外国人労働者の労災が発生した際に企業が行うべき対応とは!

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

外国人労働者の受け入れが増える中、労災による死傷者数も増加しています。労災保険は外国人労働者にも適用されるため、どのようなサポートが必要なのかチェックしておくと安心です。労災保険の給付を受けるには、いくつか手続きも必要で申請忘れに注意しなければなりません。

本記事では、労災の対象になる事故や病気、受けられる給付の種類、必要な手続きをまとめました。また国内における労災発生状況や事例についても紹介しています。労災によるトラブルを防ぐために、ぜひ最後まで読んでみてください。
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目次

1. 外国人労働者も対象!労災保険の概要とは

労災保険とは、従業員が仕事中や通勤中に怪我や病気になったときに、治療費や生活費などを支払ってくれる制度です。雇用主が加入する強制保険で、従業員は自動的に対象になります。ここでは、労災保険の対象になる外国人労働者について解説します。

1-1. 労災の対象になる事故・病気

労災の対象になる事故は、大きく分けて以下の3種類です。

  1. 業務災害

    業務災害とは、仕事をしているときや、業務に関することをしているときに起こる事故です。例えば、工場で機械に挟まれたり、事務所で転んだり、取引先に行く途中で交通事故にあったりする場合などが該当します。

  2. 通勤災害

    通勤災害とは、自宅と職場の間で起こる事故のことです。例えば、自転車通勤中に転落したり、バスや車での通勤中に衝突事故に遭ったりする場合が該当します。ただし、通勤途中に私用で寄り道したり、いつもと違う経路を通ったりした場合は、通勤災害とは認められにくいと覚えておきましょう。
  3. 精神障害

    労働中もしくは通勤中に、精神的なダメージを受けて精神障害になったら労災として扱います。例えばパワハラやセクハラ、カスタマーハラスメント(顧客からの過剰な迷惑行為)による「うつ病」「適応障害」などが対象です。

1-2. 労災保険給付の種類

労災保険給付には、以下のような種類があります。

療養(補償)等給付【対象】
労災による怪我や病気の治療費  
【支給額の割合】
全額給付(入院費・治療費・看護料・移送費等)
【病院や薬局で治療を受けた場合】
直接、労災保険から支払われる  
休業(補償)等給付【対象】
労災によって仕事ができなくなったとき  
【支給額の割合】
・支給額は平均賃金の6割程
・度休んだ日数に応じて一定金額を給付
・休業補償は休業4日目から支給
障害(補償)等給付【対象】
労災によって身体に障害が残ったとき  
【支給額の割合】
・障害の程度に応じて一時金や年金を支給
・障害の程度が高いほど、支給額は多くなる  
【障害の程度】
障害等級1級~14級まで
※障害等級8級~14級は「障害(補償)一時金」が支給される
遺族(補償)等給付【対象】
・労災によって死亡したとき
・配偶者や子どもなど、被保険者の扶養に入っていた人  
【支給額の割合】
・遺族に一時金や年金を給付
・遺族の人数や年齢に応じて決定
※参考:労災給付の種類|厚生労働省
 

1-3. 労働保険の対象になる外国人

労災保険の対象になる外国人は、日本で働くすべての外国人です。国籍や在留資格、労働時間などは関係ありません。

また特定技能外国人も、日本で働く外国人の一員として、労災保険の対象になります。特定技能外国人は、介護や飲食サービスなど、人手不足の14の分野で働ける在留資格です。

不法就労者も対象

労災保険の対象になる外国人は、不法就労者も含まれます。不法就労者とは、在留資格に違反して働いている外国人のことです。例えば、観光ビザで働いたり、在留資格の期限が切れた後に働いたりする場合などが該当します。

不法就労者は、法律に違反しているため罰則の対象になります。しかし、労災保険の対象からは除外されません。不法就労者も労災にあった場合は、労災保険給付を受けられます。

労災給付中の帰国は一部除外

労災保険給付を受けている外国人が、一時的に帰国する場合は、給付の支払いが一部停止される場合があります。例えば、休業補償や障害年金を受けている外国人が、治療のためではなく、私用で帰国する場合は、帰国期間中は給付が支払われません。

ただし帰国前に労働基準監督署に届け出をして、帰国の理由や期間を説明し、許可を得た場合は、給付の支払いが継続される場合があります。帰国の際は、必ず労働基準監督署に相談しましょう。

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2. 労災が起こった場合の企業の対応

労災が起こった場合、会社は従業員の救護や治療、報告や手続き、再発防止など、さまざまな対応を迅速かつ正確に行わなければなりません。会社の対応が不適切だと、従業員の健康や生活に影響を及ぼすだけでなく、会社にも刑事責任や民事責任、行政上の責任、社会的責任などのリスクが発生します。ここでは、労災が発生した場合に、企業が取るべき対応を確認しましょう。

2-1. 負傷した従業員を救護する

労災が発生したら、まずは負傷した従業員(被災者)を救護するのが最優先です。重大な事故であれば、救急車の出動要請や警察への通報、負傷者の家族への連絡をします。さらに二次災害の可能性がある場合には、他の従業員らをただちに安全な場所へ避難させましょう。また労働基準監督署への連絡も忘れずに対応します。

2-2. 労災指定病院で治療を受けさせる

負傷した従業員は、「労災指定病院」で治療を受ける必要があります。労災指定病院とは、労災保険の給付を受けるために、診断書や治療計画書などの書類を発行できる病院です。最寄りの労災指定病院は、労働基準監督署のホームページで検索できます。

※参考:療養(補償)等給付の請求手続|厚生労働省

2-3. 労災認定・脂肪や休業に必要な手続きをする

労災が発生した場合、会社は労災認定に必要な手続きをする義務があります。労災認定とは、労働基準監督署が事故や病気が労災に該当するかどうかを判断することです。労災認定に必要な手続きには、次の2つがあります。

  1. 労災保険給付の申請書を提出
  2. 労働者死傷病報告の提出

労災保険給付申請をサポートする

労災指定病院で治療を受ける際、病院に「療養補償給付」の申請書を提出しましょう。療養の給付請求書を提出して治療を受けると、治療費は労災保険から直接支払われます。そのため負傷者や会社は治療費を立て替える必要がありません。

労災により4日以上休業する場合は、休業補償が受けられます。受給するためには、労働基準監督署に「休業補償給付」を提出しましょう。ただし3日以内の休業は、企業が補償しなければなりません。上記のほかにも「障害補償」「遺族補償」があります。状況に応じて、外国人労働者が適切な補償を受けられるようにサポートしましょう。

※参考:労働災害が発生したとき|厚生労働省

労働者死傷病報告の提出をする

労働者死傷病報告

※出典:労働者死傷病報告

「労働者死傷病報告」とは、労災が発生したことを労働基準監督署に報告する書類です。労働者死傷病報告は、労災が発生したら速やかに提出しましょう。報告書には、次のような事項を記入します。

  • 休業見込期間・死亡日時
  • 傷病名
  • 傷病部位
  • 被災地の場所
  • 災害発生状況および原因
  • 略図

労働者死傷病報告は、労働基準監督署のホームページからダウンロードできます。労働者死傷病報告の提出を怠ると、50万円以下の罰金に処せられる可能性があるため注意してください。

※参考:労働者死傷病報告(休業4日以上)様式|厚生労働省

2-4. 原因を探り再発防止に努める

労働災害再発防止対策書

※出典:労働災害再発防止対策書の作成にあたって |中央労働基準監督署

労災が発生した場合、会社は労災の原因を分析し、再発防止策を策定して実施する義務があります。場合によっては、労働基準監督署から労災再発防止書の作成・提出をお願いされるかもしれません。この場合、労災再発防止書の様式は、その都度労働基準監督署から案内があります。

※参考:職場の安全サイト|厚生労働省

2-5. 外国人労働者に安全衛生教育を実施する

外国人労働者の労災を防ぐために「安全衛生教育」を実施しましょう。具体的な取り組みとして、以下の項目ができているかチェックしてみてください。

【安全衛生教育のチェック表】

安全衛生教育の取り組み

  • 作業手順を母国語(または外国人が理解できる言語)で説明する
  • 労働災害防止の指示・合図を理解させ、習得できている
  • 労働災害防止の標識・掲示物は図解等で分かりやすく示している
  • 業務に必要な免許の取得、技能講習の受講を適切に実施させている
  • 外国人労働者に健康診断・面接指導・心理検査を実施している
  • 産業医・衛生管理者による健康指導や健康相談をしている
  • 「労働安全衛生法」について周知している

参考:※外国人労働者を雇用する事業主のみなさまへ

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3. 外国人労働者の労働災害発生状況

外国人労働者の数は、近年増加の一途をたどっています。日本の労働力不足を補う重要な存在ですが、労働災害のリスクも高まっている状況です。ここでは、外国人労働者の労働災害発生状況を知り、労災防止対策の実施につなげましょう。

3-1. 外国人労働者の労災発生数

外国人労働者の労災による傷病者数(全産業)

※参考:平成31年/令和元年労働災害発生状況の分析等|厚生労働省

外国人労働者の労災発生数は、令和4年に4,808人になり、前年より231人(5%)増加しました。このうち死亡したのは15人です。労働者1,000人あたりの発生率は2.64で、全労働者の2.32を上回っています。

業種別では、製造業が2,466人(51%)と最も多く、次いで建設業が788人(16%)、商業が401人(8%)という結果です。在留資格別では、身分に基づく在留資格が2,131人(44%)と最も多く、次いで技能実習が1301人(27%)、専門的技術的分野の在留資格が879人(18%)となっています。

3-2. 外国人労働者の事故を型別で見たときの死傷者数割合

外国人労働者にかかる「事故の型別」の死傷者数割合(令和4年)は、以下のとおりです。

外国人労働者にかかる事故の型別の死傷者数割合

※出典:令和4年 外国人労働者の労働災害発生状況

グラフを見ると事故の型別の割合は、上位から「はさまれ・巻き込まれ」が22%、「転倒」が14%、動作の反動・無理な動作が11%だと分かります。外国人労働者への安全衛生教育を実施する際には、これら上位の事故防止対策を特に徹底しましょう。

3-3. 外国人労働者の事故事例

外国人労働者の事故事例を紹介します。事故の状況や原因、防止策などを参考にして、自社でも同様の事故が起きないようにしましょう。

「外国人労働者がエタノールによる洗浄作業中に、ストーブの火が引火して全身重度熱傷で死亡した」

状況家畜舎で消毒液の噴霧作業をしていたところ、開始から5分後、体調に異変を感じた。 そのまま約30分作業を継続したが体調の回復がみられず、病院に搬送され入院する事態になった。
事故の原因  ・換気を怠っていた
・保護具が適切なものではなかった
・消毒剤を高濃度で希釈して多量の塩素が発生していた
防止策・消毒剤の噴霧作業では換気装置を使用する
・防毒マスクを着用する
・安全データシートの周知と、リスクアセスメントを実施する
※参考:職場の安全サイト|厚生労働省

4. 会社が率先して外国人の労災申請をサポートする

労災保険の申請は、基本的に労働者が自らします。しかし外国人労働者は、言葉や文化の壁があり、本人による申請が難しいでしょう。そのため会社が率先して、外国人の労災申請をサポートする必要があります。外国人労働者の権利を守り、安心して働ける環境をつくりましょう。

また厚生労働省のホームページでは、外国人労働者向け労災保険給付パンフレットを公開しています。複数の言語に対応した資料があるので、ダウンロードして外国人労働者に配布するとよいでしょう。

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5. 外国人の労災に関するよくある質問

労災保険の申請手続きは、外国人自らしますか?

労災の申請手続きは、原則として、外国人が自らします。しかし日本語が不得意な場合や、労災により重度の障害がある場合など、自ら手続きができないケースもあるでしょう。外国人労働者の労災保険申請は、会社が積極的にサポートする必要があります。

母国で発病した可能性があっても労災の対象ですか?

労災保険は、業務や通勤が原因で病気・ケガになったときに給付を受けられます。業務との関連がなく、母国で発病している場合、労災保険の対象になるとは考えにくいでしょう。もし出張で母国を訪れて病気やケガになった場合、労災保険給付の対象になる可能性があります。詳しくは、厚生労働省の「労災保険相談ダイヤル」に相談してみましょう。

外国人は健康保険も加入しますか?

外国人は、日本に住所がある場合や、一定の在留資格を持つ場合は、健康保険に加入する必要があります。また職場の健康保険には、正社員や一定の条件を満たすアルバイト・パートタイム労働者を加入させなければなりません。

※参考:外国人従業員を雇用したときの手続き|日本年金機構
※参考:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内|日本年金機構

6. まとめ

外国人労働者が業務中・通勤中に病気やケガをしたら、救護をしたあと適切な手続きをしましょう。労災保険の給付対象なら、会社からも申請手続きを積極的にサポートしてあげることが大切です。

外国人労働者の労災は、決して少なくありません。まだ労災が起きていない会社でも、よくある事例や労災の発生状況を確認し、万が一に備えておきましょう。

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