外国人人材派遣とは?メリット・注意点について分かりやすく解説!
日本では少子高齢化の影響が色濃くなり、15歳から64歳までの生産年齢人口が減少の一途をたどっています。具体的に2050年には5,275万人まで減るとされており、2021年から3割ほど減る予測がされています。
労働人口が減り続けるのが確実な中、早い段階で外国人労働者を確保することが大切です。そこで注目を集めるのが外国人の人材派遣。
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1. 外国人人材派遣が対応可能な業種
最初にご紹介するのは外国人人材派遣で対応可能な業種についてです。様々なケースによって対応している業種、非対応の業種に分けられます。
1-1. 身分に基づく在留資格の場合
身分に基づく在留資格
- 永住者
- 永住者の配偶者等
- 定住者
- 日本人の配偶者等
上記4つの身分に基づく在留資格の場合、他の在留資格と違い、労働時間などの縛りがなく、自由に働けます。
一般的に在留資格は就労目的に応じて在留資格が決まっていくため、特定の分野でしか働けません。しかし、身分に基づく在留資格は就労がメインの在留資格ではないことから特に制限なく、分野に関係なく就労が行えます。
1-2. 技術・人文知識・国際業務の場合
在留資格「技術・人文知識・国際業務」の場合は、外国人労働者にやってもらう業種・職種、本国で外国人労働者が重ねてきた学歴や職歴に関連性があると判断されることで認められます。
例えば、システムエンジニアなどの技術職や通訳、翻訳、語学講師などの国際業務、ホワイトカラーに該当する営業や人事などが該当します。ただし、工場などで行う単純作業などは在留資格「技術・人文知識・国際業務」の対象外です。
1-3. 特定技能の場合:農業と漁業の2業種のみ
在留資格「特定技能」は14の業種を対象にしていますが、在留資格「特定技能」の雇用形態はフルタイムかつ直接雇用と決まっている関係で、人材派遣という形での雇用は原則認められていません。しかし、例外もあり、農業と漁業の2業種においては派遣での雇用が可能です。
農業と漁業に関しては、1年中仕事があるわけではなく、忙しい時期もあればそうでない時期もあります。人材に対する需要も時期によって大きく異なることから、需要に応じた雇用ができるよう、農業と漁業の分野では外国人労働者の人材派遣が認められています。
1-4. 留学生をアルバイトとして雇う場合
2022年5月時点における日本にいる外国人留学生は231,146人と、コロナ禍で若干減っているものの、23万人の留学生が日本に来て勉学に励んでいます。(※)
※:文部科学省「『外国人留学生在籍状況調査』及び『日本人の海外留学者数』等について」
本来、在留資格「留学」では就労が認められていませんが、事前に「資格外活動の許可」を得ることで就労が可能です。与えられた条件は「原則週28時間以内の労働」と、「風俗営業に該当する業種での労働を禁止すること」だけなので、風俗営業に該当する業種以外であれば、労働時間を順守すれば仕事ができます。
参考:日本学生支援機構「令和4年度外国人留学生在籍状況調査結果」を参考に作成
留学生の割合を上位5か国まで国籍別に見ると、中国が全体の5割以上を占めています。次いでベトナム、ネパールと続き、留学生が多い上位5か国全て「アジア圏」に該当することがわかります。
2. 外国人人材派遣のメリット
外国人の人材派遣を活用することで、人材の確保が行えるほか、まだまだメリットがあります。外国人人材派遣のメリットについてまとめました。
2-1. 外国人の試験的採用が可能
1つ目のメリットは外国人の試験的採用が可能になることです。人材派遣の形であればリスクを最小限にして外国人労働者を試すことができます。
外国人を採用するにあたって、外国人の日本語能力の問題や文化の違いなど、外国人を採用してから露呈する問題がいくつもあります。
正社員ではなく人材派遣の形にしておけば、仮に、想定していた日本語能力が低かった場合、外国人労働者の価値観が会社にそぐわなかった場合など、一定期間で契約を打ち切ることが可能です。もし正社員として採用する場合、採用のために様々な費用がかかりますが、派遣であれば派遣費用のみを支払えば良いのもメリットの1つと言えます。
もちろん正社員として採用する前に、外国人労働者が職場にいることで今いる社員たちがどのようなパフォーマンスを見せるのかを事前にチェックするために試験的に導入することもできます。ミスマッチになった場合にダメージを最小限に食い止めるのに、外国人の人材派遣は好都合と言えるでしょう。
2-2. ニーズにマッチした外国人人材を派遣してもらうことが出来る
2つ目は、ニーズにマッチした外国人材を派遣してもらえることです。ピンポイントに企業側が求めている人材を確保できることで、ミスマッチを防げます。
外国人を採用したい企業には様々な思惑、考えがあります。例えば、海外企業と取引をする際に現地の人とやり取りができる人が欲しい、外国人を相手にビジネスをすることが多く、特に中国人とのビジネスが多いので中国人労働者を確保したいなど、ニーズは様々です。
特に繁忙期と閑散期がある業種では、繁忙期だけ人材を確保したいケースや人手が足りなくなりやすい時間帯だけ仕事をしてくれる外国人を求めるケースも出てきます。派遣であれば柔軟な対応が行えるため、とても便利です。
外国人人材派遣では、企業が求めている人材を派遣してもらうことができるほか、既に教育が行き届いた外国人労働者が派遣されるため、企業側の負担が軽減されます。事前に打ち合わせを行い、派遣会社側が企業側のニーズを理解した上で最適な労働者を派遣してくれるので、ミスマッチを防げるのも魅力的です。
2-3. 外国人派遣会社が煩雑な書類手続きや労務管理を代行してくれる
3つ目は、派遣元の会社が書類の手続きや労務管理などを代行してくれることです。海外から外国人労働者を招く際、何かと煩雑な手続きを派遣会社が行ってくれるため、企業側の負担軽減につながります。
現地にいる外国人を採用して日本で働いてもらう場合、本来は企業側が様々な手続きなどをする必要があります。最初のうちは煩雑な書類の手続きにあたふたすることも多く、労務管理などもしなければならないので、企業側は大変です。
外国人の人材派遣サービスを活用することで煩雑な書類の手続きはしなくて済みますし、労務管理に関しても人材派遣会社が行います。例えば、外国人労働者が有給休暇をとりたい場合も派遣会社とのやり取りになるので、企業側に無駄な労力が発生する余地がありません。
また初めて外国人労働者に働いてもらう場合、外国人を迎え入れるノウハウが何もなくて何をすればいいかわからないと困っている企業もあるでしょう。派遣会社によっては初めての受け入れで不安を抱える企業のサポートを行うところがあります。派遣会社の熱心なサポートによって安心して受け入れられる点でも心強い存在と言えます。
3. 外国人人材派遣の注意点
ここまで外国人の人材派遣に関するメリットをご紹介しましたが、次にご紹介するのは外国人の人材派遣サービスを利用する際の注意点についてです。
3-1. 意思疎通がはかえれない可能性がある
派遣会社によっては事前に日本語教育を施すケースもありますが、企業側が求める日本語レベルに達していない状態で外国人労働者が派遣されることがあります。日本語レベルにギャップがあると意思疎通がスムーズにいかないため、伝えたいことが伝わらない、わかってもらいたいことがわかってもらえないなどの弊害が生じてしまいます。
仮に意思疎通がしっかりとできる外国人労働者を派遣してもらいたい場合には、既に日本で一定期間働いている外国人労働者や日本語能力試験や実用日本語検定、ビジネス日本語能力テストなどで一定以上の成績を残している人物に限定して派遣してもらうことがおすすめです。
例えば、日本語能力試験であれば、5段階の上から2番目であるN2レベル以上を、外国人採用において応募資格にするケースが見られます。既に一定レベルの日本語能力があると何らかの形で証明されていれば、少なくとも意思疎通で苦労する頻度は少なく、多少の教育・指導で改善できる可能性は高いでしょう。
3-2. 契約内容・派遣期間の確認
派遣先から労働者を派遣してもらう際には「労働者派遣契約」を結ぶことになります。例えば、1時間当たりの派遣料金はいくらか、就業日や時間など様々な取り決めを事前に行った上で契約を結び、ルールの中で労働者に働いてもらうことになるのです。
外国人労働者の場合も同じで、最初に派遣会社と企業双方が契約内容を確認し、双方が同意した状態で契約が交わされ、派遣が決定します。企業側は派遣契約で決められたルールの中で指導ができるため、ルールを逸脱しないようにすることが求められ、派遣会社は主に雇用、労務関係に関する管理を行います。
また、派遣期間の確認も行うことが大切です。万が一、派遣契約を中途解除する場合、中途解除をしたいことを派遣会社に伝えた上で合意が必要となります。そして、日程的にある程度余裕を持たせた状態で派遣会社に伝えなければなりません。
外国人労働者と雇用関係を結んでいるのは派遣会社であり、働き口を確保するのは派遣会社の役目です。一方で企業側は、関連会社で働き口を用意するように努めなければなりません。難しい場合は中途解除を行いたい日の30日前に解除を予告するか、予告しない場合は一定額の賃金を派遣会社に損害賠償として支払うことになります。(※)
※:厚生労働省「外国人を派遣労働者・期間工などで雇用する事業主の皆様へ」
3-3. 派遣での雇用が禁止の職種を確認
労働者派遣法では、派遣での雇用が禁止されている職種が存在します。禁止されているのは以下の5つの職種です。
- 建設港湾業務
- 運送業務
- 警備業務
- 医療関連業務
- 士業に関する業務
5つの業務に人材派遣を行った派遣会社は刑罰の対象となるほか、派遣してもらった企業側も是正勧告を受けます。勧告を無視すれば企業名が明かされてしまうため、社会的な制裁を受ける可能性も。
一方、禁止業務と分かっていながら派遣された労働者を受け入れた場合、「労働契約申込みみなし制度」の対象となります。労働者に対して労働契約の申し込みがあったとみなされ、労働者が契約を承諾すれば、派遣会社と労働者が結んでいた契約と同じ条件で契約を行わないといけません。(※)
3-4. 派遣元事業者が適法なのか確認
先ほどご紹介した「労働契約申込みみなし制度」は、禁止業務に従事させてしまった場合のほか、厚生労働省の許可を得ずに派遣業務を行う無許可事業主から労働者派遣のサービスを受けた場合にも該当します。
企業側が無許可事業主であることを分かった上で労働者を受け入れると、制度が適用されます。派遣元事業者が厚生労働省から許可を得ているかどうか、そして、外国人労働者の在留資格の確認を徹底しているかなど、適法な形で運営されているか、サービスの利用前に確認することが必須です。
3-5. 人材紹介会社と採用したい人材像の擦り合わせが必要
労働者が不足しているから誰でもいいので確保したいと思っている企業は少なく、できれば企業側が求める人材像にマッチした外国人労働者に来てほしいと考えています。すべてをお任せしてしまうと、企業側が求める人材像にそぐわない外国人労働者が派遣される可能性があります。
どんな外国人労働者を派遣してほしいのか、人材紹介会社と打ち合わせを行い、ミスマッチがないように擦り合わせをしていくことが求められます。例えば、技術が確かな外国人労働者を受け入れたい、日本語スキルが非常に高い人物に来てもらいたいなどと条件を伝えておけば、条件に合致した人物が派遣されるでしょう。
4. よくある質問
外国人労働者の人材派遣に関して、頻繁に出てくる質問がいくつかあります。最後によくある質問という形でまとめました。
- ビザ更新の申請は派遣会社がやってくれるのか
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外国人労働者の生命線とも言える在留資格・ビザ。基本的にビザの更新は派遣元である派遣会社が行います。派遣先の企業も一部書類を用意しないといけませんが、派遣先の企業に書類を出してもらって実際に手続きを行うのは派遣会社です。
派遣会社がビザ申請を行う場合、厚生労働省の「優良派遣事業者」や経済産業省の「健康経営優良法人」などの認定を受けている企業はビザ申請において審査が早くなる傾向にあります。「優良派遣事業者」に認定されていれば派遣会社としての質も高く、企業側はもちろん、外国人労働者も安心して働けるでしょう。
外国人労働者を派遣の形態で受け入れている場合、企業側はビザ更新などの心配をする必要はありませんが、「優良派遣事業者」などの認定を受けた派遣会社であれば注意深く対応する可能性が高いので認定を受けている事業者かどうかも、派遣会社探しにおける1つの手法です。
- 就労ビザをもっている外国人は派遣社員になれるのか
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基本的に就労ビザを取得する際に雇用形態の制限は特にないため、外国人労働者が派遣社員になることは可能です。ですので、就労ビザを持っている外国人も派遣社員になることはできます。ただし、派遣社員になる場合は入管への届け出が必要です。転職してから14日以内に変更の届け出をしなくてはならず、怠れば罰金や在留期間の短縮につながります。
ポイントになるのが、派遣先の業務が現在保有する就労ビザと関連性があるかどうかです。例えば、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を持つ外国人エンジニアの場合、派遣先でもエンジニアの仕事ができれば問題ありません。しかし、単純作業を行うような仕事など、在留資格との関連性が低い業務の場合は変更許可が下りないケースや在留資格自体取り消されるケースもあります。
5. まとめ
外国人労働者を人材派遣の形で受け入れることはメリットが多いです。例えば、将来的に正社員採用を考えている場合、紹介予定派遣という形で最初に一定期間派遣の形態で働き、企業側と外国人労働者双方が合意すれば直接雇用に移行するような仕組みもあります。仮にミスマッチが生じれば一定期間で契約が終わるので、影響を最小限に食い止められるでしょう。
今回の記事の内容をチェックしていただき、人材派遣という形で外国人労働者を確保したい際の参考にするなど、今回ご紹介した情報を役立てていきましょう。弊社では特定技能人材の採用などの無料相談も行っており、気になる方はぜひともお気軽にお問い合わせください。