技術・人文知識・国際業務ビザとは?更新方法・職種・要件など徹底解説

執筆者:井上道夫(行政書士井上法務事務所所長)
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、一般的に会社で働く外国人が取得する就労ビザです。
多くの就労ビザがありますが、「技術・人文知識・国際業務」ビザは最も代表的なもので、就労ビザを持つ外国人の約3割がこのビザを取得しています。ここでは、在留申請業務を専門で行う行政書士である私が、この就労ビザの要件、職種、更新などを詳しくご説明いたします。
技術・人文知識・国際業務の「ビザ更新書類マニュアル」のダウンロードはこちら
1. 技術・人文知識・国際業務ビザとは?
技術・人文知識・国際業務ビザとは、高度人材の受け入れを目的とした制度で大学などで習得した知識を活かして、一般的な企業で働く外国人のための就労ビザです。
この外国人材が働くことで、外国人が保有する専門的な知識や技術を日本に還元してもらうことが目的で設立されました。人手不足を解消する目的で設立された特定技能とは異なるビザとなっています。
また、技術・人文知識・国際業務ビザは通称「技人国(ギジンコク)」と訳されることが多いです。
1-1.技術・人文知識・国際業務で任せられる業務
このビザでできる仕事は、「大卒等の学歴のある者や一定の実務経験を有する者が、その学修した内容や実務経験に関連した一定以上の水準の文化系の業務を行う活動」と定義されています。ですので、単純作業は認められません。
また出入国在留管理庁では以下のように任せられる業務を具体的に示しています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(入管法別表第一の一の表の教授、芸術、報道の項に掲げる活動、二の表の経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行の項に掲げる活動を除く。)
該当例としては、機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等。
出典:出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」
2. 在留資格「技術・人文知識・国際業務」で従事できる職種
ここからは、「技術・人文知識・国際業務」でよくある質問のある職種別の許可事例と不許可事例を解説します。
2-1. 飲食店で可能な業務内容例
「技術・人文知識・国際業務」は、飲食店で働く場合も取得することが可能です。ただ、先ほども述べた通り「大卒等の学歴のある者や一定の実務経験を有する者が、その学修した内容や実務経験に関連した一定以上の水準の文化系の業務を行う活動」キッチンやホールなどの業務では単純労働とみなされ、ビザの許可が下りない場合が多いです。ですので、本部での管理業務やマネジメントなどを任せるのが良いでしょう。
飲食店の不許可事例
基本的に、会社の従業員であっても、「技術・人文知識・国際業務」では、単純労働に従事する人は、「技術・人文知識・国際業務」を取得できません。従って、飲食店の業務の中で、接客、ホール関係業務、料理の盛り付け補助などを行う場合、単純労働と見なされ、「技術・人文知識・国際業務」の取得は、難しいということになります。
2-2. ホテルで可能な業務内容例
ホテルに就職する場合も、飲食店と同じ考え方です。大学などで習得した語学を活かして、フロント業務などを行う外国人であれば、「技術・人文知識・国際業務」の取得が可能です。
ホテルの不許可事例
ホテルの業務であっても、主に客室の清掃、ベッドメイキングなどを行う業務に従事するのであれば、単純労働とみなされて、「技術・人文知識・国際業務」の取得は難しくなります。
2-3. コンビニで可能な業務内容例
コンビニ業界に就職する場合にも、一般企業と同じく、発注業務、在庫管理、品質管理、個人情報管理、人事管理などの業務でなければ、「技術・人文知識・国際業務」の取得はできません。これらの業務に従事するには、大学などで経営学などを修得しておく必要があります。
コンビニの不許可事例
コンビニ業界に就職するにしても、アルバイトが行う接客、品出しなどを主に従事するようであれば、単純労働とみなされて、「技術・人文知識・国際業務」の取得はできません。
2-4. 建設業で可能な業務内容例
建設業界に就職する場合には、営業、事務、現場監督などの専門職でなければ、「技術・人文知識・国際業務」の取得はできません。営業職は、例えば大学などで修得したマーケティングの知識を活かして、クライアントのニーズに合うように提案する仕事です。事務職は、他の一般企業と同じく、勤怠管理、経理業務、請求書の作成、資材の管理業務、発注業務などを行うことになります。現場監督は、工事現場の施工、作業員の指示、役所への手続などを行います。
建設業の不許可事例
建設業界に就職するにしても、一般的な現場作業、例えば大工、とび、左官などが行うような仕事に従事することでは、「技術・人文知識・国際業務」の取得は認められません。
2-5. 製造業可能な業務内容例
製造業界に就職する場合も、他の一般企業と同じく、大学などで習得した知識、資格を活かす業種に就く必要があります。例えば、営業職、事務職、通訳などを行うのであれば、「技術・人文知識・国際業務」を取得できます。
製造業の不許可事例
製造工場のラインに入り、日本人従業員の作業指示を技能実習生や外国人従業員に伝達・指導を行う仕事は、習得した資格・スキルを活かした業務ですから問題ありません。しかし、自分自身が工場のラインに入って仕事をすることは単純作業とみなされますから、「技術・人文知識・国際業務」の取得は認められません。
3. 技術・人文知識・国際業務の要件
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得するには、次に記載する要件が必要です。
3-1. 条件を満たすこと
「技術」・「人文知識」に該当する業務を行う場合、次のいずれかに該当している必要があります(情報処理に関する業務を行う場合で、特定の試験に合格している場合、あるいは特定の資格を持っている場合を除きます)。
- 業務に必要な技術や知識に関連する科目を専攻して大学を卒業したこと(または大学と同等以上の教育を受けたこと)
- 業務に必要な技術や知識に関連する科目を専攻して専修学校の専門課程を修了したこと(「専門士」または「高度専門士」をもっている場合に限る)
- 関連する業務について10年以上の実務経験があること(大学、高等専門学校、高等学校、(中等教育学校の後期課程または専修学校の専門課程)において関連する科目を専攻した期間を含む)
「国際業務」に該当する業務を行う場合、以下のすべてに該当することが必要です。
- 翻訳、通訳、語学指導、広報、宣伝、または海外取引業務、服飾、あるいは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務を行うこと
- 行おうとする業務に関連する業務について、3年以上の実務経験があること(翻訳、通訳、語学指導については、学部に関わらず大学を卒業していればクリア)
3-2. 日本人と同等額以上の報酬を受けること
報酬については、具体的な金額が定められているわけではありません。会社の賃金体系を基にして、日本人従業員と同等額以上かをチェックされたり、他社の同じ職種の賃金を参考に判断されたりします。(※大卒の場合、月額20万円以上が目安)
4. 技術・人文知識・国際業務に変更する場合の必要書類
他の就労ビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザへ変更する場合、以下の書類が必要です。なお、カテゴリー1は主に上場企業、カテゴリー2は主に前年分の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業、カテゴリー3は主に前年分の源泉徴収税額が1,000万円未満の企業、カテゴリー4はそれ以外の企業です。
なお、カテゴリーの詳細な内容、必要書類の詳細については、以下のサイトをご確認ください。
4-1. カテゴリー1の場合
共通書類
- 在留資格変更許可申請書
- 写真(縦4㎝×横3㎝)※無帽・無背景
- パスポート及び在留カード原本
- 返信用ハガキ(宛名を記入する)
企業が用意する書類
- 四季報の写し、または日本の証券取引所に上場していることを証明する書類
申請人に関する書類
- 専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を取得した者については、専門士または高度専門士の称号を付与されたことを証明する書類(卒業証明書など)
4-2. カテゴリー2の場合
共通書類
- 在留資格変更許可申請書
- 写真(縦4㎝×横3㎝:無帽・無背景)
- パスポート及び在留カード原本
- 返信用ハガキ(宛先を明記する)
企業が用意する書類
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(税務署の収受印のあるもの)
申請人に関する書類
- 専門学校を卒業し、専門士または高度専門士の称号を取得した者については、専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する書類(卒業証明書など)
4-3. カテゴリー3の場合
共通書類
- 在留資格変更許可申請書
- 写真(縦4㎝×横3㎝:無帽・無背景)
- パスポート及び在留カード原本
- 返信用ハガキ(宛先を明記する)
企業に関する書類
- 登記事項証明書
- 定款の写し
- 会社案内(沿革、役員、業務内容、主要取引先、取引実績が記載されたもの)
- 直近年度の決算書(貸借対照表・損益決算書の写し)
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し(税務署の収受印のあるもの)
従業員として採用する場合
- 採用理由書(申請人の経歴と職務内容との関連性、事業の継続性や安定性などの説明)
- 契約書の写し
日本法人の役員に就任する場合
- 役員報酬を決議した株主総会の議事録の写し
外国法人の日本支店に転勤する場合および会社以外の団体の役員に就任する場合
- 地位(担当業務)、期間および報酬額がわかる書類の写し
申請人に関する書類
- 大学または専門学校の卒業証明書の写し及び日本語翻訳
- 大学または専門学校の成績証明書の写し及び日本語翻訳(学校の専攻科目と業務内容との関連性を審査)
- 申請人の履歴書(学歴・職歴)
- 日本語能力を証明する書類(日本語能力検定試験合格証明書など)
- 資格合格証(業務内容と関連している場合)
4-4. カテゴリー4の場合
共通書類
- 在留資格変更許可申請書
- 写真(縦4㎝×横3㎝)※無帽・無背景
- パスポート及び在留カード原本
- 返信用ハガキ ※宛先を明記
企業に関する書類
- 事業計画書
- 登記事項証明書
- 定款の写し
- 会社案内 (役員、沿革、業務内容、主要取引先、取引実績が記載されたもの)
- 給与支払事務所等の開設届書の写し(税務署の収受印のあるもの)
- 直近3カ月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるもの)の写しまたは、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(受付印あるもの)の写し
- 事務所または店舗の建物賃貸借契約書の写し
※不動産を所有している場合は登記事項証明書 - 会社の写真(ビル外観、入口、事務所内部・店舗内部)
※事務所内には机、パソコン、電話、キャビネットなどが設置されていること
※店舗の場合は内装済みで営業が開始できる状態であること
申請人に関する書類
- 大学または専門学校の卒業証明書の写し及び日本語翻訳
- 大学または専門学校の成績証明書の写し及び日本語翻訳(学校の専攻科目と業務内容との関連性を審査)
- 本人の履歴書(学歴・職歴)
- 日本語能力を証明する書類(日本語能力検定試験合格証明書など)
- 資格合格証(業務内容と関連している場合)
従業員として採用する場合
- 採用理由書(申請人の経歴と業務内容との関連性、事業の継続性や安定性の説明)
- 契約書の写し
日本法人の役員に就任する場合
- 役員報酬を決議した株主総会の議事録の写し
外国法人の日本支店に転勤する場合および会社以外の団体の役員に就任する場合
- 地位(担当業務)、期間および報酬額がわかる文書の写し
5. 技術・人文知識・国際業務の更新について
「技術・人文知識・国際業務」のビザを更新する場合、以下の書類が必要です。所属しているカテゴリーによって必要な書類が変わります。
5-1. 更新の必要書類
申請人が用意する書類
- 在留期間更新許可申請書
- 写真(縦4cm×横3cm:3ヶ月以内に撮影したもの)
- パスポート及び在留カード(原本:申請時に提示)
- 住民税の課税証明書及び納税証明書(直近の1年間の証明書)※カテゴリー3と4のみ必要
企業が用意する書類
カテゴリー1の場合
- カテゴリー1の企業であることが分かる書類(四季報の写しなど)
カテゴリー2及び3の場合
- 前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(受付印のあるものの写し)
5-2. 更新の記入例
「在留期間更新許可申請書」の記入例は、以下の通りです。




5-3. 更新の注意点
更新申請の手続きは、在留期間の残り3ヶ月前から在留期限の日までが、申請期間です。しかし、審査を経た上で許可されるまでは、2週間から1ヶ月程度かかりますので、日数に余裕をもって、早めに申請する必要があります。
また、更新の際に、変更時に記載した業務内容と異なる業務を誤って記載した場合、不許可になることがありますので、十分注意してください。

技術・人文知識・国際業務用
ビザ更新書類作成マニュアル
技術・人文知識・国際業務ビザの更新のマニュアルです。記入例や必須書類などを記載していますので、ビザ更新の方法を知りたい方はぜひご覧ください。
6. 技術・人文知識・国際業務でアルバイトはできるのか
「技術・人文知識・国際業務」ビザを取得した外国人は、日本で就労できる職種が限定されています。従って、認められていない職種の仕事をすることはできません。
これはアルバイトにも言えることです。「技術・人文知識・国際業務」ビザで認められていない職種のアルバイトは、できないことになります。逆に言うと、「技術・人文知識・国際業務」ビザで認められた職種であれば、アルバイトができると言うことです。
7. 技術・人文知識・国際業務で副業はできるのか
先程のアルバイトと同様、「技術・人文知識・国際業務」ビザで認められた職種であれば、副業は可能です。
ただし、雇用契約を結んでいる企業が、アルバイトや副業を禁止している場合には、アルバイト、副業はできませんし、仮に認めていても「届出が必要」という規則であれば、無断で行うことはできませんので、注意が必要です。
8. 技術・人文知識・国際業務で採用する場合の流れ
8-1. 海外の場合
現在海外に住んでいる外国人を新たに企業に採用する場合には、以下のような流れで手続きを行います。
たしているかを確認・調査する。
8-2. 国内の場合
現在日本にいる外国人が、他のビザから「技術・人文知識・国際業務」ビザに変更する場合には、以下のような流れで手続きを行います。
9. まとめ
「技術・人文知識・国際業務」ビザは、就労ビザの中で最も多いビザです。ただし、現在海外に住んでいる外国人が新たに日本で就労する場合と、現在他のビザで就労している外国人が「技術・人文知識・国際業務」ビザに変更する場合、また雇用する企業のカテゴリーによっても、申請する際の添付資料が異なりますので、注意が必要です。
私たちは、「技術・人文知識・国際業務」ビザの採用のサポートを行っています。興味があれば、お気軽にお問合せください。