【2024年更新】特定技能「飲食料品製造業」とは|協議会・試験・職種について解説
執筆者:井上道夫(行政書士井上法務事務所所長)
「特定技能」とは2019年4月に新しく創設された制度(在留資格)です。今まで外国人をフルタイム雇用する場合、基本的に現場で働くことはできませんでした。しかし、特定技能の登場により、人手不足とされる12分野14業種においてのみ、外国人が現場で働くことができるようになりました。
特定技能について詳しく知りたい方
→「特定技能まるわかり資料」をダウンロードください
1.特定技能「飲食料品製造業」とは?
そもそも特定技能とは2019年4月に創設され、国際貢献を目的とした「技能実習」と違い、産業界の人手不足を解消するために設けられた制度です。
特定技能には1号と2号があり、1号で通算5年を修了すると2号に移行でき、永続的に雇用できます。
特定技能に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。
特定技能は人手不足に悩む12分野が対象であり、「飲食料品製造業」とは、飲食料品(酒類を除く)の製造、加工、安全衛生などの飲食料品を製造する過程全般について従事する外国人のための在留資格です。
日本では現在、多くの産業分野で少子高齢化による労働力不足が進行しています。その中でも、飲食料品製造業における人手不足はかなり深刻です。厚生労働省の「雇用動向調査」によると、2017年度の同業界の欠員率(充足できていない人員の割合)が3.2%と数字が出ています。
このような人手不足の問題を解消する方法として、特定技能「飲食料品製造業」による外国人材の採用に注目が集まっています。
参考:農林水産省|飲食料品製造業分野における外国人材受入れ拡大について
2. 特定技能「飲食料品製造業」で受入できる職種・業務区分
「飲食料品製造業」の特定技能1号を取得している外国人は、飲食料品製造業全般(酒類を除く)の製造、加工及び安全衛生に関する業務を行うことができます。
さらに、「清涼飲料製造業」及び「茶・コーヒー製造業」には、酒類の製造業は入りません。従って、分かりやすく言えば、酒類と塩の製造以外の飲料・食料の製造業が、特定技能「飲食料品製造業」の対象ということです。
【最新情報】スーパーマーケットでも特定技能外国人が惣菜等の製造可能に
特定技能外国人の受入れが認められる事業所を追加し、食料品スーパーマーケット及び総合スーパーマーケットの食料品部門における惣菜等の製造も可能となるよう改正予定です。
参考:特定技能の受入れ見込数の再設定及び対象分野等の追加について(令和6年3月29日閣議決定)|出入国在留管理局
3. 受入をするための企業の要件
特定技能「飲食料品製造業」の外国人を企業が受け入れるためは、次の4つの条件全てを満たす必要があります
- 農林水産省、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者で構成される「食品産業特定技能協議会」(以下「協議会」と略します。)の構成員になること
- 上記協議会に対し、必要な協力を行うこと
- 農林水産省またはその委託を受けた者が行う調査等に対して、必要な協力を行うこと
- 登録支援機関に「1号特定技能外国人支援計画の実施」を委託するに当たって、上記1、2及び3の条件を全て満たす協議会の構成員となっており、さらに農林水産省及び協議会に対して、必要な協力を行う登録支援機関に委託すること
3-1.協議会とは?
協議会とは、飲食料品製造業分野と外食業分野が共同で設置した機関のことです。その目的は、機関の構成員同士の連携の緊密化を図り、制度や情報の周知すること、法令遵守を啓発することの他、地域ごとの人出不足の状況を把握した上で、必要な対応等を行うことです。
参考:農林水産省|食品産業特定技能協議会(飲食料品製造業分野・外食業分野)について
4. 受入をするための外国人の要件
外国人が、飲食料品製造業に受け入れるためには、以下の2つ要件を満たす必要があります。
なお、飲食料品製造業分野の第2号技能実習を修了した外国人については、以下の試験は免除されます。
外国人はどのくらい日本語力があるのか知りたい方はこちらの資料をダウンロードください
4-1.日本語を測る試験への合格
「国際交流基金日本語基礎テスト」、あるいは「日本語能力試験(N4以上)」に合格する必要があります。
「国際交流基金日本語基礎テスト」とは、「ある程度日常会話ができて、日常生活に支障がない程度の能力があるかどうか」を判定するためのテストです。2ヶ月に1回 実施され、テスト内容は、「文字と語彙」、「会話と表現」、「聴解」、「読解」で構成されています。
また、「日本語能力試験(N4以上)」は、日本語を母語としない人向けのテストです。毎年7月と12月にテストが実施されていますが、海外では7月だけしか実施していない都市、12月だけしか実施していない都市があります。テストは、難しい「N1」から易しい「N5」までの5つのレベルに分かれています。
試験HP▶︎国際交流基金日本語基礎テスト
試験HP▶︎日本語能力試験
4-2.技能評価試験への合格
技能評価試験、具体的には「飲食料品製造業技能測定試験」に、合格する必要があります。
「飲食料品製造業技能測定試験」は、飲食料品製造業分野で業務を行う場合に必要な能力を持っていることを確認する試験です。「食品等の衛生的な取り扱い」及び「飲食料品の製造・加工作業の業務に関して、特段の育成・訓練を受けることなく、直ちにHACCP(衛生管理手法)に沿った衛生管理に対応できる専門性・技能を持っているか」が、試験の内容です。
5. アルバイトからの移行では必須!特定技能の技能評価試験内容
留学生アルバイトからの移行を考えている企業様も多いかと思いますので、ここでは、技能評価試験の内容について、細かく説明していきます。
5-1.特定技能「飲食料品製造業」の試験・テストの内容
「飲食料品製造業技能測定試験」は、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構という機関が実施します。試験内容は、先程ご説明したとおり、受験する外国人が「食品等の衛生的な取り扱いについて」、「飲食料品の製造・加工作業の業務に関して、特段の育成・訓練を受けることなく、直ちにHACCPに沿った衛生管理に対応できる専門性・技能を有していること」を測るものです。
試験は、学科と実技の2科目に分かれており、試験時間は80分です。
学科試験は、HACCP等による一般的な衛生管理、労働安全の知識を問う問題で、食品安全・品質管理の基礎知識、一般衛生管理の基礎、製造工程管理の基礎、HACCPによる衛生管理、労働安全衛生に関する6項目の知識が出題されます。
実技試験は、「判断試験」と「計画立案」の2つです。「判断試験」は、図やイラスト等を見て、正しい行動はどれかを答える問題です。「計画立案」は、計算式を使って、作業の計画を作ることできるかを測る試験です。先程「学科試験」でご説明した6項目の知識が出題されます。
5-2.試験過去問・テキスト問題集
受験勉強のためのテキストは、一般社団法人食品産業センターのホームページで、確認することができます。
▶︎一般社団法人食品産業センターのホームページ
また、問題例については、以下をご確認ください。
▶︎飲食料品製造業分野 特定技能1号技能測定試験について
5-3.試験の申込方法
試験の申し込みは、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構のホームページから、受験者の住所・氏名等の情報と顔写真を「マイページ登録」に入力することで、手続きができます。
但し、1回の試験で、2つ以上の「マイページ登録」(二重登録)はできませんので、十分注意してください。もし二重登録をした場合には、最大5年間 一般社団法人外国人食品産業技能評価機構が実施する試験を受けることができません。 試験の申込者が多い場合は、抽選が行われます。抽選結果は、登録したメールアドレスに送られて来ます。当選した人は、期日までに受験料を支払わなければなりません。
6. 受入をする方法
特定技能「飲食料品製造業」によって、外国人を受け入れる方法は、次の3種類があります。
6-1.技能実習からの移行
職場で技能実習生として在籍していた外国人がそのまま移行する方法です。技能実習生として、既に職場に慣れ、仕事内容も理解しているはずですから、外国人本人にとっても企業にとっても、メリットがあります。
6-2.留学生アルバイトからの移行
留学生アルバイトとして、企業で働いていた外国人がそのまま移行する方法です。先程の技能実習生と同じように、既に仕事内容を理解しており、外国人本人にとっても企業にとっても、メリットがあります。
6-3.海外からの採用
海外にいる外国人を採用する方法です。既に海外で同じ業務に従事している外国人であれば、職場や仕事に慣れる時間は、それ程かからないはずです。
7.採用までの流れ
特定技能「飲食料品製造業」の制度によって、外国人を企業に雇い入れる流れは、次のとおりです。
特定技能外国人の採用は我々JapanJobSchoolがサポートします
▶「3分でわかるJapanJobSchool」のダウンロードはこちら
7-1.技能実習からの移行の場合の流れ
まず、技能実習生が、次の要件を満たしているか、確認する必要があります。
- 技能実習2号を良好に修了
- 技能実習での職種/作業内容と、特定技能1号の職種が一致
いずれの要件を満たしていれば、特定技能「飲食料品製造業」へ移行することができます。先程ご説明したとおり、特定技能の在留資格を得るためには、基本的に「日本語能力試験」及び業種ごとに実施される「技能試験」に合格しなければなりません。
しかし、上記の「1.技能実習2号を良好に修了」を満たしていれば、技能実習の職種・作業に関係なく、日本語試験は免除されます。また、従事しようとする業務と技能実習2号の職種・作業に関連性がある場合には、技能試験も免除されます。
特定技能「飲食料品製造業」へ移行の申請・書類提出先は、地方出入国在留管理局です。
地方出入国在留管理局で、提出された書類をもとに、審査が進められます。審査にかかる期間は、約1~2ヶ月です。審査に通れば、「特定技能1号」での在留資格認定証明書が発行されます。
7-2.留学生アルバイトからの移行の場合の流れ
留学生アルバイトから特定技能「飲食料品製造業」へ移行するには、先ず留学先である学校を卒業する必要があります。その上で、在留資格の申請を行いますが、その際に次の2つの点から審査されます。
- 申請した外国人が、特定技能の取得に該当するかということで、先程ご説明した「国際交流基金日本語基礎テスト」または「日本語能力試験(N4以上)」に合格しているか、「飲食料品製造業技能測定試験」に合格しているか
- 既に日本に在留している外国人が、引き続き日本に在留する人物として、法務大臣が適当と認めるに足りる「相当の理由」があるか
以上の点が妥当と判断されれば、在留資格「特定技能」の取得が許可されます。
7-3.海外からの採用の場合の流れ
海外にいる外国人を採用するには、まずその外国人が、「国際交流基金日本語基礎テスト」と「日本語能力試験(N4以上)」のどちらかに合格していること、「飲食料品製造業技能測定試験」に合格していることが、大前提です。
その上で、次の手順に沿って、「特定技能1号」を取得した外国人を雇い入れます。
なお、最初の「在留資格認定証明書」の申請の際には、「特定技能所属機関の概要書」、「特定技能所属機関に係る労働保険に関する資料」等の受け入れ側の資料が必要になることはもちろん、「技能試験の合格説明書や技能検定3級の実技試験合格証明書等」、「日本語能力試験(JLPT)の合格証明書や技能検定3級の実技試験合格証明書等」等の外国人に関する資料も必要になります。
外国人を面接する際に聞くべき事項を知りたい方は「外国人採用面接シート」をダウンロードください
8.まとめ
特定技能制度は、人手不足を解消するために設けられた制度です。この制度の大きな利点は、留学生アルバイトである外国人が、学校を卒業した後に、引き続き同じ職場、同じ仕事内容で働きことができる点です。
この点は、企業にとってはもちろん、外国人本人にとっても、異国とは言え、同じ職場、同じ仕事を続けられることになることは、かなりの安心材料です。「飲食料品製造業技能測定試験」等に合格しなければなりませんが、現在アルバイト中の留学生にとっては、大きなモチベーションになるはずです。
もし、飲食料品製造業での外国人採用を検討されていれば、無料相談を行なっているので、まずはお気軽にJapan Job Schoolにお問い合わせください。