「繊維業」で特定技能を受け入れるには 対象区分や企業の要件について解説!
2024年4月に特定技能の対象業種に繊維業を追加する閣議決定が行われ、繊維・衣服関係職種の技能実習生を特定技能1号に移行することも可能になりました。
この記事では、新たに外国人採用を考えている繊維業界の方、すでに技能実習生を受け入れており特定技能1号への移行について知りたい方に向けて、繊維業で特定技能外国人を受け入れるための要件・流れを解説します。
そもそも特定技能とは?という方へ↓
【2024年最新版】特定技能まるわかり資料
この資料では特定技能とは何なのか、どのように外国人を採用できるかについて解説しています。
1.特定技能 製造業分野に「繊維業」が追加されました!
令和6年(2024年)3月29日の閣議決定で、特定技能受入れ見込数の再設定と対象分野の追加が行われました。
現在の「素材形・産業機械・電気電子情報関連製造業分野」という分野名を「工業製品製造業分野」に変更し、現在の4業種に加え新たに10業種が設定されました。
繊維業は新たに追加された10業務区分の1つです。新規追加業種は当面は特定技能1号のみ受け入れができます。
また、技能実習には「繊維・衣服関係等」という職種(21職種38作業)があり、当職種からの特定技能1号への移行も可能です。
2.繊維業の対象業務区分
繊維業の業務区分は以下の2つです。
・紡織製品製造
・縫製
それぞれ詳しく説明します。
2-1.紡織製品製造
「紡織製品製造」では、カーペットなどの紡織製品の製造工程内にある作業に従事することができます。
例えば以下のような職種があります。
紡織運転 | 織布運転 | 染色 |
---|---|---|
ニット製品製造 | たて編ニット生地製造 | カーペット製造 |
また、上記の作業に付随する業務にも従事可能です。
例えば「糸などの原材料の部品の調達・運搬」「作業に必要なクレーンやフォークリフトの運転」などです。
ただし、関連業務にのみ従事することは認められていません。
2-2.縫製
「紡織製品製造」では、婦人服をはじめとする服や寝具などを機械で縫い合わせる縫製作業に従事することができます。
例えば以下のような職種があります。
紡織運婦人子供服製造転 | 紳士服製造 | 下着類製造 | 寝具製作 |
---|---|---|---|
たて編ニット生地製造 | 帆布製品製造 | 布はく縫製 | 座席シート縫製 |
「縫製」も上記の作業に付随する業務にも従事可能です。
【出典】:出入国在留管理庁「技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係について 令和6年9月30日時点」
3.繊維業で特定技能を受け入れるには
繊維業で特定技能外国人を受け入れるには、以下2つのどちらかのルートを選ばなければなりません。
❶ 試験ルート(日本語試験+技能試験)
➋ 技能実習からの移行
3-1.試験ルート
「試験ルート」とは、技能実習2号を良好に修了していない外国人が特定技能の資格を得るルートです。
特定技能は即戦力としての外国人材を雇用するための制度です。そのため即戦力として業務可能な日本語スキルと業務関連の知識を持っているかが測られます。
試験は「日本語試験」と「技能試験」の2つがあります。
日本語試験は「国際交流基金日本語基礎テストA2相当」又は「日本語能力試験N4以上」の合格が必要です。
繊維業の技能試験は現在作成中ですが、他分野の試験はCBT(Computer Based Testing)方式、又はペーパーテストで行われています。
両方の試験ともに国内および海外で実施されます。
在留資格の交付・変更申請をする際に、2つの試験の合格証明書が必要となります。別途入管で審査が行われる場合もあります。
試験についてはこちらの記事も参考にしてください
3-2.技能実習からの移行
本来特定技能1号外国人を受け入れるためには、外国人が日本語試験と技能試験に合格する必要がありますが、技能実習2号を良好に修了した外国人は2つの試験が免除となります。
これは、特定技能1号外国人に必要な技能と日本語能力が水準を満たしていると見なされるためです。
「技能実習を良好に修了している」とは、以下の状態の外国人を指します。
技能実習を2年10カ月以上修了している
第2号技能実習計画における目標である技能検定3級、若しくはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験に合格している
又は 特定技能外国人が、技能実習を行っていた実習実施者により、当該外国人の実習中の出勤状況や技能等の修得状況、生活態度等を記載した評価に関する書面「評価調書」を取得している
また、技能実習から特定技能に移行するためには、移行したい特定技能の職種と技能実習の職種に関連性があることも重要です。
技能実習には「繊維・衣服関係職種」があり、下記に該当する技能実習の業務区分であれば、特定技能への移行が可能です。
技能実習から特定技能1号への移行方法について、詳しくはこちらの記事も参考にしてください
【出典】:出入国在留管理庁「特定技能制度 試験関係」
【出典】:経済産業省 製造産業局 生活製品課「繊維業の上乗せ4要件について」
3-3.受け入れの流れ
繊維業で特定技能外国人を受け入れるための流れを5ステップで解説します。
Step.1 【外国人】の要件を確認
Step.2 【企業】の事業の該当性を確認
Step.3 外国人と特定技能雇用契約を締結する
Step.4 支援計画の運用に係る確認
Step5. 在留資格(特定技能1号)の申請
Step.1 【外国人】の要件を確認
外国人が在留資格「特定技能1号」を得るための要件は、日本語試験と技能試験の合格です。
ただし、技能実習2号を良好に修了した場合は、2つの試験が免除となります。
試験ルートで外国人を採用したい場合は、日本語試験と技能試験に合格できる水準の知識と技能を持つ外国人を募集するか、自社で日本語と技能の試験の対策をしなければなりません。
Step.2 【企業】の事業の該当性を確認
特定技能制度において、外国人の要件だけでなく、外国人を受け入れる企業の要件も厳格に定められています。
特定技能外国人を受け入れるための主な要件は以下の3つです。
・関係法令(労働法等)を遵守している
・外国人と結ぶ雇用契約が、日本人従業員と同等以上の待遇となっている
・外国人を支援する体制があり、支援計画が適切に作成されている
さらに、企業の事業は「特定産業分野」に当てはまっていなければなりません。具体的には以下の項目が判断されます
・特定技能外国人を受け入れる事業所の売上は、製造業分野に掲げられた日本産業分類に該当するか
・製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への入会を行っているか
・特定技能外国人が行う作業内容は対象業務か
「特定技能外国人を受け入れる事業所の売上は、製造業分野に掲げられた日本産業分類に該当するか」の項目に当てはまっていない場合、協議・連絡会への加入が認められません。
また、協議・連絡会への加入時に「繊維業における上乗せ4要件」の審査も行われます。「繊維業における上乗せ4要件」の具体的な内容は「4-3.繊維業の追加要件」で詳しく解説しています。
Step.3 外国人と特定技能雇用契約を締結する
外国人・企業双方の要件が満たされていることを確認できたら、外国人と雇用契約を結びます。
雇用契約書の様式は出入国管理庁のウェブページに掲載されており、一般にはこの形式を使用することになっています。
契約を結ぶ外国人の母国語の併記が必要です。
注意点として、雇用契約書の作成方法はこちらの記事も参考にしてください。
Step.4 支援計画の運用に係る確認
特定技能制度において、外国人の受入企業は、特定技能外国人が日々の業務や生活を円滑に行えるように「支援計画」を作成・実施することが義務付けられています。
受け入れ企業が行う支援業務は以下の通りです。
初めて特定技能外国人を雇用する場合、これらの支援業務をすべて自社で行うのは大きな負担となってしまいます。
自社支援を適切に実施するための基準は厳しく、これらの支援業務を「登録支援機関」に委託することも可能です。
自社支援の要件はこちらの通りです。
・過去2年以内に外国⼈労働者の雇用または管理をした実績があること
・過去2年以内に外国⼈労働者の⽣活相談等をしたことのある社員の中から⽀援責任者や⽀援担当者を任命していること
・外国人が十分理解できる言語(基本母国語対応)で支援を実施することができる体制を確保していること
・⽀援状況に関する書類を作成し、雇⽤契約終了⽇から1年以上保管すること
・⽀援責任者⼜は⽀援担当者が、⽀援計画の中⽴な立場で実施を⾏うことができ、かつ、⽋格事由に該当しないこと
・5年以内に⽀援計画に基づく⽀援を怠ったことがないこと
初めて特定技能外国人を採用する企業は、登録支援機関に支援業務を一部、又はすべて委託することが一般的です。
自社と同じ分野の企業の支援実績が豊富な機関や、雇用した外国人と同じ国出身の外国人を支援した実績がある機関を選ぶことをおすすめします。
自社支援、登録支援機関については以下の記事も参考にしてください。
Step5. 在留資格(特定技能1号)の申請
海外在住の外国人を雇用する場合は、「在留資格認定証明書交付申請」、国内在住の外国人を雇用する場合は「在留資格変更許可申請」を行います。
必要書類は出入国在留管理庁のウェブページから確認できます。
どちらの申請も多くの書類を入管に提出しなければなりません。準備に時間がかかる書類もあるため、申請予定月の約半年前から書類の準備を始める必要があります。
4.繊維業で特定技能を受け入れるための要件
特定技能外国人を受け入れるための要件は「Step.2 【企業】の事業の該当性を確認」で解説したとおり、以下のようになります。
・関係法令(労働法等)を遵守している
・外国人と結ぶ雇用契約が、日本人従業員と同等以上の待遇となっている
・外国人を支援する体制があり、支援計画が適切に作成されている
・特定技能外国人を受け入れる事業所の売上は、製造業分野に掲げられた日本産業分類に該当する
・製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会への入会を行っている
・特定技能外国人が行う作業内容は対象業務である
しかし、繊維業では特定技能1号を受け入れるために追加で4要件が設定されています。
これは、繊維業の技能実習制度において賃金の未払いをはじめとした法令違反の割合が多いことを踏まえ、違反をなくし公正な取引を推進するために設定されました。
4-1.繊維業の追加要件
繊維業の追加要件は以下の4要件です。
➊ 国際的な人権基準に適合し事業を行っていること
➋ 勤怠管理を電子化していること
➌ パートナーシップ構築宣言の実施
➍ 特定技能外国人の給与を月給制とする
【参考】:経済産業省 製造産業局 製品生活科「繊維業の上乗せ4要件について」
それぞれ詳しく解説します。
➊ 国際的な人権基準に適合し事業を行っていること
「国際的な人権基準に適合し事業を行っていること」とは、公開された監査要求事項等に基づき、第三者による認証・監査機関の審査を受け適合していることです。
具体的には、以下のような基本的権利に関する原則が含まれていなければなりません。
・結社の自由及び団体交渉権の効果的な承認
・強制労働の禁止
・児童労働の撤廃
・雇用及び職業における差別の排除(同一報酬など)
・安全で健康的な労働環境
対象となる認証・監査名はこちらの5つです。審査時に、5つのうち、いずれかの監査・認証を取得する必要があります。
・GOTS
・OEKO-TEX SteP
・Bluesign
・Global Recycled Standard(GRS)
・日本アパレルソーイング工業組合連合会-取引行動規範ガイドライン
※2024年9月時点
・審査を申請した時点で、監査・認証の有効期限が3か月以上残っていること
・監査・認証を受入れ事業所において取得していること
審査時には、上記の注意点も記載されている「監査・認証のレポート」を提出してください。
➋ 勤怠管理を電子化していること
長時間労働・賃金未払いなどの法令違反を防ぐために、「勤怠管理の電子化」が追加要件として審査されます。
審査ポイントは以下の2つです。
1.『勤怠管理の電子化要件 登録システム一覧』に記載されているシステムのいずれかを導入していること。又はシステムの要件を満たす仕組み(自社開発システム等)を導入していること
2.受入れ事業所で活用していること
システムを導入しているだけでなく、実際に出退勤を電子的に記録する等活用していることが求められます。
導入するシステムに組み込まなければならない機能は以下の4つです。
・電子的に出退勤を記録できること
・手作業を介さずにPCやクラウド等に出退勤データが送信されること(手作業で編集できるCSV形式や、紙からパソコンに送信する等は不可)タイムカードの場合もこれに対応できること。
・打刻時間の修正は、原則本人が行うが、本人の同意があれば管理者による修正も可能であること
・打刻時間を修正する場合、実際の打刻時間と修正した打刻時間の両方を確認できること
審査時に提出する書類は「登録システム一覧に記載されているシステムを導入していることを証明する画像等」、「活用状況の写真(設置場所等)」です。
自社開発等が理由で、「電子システムを導入していることを証明する画像等」を提出できない場合は、システムの要件を満たしていることを明瞭に示す画像等が必要です。
➌ パートナーシップ構築宣言の実施
「パートナーシップ構築宣言」とは、事業者が、取引先との共存共栄を目指し、下記に取り組むことを「代表権のある者」の名前で宣言し、ポータルサイトで公表することです。
取り組む内容は以下の2点です。
1.サプライチェーン全体の付加価値の増大と新たな連携
2.下請け企業との望ましい取引慣行の遵守
特に取引適正化のために重点が置かれている5分野があります。
- 価格決定方法
- 型管理の適性か
- 現金払原則の徹底
- 知財・ノウハウの保護
- 働き方改革に伴うしわ寄せ防止
事業者は「パートナーシップ構築宣言」をポータルサイト上で掲載したうえで、取引適正化等のために取り組むことが求められています。
「パートナーシップ構築宣言」の提出書類は以下の通りです。
・「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイト上の自社が記載されている箇所に赤枠をつけて強調した画像
・HPに記載されているPDFファイル
・「パートナーシップ構築宣言」ポータルサイトの記載URL
➍ 特定技能外国人の給与を月給制とする
繊維業には繫忙期・閑散期があり、技能実習制度では受注量が減少する閑散期に会社都合等による休業で外国人の基本給を控除した事例がありました。
日本に生活基盤のない特定技能外国人の生活が不安定となることを避けるために、安定的かつ確実に給与が支給される「月給制」を要件としました。
月給制の要件は以下の3つです。
- 受注量の減少など会社都合を理由とする休業や有給休暇の取得を欠勤として扱い、基本給から控除することは認められない。
(他方、有給休暇をすべて消化した後や特定技能外国人が有給休暇の取得を希望しない場合の欠勤については、報酬額を基本給から控除することは認められる。) - 1カ月あたりの所定労働日数の変動や変形労働時間制を採用することにより1カ月の所定労働時間数が変動する場合においても、「1カ月単位で算定される額」で報酬を支給しなければならない。
- 受入れ企業で雇用している日本人等の他の職員が月給制でない場合においても、特定技能外国人に対しては、月給制による報酬の支払が必要となる。
審査時に提出書類は1点です。既定の様式の誓約書を受入れ企業の代表者名で提出してください。
【出典】:経済産業省 製造産業局 製品生活科「繊維業の上乗せ4要件について」
5.まとめ
特定技能外国人を受け入れることは、人手不足だけでなく、DX化による生産性向上や従業員の処遇の改善など、様々な課題に取り組むきっかけとなるのではないでしょうか。
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