特定技能「航空業」|人手不足の現状と業務内容について解説

執筆者:松本(JapanJobSchool 講師兼就職支援室長)

特定技能というのは日本の人手不足を解消するためにできた在留資格です。

「航空業」ときくと、高度な技術が必要で、人気のある職業のイメージがあり、あまり人手不足の印象がなかったのですが、調べていくと確かに人手が足りないというのも納得ができ、必要不可欠な制度だと感じました。

本記事ではそういった特定技能「航空業」の制度や要件、採用方法について詳しく解説していきたいと思います。

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目次

1. 特定技能「航空業」とは

こちらでは特定技能の制度自体について、解説していきたいと思います。

そもそも在留資格「特定技能」とは日本の人手不足が顕著な12分野に限り、一定の専門性・技能を有する外国人を労働力として受け入れることができる制度になります。コロナの終わりに伴い、最近はすごい勢いで特定技能で働く外国人が増えてきており、令和4年12月時点で130,915人に達しました。

参考_出入国在留管理庁『特定技能在留外国人数(令和4年12月末現在)』

飛行機

1-1. 特定技能「航空業」の現状

その増えてきている特定技能外国人ですが、現在特定技能「航空業」で働く外国人は167人(空港グランドハンドリング業務164人 航空機整備業務3人)と特定技能12分野の中で一番少ないです。(一番多い飲食料品製造業は42,505人)

ただ、近年の外国人旅行者の増加やLCC(格安航空会社)の事業拡大に伴い2012年〜2017年の5年間で国際線旅客数は1.6倍、着陸回数は1.5倍と増加していました。

一旦、コロナウィルスの影響で落ち込んでしまいましたが、政府は2030年には6,000万人の外国人旅行者数を目標にしているため、今後も航空業界全体が人手不足になることは間違いないので、特定技能で働く外国人の数も増えていくことでしょう。

参考_航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針

1-2. 特定技能「航空業」の受け入れ見込み人数

1号特定技能外国人の2024年末までの最大の受け入れ見込み数は、当初予定していた最大2,200人から最大1,300人を上限にするとの閣議決定がなされた。

国土交通省「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(令和5年6月9日一部改正)

2. 「航空業」での受け入れの必要性

近年の訪日外国人旅行者の増加やLCCの事業拡大に伴い、日本の航空需要は拡大を続けています。

2-1. 人手不足の現状

航空分野の需要が拡大している一方で、航空専門学校の入学者の減少の常態化や、整備士の高齢化による退職者の増加など、深刻な人手不足が生じています。航空輸送や経済活動や我々の生活を支える基盤であり、安全で安定的な輸送を確保するために現場では即戦力となる人材が求められています。

この人手不足解消のため、空港内での作業の制約を理解し、航空機用の特殊な機材や工具を用いて作業を行うことができる一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることで人手不足を解消することが必要不可欠になってきています。

国土交通省「航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」(令和5年6月9日一部改正)

3. 受け入れのための要件

3-1. 企業側の要件

航空業の特定技能人材を受け入れるにあたり、受入れ企業は以下の条件を満たす必要があります。

特定技能所属機関に対して特に貸す条件―

  1. 空港管理者により空港管理規則に基づく当該空港における営業の承諾等を受けた事業者若しくは航空運送事業者又は航空法に基づき国土交通大臣の認定を受けた航空整備等に係る事業場を有する若しくは当該事業者から業務の委託を受ける事業者であること。
  2. 特定技能所属機関は、国土交通省が設置する「航空分野特定技能協会」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
  3. 特定技能所属機関は、協議会に対し、必要な協力を行うこと。
  4. 特定技能所属機関は、国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。
  5. 特定技能所属機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託するに当たっては、上記➋、➌及び➍の条件を満たす登録支援機関に委託すること。
  6. 特定技能所属機関は、特定技能外国人からの求めに応じ、実務研修を証明する書面を交付すること。
ものしりシップ<br>くん

 国土交通省が設置する協議会に加入が必須で、調査や指導に協力をしなければならないということじゃ

協議会とは

こちらの「航空分野特定技能協議会」とは特定技能外国人の適正な受入れ及び保護を行うため、また、各地域の特定技能所属機関が必要な特定技能外国人を受け入れるため、構成員が相互に連絡を図ること及び必要な措置を講ずることを目的としています。
特定技能人材を新規で受け入れた日から4ヶ月以内に加入する必要があります。

加入するにあたって費用はかかりません
また、支援を行うのが受入れ企業ではなく登録支援機関が行う場合には、登録支援機関も協議会に加入する必要があります。

参考_航空分野特定技能協議会規約

3-2. 外国人側の要件

特定技能「航空業」で働くためには一定の「技能水準」「日本語能力水準」が必要になります。

【技能水準】
・航空分野特定技能1号評価試験(空港グランドハンドリング または 航空機整備)

【日本語能力水準】
・国際交流基金日本語基礎テスト または 日本語能力試験(N4以上)、もしくは日本語教育参照枠のA2相当以上の水準と認められるもの

こちらの2種類の試験に合格しなければいけません。
ただ、後ほど説明いたしますが、「空港グランドハンドリング」の技能実習2号を修了した者は技能水準および日本語能力試験水準を満たしているものとして取り扱う。

つまり、どちらの試験も受ける必要がない、ということになります。

参考_航空分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針

試験内容

【技能水準】

[航空分野特定技能1号評価試験 グランドハンドリング業務]

社内資格を有する指導者やチームリーダーの指導・監督の下、空港における航空機の誘導・けん引の補佐、貨物・手荷物の仕分けや荷崩れを起こさない貨物の積み上げ等ができるレベルであることを確認する。

試験は筆記試験及び実技試験で行われ、すべて日本語で実施されています。
試験科目は以下のようなものがあります。

  • ランプエリア内での安全・セキュリティー確保
  • 貨物のハンドリング
  • 手荷物のハンドリング
  • 客室内清掃
  • 誘導作業

試験は東京・大阪の他、フィリピン及びネパールでも行われています。
合格率は36.4%~88.1%の間で推移しており、どちらかというと海外(フィリピン)で行われた試験のほうが合格率は高いです。

[航空分野特定技能1号評価試験 航空機整備]

整備の基本技術を有し、国家資格整備士等の指導・監督の下、期待や装備品等の整備業務のうち基礎的な作業(簡単な点検や交換作業等)ができるレベルであることを確認する。

試験科目は以下のものなどがあります。

  • 航空機の基本技術(締結、電気計測)
  • 作業安全・品質
  • 航空機概要

こちらはまだ試験が1回しか行われておらず、しかも行われたのは日本ではなく、モンゴルです。
その時の合格率は23.5%。34人が試験を受けて、合格したのは8人でした。

参考_日本航空技術協会(JAEA)

講師|松本

ちなみに、なぜモンゴルだけなのか?と個人的に気になったので、日本航空技術協会に電話して聞いてみたところ、日本の航空専門学校と提携している組織がモンゴルにあり、そちらからの強い要望があったため、モンゴルでの試験実施に至ったそうです。

以前はモンゴル以外にも2,3か国での実施が計画されていたそうですが、コロナウィルスの影響でいまだに実施できておらず、結果としてまだモンゴルだけでしか行われていない、とのことでした。

4. 従事可能な業務

前項の試験でも2つの業種に分かれていたように、特定技能「航空業」では2つの業種に従事することができます。

4-1. グランドハンドリング業務

〈空港グランドハンドリング業務

グラブハンドリング業務に関しての表
グラブハンドリングの業務内容に関してのイラスト

グランドハンドリングとは、航空機が空港に到着してから出発するまでの限られた時間内で行われる地上支援作業の総称になります。

こちらの業務で働いている特定技能外国人の数が164人(令和4年 12月末現在)となっております。
そのうち、試験実施国であるフィリピン国籍の方が89名と半数以上を占めています。

参考_国土交通省『航空分野における新たな外国人材の受入れについて』
参考_出入国在留管理庁『特定技能在留外国人数(令和4年12月末現在)』

航空整備業務

〈航空機整備業務〉

航空整備業務に関する表
航空整備業務のイラスト

グランドハンドリング業務も航空整備業務も到着してから、次のフライトまでの限られた時間で行う作業であることに変わりはありません。

グランドハンドリング業務航空機の中ではなく周りの支援業務に対し、航空整備業務は航空機の内部の作業を行うため、より専門的な知識や技術が必要になってきます。
ですので、こちらの業務で働いている特定技能外国人の数は3人しかおりません。

こちらの試験はまだモンゴルでしか行われていないため、働いている3人はモンゴル国籍の方たちになります。

参考_国土交通省『航空分野における新たな外国人材の受入れについて』
参考_出入国在留管理庁『特定技能在留外国人数(令和4年12月末現在)』

5. 受け入れをする方法・採用までの流れ

ここまでは制度や業務内容についてお話してきましたが、では実際に特定技能「航空業」で外国人を雇用するにはどういった手続きが必要か、こちらで解説していきたいと思います。

5-1. 技能実習からの移行

特定技能で働くには大きく分けて2つのルートがあります。こちらでご説明した試験に合格する「試験ルート」と特定技能で働こうとする同業種の技能実習2号を修了している「技能実習ルート」です。

特定技能全業種では「技能実習ルート」が全体の73%(技能実習ルート:96,356人   試験ルート:34,078人)と大半を占めておりますが、航空業に関しましては100%試験ルートの方たちです。

なぜかと言いますと、空港グランドハンドリング業務は技能実習制度が認められているものの、実際にその制度を活用している方が非常に少ないからです。
令和元年に技能実習生として13人、認定を受けておりましたが、その年を最後に現在は0人となっております。

ですので、仕組みとしては技能実習ルートで特定技能「航空業」で働ける方法というのはあるのですが、実際には使われていないというのが現状です。

参考_出入国在留管理庁『特定技能在留外国人数の公表』 参考_OTIT 外国人技能実習機構 統計

5-2. 国内からの採用

技能実習ルートで働いている人がまだいないので、必然的に試験に合格している生徒が対象となります。ただ、国内で行われている試験は「空港グランドハンドリング業務」だけになるので、「航空整備業務」につきましては、海外、それもほぼモンゴルからの採用になるかと思います。

令和4年12月末時点で、特定技能「航空業」(グランドハンドリング業務)で働いている方たちを国籍別に見てみると、

フィリピン89名
ベトナム32名
ネパール21名
モンゴル11名(航空整備業務で働いている方が3名

となっております。
やはり試験が開催されている国の方が多く働いておりますので、フィリピン、ネパールの人材を探すのが近道かと思います。

では、どうやって人材を探すのか?

こちらの登録支援機関登録簿から対象となる国の言語(今回のケースであれば、フィリピン語(タガログ語)ネパール語)に対応している機関に問い合わせをしてみるのがいいでしょう。

なぜかといいますと、登録支援機関の多くは人材紹介会社や管理団体、学校法人など採用に係る業務も兼務していることが多いからです。

参考_出入国在留管理庁「登録支援機関」

講師|松本

弊社、株式会社JJSも対応しておりますので、お気軽にご相談ください(^^)/

5-3. 海外からの採用

試験の関係上、空港ハンドリング業務につきましてはフィリピン、ネパール。航空整備業務につきましてはモンゴルの国籍の方を探す、というのが効率がいいかと思います。

基本的には国内からの採用の項目でも記載させていただいた方法と変わらないのですが、国内の人材の採用に比べて、時間費用がかかるのが一般的です。

入国管理局の審査の時間が国内のものに比べ、+1ヶ月~2ヶ月かかるケースが多いです。

また、許可後それぞれの国の手続きも必要になってきますので、そちらでもおよそ1ヶ月かかり、内定をもらってから勤務開始まで半年ほどかかるケースも少なくありません。(当社調べ)

6. 特定技能「航空業」での採用にかかる費用

特定技能人材の採用にかかる費用にはイニシャルコスト(初期費用)と雇用している間にかかるランニングコスト(維持費用)の2種類があります。

6-1. 機関・団体にかかる費用

イニシャルコスト

ハローワーク等に掲載していた求人にたまたま特定技能の試験に合格している外国人がエントリーをしてきた、このようなケースはかなり稀だと思います。

こちらでもお話させていただきましたが、人材紹介会社を使っての採用が一般的です。
紹介料として1名につき30∼60万円程度が費用相場となっております。(当社調べ)

特定技能で働くためには在留資格の変更が必要になります。
元々特定技能の在留資格を持っていたとしても、働く企業が変われば、再度申請が必要になります。
そのビザの変更申請の代行費用として、1名につき12∼20万円程度が費用相場となっております。(当社調べ)

また、海外在住の方を採用する場合は、多くの国で送り出し機関というそれぞれの国の機関を通す必要があります。こちらを通すとプラスで1名につき給与1か月分相当の費用を支払わなければなりません。
こちらのルールは日本とその国々によって、異なった二国間協定を結んでいるので、様々です。

この二国間協定によっては海外から日本までの渡航費を外国人に負担させてはならない、などもありますので、参考を確認していただけたらと思います。

参考_出入国在留管理庁『特定技能に関する二国間の協力覚書』

入社にあたっての交通費や住居に係る費用につきましては、企業側の負担がマストではありませんが、海外からの住居の手配を本人達が行うのは非常に困難になりますので、今まで弊社でご採用いただいた企業も寮や社宅をご用意していただいている、というのが現実です。

講師|松本

早期退職を防ぐためにはこういった細かい費用の話を内定承諾前に決めておく必要があります

ランニングコスト

ランニングコストのメインとなるのが、登録支援機関に支払う支援委託費用になります。

こちらは自社で外国人の支援を行う場合は必要ないですが、その場合は特定技能で働く外国人がわかる言語で対応できるスタッフの方を用意しないといけなかったり、かなり要件が厳しいので、弊社でご紹介した企業のうち95%の企業の方から、支援の委託も任せていただいております。

登録支援機関の支援委託料につきましては1名につき月2∼3万円程度が費用相場となっております。(当社調べ)

参考_Divership 『特定技能の自社支援』

特定技能の採用に係る費用につきましては、こちらの動画でもまとめております。
もしよろしければご覧ください。

参考_Divership 『特定技能を受け入れる費用一覧』

6-2. 特定技能外国人への給与

外国人であることを理由に不当にお給料を低くすることが禁止されているため、かなり詳細に入国管理局が審査をします。

具体的には在留資格変更申請をする際に特定技能外国人報酬に関する説明書の提出が義務付けられております。場合によっては「同等のスキルを持った日本人の従業員の給与がわかる書類(給与明細等)」などを提出しているケースもあります。

参考_出入国在留管理庁 『特定技能外国人受入れに関する運用要領』

7. まとめ

今回は特定技能「航空業」についてご説明をいたしました。

まだまだ実績としては少ない航空業での特定技能の採用ですが、これから日本への海外からの観光客数が増加することは間違いないので、他社より少し早めに採用ルートの開拓に乗り出してみてはいかがでしょうか?

弊社はいつでもご連絡、ご相談をお待ちしております。

ご清聴ありがとうございました。

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どんな小さなことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社JJS(JapanJobSchool)の講師兼就職支援室長
今まで500名以上の外国人を就職に導く。外国人との対話は笑顔とフランクさを信条に、外国人生徒からの人気No1の先生。

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