飲食店で外国人雇用をする方法|ビザ・対応方法・注意点などを解説

執筆者:松里優祐(株式会社JJS 代表取締役)
「飲食店で外国人を雇用することが決まったが、何をすればいいのだろう?」
「飲食店で外国人を雇用した際のリスクも知っておきたい」
このような声を、外国人雇用を考える飲食店経営者の方々からよくいただきます。この記事では、飲食店で外国人を雇用する上で知っておくべきことや採用が決まった際の具体的な対応方法まで解説します。

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1.外食業に従事する外国人は増加している!

出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届け出状況まとめ」(令和4年10月末現在)
上の表のように日本における外国人労働者数は年々増加傾向にあり、飲食サービス業も増加しています。コロナのパンデミックで少々停滞しましたが、規制も緩和されたことで今後ますます増加することが見込まれます。
1-1.特に在留資格「特定技能」外国人が急増中

「特定技能」とは2019年4月に新しく創設された制度(在留資格)です。
今まで外国人をフルタイム雇用する場合、基本的に現場で働くことはできませんでした。しかし、特定技能の登場により、人手不足とされる14業種においてのみ、外国人が現場で働くことができるようになりました。
この特定技能外国人が現在急増しており、令和3年6月末から令和5年6月末の3年間で約6倍も増加しました。
今後もますます増加することが予想され、近い将来日本の人手不足業界を担う重要な人材となるでしょう。

2.飲食店で外国人を雇用できる在留資格
まず「在留資格」とは、文字どおり「外国人が日本に在留するための資格」を指します。在留資格は、現在29種類ありますが、これらを「ビザ」と呼ぶこともあります。
飲食店で雇用をする際に外国人側に必要な在留資格(ビザ)は主に以下のとおりです。
2-1.正社員で雇用する場合

- 在留資格「特定技能」
先ほども少し解説しましたが、こちらが正社員で雇用する場合の最もポピュラーな在留資格(ビザ)、特定技能です。2019年4月に施行された比較的新しい在留資格で、通算5年間雇用ができる在留資格になります。今まで飲食店のホールやキッチンでの現場で従事する正社員での雇用はハードルが高かった外食業ですが、特定技能ができたため、雇用がしやすくなりました。
特定技能1号について詳しく知りたい方は、特定技能「外食」についてまとめた記事もご覧ください。 - 在留資格「技術・人文知識・国際業務」
「技術・人文知識・国際業務」は、大学などで習得した知識を活かして、一般的な企業で働く外国人のための就労ビザです。
このビザでできる仕事は、「大卒等の学歴のある者や一定の実務経験を有する者が、その学修した内容や実務経験に関連した一定以上の水準の文化系の業務を行う活動」と定義されていますから、接客や調理の盛り付け補助などの業務は単純労働とみなされていしまいます。
「技術・人文知識・国際業務」について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。 - 在留資格「特定活動46号」
こちらは、日本の大卒以上で、日本語検定試験N1以上を取得している外国人のみ取得ができる在留資格です。取得ハードルがかなり高いため、人数は非常に少ないですが、現場での従事も可能な在留資格となります。 - 定住者、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者等
こちらも在留資格「特定活動46号」同様、人数は少ないですが、現場での従事が可能となります。基本的には在留期間の制限等もないため、日本人同様に雇用をすることができます。 - 在留資格「技能」
こちらも人数は非常に少ないですが、調理の現場での従事が可能な在留資格です。母国で10年以上の実務経験等を有した外国人のみ取得が可能です。
特定技能に関してまとめた「特定技能まるわかり資料」のダウンロードはこちら
2-2.アルバイトで雇用する場合

正社員での雇用の場合、在留資格によっては、現場での従事が難しいケースがありますが、下記で紹介するアルバイトの場合は、すべての在留資格で現場での従事が可能です。
- 在留資格「留学」
外国人留学生に与えられる在留資格で、1週間に28時間以内であれば、アルバイトが可能です。週28時間というのは、月曜日〜日曜日で見ても、火曜日〜月曜日で見ても、28時間に収まっている必要があります。夏休み等の長期休暇期間中であれば週40時間働くことができます。
ただし、留学生の場合は「資格外活動許可」を与えられている必要があります。在留カードの裏面に「資格外活動許可」のスタンプがされている外国人のみ雇用が可能です。このスタンプがない留学生は雇用をしてはいけないので注意してください。 - 在留資格「家族滞在」
家族滞在とは、日本で働く外国人の配偶者等に与えられる在留資格です。在留資格「留学」同様、「資格外活動許可」を取得している場合のみ雇用が可能となっており、週28時間以内の就労ができます。 - 在留資格「特定活動(就職活動)」
在学中に就職を決めることができなかった外国人の方が、取得をできる、就職活動を行うための在留資格です。
卒業後、最長1年間、この在留資格で日本に在留することができます。この期間の間、週28時間以内であれば雇用が可能です。
注意したいのは、この在留資格で1年間在留するには、6ヶ月後に一度更新をしなければなりません。近年、この更新は非常に厳しくなっており、不許可となるケースも多々あります。 - 定住者、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者等
この在留資格は、正社員はもちろん、アルバイトでの雇用も可能です。人数は少ないため採用のハードルは高いですが、就労時間の制限等もなく、日本人同様に雇用をすることができます。

3.外国人の採用時の具体的対応方法
外国人の採用を決める前に、面接時もしくは入社前までには、必ず、在留カードの確認をしましょう。
在留カードとは、出入国在留管理庁から外国人に与えられるパスポートに代わる身分証のようなカードです。
在留カードを確認しなければならない理由は、上記で説明した在留資格によって、働くことができない業務や、そもそも働くこと自体ができない人がいるためです。
そのような人を知らずに雇用してしまった場合でも、企業側も「不法就労助長罪」などを問われてしまう可能性があるので、必ず確認をしてください。確認方法は以下の通りです。
3-1.在留カードの確認方法
在留カードには、外国人の氏名、生年月日、住所だけでなく、在留資格や在留期限の記載があります。
外国人の採用時には、以下の4点を確認してください。
- 在留資格
- 就労制限の有無
- 在留期限
- 資格外活動許可の有無


❶在留資格
前章で解説したような、在留資格の名前が記載されています。従事する業務を行うことができる在留資格なのかを確認してください。
❷就労制限の有無
留学生の場合、「就労不可」と記載があっても、裏面の「資格外活動許可欄」に許可のスタンプがあれば雇用が可能です。
在留資格「特定活動」は、種類がたくさんあるため、「指定書に指定された就労活動のみ可」と記載されていることがあります。その場合、在留カードのみで判別することは難しく、パスポートの指定書を確認する必要があります。
❸在留期限
期限を過ぎていないか確認をしましょう。期限が切れている場合、雇用することはできません。
ただし、在留期限を過ぎていても、在留資格の更新申請中の場合は、裏面に「在留資格変更許可申請中」とスタンプがあります。そのスタンプがあれば、雇用は可能となりますが、不許可となり、更新ができない場合もあるので、注意しましょう。
❹資格外活動許可欄
在留カードの裏面にあります。先述したように、特に留学生の場合は、スタンプの有無を必ず確認しましょう。

3-2.偽造在留カードには注意
近年、偽造在留カードが増えているため、注意しなければなりません。
SNSなどで売買され、買おうと思えば誰でも買える状況です。偽造在留カードとその対策はイタチごっこのため、完璧な対応方法はないですが、最低限、下記のサイトで失効したカードでないかは確認をしましょう。
在留カードに関する注意点や偽造の見分け方などはこちらの記事で詳しく説明していますので興味がありましたらご参照ください。

4.飲食店で外国人を雇用する上でのリスク・注意点
飲食店で外国人を雇用するには、先述でも触れましたが、「不法就労」のリスクには理解をし、気をつけるべきです。知らずに雇用をしてしまった企業も不法就労助長罪に問われてしまう可能性もあります。不法就労とならないために、下記は特に気をつけましょう。
- 就労できない外国人を雇用してはいけない
- 就労可能時間以上働かせてはいけない
- 在留資格以外の業務では働かせてはいけない
在留カードをしっかり確認し、就労時間は可能な範囲に収め、在留資格以外の業務をさせないようにしましょう。
特に、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、どこまでの業務が可能なのかの見極めが難しいです。転職者になると、申請時の書類等がないため、把握も困難です。その場合、外国人もしくは申請を行なった行政書士等に問い合わせをし、申請書と申請理由書を取り寄せるようにしてください。そこにどのような業務で申請したのかが記載されています。
5.飲食店で外国人を雇用するメリット
前章で、リスクについて説明しましたが、外国人雇用には、もちろんメリットもたくさんあります。これだけ外国人雇用が進んでいるのも、そのメリットを感じている企業が増えてきたからだと思います。
実際に私も業種は違えど、様々な国の外国人と一緒に働いています。そんな私が考えるメリットは以下の通りです。
メリット①|強制的に仕事のマニュアル化を求められるため、運営の仕組み化が進む
外国人の方々は、当然、日本語はネイティブレベルではありません。細かいニュアンスまで伝えることは難しいです。日本人同士であれば、なんとかなっていたことが通用しなくなります。そのため、仕事のマニュアル化を求められます。後回しにな理がちなマニュアル作成ですが、必要性が上がるため、会社運営の仕組み化が進みます。
仕組み化が進むと、業務に対してに必要人数が減り、人件費の削減なども可能になります。
メリット②|1億人の中からではなく、80億人の中から採用が可能になる
将来、日本の労働人口は減っていきます。これは明確な将来の課題です。しかし、世界の人口は増え続けています。1億人の日本人からでなく、全世界の80億人から採用ができるようになれば、これほどの企業としての優位性はないと思います。
メリット③|多様性があることで、新たなビジネスチャンスが生まれる
考え方・宗教・言語など様々な違いがある人同士が、協力し、互いの強みを発揮し、多様性を活かす企業になるには、とても時間がかかります。しかし、多様性が出てくることで、新たなビジネスチャンスも生まれます。
私たちの知る企業様の例を挙げますと、
英語対応ができることで、口コミが広がり、今では、海外からもたくさんのお客様が来ているお鮨屋さんや、ベトナム進出を進めている居酒屋を手がける企業様、外国人採用し労働力確保をできるようになり、新規出店を多数行う企業様などがあります。
6.まとめ
いかがでしたか?
今回は、飲食店の外国人雇用について解説をしました。外国人雇用は注意しておくこともありますが、それ以上にメリットや可能性に溢れています。これを機に外国人採用を進めてみてはいかがでしょうか。
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外国人採用をご検討の方は、どんな小さなことでも構いませんので、ぜひお気軽にお問合せください。