特定技能の外国人ドライバー採用とリスク管理|求人から勤務開始後まで

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門
監修者:竹村(JapanJobSchool講師兼就職支援室マネージャー)
金子(株式会社JJS 外国人採用コンサルタント)
深刻なドライバー不足の解決策として注目される、特定技能「自動車運送業」の外国人採用。しかし、未知の領域だからこそ、採用へと踏み切るには多くの疑問や不安がつきまといます。
この記事では、実際の紹介・商談現場で上がったインタビューをもとに、運送会社が抱くリアルな不安とリスク管理の方法について解説しました。 採用のミスマッチを防ぐための求人票作成のコツから、入社前後の複雑な手続き、勤務開始後のトラブル防止策まで、分かりやすくまとめています。あなたの会社の不安を「安心」に変えるヒントとして、お役立てください。

自動車運送業での採用方法を、図解で分かりやすく解説しています。
初めて外国人採用する企業さまにピッタリな一冊です。
1. 外国人ドライバー採用のリスク【社内インタビュー】
外国人ドライバーの採用は「前例がなくて不安」「自社でリスクを背負いきれるだろうか」と、二の足を踏んでいる経営者・採用担当の方も少なくありません。
実際、運送業界の外国人採用に対するガードの固さは、全産業の中でもトップクラスだといえます。今回、採用現場での実態を把握するために、企業様と直接やり取りする社内の営業担当にインタビューしました。リアルな現場の声をもとに、解説します。
1-1. 重大な交通事故・トラブル発生への不安 (ひき逃げ事件の影響)
外国人ドライバーの採用で、大きな不安として語られるのが「交通事故のリスク」です。
架電現場の生の声によると、業界内では「2025年10月に、特定技能を持つミャンマー国籍のドライバーが起こしたひき逃げ死亡事件」の噂が広く知れ渡っています。事件の影響により「外国人は事故を起こしたら逃げる」というイメージが強くなり、採用を保留にする会社も。
出典:自転車女性がトラック巻き込まれ死亡、ミャンマー国籍の運転手逮捕 事故後も引きずりか 大阪|産経新聞
しかし事件という「点」だけを見て、判断するのは大きな損失です。「言葉が通じない」「事故後の日本の正しい対応(救護義務や警察への通報)を教え込まれていない」という教育不足がリスクを大きくしているからです。
徹底して教育できる体制があれば、最悪のトラブルは未然に防げます。「入社前・入社後」に、運転技術の基準や、道路交通法・事故後処理のルールの違いを外国人ドライバーにしっかり覚えてもらいましょう。
事故やトラブルを防ぐ具体的な対策は、企業の運行ルールに合わせて構築していくものです。「知らないから怖い」という漠然とした不安で判断すると、今後、人材不足への対応が遅れるかもしれません。状況に合わせたリスク管理のもと、人材採用・教育を進めることが重要です。
1-2. 言語・文化の違いによる教育コストの増大
現場の運行管理者や配車係が「面倒くさそうだな」「手探りで不安だ」と感じているのが、日々の「教育・コミュニケーションコスト」です。
日本人ドライバーであれば、「言わなくてもこれくらい分かるだろう」「社会人なら報連相(ほうれんそう)ができて当たり前」という暗黙の了解(コモンセンス)が存在します。しかし、外国人スタッフには前提が一切通用しません。
竹村商談の現場では、「夜間に無人の倉庫へ物資を運び、鍵を開けて搬入・施錠をするような業務を、誰の目もない深夜に外国人に任せて本当に大丈夫なのか(セキュリティ面の懸念)」といった、鋭い質問も飛び交っています。
確かに、日本語の四技能(話す・聞く・書く・読む)のフォローや、高い運転基準、日本企業特有の「信頼関係」をいちから何度も根気強く指導・サポートするには、手間と時間がかかります。ただし「無駄な出費」か、「10年先を見据えた投資」と捉えるかで、運送会社の未来は180度変わるものです。



現在、日本人のドライバーを募集しても集まらず、採用できても数か月で離職されてしまうケースが後を絶ちません。
一方で、特定技能の外国人は転職しにくいビザなので、ひとつの企業に定着しやすいです。ビザの特性から「若くて、免許や資格取得に対して前向き」な外国人が多いという側面もあります。
教育のために初期コストがかかったとしても、「5年間フルで会社に貢献し、長期的に組織の成長を支えてくれるコア人材」へと変わります。目先のコミュニケーションの手間を惜しまず、定着性の高い人材を「育てる投資」という視点を持つことが重要です。
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2. 特定技能「自動車運送」とは
特定技能「自動車運送業」は、2024年4月に新しく追加された在留資格(ビザ)です。
これまで外国人がドライバーとして働くためには、ビザの要件が非常に厳しく、事実上不可能な状態でした。しかし、物流の「2024年問題」や少子高齢化によって日本の物流・交通インフラが危機に瀕しているなか、政府は大きな方針転換を決定。即戦力となる外国人材を正社員として雇用できるよう、特定技能の制度がスタートしました。
【対象となる業種】
- タクシー運送業
- バス運送業
- トラック運送業
【在留期間】
通算5年 ※特定技能2号に移行すると永続的に雇用できる
【取得が必要な試験】
①自動車運送業分野特定技能1号評価試験
②日本語能力試験
・N4以上(トラック)
・N3以上(タクシー、バス)
任せる業務内容に応じて、入国後、第一種運転免許(トラック)、第二種運転免許(タクシー、バス)などの資格も必要になります。
特定技能「自動車運送」で雇える業種、要件、試験など、詳しくは以下の記事をご覧ください。
▶特定技能「自動車運送業」とは?外国人をドライバーとして雇用可能!


3. 外国人ドライバー採用【求人票作成】
特定技能の外国人ドライバー採用を進めるときに重要なのが、「求人票の作成(どんな人に来てほしいかを明確にする作業)」です。
日本人を採用する場合以上に、入社後に任せたい「業務内容」と、求める「スキル」のバランスを整理しましょう。条件を厳しくしすぎると、応募者の母数は減ってしまいます。しかし曖昧にしたまま採用すると、現場の運行管理者や外国人本人の間で深刻なミスマッチが起きてしまうでしょう。
まずは経営者・採用担当・現場責任者は意見を交わして、「自分たちがどんな人を求めたらいいか」を洗い出してみてください。自社に最適な人材を採用するために、明確にすべき3つのポイントを解説します。
3-1. 日本語能力
制度上のルールとして、特定技能の自動車運送業では、職種ごとに必要な最低限の日本語レベルが以下のように定められています。
日本語能力に関して、高い条件を求めたくなるかもしれません。正直なところ、まずは受験資格(トラックN4、タクシー・バスN3)さえあれば良し、とするのがおすすめです。自動車運送業の特定技能はスタートしたばかりで、市場の応募者はまだ決して多くありません。
ここで他社と同じように日本語のハードルを上げすぎてしまうと、1人の応募者すら集まらないという本末転倒な事態に陥ってしまいます。今はあえて間口を広げることで、ライバル(他社)が気づいていない優秀な人材を「一歩先」に総取りして確保してしまう戦略が極めて有効です。
「日本語が最低限だと、現場でのトラブルや事故が怖い」という懸念は、人材教育と環境の整備で解消しましょう。入社後に「ルールの見える化(仕組み)によりリスク管理をする」というアプローチは、JJSからも導入のサポートが可能です。
▶特定技能外国人への義務的支援「日本語学習機会の提供」とは?


外国人の日本語レベルはどれくらい?
JLTP、N1、N2とは?
実際働いている、もしくはこれから働こうとしている外国人は
どのくらい日本語力があるのか、経験とともに解説します!
3-2. 運転免許の有無
応募者が「現在、どのような免許を持っているか」のステータスによって、入社から実車(現場配属)までの期間やコストが劇的に変わります。
| 日本の第一種・第二種運転免許を持っている | 研修後、最もスピーディーに即戦力として稼働できる採用市場での母数が非常に少なく、他社との激しい争奪戦になるため、狙って採用するのは極めて困難 |
| 母国の運転免許を持っている(おすすめ) | 日本への「外免切替」が必要一定のサポート期間は要するが、応募者の母数は格段に増える「母国での運転歴(トラック3年以上/タクシー1年以上)」があれば、日本の上位免許(中型や二種)の取得要件を満たせる |
| 運転免許を持っていない | 免許取得までに長期間を要する費用(合宿免許代など)や教育コストの会社負担が非常に大きい初めて外国人ドライバーを採用する企業にとってはハードルが高い |
注目ポイント|母国での運転歴
外国人ドライバーを採用する際、求人票の作成で注目したいポイントが「母国での運転歴」です。
外国人が母国の運転免許をそのまま使えるわけではありません。まずは、日本の免許への切り替え(外免切替)が必要です。
しかし、ステップアップしてトラック用の中型免許や、タクシー・バス用の二種免許を取得する際、母国の運転歴が役立ちます。「普通免許を取ってから〇年経たないと受験できない」という日本の法律が定める経験の条件に、母国の運転歴が合算できるのです。
トラックやバスの場合、日本で中型免許を取得する条件(運転歴3年以上)に母国での運転経験が含められます。またタクシーやバスにおける日本の「特例教習(二種免許を短期間で取得できる)」の条件(運転歴1年以上)も同様に合算可能です。
初めて来日する方でも、入国・外免切替のあと「特定技能」ビザ取得までのリードタイムが圧倒的に短くなります。
▶外国人が日本で運転免許証を取得する3つの方法を紹介|外免切替についても詳しく解説
3-3. 勤務開始のタイミングと勤務時間
「いつから現場に立てるか」「就労可能期間」のスケジュール感のすり合わせも重要です。
特に外国人の場合、在留資格(ビザ)の申請・変更手続きや、「日本の免許取得・切り替え期間」が発生します。内定後、実際にドライバーとして現場に入るまで、数か月のタイムラグが生じるケースも少なくありません。
求人票を作成する段階で、以下も応募者や人材紹介会社に提示しておくと安心です。
- 「〇月には繁忙期を迎えるため、遅くとも〇月までには免許取得を終えて稼働してほしい」
- 「特定技能のメリットを活かし、5年間のフルタイム勤務で会社の中心メンバーに育ってほしい」
逆算した教育計画や受け入れ準備(宿舎の確保や運行管理者の体制整備)があれば、企業側も慌てることなくスムーズに採用活動を進めることができます。
4. 外国人ドライバー採用【入社前後】
自動車運送業では「ビザの手続き」と「日本の免許取得」が絡むため、入社事前の流れを把握しておきましょう。入社前後に企業と紹介・支援機関(JJSなど)が連携して行う、3つの重要ステップをまとめました。
4-1. 面接
事前の話し合いで作成した求人票(理想の人材像)をベースに面接をします。
JJSのような専門の紹介会社に委託する場合、スクリーニング(下調べ)の段階で、企業の要望に応じた「日本語レベル」や「免許の保有ステータス(外免切替が可能かなど)」をクリアした人材が推薦されます。
面接の場では、単にスキルを確認するだけでなく、自社の配送ルートや勤務形態、職場の雰囲気になじみそうかといった「人柄や働く意欲」をしっかり見極めることが大切です。ここで企業と応募者の合意が取れれば、内定(雇用契約の締結)へと進みます。


4-2. ビザ取得・運転免許取得
内定を出した後は、入社・稼働に向けた「ビザの手続き」と「日本の運転免許の取得」へと進みます。まず外国人が日本で働くためには、就労ビザを取得しなければなりません。
▶【行政書士が解説】就労ビザとは?全19種類や申請方法、必要書類などを解説!
ここで押さえておきたいのが、対象となる外国人が「すでに日本の運転免許を持っているか」「どこに住んでいるか」によって、ルートが異なるという点です。
| ①日本に在留し、日本の運転免許もある場合 | 「特定技能」へのビザ切り替え申請に進む |
| ②海外からの採用、または運転免許取得がない場合 | 一時的に「特定活動55号」ビザを活用する 運転免許を取得したら「特定技能」ビザに切り替える |
①日本に在留し、日本の運転免許もある場合
外国人ドライバーを雇用する場合、「特定技能」の在留資格で受け入れるのが一般的です。そのため出入国在留管理庁へ「特定技能」のビザ申請をします。申請結果が出るまでには、数か月の審査期間があります。
▶【完全版】特定技能のビザ申請の流れ・必要書類・費用を徹底解説
▶特定技能「自動車運送業」とは?外国人をドライバーとして雇用可能!(企業の要件・雇用までの全体の流れを詳しく解説)
②海外からの採用、または運転免許取得がない場合
トラック・バス・タクシーを運転するためには、日本の第一種・第二種免許や大型免許の取得(または外免切替)が必須です。では、海外から採用するケースや日本の運転免許を持っていない外国人は、どのように採用すればよいのか気になるでしょう。
運送業界のビザ申請において覚えておきたいのが、特定活動55号ビザの存在です。特定活動ビザを活用することで、先行して会社に入社させて日本の自動車教習所に通わせたり、社内研修をスタートさせたりすることが可能です。
【特定活動55号で在留できる期間】 ※更新不可
・バス運転者区分…最長1年まで
・タクシー運転者区分…最長1年まで
・トラック運転者区分…最長6か月まで
特定活動ビザについては、以下で解説しています。
▶【全46種類】在留資格「特定活動」とは?指定書の確認方法、申請書類までわかりやすく解説!
経験豊富なJapan Job Schoolが
複雑な運転免許関連のビザ切替もサポートします!
4-3. 支援義務


特定技能の外国人を雇用する場合、企業には法律で定められた義務的支援が存在します。生活のための住居(社宅)の手配支援や、銀行口座の開設、役所での手続きの同行、さらには定期面談などが含まれます。
インタビューにもあったとおり、現場の運行管理者や配車係が最も懸念しているのは「日々の教育やコミュニケーションにかかるコスト(手間)」です。また定期面談で仕事・生活に対する悩みのケアをすることで、外国人スタッフの「孤立防止」になります。
しかし業務を教えるだけでも大変ななかで、プライベートの生活支援まで自社だけで抱え込むと、現場がパンクしてしまいます。
特定技能の外国人採用においては、支援義務をJJSのような「登録支援機関」に一括して委託するのが一般的です。現場の負担を最小限に抑えつつ、「この会社で長く頑張りたい」と思える安心の受け入れ体制を整えることが、結果として高い定着率へとつながります。
▶特定技能「義務的支援」の内容10項目|登録支援機関への委託は必要?
5. 外国人ドライバー採用【勤務開始後】
現場のリーダー(運行管理者や配車係)がもっとも不安視するのは「日々の意思疎通」や「万が一の事故リスク」ではないでしょうか。
リスクや不安を放置してしまうと、早期離職や予期せぬトラブルを招きかねません。リスク管理として、勤務開始後の「仕組み化」を徹底しましょう。ここでは、現場の負担を減らし、外国人ドライバーが安全に活躍するための2つのポイントを解説します。
5-1. コミュニケーションの工夫
運送の現場では、毎日の点呼や日報の作成、配車指示など、正確なコミュニケーションが欠かせません。コミュニケーション不足による誤解を防ぐためには、「視覚的・具体的な工夫」が役立ちます。
| 指示の「見える化」と一貫性 | ・配送先や注意点を書いたメモを渡す翻訳アプリを活用してテキスト(文字)で残す ・口頭だけで「いつものルートでよろしく」と伝えるのは控える |
| 日報やマニュアルの簡略化 | ・『運行状況』や『トラブル内容』などのテキスト入力を定型化し、選択式で選べる仕様にする ・スマートフォンの音声入力を導入する ・文字だけのマニュアルを動画や写真付きのものに変え、非言語でも伝わるようにする |
日報やマニュアルの簡略化は、書く側も確認する側も大幅に手間を減らせます。
またセキュリティ面の懸念も、仕組みの工夫で解消できます。例えば誰の目もない深夜に倉庫の施錠をする場合には「チェックリスト」の活用と報告がおすすめです。特に最初のうちは、慣れるまでスマホの写真機能で「施錠した状態」を運行管理者に報告させたりするルールを作るとよいでしょう。
「外国人だから信用できない」と決めつけるのではなく、「迷わせないためのルール」を明確に共有します。日頃から信頼関係を築いておくことで、深夜帯の業務も安心して任せられるようになります。
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5-2. 事故やトラブルを未然に防ぐ
日本の交通ルールを守る意識や、安全運転に対する技術は、世界的に見ても非常に高い水準です。そのため外国人にとっては「母国の常識が通用しない世界」。だからこそ、事故を未然に防ぐための「教育と仕組み」が企業の防衛策となります。
| 「日本式の安全運転」の徹底教育 | 日本の道路における「一時停止」「歩行者優先」の絶対的なルールや、死角の確認方法などを、入社時の研修期間で繰り返し体で覚えてもらう |
| 事故後の「正しい対応」を叩き込む | 万が一、事故やトラブルが起きてしまった時に「パニックになって逃げる」という最悪の事態を防ぐため、「車を止める→負傷者を救護する→すぐに警察と会社に電話する」という一連の流れを、母国語のマニュアルやロールプレイングで徹底的に教える |
事故やトラブルを防ぐ具体的な対策は、企業の配送ルートや扱う荷物、現場の体制によって千差万別です。だからこそ、自社だけで悩む必要はありません。
JJSでは、企業の運行ルールや現場の懸念に合わせ、「どのような受け入れ体制を作れば事故を防げるか」「言葉の壁をどう乗り越えるか」を、導入時から勤務開始後まで一貫して一緒に考え、 伴走サポートを行っています。「知らないから怖い」状態から、「これなら安心だ」と言える現場づくりへ、ともに進めていきましょう。
6. まとめ
外国人による交通事故のニュースから「採用するのは怖い」と、不安を抱きがちです。しかし実態は「日本のルールや文化を伝える教育体制」によって、リスク管理ができます。
むしろ特定技能ビザで採用すれば、若くて熱心な人材が5年間も働いてくれます。深刻な人手不足に悩む運送会社にとって、先を見据えた極めて価値のある投資になるでしょう。 事故を防ぐ受け入れ体制や現場のコミュニケーションの仕組みづくりは、企業の状況に合わせて解決していくものです。外国人ドライバーの採用に少しでも興味が湧いた、あるいは不安を払拭したいという方は、ぜひ一度JJS(ジャパンジョブスクール)にご相談ください。







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