特定技能の二国間協定(MOC)とは?受け入れから雇用手続きまで完全ガイド

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門

外国人労働者を採用するとき、「二国間協定」の協定国から特定技能の人材を探すのも方法のひとつです。受け入れのルールにしたがって手続きを進めれば、適正な方法で雇用できます。ただし取り決めの内容や手続きの方法は、国によっても異なるため注意しましょう。

本記事では、特定技能の二国間協定について詳しく解説しました。主要な協定国からの受け入れ方法や手続きにも触れています。特定技能ビザと二国間協定への理解を深め、外国人労働者の適切な受け入れを目指しましょう。

特定技能外国人の雇用を考えている方
初めての外国人採用マニュアルをご参考ください。

目次

1.特定技能の二国間協定(MOC)とは

1-1.特定技能とは

特定技能制度は、2019年に新設された在留資格です。人材確保が難しい分野において、即戦力となる外国人の受け入れを目的としています。この制度には、特定技能1号と特定技能2号の2種類があります。

  1. 特定技能1号:対象分野の知識や経験を有する外国人
  2. 特定技能2号:対象分野の熟練した技能を持つ外国人

1-2.特定技能の対象分野・業種

※出典:特定技能 ガイドブック

特定技能の在留資格は、どのような業種でも就業が許可されているわけではありません。外国人が従事できるのは、上記のイラストにある分野です。

詳しくは、以下のページでも解説しているのでご覧ください。

特定技能に関してさらに詳しく知りたい方は特定技能まるわかり資料をダウンロードください。

1-3.【最新】新しく4分野が追加予定

政府は、深刻な人手不足に悩む4つの分野を「特定技能」制度の追加対象として検討しています。

想定されている対象分野・職種は、以下のとおりです。

既存分野の拡充も検討されており、飲食料品製造ではスーパーの総菜調理、産業機械製造では繊維・印刷などの追加を検討しています。実現すれば、人手不足解消に大きく貢献するでしょう。今後の動向に注目です。

特定技能における4分野追加については、以下でも詳しく解説しています。

1-4.二国間協定(MOC)とは

二国間協定(MOC)は、特定技能外国人の送出国と日本との間で結んだ雇用上の取り決めです。MOCを締結している国では、手続きやルールが明確に定められており、スムーズな外国人材の採用を可能にしました。ただし、MOCを結んでいない国からも、特定技能外国人を採用できます。

二国間協定(MOC)が結ばれた理由・背景

日本は高齢化社会を迎え、労働力不足が深刻化してきました。特に、介護や建設などの分野では、人手不足が顕著に見られます。

このような背景から、日本政府は外国人労働者の受け入れを進める方針を打ち出しました。その一環として、特定の技能を持つ外国人労働者が日本で働くことを可能にする「特定技能の二国間協定(MOC)」を結んでいます。これにより、日本の労働力不足を補い、経済の発展を支えることが期待されています。

二国間協定(MOC)の目的 

特定技能制度における二国間協定締結には、主に以下の理由があります。

  • 円滑かつ適正な外国人労働者の送出・受入れ 
    二国間協定は、送出国と日本間の共通認識に基づき、外国人労働者の送出・受入れに関する手続きやルールを明確に定めます。
  • 特定技能外国人の保護
    二国間協定では、特定技能外国人の労働条件や生活環境に関する基準を設け、人権侵害や不当な扱いを受けないように保護します。
  • 制度の運用に関する協力
    二国間協定は、送出国と日本間の情報共有や連携を強化し、制度の円滑な運用を促進します。

二国間協定(MOC)がもたらすメリット

二国間協定があると、協定国からの円滑かつ適正な人材受け入れが可能になります。そのため外国人採用を検討している企業にとって、大きなメリットに感じるでしょう。

適切な外国人材を確保できれば、人手不足解消や事業拡大に貢献します。経験やノウハウがある外国人材なら、即戦力として活躍してくれるでしょう。

 1-5.特定技能から除外されている国「イラン」「トルコ」

イランとトルコの国籍を持つ人は、特定技能から除外されています。両国が他国から「帰国命令」や「退去命令」を出しても入国不可にする方針を持っているためです。

治安や社会情勢も不安定であり、雇用する際にリスクが生じる可能性が高いといえます。そのため、イラン・トルコの国籍を持つ人は日本で働くためのビザを取得できません。

2.日本の二国間協定(MOC)における現状

円滑な外国人労働者の受け入れには、二国間協定が重要な役割を果たします。ここでは日本と二国間協定を結んでいる国や、中国との協定における現状について解説しました。

2-1.日本と二国間協定(MOC)を締結している国

日本は、特定技能の二国間協定(MOC)を多くの国と結んでいます。

<日本と二国間協定を結んでいる国>
フィリピン/カンボジア/ネパール/ミャンマー/モンゴル/スリランカ/インドネシア/ベトナム/バングラデシュウズベキスタン/パキスタン/タイ/インド/マレーシア/ラオス/キルギス

※参考:特定技能に関する二国間の協力覚書

2-2.「中国」は二国間協定(MOC)に合意している

2019年6月、中国と特定技能人材に関する二国間協定の合意が発表されました。しかし、2024年3月現在、協定は締結にいたっていません。

締結が遅れている理由は、主に以下の2つが挙げられます。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響
  • 中国側の協定締結に向けた準備状況

中国は、日本の特定技能制度における主要な送出国のひとつです。今後、協定締結により中国からの人材採用に大きく貢献することが期待されます。

2-3.二国間協定(MOC)に関わらず受け入れ可能

特定技能制度を利用すれば、二国間協定を結んでいない国の外国人も、一定の条件下であれば受け入れが可能です。つまり、特定技能外国人を採用できる国籍に制限はありません。ただし事前に、「在日本大使館」または「領事館」に確認しましょう。

3.雇用時に独自ルールがある国

外国人労働者を受け入れる際には、各国の独自ルールを知ることが重要です。適切な方法で手続きをするためにも、事前にチェックしましょう。日本国内と国外で手続きが違う国があるため、ここではそれぞれの違いを簡単にまとめて説明します。

CSマネージャー|大路

送り出し機関との連絡は人材会社や登録支援機関が担当するため、企業側が直接やることはありませんが、だからこそ企業側はどんな人材が来るのか事前に把握しておくことがいいでしょう。

こちらで送出国の情報が見れます。事前に把握しておきたい方はこちら
外国政府認定送出機関一覧|外国人技能実習機構(OTIT)

3-1.ベトナム

日本国外の場合

まず、ベトナム人労働者の求人募集の際には、「ベトナム労働・傷病兵・社会問題省海外労働管理局(以下DOLAB)」が関与します。人材の送出機関は、DOLABから認定を受けています。送出機関は、この(DOLAB)への推薦者表等の申請手続き業務を担う役割があります。
次に雇用契約する際に、推薦者表の提出をしなければなりません。国外から採用する場合、DOLABにより推薦者表が発行されます。
そして、ビザ発給申請するという流れです。

日本国内の場合

日本国内に在住する留学生や技能実習などが対象となります。日本国内で採用する場合も、ビザ申請の際に駐日ベトナム大使館から「推薦者表」を申請し発行する必要があります。

特定技能でベトナム人の採用を考えている方はこちらで詳しく説明しています。

3-2.インドネシア

インドネシア人労働者を受け入れる際には、政府が管理する労働市場情報システム「IPKOL」を利用するのが基本です。また政府から許可を受けた職業紹介業者「P3MI」の介入により、採用活動を進めます。

3-3.フィリピン 

フィリピン人労働者を受け入れる際には、現地の「移住労働者事務所(MWO)」が関与します。この機関は、労働者の権利保護を目的としており、人材募集や受け入れに関する一定のルールを設けました。また認定送出機関の連絡先は、移住労働者省(DMW)で検索するのが一般的です。

フィリピン人材の受け入れに関して、以下でも解説しています。

3-4.ミャンマー

日本国外の場合

求人票の提出海外労働身分証三重カード(OWIC)申請はミャンマーのみ必要となる手続きです。

求人票の提出は、ミャンマー政府が認定した送り出し機関を通じて手続きを行わなければならなりません。そして、出入国在留管理局での審査が終了し、在留資格認定証明書(COE)が交付されたら、在留資格認定証明書の原本を本人宛に送付します。在留資格認定証明書の受け入れ後、本人がミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)に海外労働身分証明カード発行の申請を行います。

ミャンマー人の受け入れでは、「ミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)」の審査を受けます。またビザ申請前に、スマートカードと呼ばれる「海外労働身分証明カード(OWIC)」の発行申請が必要です。

日本国内の場合

1.雇用契約を締結する:国内在住のミャンマー人と雇用契約を締結するにあたり、現地の送り出し機関を通じて行う必要はありません。
2.パスポートの更新申請:在日本ミャンマー大使館においてパスポートの更新申請を行うことが必要です。
3.在留資格認定証明書交付の申請:ミャンマー人が特定技能外国人として終了するためには、特定技能への在留資格変更許可申請を行います。この申請が通れば、手続きは完了です。

4.受け入れから雇用までの手続き

外国人労働者の受け入れから雇用までの手続きは、国によって異なります。ここでは国内で受け入れの多い国、ベトナム、インドネシア、フィリピン、ミャンマーの手続きについて簡単に説明しました。現地採用と在留者採用によっても手続きは違うため、注意しましょう。

詳しくは、以下の記事にある「各国から外国人労働者を雇うときの手続き」をご覧ください。

4-1.ベトナム

<現地採用>

現地採用の場合には、DOLABの認定送出機関を通じて「労働者提供契約」を結びます。その後、日本への入国に必要な「推薦者表」と「在留資格認定証明書」の申請手続きをしましょう。

<在留者採用>

国内に在留しているベトナム人の雇用は、労働者本人と「雇用契約」を交わします。特定技能として雇用する場合、在留資格の変更が必要です。

4-2.インドネシア

<現地採用>

インドネシア人の採用前に、労働市場情報システム「以下、IPKOL」に登録します。IPKOLはインドネシア政府が管理する、求人・求職情報システムです。同システム利用時には、日本の職業紹介事業者と提携して、各種契約書や求人票を「駐日インドネシア大使館」に提出します。

<在留者採用>

日本に在留しているインドネシア人は、受け入れ時に雇用契約を結びます。また労働者本人は。海外労働者管理システム(SISKOTKLN)への登録と移住労働者証(E-KTKLN)の取得が必要です。

4-3.フィリピン

共通<現地採用・在留者採用>

フィリピンの送出機関「移住労働者事務所(MWO)」と、人材募集・雇用方法の取り決めをします。日本企業はMWOに指定された書類を送り、審査を受けたら雇用主として登録が必要です。雇用条件が許可されると、求人情報を移住労働者省(DMW)に登録し、採用活動が進められます。

<現地採用のみ>

在留資格の手続きの他に、労働者は「健康診断」と「海外雇用許可証(OEC)」の発行申請をします。OECは出国審査で必要になる、「フィリピン側の手続き完了を証明する文書」です。

<在留者採用のみ>

特定技能の在留資格変更許可申請が必要です。

4-4.ミャンマー

<現地採用>

日本企業はミャンマーの送出機関を通じて、求人票を提出します。提出先は「ミャンマー労働・入国管理・人口省(MOLIP)」です。採用者が確定したら、在留資格認定証明書(COE)の交付申請をします。また特定技能で雇用する場合、ミャンマー人は、「在ミャンマー日本国大使館」でビザの申請が必要です。

<在留者採用>

在留しているミャンマー人を採用する場合には、雇用契約の締結、パスポートの更新。在留資格の変更許可申請をしましょう。

5.まとめ

特定技能の二国間協定(MOC)は、人材の募集・採用に関する取り決めをするため、協定国からの受け入れをスムーズにします。現在外国人採用を進めている企業も、検討中の企業も、協定国からの採用を視野に入れるとよいでしょう。

ただし、協定国の取り決めでは、少々複雑な手続きも存在します。時には現地の政府から関与を受けて、関連システムへの登録や書類の提出、審査、面接に対応しなければなりません。手続きの手間を減らすために、当スクールのサポートを提供させてください。

企業様の分野や利用したい在留資格、外国人材の国籍に合わせて、必要なサポートをいたします。無料カウンセリングもできますので、まずはご要望・悩みなどをお聞かせください。

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この記事を書いた人

外国人200名と企業80社の支援を行うカスタマーサクセスのマネージャー。
大学時代一年間休学しワーキングホリデービザでカナダのイエローナイフへ。オーロラのツアーガイドを経験し、異国の地で働く大変さ・差別を経験。
「国籍関係なく、自分がかかわる人を幸せにしたい」そんな気持ちを持って、このサイトで日本社会へDiversityを発信していく。

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