【企業向け】インドネシアのタブーとは?文化的な習慣・宗教的な事情・食事のマナーに注意が必要!

執筆者:Divership編集部|外国人雇用担当部門
監修者:デリー(インドネシア担当)

インドネシア人材の採用において、インドネシアのタブーや文化的理解は極めて重要です。業務指導、パフォーマンス評価、キャリア支援など、人材管理の各プロセスにおいて、文化的な違いを理解していないと、コミュニケーションの誤解、時間感覚の違い、宗教行事への配慮不足など、さまざまなトラブルが生じる可能性があります。

しかしタブーや文化的背景を理解することで、人材管理がしやすくなります。従業員同士のコミュニケーション促進にもつながり、生産性の向上が見込めるでしょう。またインドネシア人を現地で採用するときや、出張で訪れるときにもタブーを知っておくと安心です。

この記事では、インドネシアの文化、風習、宗教、食事に関するタブーを詳しく解説しました。インドネシア人材への理解を深める内容なので、異文化間の壁を乗り越え、円滑な職場環境を整えるために読んでみてください。

以下の記事を併せて読むと、インドネシア人への理解が深まります。

目次

1.インドネシアの宗教事情

インドネシアは、イスラム教を中心にキリスト教、ヒンドゥー教、仏教、儒教など信仰心が強く、多宗教国家として知られています。宗教省の調査によると、インドネシアのイスラム教徒は、2.38億人に達していると報告されていました。

インドネシアの宗教人口比率は以下のとおりです。

  • イスラム教:約86.93%
  • キリスト教(プロテスタントとカトリックを含む):約10.55%
    (プロテスタントが7.47%%、カトリックが3.12%)
  • ヒンドゥー教:1.71%
  • 仏教・儒教:0.82%

※2021年、宗教省統計
※参考:概観(国土、民族、社会、歴史など) – 国際協力銀行

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2.インドネシアの文化・風習

インドネシアは、多様な文化と風習が共存する国です。300以上の民族により500以上の言語が話され、各地域によって異なる習慣があります。家族との絆を重視し、食文化ではスパイシーな料理が好まれます。また、時間に対する感覚は「ゴム時間」と称され、柔軟性が特徴です。ここでは、インドネシアの知っておきたい文化・風習についてまとめました。

2-1. 朝と夜の2回シャワーを浴びる

シャワー画像
インドネシアの入浴モデル 表

※1週間の入浴回数を調査した結果
※出典:インドネシア・マレーシアの入浴スタイルと水使用実態に関する調査研究|空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集

インドネシアの気候は熱帯であり、一年中高温多湿です。そのため、体温を下げるために1日2回シャワーを浴びる習慣が根付いています。日本のように浴槽にお湯をはるというより、小さなバケツに溜めた水で「水浴び」をするイメージです。

イスラム教の信者が多いスラバヤ市では、お祈り前に体を清めるため入浴や洗顔をすることも。信仰心が強い人ほど、頻繁に水浴びをするという調査結果もありました。

デリー(インドネシア担当)

インドネシアでは、2回シャワーを浴びない人は非常識と思われるほど重要視されている文化です。

2-2. 約束時間の1時間後に集合する

交通渋滞や時間にルーズな国民性から、インドネシアでは遅刻することを前提に、1時間後に集合することもよくあります。約束の時間より遅れることが許容されており、飛行機の遅延もめずらしくありません。

時間がゴムのように伸び縮みするという感覚を持っており、「ジャム・カレット(ゴムの時間)」と呼ばれています。

基本的に「のんびりしたい」という国民性なので、時間を守ることはプレッシャーに感じる傾向に。インドネシア人と待ち合わせをする場合には、約束した時間には来ない前提でいた方がよいでしょう。

デリー(インドネシア担当)

約束の時間ぴったりに集合してほしい場合は、あえて「1時間早い時間」を伝えておくといいです!オンタイムに着くと、「暇な人」だと思われてしまうという考え方が背景にあります。

2-3. 食事の支払いは基本的に男性が支払う

お会計の様子

インドネシアでは、食事の支払いは一般的に男性がします。「レディーファースト」の意識が高く、男性に甲斐性を求める側面もあるようです。また助け合いの文化も背景にあり、同世代の友人同士なら、誘った人もしくはお金持ちの人が支払います。グループで食事をしても、基本的にはそのなかのひとりが支払うため、日本人は戸惑うかもしれません。「日本人=お金持ち」のイメージを持つインドネシア人も多く、食事に行くと気付いたら支払うことになっているケースも。割り勘が浸透している日本とは異なる文化ですが、インドネシア人の習慣として覚えておきましょう。

デリー(インドネシア担当)

余談にはなりますが、日本では誕生日には友達や仕事仲間にごちそうしてもらうことが多いですが、インドネシアでは逆で、誕生日は自分がおごる側になるというのも日本と違った特徴です!

※一部の地域や状況においては異なる場合があります。

2-4. 「もう食べた?」「どこに行く?」は挨拶

インドネシアでは、「もう食べた?」や「どこに行く?」は日常的な挨拶として使われます。相手への思いやりを示す言葉であり、実際にその答えを求めているわけではありません。現地ではこのような挨拶に、「I’m eating the wind」(直訳:風でも食べに)と答えることもあるようです。

3.インドネシアの文化・風習に起因するタブー

インドネシアの文化や風習のなかにも、いくつかのタブーが存在します。これらのタブーは、日常生活や社会的な交流において重要な役割を果たしており、尊重することでインドネシア人との良好な関係が築きやすくなります。

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3-1. 左手で受け渡しや挨拶をしてはいけない

インドネシアでは左手は「不浄」とされるため、物を渡したり受け取ったりする際には右手でするのがマナーです。特に食事や握手をするときには、この習慣を守ります。どうしても右手が塞がっているときには、必ず謝罪の言葉を添えましょう。

3-2. 人前で怒鳴ってはいけない

インドネシアでは、公の場で感情を露わにすることは避けるべきです。特に大きな声で怒りを表すことは、相手の尊厳を傷つける行為と見なされ、関係を損なう原因になります。もし注意するときは、プライベートな場で穏やかな口調で伝えましょう。

3-3. 子供の頭を触ってはいけない

インドネシアでは、頭は魂が宿る神聖な部分とされています。そのため、子どもだからといって頭を撫でることは、タブーとされています。何気なく頭を触ってしまうと、怪訝な表情をされるかもしれません。もし不注意で触ってしまったら、「ミンタ マァフ(本当にごめんなさい)」と謝罪すればトラブルにまでは発展しないでしょう

4.インドネシアの宗教上のタブー(イスラム教)

インドネシアには、信者の日常生活に深く関わる多くの宗教上のタブーがあります。これらは信仰の実践と社会秩序の維持に寄与しています。

4-1. 1日5回の礼拝を怠ってはいけない

礼拝の様子

イスラム教では、1日5回の礼拝(サラーと)が義務付けられています。心の食事ともいわれ、信者の精神的な健康と神への感謝を示す重要な行為です。

礼拝は夜明け前、正午、午後、日没、夜の5回に分けて行われます。礼拝を怠ることは、神への不敬とされ、信仰生活において重大な過ちと見なされます。
イスラム教を含めて、外国人労働者には宗教的配慮が必要です。例えばイスラム教の外国人労働者を雇用する場合、礼拝の時間とスペースを確保します。

外国人労働者に対する宗教的配慮については、以下でも詳しく解説しました。

4-2. 犬を触ってはいけない

イスラム教のなかには、犬を不浄とする考えがあります。特に犬の唾液は忌避され、犬がなめた物は7回洗浄する必要があるとされています。

しかし、犬が完全に禁じられているわけではなく、猟犬や牧羊犬など、人間の生活に役立つ犬は古くから重宝されてきました。また、イスラム教徒の間でも犬に対する態度は多様であり、一概に犬がタブーとはいえませんが、宗教的な規則は存在します。

4-3. 父母への敬意を忘れてはいけない

インドネシアの文化では、親への敬意は非常に重要です。品格のある人とは、神が親を通じて生命を授けた存在とされています。親は子どもの成長を見守り、自立するまで教育します。

子どもには、親を愛し、尊敬し、従う責任があると考えられてきました。礼儀をわきまえ、乱暴な言葉遣いや態度を避けることが求められます。反対に親に恥をかかせる行為は、社会的なタブーとされています。

5.インドネシアの食事に関するタブー

インドネシアは多様な文化と宗教が共存する国であり、食事に関してもさまざまなタブーが存在します。

特にイスラム教徒が多数を占めるインドネシアでは、ハラール(許された)食品ハラーム(禁じられた)食品の区別が厳格に行われています。また、ヒンドゥー教徒の食事のタブーも存在し、特にバリ島などの地域では顕著です。さらに、中華系のコミュニティには独自の食事マナーがあります。

イスラム教ヒンドゥー教中国系ルーツ
・豚肉を食べてはいけない

・アルコールを飲んではいけない

・ラマダン中は食事をしてはいけない
・牛肉を食べてはいけない・食事はすべて食べずに少し残す

ベトナム・ネパール・ミャンマー・スリランカについてまとめた「外国人理解ブック」はこちら

5-1. 豚肉を食べてはいけない(イスラム教)

イスラム教の教えにより、豚肉は不浄とされており、食べることが禁じられています。インドネシアでは、イスラム教徒が国民の大多数を占めるため、豚肉を提供するレストランは少なく、ハラール認証を受けた食事が一般的です。豚肉を避けることは、イスラム教徒にとって信仰心の強さを表明しています。

デリー(インドネシア担当)

お店で豚肉が売られてる、または料理に少しでも豚肉が使用されているだけでも嫌がるムスリムの人はいます。
一方で、そのような場合でもあまり気にしない人も存在するのも事実です。

5-2. アルコール飲料を飲んではいけない(イスラム教)

禁酒

イスラム教では、アルコール飲料の摂取も禁止されています。アルコールが精神を鈍らせ、不適切な行動を引き起こす可能性があると信じられているためです。インドネシアでは、公共の場でアルコールを飲むことは一般的ではなく、特にイスラム教徒が隣で食事しているときにお酒を飲むのはマナー違反とされています。

5-3. ラマダンの期間は断食をしなければならない(イスラム教)

ラマダン

ラマダンは、イスラム暦の9番目の月に行われる断食の期間で、イスラム教徒は日の出から日没まで飲食を断ちます。「神に近づく」「欲望を抑えてよりよい自分になる」ための期間とされ、自己の信仰心を高める目的があります。インドネシアでは国民の生活がこの期間に合わせて変わり、多くの人々が断食を実践します。

5-4. 牛肉を食べてはいけない(ヒンドゥー教)

ヒンドゥー教 牛

ヒンドゥー教では牛は神聖な動物とされ、牛肉の摂取は禁じられています。なぜなら牛は、破壊と創造の神として崇められる「破壊神シヴァ」の乗り物だからです。

しかし地域によって宗教的解釈が異なるため、ヒンドゥー教徒でも牛肉を食べる文化が存在します。実際にヒンドゥー教が多いといわれるバリ島でも、牛肉が広く食されています。

5-5. 食事は全部食べずに少し残す(中華系)

インドネシア料理

中華系の文化では、食事を完全に食べ尽くすのではなく、少し残すことがマナーとされています。食べ残す理由は、「十分に食べられて満足です」という感謝の気持ちを表現するためです。

ただし、インドネシア全体でこの習慣が広く行われているわけではなく、特定のコミュニティや家庭に限られています。

6.インドネシアの言葉に関するタブー

日本では、ビジネスの場面で敬語の誤用や不適切な言葉遣いがタブーとされ、相手に失礼にあたると考えられています。一方インドネシアでも、タブーとされる言葉や悪口があるので注意しましょう。

<インドネシアでタブーな言葉>

  • anjing(犬)
  • babi(豚)
  • monyet(猿)
  • cucunguk(ごきぶり)
  • edan(気違い)
  • gelo(狂う)
  • cewek(女性)
  • cowok(男性)
  • ayam(良くない女性)
  • hidung pesek(低い鼻)
  • kate(背の低い人)

タブーな言葉とされるのは、意味があります。例えばcewek(女性)、cowok(男性)、ayam(良くない女性)は、若者同士で使う隠語(prokem)なので、ビジネスシーンには適していません。また宗教的な観点からは、不浄とされる動物のanjing(犬)やbabi(豚)という単語も避ける傾向にあります。

7.インドネシアの贈り物に関するタブー

インドネシアでは、贈り物を選ぶ際にはいくつかのタブーがあります。不注意で贈ってしまうと、相手を不快にさせるかもしれないため注意しましょう。

7-1. 香水をプレゼントしてはいけない

香水はインドネシアで贈り物として避けるべき品のひとつです。香水をプレゼントすることは、関係の「別れ」を連想させるとされ、縁起が悪いと考えられています。インドネシア人に贈り物やお土産を渡すときは、別の品を選びましょう。

8.結婚に関するタブー

結婚はインドネシアの多くの地域で重要な社会的儀式であり、多くの伝統的な信念や習慣が存在します。これらのタブーを理解し尊重することは、地域社会での調和を保つ上で非常に重要です。

インドネシア 結婚

8-1. 兄弟の1番目と3番目同士は結婚できない(ジャワ島)

ジャワ島には、兄弟のなかで1番目と3番目の結婚を禁じる習慣があります。これは家族内の調和を保つための伝統的な信念であり、ルールを破ることは大きなタブーとされています。

8-2. 兄や姉より先に結婚したらプレゼントを贈る

インドネシアでは、年長の兄弟がまだ独身の場合、年下の兄弟が先に結婚する際には、プレゼントを贈る文化があります。年長者への敬意を示す慣習であり、家族間の絆を強くする行為です。日本と同様に、「新しい結婚生活への祝福」という意味もあります。

デリー(インドネシア担当)

因みに私はこのタブーを知りませんでした!
インドネシアは地域によって文化に違いがあるので、すべての地域で当てはまる文化という訳ではないです。

9.まとめ

インドネシアのタブーに関する洞察を得ることは、人材の定着や社内のグローバル化に対応するために重要です。採用担当者はこの記事で提供している情報を活用し、インドネシア人が働きやすい職場環境を整えて、文化的な誤解を未然に防ぎましょう。

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