ベトナム人を飲食業で採用する方法|メリット・注意点などを詳しく解説!
飲食業界は人手不足が目立っており、外国人労働者を積極的に採用する企業も珍しくありません。最近ではベトナム人が多く来日し、実際に働くケースも目立ちます。今後ベトナム人を採用する場合にどのような採用方法があるのか、とても気になるところです。
本記事では、ベトナム人を飲食業で採用する方法やベトナム人を採用するメリット、注意点について詳しく解説します。
ベトナム人を飲食業で採用しようとお考えの方はお気軽にご相談ください
1.飲食業でベトナム人を採用する方法
飲食業において実際にベトナム人を採用する場合、どのような方法があるのか、正社員雇用・アルバイト雇用それぞれのケースで在留資格別にまとめました。聞きなれない言葉もあるかと思いますがわかりやすく解説します。
1-1.正社員雇用の場合
正社員雇用の場合、以下の方法が考えられます。
特定技能
特定技能とは、人手不足が深刻化する業界の問題を解決するため、日本政府が2019年4月に導入した外国人労働者の受入れが目的の制度です。飲食業は特定技能「外食」に含まれ、飲食物の調理・接客業務を行うことができます。
また特定技能には1号と2号の2つあり、基本的に特定技能1号から取得し、その後2号に移行できます。それぞれの違いは下の図をご覧ください。
以前は特定技能2号に飲食業は含まれていませんでしたが、2023年6月に法が改正され特定技能2号でも外国人を雇うことができるようになりました。これにより永続的に外国人が日本で働くことが可能です。
特定技能を活用する場合、以下のポイントに注意が必要です。
- 在留期間の更新は4か月、6か月、1年
- 技能水準と日本語能力水準は試験などで確認する
外食業の技能水準は外食業特定技能1号技能測定試験で65%以上の点数を確保し、日本語能力水準は日本語基礎テストでA2以上もしくは日本語能力試験でN4以上をそれぞれクリアすることで合格し、出入国在留管理庁に申請を行えます。
試験に合格したベトナムにいるベトナム人を雇用するためには、いくつかの過程を経る必要があります。
- 特定技能雇用契約を結ぶ
- 1号特定技能外国人支援計画を策定する
- ガイダンスを行う
- 特定技能「外食業」の在留資格を申請する
- 交付された「在留資格認定証明書」を郵送する
- ベトナムでビザ申請を行う
上記のプロセスは登録支援機関に依頼することで大部分を受け持ってくれるため、積極的に活用するのがおすすめです。
また、この特定技能「外食」での採用方法はこちらの記事で詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。
特定技能に関してまとめた「特定技能まるわかり資料」のダウンロードはこちら
技術・人文知識・国際業務
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、人文科学に関する仕事や理系分野の技術・知識を持つ専門的な外国人などに与えられる資格です。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ外国人が飲食店で働く場合、ウエイトレスなど単純労働に該当する業務には就けません。
しかし、飲食店の管理業務に関して、技術・人文知識・国際業務ビザでも場合によっては就労が認められることがあります。就労の可能性があるケースは以下のとおりです。
- 店舗が大きい
- 店舗数が複数ある
- 業務の時間が一定時間以上ある
- 管理業務を行うためのデスクがある
管理業務を行っている客観的な証拠を多く揃えないと認めてもらえないので、入念な準備が求められます。
またこの「技術・人文知識・国際業務ビザ」で人手不足を解消することは難しいので、もし人手が欲しいのなら特定技能かのちにご説明する永住者やアルバイトの方を雇うことをお勧めします。
特定活動46号
特定活動46号は日本の大学を卒業し、日本語能力試験においてN1以上のスキルを持つことで得られる在留資格です。
先ほどご紹介した在留資格「技術・人文知識・国際業務」でこれまで認められなかった単純労働が、特定活動46号を取得すれば一部認められるのが大きなポイントです。
特定活動46号は2019年5月に新設された在留資格で、日本にやってきた留学生がそのまま日本で働けるように就職支援を行うことが新設の理由となります。
留学生にそのまま日本で働いてもらうため、「日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事する」ことが要件に入るなど、報酬などで日本人と同等以上の扱いで受け入れることが求められます。(※)
定住者、永住者、日本人の配偶者、永住者の配偶者等
ベトナム人を雇用する場合に一番現実的なのが「定住者」や「永住者」、「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」の在留資格を持っているケースです。
それぞれ在留期間こそ異なりますが、上記の在留資格は就労制限がなく、自由に仕事が行えます。また手続きも日本人とほとんど同じなので雇いやすいです。
技能
在留資格「技能」は、母国で技術を磨き、熟練のスキルを得た人物に認められます。飲食業の場合、中華料理やイタリア料理、フランス料理など異国の地で長年腕を磨いてきた料理人が該当します。
あくまでも料理人として認めたから在留資格が与えられたため、レジ打ちなどの単純労働だけに従事させることはできません。
1-2.アルバイト雇用の場合
次にアルバイト雇用の場合は以下のパターンがあります。
留学
日本の大学などに留学に来た外国人は在留資格「留学」を手にします。
本来は学業に専念してもらわないといけませんが、「資格外活動許可」を行うことで、週28時間以内、長期休暇の時期は1日8時間以内であれば就労可能です。手続きも簡単な点がメリットです。
家族滞在
既に技術・人文知識・国際業務などの在留資格を得ている就労者の配偶者や子どもなどに与えられる在留資格です。
就労者によって扶養されているかどうかがポイントとなり、就労者なしでは経済的に自立できないとみなされれば資格が認められます。
家族滞在ビザで就労をする場合、留学生同様「資格外活動許可」が必要で、許可が出れば留学生と同じく週28時間以内の就労が可能です。
ちなみにバイト先をコロコロと変えても、バイト先が変わる度に許可申請をせずに済む許可を「包括許可」、バイト先など雇用先を明確に定めることで得られる許可を「個別許可」と言います。
いずれも就労時間の上限に違いはなく、週28時間までです。
特定活動
現在決められた在留資格の中で何1つ該当しない活動を行う外国人に与えられるのが在留資格「特定活動」です。
例えば、何らかの理由で母国に戻れない外国人が緊急的に日本に在留する場合に与えられます。また「特定研究活動」や「特定情報処理活動」、「特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動」も特定活動に含まれます。
就労できるかどうかは「指定書」に記載された内容次第です。指定書に書かれた内容によって許可が出されるため、指定書にない活動は超えないようになっています。
定住者・永住者・日本人の配偶者・永住者の配偶者等
定住者・永住者・日本人の配偶者・永住者の配偶者等に関しては正社員雇用と同じく、原則として自由に就労が行えます。
ベトナム人をはじめ、外国人をアルバイトで雇用する方法はこちらの記事でも詳しく解説しておりますのでぜひご覧ください。
2.採用する際の注意点
ベトナム人を採用する場合には大きく分けて3つの注意点に気をつけましょう。採用する際の注意点を以下にまとめました。
2-1.在留カードの確認
在留資格を得た外国人は肌身離さず持っておく必要がある在留カードには、様々な情報が記載されています。重要なことが書かれているため、在留カードの確認は必須であり、確認を怠ると場合によっては「不法就労助長罪」で告発されることもあり得るので注意です。
さらに在留カードの確認に関してどのポイントを見ればいいのか、掘り下げます。
従事可能な在留資格かどうかの確認
例えば、ベトナム人労働者に単純労働をしてもらいたい場合に、ベトナム人労働者が保有する在留資格で単純労働はできるのかどうか、在留カードで確認を行います。
技術・人文知識・国際業務ビザでは単純労働が認められていないように、ベトナム人労働者が有する在留資格で自分たちが求める仕事がこなせるのか、確認をしないといけません。
就労制限・スタンプの有無
在留カードの表には「就労制限の有無」という項目があります。就労不可と書かれていれば就労はできませんが、裏面に「資格外活動許可欄」があり、許可欄に許可と書かれていれば原則週28時間以内の労働が可能です。
在留期間の更新を申請している最中だと在留カードの裏に「在留期間更新申請中」というスタンプが押されます。在留期間更新申請中のスタンプがあることで本来ビザの期限が切れる期日を迎えても最大2か月間は在留が認められるのです。
在留期限
在留カードの表面に「在留期限(満了日)」と書かれた場所があります。もし在留カードの期限切れが発覚した場合、期限切れの在留カードを持っていた外国人は不法滞在者という扱いです。
万が一確認を怠って働かせてしまったら、企業側は不法就労助長罪が適用される可能性が考えられます。
偽造の確認
本当は在留期限が切れているので何かしらの細工を施して在留カードを偽造するケースがあります。本来偽造カードには偽造防止の対策がいくつも行われているため、正しく確認をすれば偽造を簡単に見破れます。
また在留カードに埋め込まれたICチップを読み取ることでも偽造を見破ることは可能です。そして、「在留カード等番号失効情報照会」という出入国在留管理庁のページで番号の検索を行うと、失効しているかどうかがわかります。
在留カードに関してはこちらの記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
2-2.就労可能時間の確認
資格外活動許可で就労を行う留学生などは原則週28時間以内の中で就労しなければならず、企業側は就労可能時間の確認を行う必要があります。
留学生によっては複数のバイト先で就労しているケースがあり、トータルで週28時間以内でなければなりません。仮に複数のバイト先で就労している留学生などがいたら、他のバイト先では何時間働いているのか、必ずチェックをしましょう。
2-3.日本語能力にムラがある
ベトナム人労働者によっては、日本語能力にムラがあるケースがあります。
例えば、日本語能力試験においてN4以上であることが特定技能1号取得に欠かせませんが、N4のレベルは「基本的日本語を理解することができる」というレベルで、聞く部分は「日常的場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる」という水準です。(※)
飲食店、特に多くの人が訪れるタイミングではややゆっくり話をされる状況にはなりにくく、時にコミュニケーションが取りづらくなる場合が想定されます。
何事も真面目に取り組むことが多いベトナム人に対し、日本語の教育を行うほか、最初のうちはサポートに入るなどの対策が求められます。
外国人がどのくらい日本語力があるか知りたい方はこちらの資料をダウンロードください
3.ベトナム人が日本で働く理由とは
厚生労働省によると、2022年10月末時点で外国人労働者は1,822,725人と言われています。外国人労働者のうち、ベトナム人は全体の25.4%の462,384人と、385,848人の中国を上回り、第1位という結果。(※)
※:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)
なぜベトナム人の多くが日本で働く理由は以下の通りです。
3-1.家族に仕送りをするため
日本にやってくるベトナム人は出稼ぎのために来日し、日本で稼いだお金をベトナムに住む家族に仕送りをしているケースが目立ちます。いわば一家の大黒柱になっており、家計を支えるために日本で働いているのです。
特に技能実習制度を使って来日するベトナム人が多く、コロナ禍で技能実習制度を使って来日するベトナム人を減らしたとはいえ、2021年に在留資格「技能実習1号」で新規入国した外国人22,117人のうち、ベトナム人は74.4%にあたる16,450人を占めています。(※)
※:出入国在留管理庁「第1部 出入国在留管理をめぐる近年の状況」p9より
ベトナム人はモチベーションが高い状態で来日し、ベトナムに住む家族への送金が大きな要因なので、勤勉に取り組むことが予想されるのです。
3-2.日本に対していい印象を持っている
1973年に日本はベトナムと外交関係を樹立、2023年は外交関係樹立50周年という節目のタイミングです。日越外交関係樹立50周年記念特設サイトでは、日本の名だたる有名企業がパートナー企業として参加するなど、関係性は良好と言えます。
外務省が行った令和3年度ASEANにおける対日世論調査の「あなたの国の友邦として、今日の日本は信頼できると思いますか。」という設問で、「とても信頼できる」、「どちらかというと信頼できる」と応えた割合は95%もありました(※)
※外務省「令和3年度海外における対日世論調査ASEAN結果詳細p8より」
また、「とても信頼できる」と答えた割合が68%と高い数字を残しており、日本に対していい印象を持っていることは明らかです。
3-3.訪日のハードルが低い
ベトナムでは、海外で働く労働者からの送金に頼っている部分があり、世界銀行のデータによると、2019年において166億7,900万ドル、およそ2兆円ほどを受け取っています。海外で働く労働者からの送金は2019年のGDPにおいて6.4%を占めており、諸外国と比べても高い数値です。(※)
フィリピンのように労働力を輸出し、海外からの送金を軸とする政策を行う国は日本に限らず、海外への出稼ぎに対して積極的に対策を立て、結果としてハードルを下げています。
ベトナムは若者の失業率が高く、特に都市部になると失業率がさらに高くなるのが実情です。若者の失業率を下げるため、若者を中心に国策として労働力の輸出に力を入れ、ベトナム国内ではなく海外で出稼ぎをして国に貢献してほしい思惑もあり、結果的に訪日のハードルの低さにつながっています。
4.ベトナム人を採用するメリット
本国への送金などを目的に、信頼できる日本にやってきたベトナム人労働者。来日してきたベトナム人労働者を採用するメリットとは何か、メリットを以下にまとめました。
4-1.若い人材が多い
先ほどもご紹介した通り、ベトナムでは若者の失業率が高く、2021年1月から9月までのデータによると、15歳から24歳までの失業率はベトナム全体で7.9%、都市部に至っては10.79%とかなり高い数字です。(※)
※:公益財団法人国際労働財団「2021年ベトナムの労働事情」
ベトナムでは仕事が乏しいため、若者たちは海外への出稼ぎに活路を見出し、多くの若者が日本を訪れます。結果的に若い人材が集まりやすく、元々勤勉な性格の人が多いベトナム人が重宝されることになるのです。
4-2.日本人と馴染みやすい・無宗教
ASEAN各国は仏教やカトリック、イスラム教など明確な宗教を抱える国が多く、無宗教である日本において少し敬遠されやすい要素があります。一方で、ベトナムは国民が支持する明確な宗教がなく、日本と同じ無宗教とされています。
日本人も無宗教なので、宗教に対して特別なケアをすることなく接することができるのは雇用側からすれば気楽であり、煩わしさが軽減されます。
また日本人とベトナム人の性格は比較的似ており、何事も真面目に取り組むことも共通しています。ベトナム人は全体的に性格も明るく、日本でも馴染みやすいことから雇用してもプラスに働きやすいと言えるでしょう。
4-3.国内で採用しやすい
1番最初にご紹介したように、2022年10月末時点に日本で働く外国人のうち、4分の1がベトナム人です。多くのベトナム人が日本にいるということは、日本国内において採用しやすいことが言えます。
新しくベトナムにいる若者を採用しなくても、日本国内にいるベトナム人と面接を行い、話を聞く中で採用の判断ができます。また在留資格「留学」で来日しているベトナム人も多く、採用までのハードルがさほど高くないこともメリットの1つと言えるでしょう。
4-4.仕事に対して真面目
何事も真面目に取り組むベトナム人は仕事に対しても真面目に取り組みます。ベトナム人の勤勉な姿勢は職場にいる日本人にもいい影響を与えることがあり、勤勉な姿勢が見られる点でもメリットが大きいと言えるでしょう。
またベトナム人は異国の地で順応しやすいとされ、日本におけるマナーを教わってもすぐに自分のものとし、マナーを守ろうとします。教えれば教えるほど真面目に取り組んでくれるのは、雇用側からすればとてもありがたい存在です。
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5.まとめ
飲食店に限らず、人手不足が慢性化しており、ベトナム人労働者を始めとする外国人労働者の採用が急務となっています。
できれば意欲が高く、真面目に取り組んでもらえる外国人労働者が望ましい中で、ベトナム人労働者はうってつけの存在です。
今回の記事を踏まえてベトナム人労働者を積極的に採用し、自社のサービスにおける人手不足の改善に役立てていきましょう。弊社では特定技能人材の採用などの無料相談も行っており、気になる方はぜひともお気軽にお問い合わせください。