ特定技能の制度についても改めて説明してあげてください。留学生の中には特定技能について知らない人もたくさんいるからです。
技能測定試験合格を条件に採用内定を出す
採用内定は、特定技能の受入れ要件を満たす前に出すことも可能です。技能測定試験の日程は、一般社団法人全国農業会議所のホームページで公開されており、これを念頭に内定を出しておけば、早めに人材確保を行うことができます。特定技能「農業」は試験の実施頻度も高く、合格率も各回70%を超えていることから、1〜2回の受験で合格することが見込まれます。内定を出したものの試験に合格できなかったという可能性はかなり低いと言えます。
技能測定試験は代理登録を行う
技能測定試験は申込み方法がやや複雑なため、外国人側に申込を任せると手続きの段階で脱落する方が非常に多いです。企業の担当者側で、代理登録することをおすすめします。
以上のような流れを経て、試験合格者を正式に雇用するという流れがおすすめです。 1つ注意点として、選考者は日本語能力試験N4以上も必要です。こちらは国内では年に2回しか試験がないため、選考者にまだ持っていない方がいる場合は、こちらも確実に受験させましょう。その際に必要以上にレベルの高い(例えばN2やN1)の受験をしてしまうと一気に合格率が下がるので、確実に合格が必要な場合は、N4、N3あたりの受験がおすすめです。
参考:農業技能測定試験 (asat-nca.jp)
日本語能力試験 JLPT
8. まとめ
特定技能「農業」は、人手不足を解消するために欠かせないものになっています。農業の技能測定試験は他の分野と比べて合格率が高くなっており、試験合格を見込んだ採用を行いやすくなっています。
この記事を参考にして積極的に特定技能制度を活用し、人手不足対策を進めていただければと思います。もし農業で特定技能の採用を検討中でしたら無料相談も行っているのでお気軽にお問い合わせください。