【特定技能】ベトナム現地からの完全採用マニュアル

執筆者:松本(JapanJobSchool 講師兼就職支援室長)

新型コロナウィルスの影響もあってか、始めは特定技能で働く外国人の数が伸び悩んでおりましたが、令和4年は新たに80,000人以上の外国人の方が特定技能で働き始めました。

その中で国籍別にみてみると、圧倒的に多いのがベトナム国籍の方々です。本記事ではベトナム国籍の方の採用から勤務開始までの流れを徹底解説していきます。

そもそも特定技能とは何か知りたい方は「特定技能まるわかり資料」をダウンロードください

目次

1. 特定技能で働くベトナム人の人数

令和5年6月末の時点で特定技能で働く外国人の数は173,089名おります。その中で、ベトナム国籍の方が97,485名と約56%を占めております。(2位のインドネシアが25,337名の約14%)分野別にみても、12の分野のうち9の分野で1番多くなっております。

 参考: 出入国在留管理庁 特定技能在留外国人数(令和5年6月末現在)

1-1. なぜ特定技能で働くベトナム人が多いのか?

結論から申し上げますと、ベトナムから来ている技能実習生が多いから、というのが理由になります。こちらの記事でも触れましたが、特定技能で働くには技能実習ルートと試験ルートの2つのルートがメインとなっています。そして令和4年度では、働いている130,915名のうち、技能実習ルートが96,356と約73%とかなり比率が高くなっております。技能実習生として来日している人数でもベトナムが全体の55%と高くなっており、そのまま特定技能へ移行している人が多いのでベトナム人が多い理由になります。

また、試験ルートのほうも34,078名中17,493名(51%)がベトナム国籍の方であり、全体的に日本での就労意欲が高いということが伺えます。

参考: 出入国在留管理庁 外国人技能実習制度について

実際に「特定技能介護」で働いているベトナム人にインタビューをしてみました。
なぜ日本で働こうと思ったのか、どのような思いで働いているのか知りたい方はこちらの資料をダウンロードください。

2. ベトナム人採用の将来性

今現在特定技能で働くベトナム国籍の方が非常に多いですが、今後当分の間はこのまま推移していく可能性が高いと思います。

前項で挙げましたが、試験ルートのほうでもベトナム国籍の方が非常に多いです。その要因の一つに、特定技能や技能実習で働いてる方々だけではなく、留学生として来日する方も多い、という点が挙げられます。こちらが2020年の留学生の数です。

2020年の留学生数

参考_独立行政法人 日本学生支援機構『令和3年度 私費外国人留学生生活実態調査』

コロナウィルスの影響があるため、全体的に前年比で減少しておりますが、ベトナムは中国に次いで2番目に多いです。留学生が卒業した後の進路として58%の学生さん達は「日本で就職したい」と希望しているため、特定技能で働く国籍としてベトナムが1番多いということは当分揺るぎないと言えるでしょう。

3. ベトナム現地採用のメリット・デメリット

ここまでは技能実習生や留学生として、元々日本に来ている方々を特定技能で採用する、といった事についてお話をさせていただきましたが、その他にもベトナム在住の方を採用する、といった方法もあります。

こちらではベトナム在住者を採用した時のメリット・デメリットを伝えたいと思います。

3-1. ベトナム現地採用のメリット

勤務地をあまり選ばない

私の経験からのお話になるのですが、国内に住んでいる留学生や技能実習生は東京や名古屋、大阪などの大都市圏での就職を希望する割合が非常に高く、少しそこから外れてしまうと、求人を出してもほとんど反応がありません。

ただ、ベトナム国内に住んでいる方々になると、そんなことはありません。逆に地方の企業様のほうが寮を用意してくれたり、物価が安いなどの理由から貯金できる額は意外と地方の企業様のほうが高い、ということもあります。ベトナム在住者はどちらかというとそういった条件を希望する方が多いため、大都市圏でない企業様は海外からのご採用を考えてみてはいかがでしょうか?

経験者を採用できる

特定技能制度が始まったのが2019年4月からです。始まる前に技能実習を終えた実習生たちは「もっと日本で働きたい」と考えていても帰国するという選択肢しかありませんでした。そういった方たちは、母国で技能実習で学んだことを活かして仕事をしている方が多く、その中に「また日本に来て働きたい」と考える方も少なくありません。ですので、かなりの年数の実務経験がある方を雇用できます。

3-2. ベトナム現地採用のデメリット

費用と時間がかかる

国内にいる外国人採用にくらべて以下の費用などがかかってしまうため、割高になってしまう傾向にあります。

  1. 送り出し機関への手数料
  2. 入国時の渡航費
  3. 住居の手配にかかる費用

また、後ほど記載しますが、国内在住者にくらべて在留資格取得の手続きも少し複雑になるので、その分お時間がかかってしまいます。

特定技能外国人を雇用するとどのくらいの費用がかかるのか知りたい方は「特定技能外国人コスト一覧表」をダウンロードください

業種が限られる

圧倒的に特定技能で働く人数が多いベトナムですが、ベトナム国内では2023年4月現在、12業種のなかの「建設」しか特定技能の試験が行われておりません。(一番多いフィリピンは10業種行われています。)詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

ですので当分は技能実習を終えた方、もしくは日本で試験を合格してから帰った留学生などが対象になり、現状はどんな業種でもベトナムから採用できます、とは言い難い状況ですが、今後は徐々に増えていく可能性が高いと思われます。

4. ベトナム現地から特定技能を採用する流れ

こちらがベトナム在住者を面接・採用するときの流れになります。

ベトナム特定技能外国人採用の流れ

出入国在留官庁 特定技能に関する二国間協力覚書

ベトナムからの採用にあたり、送り出し機関を通すことが必要とされています。

表だけですとわかりづらいので順を追って説明いたします。

STEP
受入機関と認定送り出し機関との間で「労働者提供契約」を結ぶ

受入機関とは、外国人を受け入れようとしてる日本の企業、もしくはその代行を行っている登録支援機関です。弊社もこの契約を結んでおります。

こちらの契約を結んで、はじめて面接が可能になります。

STEP
雇用契約の締結

こちらは受入機関(日本の企業)と特定技能で働きたいベトナム人との間で締結します。

STEP
推薦者表の発行申請(ベトナム側の手続き)

雇用契約を結んだら、内定者は認定送り出し機関を通じて、ベトナム労働傷病兵・社会問題省海外労働管理局(DOLAB)から推薦者表の承認が必要になります。この推薦者表はベトナムの制度上、ベトナム国籍の方が海外での就労についてベトナム側の手続きを完了したことをベトナム政府が証明する文書とされています。この推薦者表は、下記STEP 4の在留資格認定証明書交付申請において提出する必要がありますので、内定者から受入機関に送ってもらう必要があります。

STEP
在留資格認定証明書の交付申請

受入機関は、地方出入国在留管理官署に対し、特定技能に係る在留資格認定証明書の交付申請を行ってください。上記STEP 3で発行され、認定送出機関から送付してもらった推薦者表の提出も必要です。同証明書が交付された後、雇用契約の相手方に対し、同証明書の原本を送付してください。

ものしりシップくん

国内にいる留学生や技能実習生を特定技能に在留資格を変更するときに行うのは「在留資格変更許可申請」。海外に住んでいる人に特定技能の在留資格を取得させるときに行うのが「在留資格認定証明書交付申請」なのじゃ。

STEP
査証(ビザ)発給申請

STEP 4の申請で取得した在留資格認定証明書をベトナムの内定者に送り、受け取ったら在ベトナム日本国大使館に提示し、査証発給申請を行います。

STEP
特定技能外国人として入国

日本到着時に上陸審査が行われ、その結果上陸条件に適合していると認められれば、上陸が許可され晴れて特定技能の在留資格が付与されます。

その他ベトナム人を採用するための要件などを知りたい方はこちらの記事もご参照ください。

5. 採用までに発生する費用

手順がわかったところで、こちらの章では採用までに発生する費用について詳しく解説していきます。中には省略できる費用もありますが、一般的にかかる費用は以下の7つに名目になります。

※採用までに発生する主な費用

①人材紹介会社を通す場合の紹介料1人あたり10~60万円
②特定技能協議会加入費用加入する協議会によって異なる
③出入国在留管理局への申請代行費用1申請あたり10~20万円
④送出し機関手数料1人当たり約20万円(1,500ドル相当)
⑤登録支援機関への支援委託料1人あたり月額1.5~3万円
⑥ベトナムからの渡航費時期や航空会社などによって異なる
⑦住居の手配に関する費用(敷金礼金など)物件によって異なる

ベトナム現地から特定技能外国人を採用する場合、必ず送出し機関を通じて手続きを行うため、送出し機関へ支払う手数料が発生します。また、送出し機関の他に特定技能外国人の採用に関わる機関として「登録支援機関」を利用するケースもあります。特定技能外国人の受入前や受入期間中にはさまざまな支援業務を行う必要がありますが、自社ですべての支援を実施できない場合は、登録支援機関に支援業務の一部または全部を委託することが可能です。

登録支援機関へ支払う支援委託料は登録支援機関によって大きく異なり、さまざまな料金体系が存在します。そのため、支援業務の委託を検討している場合は複数機関で相見積もりを取り、どのようなサービスにいくらかかるのかを事前に確認しておくことが重要です。入国時の渡航費と敷金・礼金といった住居の手配にかかる初期費用の負担は義務ではありませんが、特定技能外国人の負担を考慮し、受入機関が負担するケースが多くなっています。

5. ベトナム現地から採用する際の注意点

実際に弊社もベトナム在住者の採用を登録支援機関として行ってみたうえで、ご注意する点を2点挙げたいと思います。

5-1. 送り出し機関の選定が必要。

出入国在留管理庁のこちらのページに認定送り出し機関の一覧があります。英語で表記され、かなりの数の送り出し機関があるため、どこに連絡していいか正直わかりません。また、中には法令に違反をしている悪質な送り出し機関もおり、大きな問題となっています。弊社も複数の送り出し機関と一緒にお仕事をやりましたが、言うことがまちまちで、すごく苦労をしました。登録支援機関に支援業務を委託する場合は、登録支援機関と取引のある送出し機関を紹介してもらえるため、自社で送出し機関を探す必要はありません。

5-2. 余裕をもったスケジュールでご採用を。

弊社ではベトナム在住者を採用していただいた場合、勤務開始まで約5~6ヶ月を見ていただいております。

出入国在留管理庁の審査などの日本側の手続きに関しては、ある程度予測が着くのですが、ベトナム側の手続きに関しては予測がむずかしく、場合によってはかなり長期化してしまうこともあります。例えば、書類に不備などがあった場合、日本側ですと書類の追加や修正で対応してくれるのですが、ベトナム側ですとすべて最初からやり直し、のようなケースもありました。また、お祭りの時期や旧正月の時期など、審査する機関が休みだったり、明らかにいつもより審査期間が長い、などということもあります。

6. よくある質問

こちらでは企業のご採用担当者様からよくいただく質問を3つほど挙げさせていただきます。

ベトナム人の国民性や性格について

ベトナム人の国民性は、勤勉で勉強熱心、真面目と言われることが多いです。私もおおよそ同じようなイメージです。性格については首都ハノイのある北部とホーチミンのある南部で、若干違いがあるように感じます。北部の方はすこしシャイで、知らない人に話しかけたりすることが苦手な人が多く、その分、わからない事を自分で勉強する、といったタイプが多いです。南部の方は明るい性格ですこしガサツなところもありますが、コミュニケーション能力が高く、飲食店のアルバイトで人気者になっていたりします。もちろん個人差はありますが、一般的に

  • 北部=製造業や建設業など黙々とがんばるタイプのお仕事
  • 南部=外食業や介護業などコミュニケーション能力を必要とするお仕事

に向いてると言われております。ご参考にしてみてください。

文化的、宗教的な注意点はありますか?

ベトナム人の86.3%が無宗教です。お正月には神社にお参りに行き、クリスマスにはケーキを食べる、といったように宗教に関しては非常に日本人と近い感覚だと言えると思います。こういった点からも、日本での就労と非常に相性がよいので、結果的に特定技能で働く人数が一番多くなっているのではないでしょうか?

参考: VIETJO  ベトナム社会主義共和国・基本データ

円安の影響はありますか?日本は今後も選ばれますか?

2022年10月の円安の影響で帰国するベトナム人のニュースを観た方もいらっしゃると思います。確かにベトナムは賃金が毎年上昇しておりますが、2022年の1ヶ月の平均賃金が660万ドン、日本円に直すと33,000円です。日本の2021年の1ヶ月の平均賃金が307,000円なので、およそ9倍の差があるので、まだまだ日本で働きたい、と考える方は多く存在すると考えられます。

また、ベトナムでは日本のアニメが放映されているなど、親日国家としても知られているので、そういった点からも日本を選ぶ方が多いといったこともあると思います。

参考: JETRO ビジネス短信」添付資料                
参考: 厚生労働省 令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況

7. まとめ

特定技能という在留資格は日本の人手不足を解消するためにできた制度です。しかし、人手不足の企業と就労の条件を満たしている外国人の数をみてみるとまだまだ売り手市場であると言えます。また、日本に既に生活している外国人で『日本全国どこでも働きます!』みたいな方は今の時代、ほとんどいないと思ったほうがいいでしょう。ですので、みなさまも一度ベトナムをはじめとする海外在住者のご採用についてお考えいただけたら幸いです。煩雑な手続きに関しては登録支援機関として200名以上の支援実績がある弊社がご対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

株式会社JJS(JapanJobSchool)の講師兼就職支援室長。
所有資格:行政書士・外国人実習雇用士

今まで500名以上の「技術・人文知識・国際業務」外国人を就職に導く。外国人との対話は笑顔とフランクさを信条に、外国人生徒からの人気No1の先生。

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