特定技能外国人の非自発的離職者に該当するケース・しないケースをわかりやすく解説
特定技能外国人の人事に関する課題は、経営者や人事担当者にとって大きな悩みのひとつです。特に、解雇を検討している場合や、長期間の雇用に不安を感じている場合、適切な対応方法を知っておくことが重要です。もし非自発的離職者が発生した場合、特定技能の受け入れに影響するため要注意です。
ここでは特定技能外国人の離職に関する知識を深めるために、非自発的離職者に該当するケースとしないケースを解説します。適切な対応により法的リスクを回避し、安定した雇用環境を築きましょう。
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1.雇用契約終了の形態
特定技能外国人が離職する場合、その背景にはさまざまな雇用契約終了の形態が存在します。適切な離職の対応をするために、雇用契約終了の形態について改めて確認しましょう。
1-1.雇用契約が終了する形態
雇用契約の終了形態には、「解雇」「離職」「定年」「契約期間満了」などがあります。合意退職とは、使用者と労働者が同意のうえで労働契約を解除する形態です。具体例を挙げると、会社から社員に退職を促す「退職勧奨」もそのひとつです。
1-2.非自発的離職者と自発的離職
契約期間満了や定年を迎えていなくても労働者が離職するケースがあり、「非自発的離職」と「自発的離職」に分類できます。自発的離職は、労働者が自らの意思で退職することです。一方、非自発的離職は、会社都合で解雇されることを意味します。
自発的離職は労働者の意思に基づくため、法的な手順に沿って手続きを進めれば問題ありません。ただし非自発的離職は、労働者の意思に反するため慎重に対応しましょう。
特定技能は転職が許されている就労ビザなため、多くの特定技能外国人が転職してしまうのも現状です。
この資料では特定技能外国人が企業に定着し、長く働いてもらえるような対策を解説しています。
2.特定技能|非自発的離職者に該当するケース
特定技能は人手不足解消を目的としているため、「非自発的離職者」が出ている企業は、今後受け入れが難しくなります。そのため企業は、特定技能外国人を「非自発的離職」にすることを避けるべきです。ここでは、どのようなケースが「非自発的」になるのか理解を深めましょう。
2-1.希望退職の募集または退職勧奨をした場合
希望退職の募集は、通常よりも有利な条件で退職を促す方法です。退職金の割り増しや再就職支援サービスが提供されることもあります。一方、退職勧奨は、企業が従業員に対して退職を促す行為であり、合意のうえで退職が成立します。
希望退職の募集または退職勧奨による離職は、「非自発的離職者」に該当します。なぜなら経営状態の悪化を回避するための人員整理であり、企業の都合によって実行される傾向にあるからです。
2-2.労働条件に係る重大な問題で離職した場合
労働条件に重大な問題がある場合も、「非自発的離職者」として離職します。例えば給料の遅配や過度な時間外労働、採用条件との相違による離職です。
労働条件の問題が発生すると、労働者の意思に反して離職を余儀なくされるケースもあります。企業は労働者の権利を守るために、労働条件に問題がなかったか確認しましょう。
外国人労働者によっては、労働条件を正しく理解していない場合があります。以下では、労働条件に関する注意点も解説しました。
2-3.就業環境に係る重大な問題があった場合
就業環境に重大な問題がある場合、「非自発的離職」扱いになります。例えば上司や同僚からの故意の排斥や嫌がらせ、セクシャルハラスメントなどは離職に影響する就業環境です。
就業環境のトラブルによる「非自発的離職」の疑いがある場合、状況に応じて以下の対応を取るのが望ましいといえます。
- 迅速な調査
- ハラスメント防止対策の強化
- 労働環境の改善
- 相談窓口の設置
- 就業環境の定期的な評価・面談の実施
事実関係が確認できていない場合には、関係者に聞き取り調査する、または面談を実施します。就業環境に問題があったと明らかになった場合には、防止対策や相談窓口の設置、定期的な面談など改善に向けた取り組みが必要です。
特定技能外国人が働きやすい環境を作るためにも外国人に対する理解が重要です。
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3.特定技能|非自発的離職者に該当しないケース
離職の経緯や理由によって、「非自発的離職」ではなく「自発的離職」に該当します。ここでは、自発的離職になるケースをまとめました。
3-1.自発的な離職や定年退職
自発的な離職は、労働者が自らの意思で退職することを指します。定年退職は、一定の年齢に達したことを理由に雇用契約が終了する退職形態です。これらは非自発的離職には該当しません。
3-2.自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇
自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇は、労働者が重大な過失や違法行為を行った場合に適用されます。例えば、職場での窃盗や暴力行為などによる解雇が対象です。
3-3.特定技能外国人の自己都合での退職
家庭の事情やキャリアチェンジ、体調・メンタルの不良を理由に、退職する特定技能外国人がいるかもしれません。自己都合での退職は、労働者の意思に基づくものであり、企業側の問題や強制によるものではありません。そのため、自己都合により退職する場合、自発的離職として扱います。
企業は、自己都合で退職する特定技能外国人に対して、適切な手続きを行い、円満な退職をサポートしましょう。
4.特定技能外国人が非自発的離職するときの注意点
特定技能人材が非自発的に離職する場合、企業はその対応に慎重を期す必要があります。非自発的離職は、労働者の生活に大きな影響を与えるだけでなく、企業の信頼性や将来的な特定技能人材の受け入れにも影響を及ぼすためです。ここでは、企業が特定技能人材の非自発的離職に際して注意すべきポイントを詳しく解説します。
4-1.ルールに則って解雇する
特定技能人材を解雇する際には、労働基準法や出入国在留管理法などの関連法規を遵守する必要があります。例えば、解雇予告は少なくとも30日前に行う必要があり、予告なしに解雇する場合は30日分の解雇予告手当を支払う必要があります(労働基準法20条1項)。
労働者から求められた場合には、「解雇理由証明書」を発行しなければなりません。もし業績不振による人員整理の場合、他の手段を尽くしたうえでの最終手段であることを示しましょう(労働基準法22条1項)。
4-2.従業員の意思を確認する
従業員が退職を希望する場合、その意思を明確に確認することが重要です。例えば「退職届」を提出してもらい、書面で退職の意思を残すことで、後々のトラブルを防げます。従業員が家庭の事情で退職を希望する場合、「退職理由を明確に記載した退職届」を提出してもらうと、双方で意思を確認できます。
4-3.妊娠・出産による解雇不可
妊娠や出産を理由とする解雇は、「男女雇用機会均等法第9条」により禁止されています。例えば、妊娠中の従業員が産休を取得した後に復職を希望する場合、企業はその従業員を解雇することはできません。
妊娠中の従業員が出産後に復職を希望した場合、企業はその従業員を解雇することなく、復職をサポートする必要があります。
※参考:婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等
※参考:外国人雇用はルールを守って適正に|厚生労働省
4-4.特定技能の受け入れが難しくなる
特定技能外国人が非自発的離職者となった場合、その企業は「その後1年間」特定技能外国人の受け入れが難しくなります。これは、特定技能外国人の雇用契約の締結前1年以内および締結後においても適用されます。
特定技能外国人の受け入れ制度は、日本の人手不足を解消するために設けられた制度です。「非自発的離職者」の発生は、制度の目的から外れる行為になるため、その後の受け入れに制限がかかります。
【出入国在留管理庁の特定技能運用要領】 【関係規定】 特定技能基準省令第2条 法第2条の5第3項の法務省令で定める基準のうち適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものは、次のとおりとする。 二 特定技能雇用契約の締結の日前1年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約において外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者(次に掲げる者を除く。)を離職させていないこと。 イ 定年その他これに準ずる理由により退職した者 ロ 自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された者 ハ 期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の期間満了時に当該有期労働契約を更新しないこ とにより当該有期労働契約を終了(労働者が当該有期労働契約54 の更新の申込みをした場合又は当該有期労働契約の期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、当該有期労働契約の相手方である特定技能所属機関が当該労働者の責めに帰すべき重大な理由その他正当な理由により当該申込みを拒絶することにより当該有期労働契約を終了させる場合に限る。)された者 ニ 自発的に離職した者 ※引用:出入国在留管理庁「特定技能運用要領」 |
5.特定技能の非自発的離職者に関する届出
※出典:特定技能所属機関・登録支援機関による届出(提出書類)|出入国在留管理庁
特定技能外国人が非自発的に離職した場合、企業は速やかに出入国在留管理局に届出を行う必要があります。この届出を怠ると、企業は罰金(30万円以下)を科される可能性があります。具体的には、以下のような手続きが必要です。
<届出書の提出>
非自発的離職が発生した場合、企業は「特定技能所属機関等に関する届出書」のなかから以下を作成し、出入国在留管理局に提出します。
- 受入れ困難に係る届出書
- 特定技能雇用契約に係る届出書
<報告期限>
非自発的離職が発生した日から14日以内に届出を行う必要があります。この期限を過ぎると、法的な罰則が適用される可能性があります
特定技能外国人の退職手続きについては、以下でも詳しく解説しました。
6.まとめ
特定技能外国人を非自発的に離職させることは、企業にとって大きなリスクとなります。離職を促す前に、適切な労働環境の整備や従業員の意思を尊重する試みも必要です。そうすることで特定技能外国人の安定した雇用環境が整い、企業の信頼性を高めることができます。
しかし場合によっては、どうしても解雇したいケースがあるかもしれません。特定技能外国人の解雇にお悩みの企業様は、ぜひ弊社(JJS)にご相談ください。外国人雇用に関するご質問や、適切な手続きに関するアドバイスが可能です。無料相談ができますので、問い合わせをお待ちしております。