【特定技能】生活オリエンテーションの内容・注意点などをわかりやすく解説
執筆者:大路(JapanJobSchool CSマネージャー)
特定技能外国人の受け入れに踏み出したものの、一つ一つの支援業務をどこまで何をやったらいいのかわからないと思っていませんか?特に「生活オリエンテーション」においては、、、
「8時間以上実施する必要がある生活オリエンテーションって、8時間も何を話すのだろう、、、」
「生活に関することって広すぎて、どんな内容を網羅しなくちゃいけないんだろう、、、」
こんな気持ちで、生活オリエンテーションについて調べているのではないでしょうか?
この記事では、特定技能における「生活オリエンテーション」の実施方法、流れ、伝えるべき内容や実施時の注意点等を解説しています。
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1. 生活オリエンテーションとは
「生活オリエンテーション」とは、特定技能外国人に対して行う義務的支援の一つで、特定技能外国人が入社した後(国内にすでにいる場合は、在留資格の変更許可を受けた後)に実施する情報提供のことをいいます。
ご存知の通り、特定技能外国人を受け入れる際には、必ず実施しなければならない「義務的支援」と呼ばれる下記の10項目の支援業務があり、そのすべてを1号特定技能外国人支援計画に記載する決まりとなっています。
参考:法務省|特定技能制度|制度説明資料「外国人材の受入及び共生社会実現に向けた取組」
その中でも、生活オリエンテーションは、受け入れた特定技能外国人が日本で生活・労働していく中で、安全にそして安定して生活できるように必要な情報提供をすることが求められています。
また、特定技能外国人が十分に理解するまで伝える必要があるので、原則「母国語」での実施が必要です。
特に海外から初めて日本に入国をする特定技能外国人においては、日本の医療制度、税金、年金、交通ルール、災害時の対応等々、わからないことだらけです。
そんな特定技能外国人が日本での生活に困らないように、入国したら速やかに、必要な基礎的情報を提供する必要があります。
似たような支援項目で「事前ガイダンス」というものがありますが、これも日本国内で必要な手続きや注意事項について説明をする時間です。
内容で少し重なる部分もある「生活オリエンテーション」と「事前ガイダンス」ですが、事前ガイダンスは雇用契約書や条件書の内容について等を話すので、入国管理局へ在留資格(ビザ)交付申請をする前に行うのに対して、入国して特定技能外国人としての在留資格を受けてから実施するのが生活オリエンテーションになります。
参考:「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」
参考:「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」
1-1. 実施形式
もちろん対面での実施も可能ですが、テレビ電話やZOOMでのオンラインでの実施、 DVD等の動画視聴で実施をしてもよいとされています。ただし、特定技能外国人から、生活オリエンテーションの内容について質問があった場合は、都度受け答えができるような状態で実施する必要があります。
1-2. 実施時間
特定技能外国人が十分に理解できるまで実施することが求められ、入管の考える生活オリエンテーションで行う情報提供を十分に理解するために必要な時間は、「少なくとも8時間以上」とされています。
また、技能実習2号や留学生等で勤務していた方が、同じ企業でそのまま特定技能へ変更し、就業先や生活環境が変わらないというような場合でも、今一度必要な情報について十分に理解させる必要があると考えられています。上記のような場合でも、「少なくとも4時間以上」は生活オリエンテーションを実施する必要があるとされています。
2. 生活オリエンテーションで話すべき内容
実際に「生活オリエンテーション」の中でどんなことを伝えたらいいのかをご紹介していきます。
慣れない異国の地での生活に困らない状態をつくるためには、伝えるべき情報は多岐にわたります。
生活一般に関する事項
まずは、生活全般に関する事項です。
金融機関の利用方法
- 金融機関での入出金の方法
- 振込等の方法
- ATMの使い方、その際の手数料等
- 出国時、銀行口座が不要となるのであれば、口座を閉鎖すること
- 将来再度入国するときのために、口座を有効な状態にしておきたい場合は、事前に銀行に相談すること
医療機関の利用方法等
- 住居地から考えて利用可能な医療機関の情報
- 医療機関での受診方法
- 保険証を持参すること
- アレルギー・宗教上の理由で、医療機関で受けられる治療に制限がある場合は、受診時に医療機関にその旨を説明すること
違法となる行為の例
- 銃砲刀剣類の所持が禁止されていること
- 大麻、覚醒剤等違法薬物の所持は犯罪であること
- 在留カードを携帯しないことは犯罪であること
- 在留カード、健康保険証等を貸し借りすることは禁止されていること
- 銀行口座、預貯金通帳・キャッシュカード、携帯電話を他人に譲り渡すことは犯罪であること
- ATMで他人名義の口座から無断で現金を引き出すことは犯罪であること
- 他人になりすまして、配達伝票に署名したり、他人の宅配便を受領することは犯罪であること
- 放置されている他人の自転車等を勝手に使用することは犯罪であること 等
生活必需品等の購入方法等
生活、勤務する地域の
- スーパー
- コンビニ
- ドラッグストア
- 家電量販店等の所在地
災害情報の入手方法等
- 気象情報
- 災害情報の確認ができるホームページやアプリ
- 外国人向けのコミュニティサイト
日常生活におけるルール・習慣
- 生活、勤務する地域のゴミ出し方法等(分別・出し方、収集日、粗大ゴミの捨て方等)
- 騒音を出したりするなど、近所迷惑になる行為は控えること
- 空き地や畑に無断で入ってはいけないこと
- 喫煙できる場所には制限があること
交通ルール等
- 歩行者は右側通行、車は左側通行
- 歩行者優先であること
- 自転車を運転する場合は、自転車損害賠償責任保険への加入が必要であること
- 自動車、バイク等を運転するには運転免許が必要であること
- 生活、勤務する地域の公共交通機関とその利用方法
- 勤務先までの経路
- 定期や切符の購入・利用方法
- ICカードの購入・利用方法
生活オリエンテーションは登録支援機関であるJapanJobSchoolに委託できます。
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公的機関に対する手続きに関する事項
次は、公的機関に対する手続きに関する事項です。
所属機関等に関する届出
- 特定技能所属機関の名称、所在地の変更
- 特定技能所属機関との契約の終了や新たな契約の締結
住居地に関する届出
- 入国後の住居地届出
- 住居地の変更届出
社会保障及び税に関する手続
- 未納がある場合には在留諸申請が不許可になる場合がある
- 健康保険、厚生年金保険について
- 国民健康保険や国民年金について
- 住民税納付の仕組み
その他の行政手続
- 自転車防犯登録の方法
- マイナンバーについて
支援に関する事項
次は、支援に関する事項です。
登録支援機関に支援を委託した場合の支援機関情報
- 支援担当者の氏名
- 支援担当者の電話番号、メールアドレス等
相談や苦情の申し出ができる公的機関の連絡先
- 地方出入国在留管理局
- 労働基準監督署
- ハローワーク
- 法務局・地方法務局
- 警察署
- 最寄りの市区町村
- 大使館・領事館 等
その他
最後は、その他事項です。
医療機関に関する情報
- 母国語通訳者がいる医療機関
- もしくはインターネットや電話による通訳サービスが導入されている医療機関の場所や連絡先
- 民間医療保険への加入案内
防災・防犯などに関する情報
- 地震・津波・台風等の自然災害、事件・事故等への備え
- 緊急時の連絡先、場所
- 警察・消防・海上保安庁等への通報、連絡の方法
- 避難指示、避難勧告等の把握方法、災害時の避難場所
法令違反の対応に関する情報
- 年金脱退一時金の手続き
- 入管法令に違反がある場合の連絡方法、連絡先
- 労働に関する法令違反がある場合の連絡方法、連絡先
- 特定技能雇用契約に反することがあった場合の連絡方法、連絡先
3. 生活オリエンテーションを実施する際の注意点
「生活オリエンテーション」を実施する際に、注意いただきたい点もいくつかあります。
すべての内容を外国人が理解する必要がある
「生活オリエンテーションとは」でもお伝えした通り、特定技能外国人が十分に内容を理解する必要があり、そのためには「母国語」で実施する必要があります。
特定技能外国人が日本での生活に不安があったり、困ることが多く発生すると、仕事に身が入らなくなることにもつながります。また、最悪の場合、「もっと企業がサポートしてくれたら、、、」「事前にちゃんと企業が教えてくれていたら、、、」と受け入れ企業に対する不信感になることもあるでしょう。
しっかりと外国人が十分に理解するまで時間をかけて伝えましょう。
外国人の生活環境に合わせて必要な内容を伝える必要がある
伝える情報は、特定技能外国人の住居地や生活環境に沿ったものであるように注意しましょう。ゴミ出しのルールは地域によって異なりますし、災害時や病気になった時に行く場所も異なります。
地域によって気候も違い、季節によって生活するうえで注意すべきポイントは変わるはずです。特定技能外国人の生活環境を事前に調べ、伝えることが必要です。
実施後に「確認書」に署名をもらい、記録する必要がある
生活オリエンテーションを実施した後は、生活オリエンテーションの確認書(参考様式第5-8号)を提示して、特定技能外国人の確認の上、本人から署名をもらい記録しておく必要があります。
なお、入国管理局への提出は求められません。
1回だけでなく、定期的に実施する必要がある
一度やったからもうやらないではなく、必要に応じて特定技能外国人との定期的な面談において
改めて提供することが求められます。防災や防犯についてなど、また急病や緊急時における対応は生活するうえで非常に重要なことですので、繰り返し定期的に伝える方が良いでしょう。
4. 登録支援機関に委託する場合
ここまでお伝えしてきた内容で、日頃の業務に加え、生活オリエンテーションを実施することはかなり時間と労力がかかると感じられたかもしれません。そんな方にはおすすめなのは、出入国管理庁から認定された登録支援機関と呼ばれる企業へ支援業務を委託するという方法です。
登録支援機関に委託をする場合、支援業務の全部もしくは一部委託することが可能ですが、全部委託をする場合はおおよそ月々20,000~30,000円ほどの委託料で対応してくれる登録支援機関が多いようです。今回とりあげた「生活オリエンテーション」だけを委託する場合は、1回あたり 50,000円〜80,000円で設定している登録支援機関が多いようです。全部支援するより部分的に委託する方が割高になるのが一般的です。ですので、ほとんどの企業が全部を委託するという選択をしております。
時間と手間が多少かかっても自社内で支援業務に対応するか、費用をかけて支援機関に委託をするか、あなたの会社の体制にあわせて考える必要があります。
5. よくある質問
よくある質問事項への回答もご紹介いたします!
生活オリエンテーションの内容の参考となる資料等はありませんか?
あります!出入国在留管理庁ホームページ内にある外国人の安全・安心のために必要な基礎的情報が掲載された「外国人生活支援ポータルサイト」や「生活・就労ガイドブック」を参考にしてみてください。入管の出している運用要領にも上記を参照するようにと、記載があります。
生活オリエンテーションの確認書(参考様式第5-8号)は紙でなくちゃいけないですか?
入国管理局へ確認したところ「書面のみ」でしか認めないとのことです。電子署名やオンラインでの対応はできないという回答でした。入管の監査などにも備えて、書面で保管しましょう。
複数の特定技能外国人に対して、生活オリエンテーションを同時に実施してもいいですか?
同時期に複数の特定技能として雇用した場合は、複数名に同時に生活オリエンテーションを実施しても問題ありません。また、その場合は生活オリエンテーションを実施した時間=1名に対して実施した時間になります。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか?
生活オリエンテーションで行わなければいけない内容をご理解いただけましたでしょうか?
最後にお伝えしたいのは、本日ご紹介したのは、あくまで入管が最低限伝えるべきと定めた内容です。生活オリエンテーションは義務的支援ではありますが、入管が義務としているから実施するのではなく、ぜひ「特定技能外国人が日本で安心して安全に充実した生活を送れるように」実施するものだと認識いただきたいと思います。
もし、生活オリエンテーションについてご不明点があるようでしたら、無料相談を行なっておりますので、まずはお気軽にJapan Job Schoolにお問い合わせください!
あなた自身が1人で知り合いもいない、生まれて初めて行く異国の地で働くと想像するとどうでしょうか?きっと、特定技能外国人の方々に「これも伝えた方がいいかな?あんなことも教えてあげたいな」と視野が広がっていくはずです。
「生活オリエンテーション」で特定技能外国人の方々の安心安全な生活を叶えられたら、それは特定技能外国人の方が一日でも長くあなたの会社で活躍することにも繋がると思います。