外国人が退職|企業・外国人に必要な手続きと注意点を徹底解説
外国人社員が退職する場合、特有の手続きや届出をします。そのため企業の人事担当者は、事前に手続きの内容を把握して書類を用意しなければなりません。
外国人自身も手続きをしますが、日本の法律や制度に不慣れなため、その方法を知らないケースもあるでしょう。企業は適切なサポートをするために、外国人の手続きもチェックしておくことが重要です。
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1.外国人の退職|会社側の手続き
外国人社員が退職するとき、企業側で対応するべき手続きがあります。健康保険や雇用保険などの社会保険に加入している場合、資格喪失の手続きが必要です。また外国人労働者特有の手続きとして、在留資格の届出も忘れてはなりません。ここでは、企業が行うべき退職手続きについて解説します。
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1-1. 日本人と同様の手続きをする
外国人社員が退職するときには、日本人社員と同様の手続きも必要です。社会保険や税金などの手続きは、期限や書類が決まっているケースも多いので、スピーディーに対応しましょう。
≪日本人と同様の手続き≫
- 源泉徴収票を交付する
- 健康保険証を回収する
- 社会保険・労働保険の資格喪失手続きをする
- 離職票を交付する
- 残りの住民税を徴収する
※納税管理人(本人の代理で納税の手続きをする人)を定める - 貸与品を回収する(制服・事務用品・通信機器など)
1-2. 退職証明書を発行する
外国人社員にも日本人社員と同じく、「退職証明書」を発行しましょう。退職証明書は、転職するときに必要になる書類です。在留資格の変更や就労資格証明書の交付を申請するとき、入国管理局で退職証明書を提出します。
退職証明書に記載する主な内容は以下の通りです。
- 使用期間(会社に在籍した期間)
- 業務の種類(従事業務、職務内容)
- 地位(社内の役職など)
- 賃金退職の事由(解雇の場合はその理由も含む)
1-3. 「雇用保険被保険者資格喪失届」の届出をする
雇用保険の被保険者となる外国人社員が退職するときには、日本人社員と同じく雇用保険の喪失届が必要です。ただし外国人の場合には、所定の書式の表面「住所・居所」のほかに、裏面「14~19の欄」にも記入しましょう。
≪記入事項≫
- 在留資格
- 在留期間
- 生年月日
- 国籍・地域
- 在留カードの番号
- 離職年月日
- 離職に係る事業所の名称および所在地
雇用保険は失業した場合に基本手当(失業保険)を支給する制度です。雇用保険に加入していた期間が12か月以上あれば、基本手当を受け取ることができます。ただし、在留資格によっては受け取れない場合もあるため要確認です。
企業は外国人社員が退職した日から10日以内に、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出しましょう。また雇用保険の被保険者でない外国人の場合には、退職の際に「外国人雇用状況届出」を提出しなければなりません。
1-4. 「中長期滞在者の受け入れに関する届出」をする(※一部の就労ビザ)
一部の就労ビザで雇用していた場合、出入国在留管理庁に「中長期在留者の受入れに関する届出」を提出します。この届出は、14日以内に行わなければなりません。
≪対象になる就労ビザ≫
- 教授
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務
- 企業内転勤
- 介護
- 興行
- 技能
届出を提出する際には、所定の様式に以下の内容を記しましょう。
- 氏名
- 生年月日
- 在留資格
- 在留期間
- 在留カード番号など
外国人社員は、「外国人登録証明書」の代わりになる「在留カード」を持っています。届出に必要な記載されているため、確認しておきましょう。
在留カードについてはこちらの記事で解説しています。
※参考:所属機関による届出手続|出入国在留管理庁
1-5.「受入れ困難」「雇用契約」に関する届出をする(※特定技能のみ)
特定技能の外国人が退職する場合、申出があった日から14日以内に出入国在留管理庁の「受入れ困難に係る届出書」と「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」が必要です。他の就労ビザと特定技能ビザでは、退職手続きが異なるため注意しましょう。
「特定技能」の退職手続きについては、以下の記事も参考にしてみてください。
1-6. 「年末調整」をする(※退職後に帰国する場合)
外国人社員が退職してすぐに帰国する場合は、年末調整が必要です。通常は12月末までにする年末調整ですが、帰国のタイミングに合わせて早めに進めます。年末調整が済んだら、源泉徴収票と併せて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を交付しましょう。
年末調整のタイミング
退職する時期 | 1月~11月 の場合 | 12月 の場合 |
年末調整するタイミング | 退職時 | 翌年1月 |
対象になる給与 | 退職月の給与 | 12月分の給与 |
差額を調整する範囲(所得税と住民税) | 1月~退職月まで | 1月から12月まで |
結果の交付 | 源泉徴収票と併せて交付 | 翌年1月10日までに源泉徴収票と併せて交付 |
外国人の年末調整に関する注意点
社会保険料の控除 | 自国の社会保険料を支払っている場合、日本の控除は受けられない |
扶養控除 | 母国に扶養家族がいる場合、「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要になる |
租税条約による特例 | 対象となる場合は届出書を提出する | 2国間で締結される租税条約により「住民税」「所得税」が免除されるケースがあるため、
※参考:社会保険料控除|国税庁
※参考:国外居住親族に係る扶養控除等の適用について|国税庁
※参考:租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)|国税庁
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2. 外国人の退職|外国人本人側の手続き
外国人社員が退職するときには、本人もいくつかの手続きを行わなければなりません。特に、在留資格や在留カードに関する手続きは重要です。
届出を怠ると不法滞在になり、罰金や強制退去などの処分を受ける可能性があります。ここでは、退職する外国人本人が行う手続きについてチェックしておきましょう。
2-1. 契約期間に関する届出をする
退職する外国人本人がまず行うべき手続きは、「契約期間に関する届出」をすることです。これは、技術・人文知識・国際業務や技能などの就労ビザを持つ外国人が、契約機関(雇用主)との契約が終了したときに、入国管理局に届け出るものです。
退職日から14日以内に、窓口・インターネット・郵送のいずれかによって届け出ましょう。この届出を怠ると、20万円以下の罰金になる可能性があります。
≪手続きの対象者≫
- 高度専門職1号イ又はロ、高度専門職2号(イ又はロ)※例:大学教授・研究者・技術者・経営者
- 研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行(所属機関との契約に基づいて活動に従事する者に限る)
- 技能又は特定技能の在留資格を有する中長期在留者
※参考:所属(契約)機関に関する届出(高度専門職1号イ又はロ、高度専門職2号(イ又はロ)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能)
※参考:高度外国人材の受入れに係る「新たな制度」の創設について
2-2. 在留資格の変更・更新手続きをする
退職する外国人は、入国管理局で在留資格を変更しなければなりません。就労ビザは、日本で働くためのビザです。そのため無職になると、在留資格が取り消されてしまう可能性が高いでしょう。
日本に引き続き在留する場合、就労ビザから「短期滞在」や「特定活動」などに変更できるか条件や必要書類をチェックしてみてください。引き続き同じビザで再就職を試みる場合、在留資格の更新手続きによりそのまま働ける可能性もあります。詳しくは、出入国在留管理庁に問い合わせましょう。
もし変更申請をしない場合は、在留期間が満了するまでに日本から出国します。不法滞在になると、強制退去や再入国禁止などの処分を受けるため注意しましょう。
3.退職後はケース別に対応|外国人の手続き
退職後に引き続き日本で働くのか、それとも帰国するのかによって、必要な手続きや対応が異なります。以下で、該当する項目をチェックしてみてください。
3-1. 転職をする場合
転職をする外国人は、更新手続きをすれば、所有している在留ビザでそのまま働けます。しかし新しい就労先で以前の在留資格が認められない場合、変更の手続きが必要です。
以下のステップにしたがって、手続きを進めましょう。
- 「就労資格証明書交付申請」をして在留資格の範囲を確認する
- 新しい在留資格が必要なら「在留資格変更許可申請」をする
「特定技能」の転職については、以下の記事でも詳しく解説しています。
3-2. 帰国する場合
退職後に帰国する場合、在留期限までに出国するならビザの変更手続きは不要です。帰国に向けて「銀行口座の解約」「家賃の支払い・賃貸契約の解約」「水道光熱費・通信費の支払い・解約」「税金の支払い」など、各種手続きや支払いに滞りがないか確認しておきましょう。
3-3. 働かず日本に在留する場合
退職後、働かずに日本への在留を希望するなら、状況や滞在目的に応じてビザの変更手続きが必要です。ビザの変更をせずに在留すると「不法滞在」になるので注意しましょう。
状況 | 必要なビザ |
すぐに出国できない | 「短期滞在ビザ」 |
次の仕事が見つからない ※就職活動中 | 「特定活動ビザ」※出入国在留管理庁に要確認 |
大学や専門学校に進学する | 「留学ビザ」 |
日本人と結婚する | 「日本人の配偶者等ビザ」 |
※参考:就労資格証明書交付申請
※参考:受入れ困難に係る届出
※参考:特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出
4. 外国人の退職における注意点
外国人が退職する際には、注意すべきポイントがいくつかあります。適切な手続きを行うことで、法的トラブルを避け、スムーズに退職プロセスを進めましょう。ここでは、具体的な注意点をまとめました。
4-1. 退職届を回収する(企業向け)
外国人従業員から退職届を必ず回収しましょう。特に自己都合での退職の場合、退職届を回収することで法的トラブルを避けることができます。例えば、転職活動がうまくいかない外国人が、別の在留資格への変更を試みる際に「会社都合で解雇された」と申告する可能性があります。
また、コンプライアンスの観点からも重要です。退職者と企業が合意のうえで雇用契約を終了したことを明確にするために、企業は退職届を回収することが求められます。
4-2. 届出の期限の厳守・正確に手続きを行う
外国人社員が退職するときには、ハローワークや入国管理局などに届出を行う必要があります。これらの届出は、期限内に正確に行わなければなりません。届出を怠ったり、不正確な情報を提供したりすると、罰金や処分を受ける可能性があります。届出の方法や必要書類は、各機関のホームページや窓口で確認しましょう。
※参考:在留資格の取消し(入管法第22条の4)|出入国在留管理庁
4-3. 就労ビザの失効を防ぐ
外国人従業員が自己都合で退職した場合、「3か月以上」無職の状態が続くと就労ビザを失効するリスクがあります。そのため、退職後は速やかに次の職を見つけるか、帰国しなければなりません。
受け入れ企業も「就労ビザ失効」のリスクを理解しておくことが重要です。退職した外国人が3か月以内に再就職しない場合、在留資格を取り消される可能性があります。もし会社都合による解雇の場合は、例外的に在留期限までの滞在が認められるケースも。
再就職せずすぐに出国するのが難しい外国人には、「短期滞在」ビザに変更するように案内しておくとトラブル防止になります。
4-4. アルバイトの制限がある
受け入れ企業によっては、「他社から退職してきた就労ビザを持つ外国人をアルバイト雇用したい」と思うかもしれません。また一部の外国人労働者は、「次の仕事が見つかるまでアルバイトをしたい」と考えるでしょう。
退職後アルバイトは可能なのか、結論からいうと就労ビザでアルバイトをするのは原則禁止です。就労ビザは、対象になる分野・職種での就労が認められています。単純労働を禁止しているビザや、正社員雇用を条件にしているビザもあるため、安易にアルバイトを始めることはおすすめできません。
ただし「会社都合」で退職した場合には、再就職先が見つかるまで「特定活動ビザ」で在留できる可能性があります。状況によって在留許可を得られるかが異なるため、気になる方は管轄の「地方出入国在留管理官署」に相談しましょう。
各就労ビザの特徴については、以下の記事よりご覧ください。
外国人のアルバイトに関しては、以下の記事で詳しく解説しています。
技能実習制度のトラブルの多さを受けて、最近外国人の方々は、「国籍を理由に不当に扱われないように、自分の身を自分で守ろう!」という意識が強いです!
そのために、自分で学んだり、コミュニティ情報が流れてきたりして、日本の労働関係の法律に詳しい方も多くいます!
しっかりと法令通りに雇用しましょう!
5. まとめ
外国人の退職において、必要な手続き・届出を忘れないようにしましょう。従業員ではなくなりますが、意図せず不法滞在をしてしまわないように、退職後に向けてのサポートも必要不可欠です。在留資格に関する手続きや書類への記入は、外国人にとって難しいと感じるでしょう。記入方法や提出方法を教えてあげると親切です。
もし退職した外国人が在留期限を過ぎたり、許可なく資格外活動をしたりすると、過去に雇用していた企業側のイメージダウンになる可能性もあります。なぜなら出入国在留管理庁から「外国人の受け入れ体制が整っていない」と、評価されるかもしれないからです。
再就職する予定なのか、帰国する予定なのか、退職後の動きにも考慮しつつ必要な手続きをサポートしてあげましょう。
日本の労働基準法と入管法のどちらもしっかりと把握・遵守して、意図して法令違反などがないように、適切に雇用できる受け入れ態勢を整えましょう!
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