【外国人が退職】企業と本人が行うべきビザの手続きと注意点とは?

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

外国人社員が退職する場合、企業の人事担当者は、事前に手続きの内容を把握して書類を用意します。

外国人が退職するときに必要な手続き

外国人社員が退職する場合、特有の手続きや届出をします。そのため企業の人事担当者は、事前に手続きの内容を把握して書類を用意しなければなりません。

外国人自身も手続きや届出をしますが、日本の法律や制度に不慣れで、その方法を知らないことも少なくありません。そこで適切なサポートができるように、外国人の手続きについてもチェックしておきましょう。

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目次

1. 外国人特有の退職手続き(企業が実施)

外国人社員が退職するとき、企業側で対応するべき手続きがあります。健康保険や雇用保険などの社会保険に加入している場合、資格喪失の手続きが必要です。また在留資格や在留カードなど、外国人特有の手続きも忘れてはなりません。ここでは、企業が行うべき外国人社員の退職手続きについて解説します。

1-1. ハローワークに雇用保険被保険者資格喪失届を提出する

雇用保険被保険者資格喪失届の見本

雇用保険の被保険者となる外国人社員が退職するときには、日本人社員と同じく雇用保険の喪失届が必要です。ただし外国人の場合には、所定の書式の「18.備考欄」に以下を記載しましょう。

  • 在留資格
  • 在留期間
  • 国籍・地域
  • 資格外活動許可の有無
  • 離職に係る事業所の名称および所在地

雇用保険は失業した場合に基本手当(失業保険)を支給する制度です。雇用保険に加入していた期間が12か月以上あれば、基本手当を受け取ることができます。ただし、在留資格によっては受け取れない場合もあるため要確認です。

企業は外国人社員が退職した日から10日以内に、ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出しましょう。また雇用保険の被保険者でない外国人の場合には、退職の際に「外国人雇用状況届出」を提出しなければなりません。

※参考・画像引用:外国人労働者の雇入れ・離職の際にはその氏名・在留資格などについてハローワークへの届出が必要です|厚生労働省

1-2. 退職証明書を発行する 

退職証明書の見本

※引用:退職証明書|厚生労働省

外国人社員にも日本人社員と同じく、「退職証明書」を発行しましょう。退職証明書は、転職するときに必要になる書類です。在留資格の変更や就労資格証明書の交付を申請するとき、入国管理局で退職証明書を提出します。

退職証明書に記載する主な内容は、以下のとおりです。

  • 使用期間(会社に在籍した期間)
  • 業務の種類(従事業務、職務内容)
  • 地位(社内の役職など)
  • 賃金退職の事由(解雇の場合はその理由も含む)

1-3. 中長期滞在者の受け入れに関する届出をする

中長期滞在者の受け入れに関する届出の見本

※引用:参考様式2の1|出入国在留管理庁

就労ビザで雇用していた場合、出入国在留管理庁に「中長期在留者の受入れに関する届出」を提出します。この届出は、14日以内に行わなければなりません。

届出を提出する際には、所定の様式に以下の内容を記しましょう。

  • 氏名
  • 生年月日
  • 在留資格
  • 在留期間
  • 在留カード番号など

外国人社員は、「外国人登録証明書」の代わりになる「在留カード」を持っています。届出に必要な記載されているため、確認しておきましょう。

在留カードについてはこちらの記事で解説しています。

※参考:中長期在留者の受入れに関する届出

2. 日本人と同様の手続き(企業が実施)

外国人社員が退職するときには、日本人社員と同様の手続きも必要です。社会保険や税金などの手続きは、期限や書類が決まっているケースも多いので、スピーディーに対応しましょう。ここでは、日本人と同様の退職手続きについて解説します。

2-1. 源泉徴収票を交付する

源泉徴収票とは、給与や退職金などから源泉徴収した税金の額を証明する書類です。退職者は、この書類をもとに確定申告をします。その際に企業から退職者に対して、源泉徴収票を交付する義務があるので忘れないようにしましょう。

源泉徴収票は、原則として退職年度の翌年1月10日までに交付します。ただし、退職者から早めに請求された場合には、速やかに対応しなければなりません。

※参考:給与所得の源泉徴収票等の交付義務|国税©庁

2-2. 健康保険証を回収する

健康保険証とは、健康保険に加入していることを証明する書類です。退職者は健康保険から離脱することになるので、健康保険証を返却しなければなりません。

企業は退職者から健康保険証を回収し、健康保険組合や社会保険事務所に返還します。退職して翌日から健康保険証が利用できなくなるため、速やかに回収・返還しましょう。

※参考:健康保険被保険者証の返納手続き

2-3. 社会保険・労働保険の資格喪失手続きをする

社会保険と労働保険は、雇用関係に基づいて加入する制度です。退職者はこれらの保険から離脱することになるので、資格喪失の手続きをします。

企業は退職者の「資格喪失届」を作成し、社会保険事務所やハローワークに提出しましょう。社会保険(健康保険・厚生年金保険)資格喪失届は、原則として退職日から5日以内に提出します。

また労働保険(労災保険・雇用保険)は、事業所を管轄するハローワークに届出が必要です。退職から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を提出しましょう。

※参考:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構
※参考:雇用保険被保険者離職証明書についての注意|厚生労働省

2-4. 離職票を交付する

離職票見本

※引用:雇用保険被保険者離職証明書についての注意|厚労省

雇用保険の給付を受けるために必要なので、離職票を交付しましょう。退職者はハローワークで失業認定や基本手当の申請をするときに、離職票が必要になるからです。

退職する外国人によっては、離職票の交付を希望しないケースがあるかもしれません。しかし後から必要になる可能性もあるため、源泉徴収票と併せて離職票も交付しましょう。

2-5. 住民税の手続きをする

外国人を雇用している場合、日本人と同様に給料から差し引いて市町村に支払う「特別徴収」をしている企業もあるでしょう。

外国人の退職の際には、住民税の納付忘れを防ぐために、以下の手段を選択します。

  1. 残りの住民税(特別徴収税額)の一括徴収
    給与や退職金から残りの住民税を差し引いて一括で徴収する
  2. 納税管理人の選任
    住民税の納付が難しい場合、納税管理人(本人の代理で納税の手続きをする人)を定める

住民税の納税通知書は、6月頃に届きます。そのため1~5月に出国する場合には、事前に納税管理人を選んでおくか、予納(通知前に納税する)の手続きが必要です。前年の所得と住民税の納付額をチェックして、事前に手続きをしましょう。
※参考:外国人の方の個人住民税について|総務省

2-6. 貸与品を回収する

貸与品とは、企業から従業員に貸し出した物品のことです。パソコンや携帯電話などの通信機器や、社員証や名刺などの身分証明書や、制服や事務用品などが該当します。

企業は貸与品を回収し、返却漏れがないかをチェックしましょう。貸与品リストを作成しておくと、回収がスムーズになります。退職日までに回収しておくと、その後の連絡をして回収するよりも負担軽減できるでしょう。

3. 退職する外国人本人が行う手続きとは

外国人社員が退職するときには、本人もいくつかの手続きを行わなければなりません。特に、在留資格や在留カードに関する手続きは重要です。届出を怠ると不法滞在になり、罰金や強制退去などの処分を受ける可能性があります。ここでは、退職する外国人本人が行う手続きについてチェックしておきましょう。

3-1. 契約期間に関する届出をする

契約期間に関する届け出

※引用:契約期間に関する届出|出入国在留管理庁

退職する外国人本人がまず行うべき手続きは、「契約期間に関する届出」です。これは、技術・人文知識・国際業務や技能などの就労ビザを持つ外国人が、契約機関(雇用主)との契約が終了したときに、入国管理局に届け出るものです。

退職日から14日以内に、窓口・インターネット・郵送のいずれかによって届け出ましょう。この届出を怠ると、20万円以下の罰金になる可能性があります。

【手続きの対象者】

  • 高度専門職1号イ又はロ、高度専門職2号(イ又はロ)※例:大学教授・研究者・技術者・経営者
  • 研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行(所属機関との契約に基づいて活動に従事する者に限る)
  • 技能又は特定技能の在留資格を有する中長期在留者

※参考:所属(契約)機関に関する届出(高度専門職1号イ又はロ、高度専門職2号(イ又はロ)、研究、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能)
※参考:高度外国人材の受入れに係る「新たな制度」の創設について

3-2. 入国管理局で在留資格の変更をする

在留資格変更許可申請書

※引用:在留資格変更許可申請書|出入国在留管理庁

退職する外国人は、入国管理局で在留資格を変更しなければなりません。就労ビザは、日本で働くためのビザです。そのため無職になると、在留資格が取り消されてしまう可能性が高いでしょう。

日本に引き続き在留する場合、就労ビザから「短期滞在」や「特定活動」などに変更できるか条件や必要書類をチェックしてみてください。

もし変更申請をしない場合は、在留期間が満了するまでに日本から出国します。不法滞在になると、強制退去や再入国禁止などの処分を受けるため注意しましょう。

4. 外国人退職の際の注意するべき点とは

外国人社員が退職するときには、企業側と本人側の両方に注意するべき点があります。ここでは、企業側と本人側のそれぞれの注意点について確認しましょう。

4-1. 企業側の注意点

外国人社員が退職するときには、企業側は以下の4つの点に注意しなければなりません。

  • 届出の期限の厳守・正確に手続きを行う
  •  外国人が帰国する場合は年末調整を行う
  •  退職証明書に退職者が請求しない項目は記入しない
  •  特定技能外国人が帰国する場合は送迎を行う

それでは、具体的な内容について解説します。

届出の期限の厳守・正確に手続きを行う

外国人社員が退職するときには、ハローワークや入国管理局などに届出を行う必要があります。これらの届出は、期限内に正確に行わなければなりません。届出を怠ったり、不正確な情報を提供したりすると、罰金や処分を受ける可能性があります。届出の方法や必要書類は、各機関のホームページや窓口で確認しましょう。

外国人が帰国する場合は年末調整行う

外国人社員が退職して帰国する場合は、年末調整が必要です。帰国のタイミングに合わせて、通常12月末までにする年末調整を早めに進めましょう。

【1月~11月に退職して帰国する場合】
退職時に年末調整を行います。退職月の給与から、1月から退職月までの所得税と住民税の差額を調整します。源泉徴収票と併せて、年末調整の結果を記載した「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を交付します。

【12月に退職して帰国する場合】 翌年1月に年末調整を行います。12月分の給与から、1月から12月までの所得税と住民税の差額を調整します。翌年1月10日までに、源泉徴収票と併せて「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を交付します。

年末調整をするためには、以下の書類が必要です。

 
 【外国人(本人)から回収する書類】

  •  扶養控除等(異動)申告書
  • 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得⾦額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書


    【企業が税務署に提出する書類】
  •  支払調書
  •  源泉徴収票
  • 法定調書合計表


    【企業が市区町村に提出する書類】
  • 給与支払報告書(総括表)
  • 給与支払報告書(個人別明細書)

外国人の年末調整では、以下の点に注意する必要があります。

【社会保険料の控除】
自国の社会保険料を支払っている場合、日本の控除は受けられない

【扶養控除】
母国に扶養家族がいる場合、「親族関係書類」と「送金関係書類」が必要になる

【租税条約による特例】
2国間で締結される租税条約により「住民税」「所得税」が免除されるケースがあるため、対象となる場合は届出書を提出する

※参考:社会保険料控除|国税庁
※参考:国外居住親族に係る扶養控除等の適用について|国税庁
※参考:租税条約に関する届出書の提出(源泉徴収関係)|国税庁

退職証明書に退職者が請求しない項目は空欄にする

退職証明書には、退職者が請求した項目だけを記入することが原則です。退職者が請求しない項目を記入すると、労働基準法に反することになります(労働基準法第22条第3項)。もし退職者が退職理由を記入しないことを希望した場合は、退職理由を空欄にしましょう。特に、退職理由や評価などの主観的な内容は記入しないか、事実に基づいて記入することが重要です。

※参考:労働基準法|厚生労働省

特定技能外国人が帰国する場合は送迎を行う

特定技能外国人とは、特定の分野で必要な技能を持つ外国人です。特定技能外国人が退職して帰国する場合は、雇用主は送迎をサポートする必要があります。例えば空港までの交通費や宿泊費などを負担しなければなりません。

※参考:特定技能外国人受入れに関する運用要領|法務省

ケースに合わせて対応する

退職後に引き続き日本で働くのか、それとも帰国するのかによって、必要な手続きや対応が異なります。以下で、該当する項目をチェックしてみてください。

【退職後に転職する】

同じ在留資格で働ける外国人更新手続きをすれば、所有している在留ビザでそのまま働ける
在留資格の変更が必要な外国人●新しい就労先で以前の在留資格が認められない場合、変更の手続きが必要
●在留資格の範囲を確認するには「就労資格証明書交付申請」をする
特定技能の在留資格を持つ外国人出入国在留管理庁の「受入れ困難に係る届出書」と「特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出」の届出が必要

【退職後に帰国する】

●在留期限までに出国する場合、ビザの変更手続きは不要
●帰国に向けて「銀行口座の解約」「家賃の支払い・賃貸契約の解約」「水道光熱費・通信費の支払い・解約」「税金の支払い」など、各種手続きや支払いに滞りがないか確認する

【退職後に働かず在留する】

このようなケースでは、状況や滞在目的に応じてビザの変更手続きが必要です。
●すぐに出国できない場合、「短期滞在ビザ」への変更を検討する
●大学や専門学校に進学する場合、「留学ビザ」に変更する
●日本人と結婚する場合、「日本人の配偶者等ビザ」への変更を検討する

※参考:就労資格証明書交付申請
※参考:受入れ困難に係る届出
※参考:特定技能所属機関による特定技能雇用契約に係る届出

4-2. 外国人側の注意点

外国人が日本で働く場合、就労ビザが必要です。しかし、退職すると就労ビザは失効します。そのため、外国人は退職後に再就職するか、ビザの種類を変更するか、日本を離れるかのいずれかを選ばなければなりません。ここでは、外国人が退職後に再就職する場合の注意点を紹介します。

退職後3か月以内に再就職する必要がある

雇用契約が終了すれば、外国人の就労資格も失効します。そのため、外国人は3か月以内に再就職しなければなりません。
就労資格はビザとセットで発行されますが、有効期限が異なるため注意しましょう。ビザは最長5年間有効ですが、就労資格は雇用契約期間に応じて変わります。

もし3か月以内に再就職できなかった場合は、別の在留資格(例えば留学や家族滞在)に変更するか、帰国しなければなりません。

無職期間にアルバイトをしてはいけない

外国人によっては、再就職できるまでアルバイトをしようと思うかもしれません。しかし、退職後のアルバイトは原則禁止されています。なぜなら取得している就労ビザと関係のない労働は、資格外活動にあたるからです。無断で資格外活動をした場合、違法行為として罰金や強制送還を受けることになりかねません。

ただし「会社都合」で退職となった場合、生計を立てるために出入国在留管理庁から許可が下りるケースもあります。資格外活動許可申請には、会社都合で退職したことの説明や証拠となる書類の提出が求められるでしょう。

5. 退職経験のある外国人を雇うときの注意点

日本で働く外国人のなかには、退職の経験を持つ人もいます。このような外国人を雇用する場合、企業側はどのような点に注意すべきでしょうか。ここでは、退職経験のある外国人を受け入れる企業の注意点について解説します。

「在留カード」の主な記載内容

※引用:「在留カード」及び「特別永住者証明書」の見方|法務省

退職経験のある外国人を雇用する場合は、残りの在留期間を確認しましょう。自社での採用が決まるまでに、時間がかかっている可能性があります。

在留期間を過ぎてしまうと、不法滞在になってしまうことを忘れてはなりません。早めに雇用を決めて、在留資格の更新手続きを進めておくと安心です。

6. まとめ

外国人の退職において、必要な手続き・届出を忘れないようにしましょう。また意図せず不法滞在をしてしまわないように、退職後に向けてのサポートも必要不可欠です。在留資格に関する手続きや書類への記入は、外国人にとって難しいと感じるでしょう。

もし退職した外国人が在留期限を過ぎたり、許可なく資格外活動をしたりすると、過去に雇用していた企業側のイメージダウンになる可能性もあります。なぜなら出入国在留管理庁から「外国人の受け入れ体制が整っていない」と、評価されるかもしれないからです。

再就職する予定なのか、帰国する予定なのか、退職後の動きにも考慮しつつ必要な手続きをサポートしてあげましょう。

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