ビジネス日本語能力試験(BJT)とは?その特徴やJLPTとの違いを徹底解説
外国人を雇用する際に日本語力を確認すると思いますが、事前に日本語能力を知るために注目されるのがビジネス日本語能力試験(BJT)です。この試験では基本的な日本語だけでなく、ビジネスの観点からも日本語力を図れるのが特徴です。
本記事ではそんなビジネス日本語能力試験(BJT)についてわかりやすく解説していきます。
実際外国人の日本語レベルはどのくらいかこちらの資料で解説しています
1.ビジネス日本語能力試験(BJT)とは
ここからはビジネス日本語能力試験(BJT)とはどういうものなのか、特徴等を解説していきます。
1-1.BJTの特徴
BJTの特徴には以下のものが挙げられます。
- 各分野の専門家が作成した精度の高いテスト
- 日本語力はもちろん、情報処理能力や対応力も測定できる
- 受験当日に結果がわかる
- 尺度得点による採点
ここからは上記の特徴についてご紹介します。
各分野の専門家が作成した精度の高いテスト
BJTは様々な分野の専門家が検討を重ねて作成されている試験です。ビジネスの観点のほか、日本語教育や統計学など様々なジャンルの専門的な知識を結集させて、実用性のある試験に仕上がっています。
別のテストで日本語能力があると判断されても、ビジネスの場では日本語をうまく使えないケースがありました。BJTはビジネスの場における日本語力がわかるのが特徴的です。それを支えるのが多くの専門家の存在と言えます。
日本語力はもちろん、情報処理能力や対応力も測定できる
BJTでは日本語のスキルはもちろん、ビジネス的な知識もチェックすることができます。しかも、これだけではありません。高度な情報処理ができればできるほどスコアは高くなりやすく、課題に対する対応力がいいと結果はより上向きます。
日本語のレベルだけでなく、情報処理や対応力なども計測できるのがBJTのいいところであり、より本物の日本語力を知ることができるのです。
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受験当日に結果がわかる
BJTはCBT(Computer Based Testing)方式と呼ばれるやり方でテストを受けられます。CBT方式はコンピュータを活用するもので、テストセンターに出向いて試験を受けることになります。
最大のメリットは受験した当日にBJTの結果が分かる点です。
尺度得点による採点
BJTでは尺度得点と呼ばれるやり方で、点数が出されます。それぞれの解答結果に対して統計処理がなされ、難易度に応じた換算式を活用して最終的なスコアが出るのです。
尺度得点で算出することで、その人の本当の日本語スキルが白日の下に晒されるほか、点数の算出方法としても精度が高く出るので、シビアに日本語能力のレベルを知ることが可能です。
1-2.JLPTとBJTの違い
JLPT(日本語能力試験) | 日常での日本語力 |
BJT(ビジネス日本語能力試験) | ビジネスでの日本語力 |
BJTと似たような日本語能力テストに日本語能力試験(JLPT)があります。JLPTは日常で出てきやすい日本語能力をチェックする試験です。そのため、日本語を日常レベルで使いこなせるかどうかがポイントになります。
一方、BJTは文字通りビジネスにおける日本語のスキルを知るためにあります。日常会話が一定レベルでできても、ビジネスになるとなかなか聞き取れないケースが多いのが実情です。ビジネスでの日本語能力を知りたい企業にとってはBJTがおすすめです。
1-3.BJTは外国人を採用する際の判断材料になるか
採用担当者にとって気になるのは、BJTが外国人を採用する際の判断材料になり得るかどうかです。結論から言いますと、ビジネス的な知識などをチェックする要素もあるため、判断材料に十分になります。
もちろんBJTのスコアだけで決めるのは若干乱暴で、その他の要素も踏まえた採用活動が大切ですが、ビジネス会話ができそうな素養があるかどうかを判断するにはうってつけです。
2.ビジネス日本語能力試験(BJT)のレベル
ビジネス日本語能力試験(BJT)のレベルは原則として6つに分けられます。
- J1+
- J1
- J2
- J3
- J4
- J5
それぞれのレベルやJLPTとの比較について解説します。
J1+
J1+は800点満点のBJTにおいて600点以上をマークすると到達するレベルです。どんなビジネスの場面においても日本語で十分なコミュニケーションを発揮できる状態を指します。
様々な場面において相手の言葉を正確に把握でき、表現の使い分けも行えるほか、日本のビジネス的な風習などもしっかり把握している状態と言えます。
J1
J1は530~599点が対象となります。若干日本語の知識などが足りなくても、コミュニケーションに何の支障もないケースを指します。ビジネス的な慣習もある程度理解し、言葉の使い分けなどもある程度可能な状態だとJ1レベルとなるでしょう。
J2
J2は420~529点が対象です。限られた場面であれば日本語でのコミュニケーションが行えるのがJ2です。全体的にある程度理解できる状態を指しており、ビジネス的な慣習やビジネス文書の理解などがある程度できる状態と言えます。
J3
J3は320~419点が対象です。J2よりもややあやふやな知識・運用能力で、どうにかコミュニケーションができる状態がJ3になります。一部分であれば言葉の表現の使い分けができるなど、断片的な知識を持ち合わせていて、それをなんとか使えている状態です。
J4
J4は、ビジネスの場面において最低限の意思疎通が行える状態を指します。点数にすると200~319点です。全く日本語で意思疎通ができないわけではないものの、できることが少ない状態だとJ4レベルとなります。
J5
J5は199点以下を指し、ビジネスの場面において意思疎通がほぼできない状態と言えます。会話のスピードがゆっくりになるとようやく少し理解できるぐらいのレベルがJ5で、このレベルだとビジネスではなかなか大変でしょう。
JLPTとの比較
JLPTはビジネスに限らず、様々な場面で日本語を使えるかどうかが対象となるので、JLPTで結果を残せてもビジネスの場面で日本語が使えるとは限りません。そのため、JLPTで一定の成績を出しても、BJTでも同等の成績が出るとは限らないのです。
おおむねN2レベルがJ2~J3、N1レベルでJ2レベルとされ、一番上のN1レベルでもビジネスの場面で正しく日本語を活用し続けられるかは、ビジネス用語やビジネススキル、情報処理能力をどれだけ有しているかで変わります。
JLPTで一定の成績をとったからといって、すぐにビジネスの場面で理解力を発揮できるわけではありません。結局、日本語力とは別の知識を有しているかどうかが大事になります。
外国人労働者に定着してもらうには良いコミュニケーションをとることが必要不可欠です
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3.ビジネス日本語能力試験(BJT)のメリット
ここからはビジネス日本語能力試験(BJT)のメリットについて解説します。
3-1.企業(採用側)のメリット
最初にご紹介するのは企業側におけるメリットです。主なメリットとして挙げられるのは「ビジネスで日本語が使えるか把握できる」ことです。そのメリットについて解説します。
ビジネスで日本語が使えるか把握できる
BJTではビジネスの場で正確に日本語を使えるかどうかをスコアで示すことができます。BJTのスコアが良ければそれだけビジネスの場で日本語を正しく使える傾向にあると言えるでしょう。いわばBJTのスコアを見れば、日本語が使える外国人労働者として採用することが可能です。
例えば、JLPTのように日常的な会話ができるだけの日本語を有していても、ビジネスでは不十分なケースが多々あります。そのため、BJT以外の日本語の試験で日本語能力があると判断されても、実際に現場に出してみるとビジネスでの会話についていけないということが出てきてしまうのです。
JLPTのように日常会話ができる日本語能力があるかどうかは関係なく、ビジネスにある程度特化した試験だからこそ、企業側が知りたいスコアが如実に示されるのもわかりやすい指標として使い勝手がいいと言えます。
3-2.外国人のメリット
一方、外国人労働者側のメリットもあり、以下の2点が該当します。
- 日本企業の就職活動に有利
- 高度人材ポイント制の特別加算になる
ここからは外国人労働者側のメリットについて詳しく解説します。
日本企業の就職活動に有利
BJTはビジネスの日本語に特化した試験になっているので、そこでスコアが良ければ、ビジネスの場においても日本語を正しく認識して活用できることが明らかとなります。日本語ができる外国人労働者を探す際には最もわかりやすい指標となるでしょう。
他の試験はビジネスに特化しているとは言い難く、他の試験だとビジネスの習慣まで試験に出てきません。その点、BJTはビジネスの慣習、風習まで知識の有無がスコアになっていくため、そこまで含めたスキルを知れるのは大きな要素です。
高度人材ポイント制の特別加算になる
高度人材ポイント制は、高度外国人材を受け入れていくために存在する制度です。高度外国人材は高度な知識・スキルを有する人材を指します。高度人材ポイント制はポイントを与えていき、点数が高ければ様々な優遇処置が受けられるというものです。
JLPTではN2、BJTでは400点以上が高度人材ポイント制の加点対象となっており、一定のポイントを確保できれば在留資格「高度専門職」を取得でき、少ない年数で永住許可が出やすくなります。将来的に日本で住み続けたい外国人労働者にとって、BJTは貴重なポイント源となるでしょう。
高度人材についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
4.ビジネス日本語能力試験(BJT)の問題例
ビジネス日本語能力試験(BJT)は「聴解部門」「聴読解部門」「読解部門」の3つの部門に分かれています。
今回問題例としてご紹介するのは、読解部門です。読解部門では語彙・文法問題や表現読解問題、総合読解問題があり、言ってしまえば日本語力を問う問題が中心となります。その中でも語彙・文法問題の問題例をご紹介します。
問題:次の文の「」に入る最もよいものを1・2・3・4の中から選びなさい。
問題文:今日やるべき仕事が何とか片付いた。みんなが一生懸命対応してくれた「」で、助かったよ。
解答の選択肢:1「せい」・2「おかげ」・3「ごくろうさま」・4「おせわさま」
ちなみに正解は2の「おかげ」です。このように明らかに間違いのものもあれば、文章をしっかりと読めば選べるものもあります。この問題例は短めですが、他には電子メールの中身を読んで答える問題など、長い文章を読むケースもあるため、単純な文法だけの問題だけではありません。
5.受験の流れ
ここからはビジネス日本語能力試験(BJT)の受験の流れについてそれぞれ解説していきます。
5-1.試験日程
BJTはテストセンターで開催されており、基本的にほぼ毎日実施されています。そのため、受験者の好きなタイミングで受験することが可能です。
しかし、毎日受験し続けることはできず、1回受験すると、次の受験に参加できるのに3か月必要です。例えば、今の実力を知るために1回受験してみて、3か月間猛勉強を重ねて受験する形もあります。
5-2.受験費用
BJTの受験費用は日本で受験する場合には税込7,000円です。日本は北は札幌、南は那覇まで全国各地に試験会場がある一方、海外では中国や香港、韓国、アメリカなど18の国と地域で受験できます。
海外ではそれぞれで受験料が設定されており、日本円換算にしたら明らかに日本で受験した方が安いケースも存在します。
5-3.当日の持ち物
当日は本人確認書類を「2点」持参することが必須です。
本人確認書類はA~Dの4グループに分かれいます。
Aグループー免許証やマイナンバーカード、パスポート、在留カードなど
顔写真付きで政府もしくは自治体が発行したものが対象です。
この中の2点を持参すれば問題ありません。
Bグループー社員証や学生証
顔写真付きなど要件を満たしたもの
Cグループー年金手帳や健康保険証など
顔写真がついていないもの
DグループーA~Cに該当しない、名前と顔写真などの確認ができる本人確認書類
Aグループに該当するものが1点しかない場合はB~Dグループの中から1点、Aグループに該当するものがない場合はBグループとCグループでそれぞれ1点を持参しましょう。
5-4.申し込み方法
BJTの申し込みについて、個人が申し込む際の方法を以下にまとめました。
最初にインターネットにある専用サイトから申込みを行います。ピアソンVUEというサイトでBJTのアカウントを登録します。この時、本人確認書類に表記された名前などを入力することになるので、間違いには気を付けましょう。
次に会場と日時の選択を行います。会場に関しては住所などを登録した際に、最寄りのテストセンターが表示されます。もちろん、それ以外で受けることも可能です。あとは日時や試験開始時刻などを選んでいきます。
名前などの確認を終えると、支払情報を入力していきます。受験料の支払いに関しては団体からもらったバウチャーがある場合にはバウチャー番号の入力でOKです。そうでない場合にはクレジットカード番号などの入力を行います。
ちなみに銀行振込を希望する方は事前に電話を行った上で申し込みを行うと、銀行振込でも対応してくれるため、クレジットカードがない方でも大丈夫です。
5-5.受験当日の流れ
ここからは受験当日の流れについて解説します。
本人確認書類の提示
テストセンターでは受付において、先ほどご紹介した本人確認書類を2点提示します。ここで本人確認書類を忘れてしまうと受験できないので、何度も確認しておきましょう。
写真撮影
次に写真撮影です。この写真はBJTの成績認定書に用いられるため、本人がBJTを受けたことの証明になります。
荷物を預けて会場に入る
受験する際には何1つ持ち込むことができないため、荷物を預けます。この時、テストセンターに備え付けのロッカーに貴重品などすべての私物を預ける形です。メモや鉛筆といった筆記用具などはテストセンターで貸し出されるため、受験者は本人確認書類を絶対に忘れないようにすれば問題ありません。
パソコン操作の確認
試験室に入室すると、パソコン操作の確認を行います。画面上で操作に関する説明がなされます。その後、秘密保持契約(NDA)を読んだ上で同意ボタンをクリックします。
受験開始
一連の流れが終わればいよいよ受験開始です。今まで頑張ってきた成果をすべて出せるように、制限時間を目いっぱい使う形になります。
5-6.結果発表について
BJTの結果は受験後すぐにわかり、スコアレポートを受け取れます。顔写真付きの成績認定証に関しては、受験から3日後に発行可能です。就職試験などで用いる際には印刷を行って、提出することになります。
6.まとめ
BJTはビジネスの場面における日本語力を推察するのに適した試験であり、「日常会話はできても、ビジネス会話は微妙…」という外国人労働者を避けることができます。
今回ご紹介した内容を踏まえて、外国人労働者を積極的に採用し、人手不足を解消するほか、ビジネス日本語が活用できる外国人労働者を素早く確保していきましょう。
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