【完全解説】採用から入社後までに必要な外国人雇用の手続き・必要書類

執筆者:趙(外国人就労アドバイザー)
監修者:鈴木寛(行政書士)

「外国人の内定が決定したけど、入社までにどのような手続きが必要?」と悩んだ人事担当者が多いでしょう。

実際外国人を雇用した際の手続きは複雑なものが多いです。

この記事では、外国人の募集から内定、そして入社後の福利厚生の手配までの手続き・必要な書類をわかりやすくご説明します。外国人材の活用に、ご一助になれば幸いです。

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目次

1. 手続きの前にまずはビザなどの確認

企業が外国人を内定し、外国人が内定を承諾しても、その外国人はそのまま入社できるとは限りません。外国人が入社するためには、仕事内容に対応する就労ビザ(正しい呼び方は在留資格)を取得しなければならないからです。

したがって、外国人をスムーズに雇用するために、面接・内定の段階で外国人のビザの種類・在留期限及び学歴・職歴を確認することをおすすめします。以下、国内・海外に分けて、確認のポイントをご説明します。

1-1. 就労ビザとは

就労ビザの種類

2023年4月現在、29種類のビザが存在していますが、就労が認められるビザは主に以下の15種類です。

  • 技術・人文知識・国際業務
  • 特定技能
  • 技能実習
  • 介護
  • 企業内転勤
  • 経営・管理
  • 技能
  • 興行
  • 教育
  • 研究医療
  • 芸術
  • 宗教
  • 報道
  • 法律・会計事務
  • 教授

※技能実習は、外国人が日本の企業で技能等を修得するために設けられたビザで、一般の就労ビザとは違います。但し、技能実習ビザをもつ外国人は、フルタイムで勤務できますので、このビザを以て外国人は就労できます。

ちなみに、外国人が就労が認められないビザをもっている場合(留学ビザ等)、入国管理局に対し「資格外活動許可」を申請し、許可されれば、在留目的に支障がない範囲内で就労できます。しかし、この場合、就労時間・業種が制限されます。就労時間は週28時間以下でなければなりませんので、フルタイムの勤務ができません。また、風俗営業での就労もできないのです。

参考:在留資格一覧表|出入国在留管理庁
参考:資格外活動許可について|出入国在留管理庁

就労ビザをもっていた場合

日本に中長期的に在留する外国人は、必ず何らかのビザを持っています。ところが、このような外国人はたとえ就労ビザを持っていても、必ずしも現在保有するビザのまま入社できるとは限りません。就労ビザのそれぞれに、指定された活動内容が決められていますので、外国人に従事させる予定の仕事の内容が外国人が保有するビザに定められている活動の範囲外である場合があるからです。

たとえば外国人のビザが「技能実習」である場合、外国人は原則として現在の職場でしか働くことができず、転職が認められません。したがって、企業が技能実習外国人の採用を内定し、外国人も入社を承諾したとしても、入社できません。
所持しているビザのままでは入社できない場合、外国人は入社に先立ち、出入国在留管理局に対し新たな就労ビザを取得するために在留資格変更許可申請しなければなりません。但し、申請しても必ず許可されるとは限りません。
そのため、面接の際に在留カードを確認することは必須です。さらに企業は内定を出す前に、外国人の学歴・職歴等の履歴を確認することをおすすめします。次項でそれを詳述します。

このように入社前に在留資格の確認を行わなかったことで、入社できなくなることが無いよう、企業は採用面接の際にしっかり意見や条件の擦り合わせを行っておくことが必要です。
そこで、数多くの外国人採用面接に同席してきた我々JapanJobSchoolの経験をもとに、企業様向けに「外国人採用面接質問シート」を作成しましたので、是非ご覧ください。

1-2. 学歴・職歴の確認

企業が面接・内定の段階で、外国人の学歴・職歴を確認するポイントは、以下の2点です。

第一は、学歴・職歴に不審な点があるかどうか、ということです。学歴・職歴に問題があれば、どの種類の就労ビザを申請しても許可されにくいからです。たとえば、学歴詐称や犯罪があれば、ビザ申請が不許可になる可能性が極めて高いです。

第二は、学歴・職歴の内容が、申請する予定の就労ビザの申請条件を満たしているかということです。就労ビザの申請には、一定の学歴・職歴が条件となっている場合があるからです。

一例をあげれば、オフィスワークに対応する主な就労ビザは「技術・人文知識・国際業務」ですが、このビザの申請にあたり、外国人は(日本の)専門学校卒以上の学歴を持たなければならず、かつ学校での専攻内容が依頼される予定の仕事内容との関連性を有しなければなりません。一方、学歴ではなく職務経歴で条件を満たそうとする場合は、同仕事内容に関連した10年以上の実務経験をもつことが、このビザの申請の必要な条件です。

外国人雇用・就労ビザの手続きに関して何かお困りのことがあればお気軽にJapanJobSchoolご相談ください。

2. 入社前の手続き

それでは、外国人入社前の手続き全体をご説明します。

2-1. 雇用契約書の作成

国内・海外での採用を問わず、外国人を内定した後、入社前の手続きの第一歩が労働契約の締結、雇用契約書(労働条件通知書)などの書類の作成です。外国人が入社のためにビザを申請する必要がある場合、これらの書類の写しは、ビザ申請書類の一部でもあります。

企業に社内様式があれば、それを使って雇用契約書などを作成しても構いません。但し、外国人に十分に書類の内容を理解させ、トラブルの発生を防ぐために、外国人の母国語でも書類を作成することをお勧めします。

厚生労働省のホームページでは、英語、中国語、ベトナム語などの9か国語版の労働条件通知書の様式が掲載されていますので、ご活用することをお勧めします。
参考:労働基準法関係|厚生労働省

雇用契約書についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

2-2. 国内採用の場合のビザ申請

日本国内在住かつ、現在所有するビザのままでは入社できない外国人を採用する場合、入社前の手続きとして、外国人のビザ変更申請(在留資格変更許可申請)があります。
申請の流れは以下の通りです。

日本国内在住の外国人のビザ申請の流れ

申請に当たり、各種の就労ビザのそれぞれに指定されている活動内容を確認し、外国人に依頼する予定の仕事内容に対応する就労ビザを申請すべきです。

たとえば、既述の「技術・人文・国際業務」ビザは、理工学及び人文社会科学の知識・技術、あるいは外国の文化に基づく思考・感受性が必要である業務を指定活動とし、主に技術者、私企業が運営する語学学校の講師、マーケティング業務従事者などのホワイトカラーに向けてのビザです。したがって、外国人に飲食店での調理・接客のようなブルーカラーといわれる仕事を予定する場合には、「技術・人文・国際業務」ビザを申請することはできません。

また、申請に必要な書類は、ビザごとに異なります。「技術・人文知識・国際業務」ビザの場合は外国人の卒業証明書や企業の履歴事項全部証明書などの10件程度です。一方、「特定技能」のビザの場合、必要な書類が20件以上にのぼります。
なお、入管における審査は凡そ1ヶ月半から3ヶ月程度かかり、それ以上かかることもあります。書類の準備及び審査は相当時間かかる可能性がありますので、内定を出した場合には、外国人に対し直ちにビザ申請を始めさせることをお勧めいたします。その場合、外国人を採用する企業の協力が不可欠となります。

参考:在留資格「技術・人文知識・国際業務」|出入国在留管理庁

2-3. 海外採用の場合のビザ申請

一方、海外在住の外国人を採用した場合の手続きはどのような内容でしょうか。海外在住の外国人は日本のビザをもっていませんので、入社手続きとして、海外から外国人材を呼び寄せるための「在留資格認定証明書交付」申請が必要でその流れは、以下の通りです。

海外在住の外国人のビザ申請の流れ

日本国内在住の外国人のビザ変更申請と同じく、上記の申請を行う前に、ビザの活動内容を確認し、依頼する仕事内容に対応するビザを申請しなければなりません。必要な書類もビザ変更申請とほぼ同じです。

外国人を採用後実際に入社するまで、3-6か月かかることもありえます。

3. 入社後の手続き

さて、外国人が無事に入社すれば、その後、企業はどのような手続きをすべきでしょうか。本項では、外国人入社後の手続きをご紹介します。

3-1. 雇用保険の加入

労働基準法などの労働法は、外国人にも適用されます。そのため、条件を満たす場合、外国人を雇用保険に加入させる必要があります。雇用保険の加入には、「雇用保険被保険者資格取得届」などの数件の書類が必要です。手続きはハローワークで行われ、その期間は、被保険者となった日の属する月の翌月10日までです。
参考:雇用保険制度|厚生労働省

3-2. 健康保険・厚生年金の加入

条件を満たす場合、外国人を健康保険・厚生年金に加入させる必要もあります。必要な書類は「被保険者資格取得届」であり、外国人入社から5日以内に日本年金機構に提出しなければなりません。
参考:就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き|日本年金機構

保険についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

3-3. ビザの更新

「永住者」を除き、就労可能なビザには有効期間(正しい呼び方は「在留期間」)が決められています。また、この有効期間は、必ずしも雇用上の契約期間とは一致せず、契約期間より短い在留期間が決められることがあります。

したがって、外国人は引き続き勤務するために、ビザの有効期限が切れる前に、在留期間を更新する必要があります。尚、在留期間更新許可申請は、在留期限の3か月前から行うことが出来ます。更新申請は基本的に外国人自ら行うべきものですが、企業も外国人のビザの有効期限を把握しておき、外国人に更新を注意・催促することをお薦めします。外国人が更新を忘れ、ビザの有効期限が切れてしまうと、外国人は退職の上帰国せざるを得ず、ご本人だけではなく企業にとっても貴重な人材の損失につながるからです。

ビザの更新方法はこちらの記事で詳しく解説しています。

技術・人文知識・国際業務のビザ更新は「技術・人文知識・国際業務 ビザ更新書類作成マニュアル」をダウンロードください

3-4. 外国人が転職・退職した場合

最後に、外国人が転職・退職した場合の手続きをご紹介します。このような場合、日本人職員と同じ手続きのほか、14日以内に出入国在留管理局への届出も必要です。この届出は原則として外国人自らが行うことになっています。

届出は具体的に、「活動機関に関する届出」と「契約機関に関する届出」に分けられています。外国人のビザの種類により、どちらかを入管に提出しなければなりません。

届出の種類ビザの種類
契約機関に関する届出高度専門職1号イ、高度専門職1号ロ、高度専門職2号(入管法別表第1の2の表の高度専門職の下欄2号イ又はロに掲げる活動に従事する場合)、研究、技術・人文知識・国際業務、興行(本邦の公私の機関との契約に基づいて活動に従事する場合に限ります。)
活動機関に関する届出教授、高度専門職1号ハ、高度専門職2号(入管法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄2号ハに掲げる活動に従事する場合)、経営・管理、法律・会計業務、医療、教育、企業内転勤、技能実習、留学、研修
参考:所属機関等に関する届出手続|出入国在留管理庁

特定技能の転職に関してはこちらの記事をご覧ください。

外国人の退職に関してはこちらの記事をご覧ください。

4. 外国人を雇用する際の注意点

本記事の最後に、外国人雇用の際の注意点をご説明します。

4-1. 在留カードの偽造

日本国内在住の外国人は、在留カードという外国人専用の身分証明書をもっています。外国人のビザの種類も、この在留カードの表面に記されています。
ところが、近年、在留カードの偽造が相次いで摘発されています。したがって、内定前に外国人の在留カードを確認する際、そのビザが就労可能かどうかだけではなく、在留カード自体が本物であるかどうかも、しっかりと確認することをお勧めいたします。

在留カードの確認方法として、以下の2つがあげられます。

目視

在留カードが作られるとき、カードを傾けるとカードの左端の色が変化するなど、偽変造防止対策5つが施されています。まずそれを使って、在留カードを確認しましょう。

在留カードの偽造防止対策5つ

参考:「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方|法務省

アプリケーションで確認

出入国在留入管庁は、「在留カード等読取アプリケーション」を用意してくれます。このアプリで在留カードのICチップの内容を読み取れば、その情報の真偽を確認できます。

アプリケーションは、入管庁のホームページからダウンロードできます。
参考:在留カード等読取アプリケーション サポートページ|出入国在留管理庁

在留カードの管理方法について詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

4-2. 外国人のビザ情報の把握

外国人入社後の各種の手続きには、外国人のビザの関連情報が必要です。したがって、企業は外国人のビザ情報を把握し、具体的には在留カードのコピーをとり、保管されることをおすすめします。

但し、ビザ情報は外国人の個人情報の一部でもあります。これらの情報を関係者以外の社外に漏れないように、管理を徹底することをおすすめします。

4-3. 外国人を従事させる業務

日本人職員の場合、社内異動が命じられることはごく一般的な慣行と認識されています。外国人職員に対して異動を命じることも可能ですが、その場合、外国人を従事させる主な業務は、現在保有しているビザを申請する際に記載した活動内容と原則的に同様であること、仮に異なる場合であっても当該ビザにて指定される活動範囲内でなければなりません。

たとえば、外国人は「特定技能」のビザをもって、外食業の会社に入社し、当初、調理の業務を依頼されます。この外国人を、「ホールの接客」に異動させることは可能ですが、レジ打ち専任に異動させてはいけません。レジ打ちが単純作業で、「特定技能」ビザの活動内容の範囲外にあるからです(但し、ホールの接客の一部として、レジ打ちに従事させることは可能です)。

4-4. 外国人の給与水準

日本人職員と同じく、外国人職員も、同一労働同一賃金制度と最低賃金法が適用されています。そのため、外国人に対し、最低賃金を上回ることは当然であり、さらに同じ仕事内容の日本人と同等以上の給与を決定・支払わなければなりません。

実際、給与水準を日本人よりも低く設定した場合、ビザ自体を取得できない可能性があります。出入国入国管理局はビザ申請を審査するとき、外国人の労働条件・待遇が日本人と同等以上であるかを確認し、場合によりそのことを立証する関連資料の提出を企業に要請することがあります。

外国人の給与に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

5. まとめ

以上、外国人雇用の手続きをご説明しましたが、いかがでしょうか。

「複雑そう」と思われる人事担当者・企業主がいらっしゃるかもしれませんが、日本人と比べて多くなった代表的な手続きは、「ビザの取得(変更)・更新」です。手続きの煩雑さの程度は、外国人個人の履歴や採用する企業の業績・規模等によって異なる場合があります。

日本企業の求人に応募した外国人は概ね日本での就職を強く希望しています。彼ら・彼女らは正規にビザを取得し、入社できれば、日本人職員以上に仕事に努力することも期待できます。したがって、たとえ手続きが煩雑でも、外国人の雇用は長期的には、企業にとって有利になることが想定されます。

ぜひ、本記事を活用し、外国人の人材を積極的に受け入れていただければ幸いです。
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この記事を監修した人|

鈴木 寛(すずき ひろし):行政書士鈴木法務オフィス
資格:行政書士資格・全国通訳案内士(英語)・ビジネス実務法務検定2級:
大手日系・外資系化粧品メーカー数社において、海外営業・海外駐在(英国)・海外事業管理、国内営業・マーケティング統括等30数年の勤務経験。2017年から現在まで、行政書士として行政書士事務所を開業中。
(専門分野は、外国人の就労ビザ/在留資格申請、外国人雇用アドバイス)

 

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この記事を書いた人

株式会社JJS(JapanJobSchool)のビザ担当

中国・北京出身、2012年来日。法学・政治学の大学院を修了した後で教師に就職し、高度人材として永住権も取得。10年間日本で生活・仕事してきた経験から「日本で努力している外国人を助けたい」と強く希望し、教育業界から転職し、株式会社JJSに入社。現在、法学の専門知識を生かして外国人のビザ申請・更新をサポート。

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