人出不足解消へ|建設業で外国人労働者を受け入れる方法や準備について様々なデータを元に詳しく解説
多くの産業で人手不足が叫ばれる中、建設業も人手不足に悩まされています。令和6年7月に行われた建設労働需給調査結果では、過不足率が2.0%の不足と労働者が足りない状況が続いており、慢性的な労働者不足であることが明らかです。※
慢性的な人手不足の解消を図るため、期待されているのが外国人労働者の活用です。建設業で外国人労働者を受け入れる方法やメリットは何か、気になる採用担当者の方も多いのではないでしょうか。今回は建設業における外国人労働者の受け入れを中心に解説します。
本記事では、建設業界で人手不足にお困りの採用担当者の方々向けに、外国人労働者を受け入れる方法や準備などを解説いたしますので、ぜひ最後までご覧ください。
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1.建設業で外国人を受け入れるには
本項目では、建設業で外国人を受け入れる前提の部分について解説します。外国人労働者の受け入れ状況などを合わせてまとめました。
1-1.建設分野の外国人受け入れ状況
2023年末時点で、日本で働く外国人の総数は2,048,675人と過去最高を更新しています。そのうち、建設業は144,981人と全体の7%ほどを占めている状況です。
そのうち、圧倒的に多いのが技能実習生で88,830人と半数以上を占めています。一方、特定技能外国人も急激な伸びを見せており、24,463人と2022年と比べて倍近く増えており、今後技能実習生の数を特定技能外国人が追い抜く勢いです。
建設業で働く特定技能外国人31,853人のうち、7割ほどの割合を占めるのがベトナム人で21,291人です。その次のフィリピン3,206人、インドネシア3,075人と比べると明らかに数に違いがあります。※
※:国土交通省「建設分野における外国人材の受入れ状況等について」
1-2.【重要】在留資格の確認をする
外国人労働者を採用する上で最も注意しなければならないのが、在留資格の確認です。
在留資格によっては、何の制限もなく働ける外国人もいれば、就労時間に限りがある外国人もいます。もしも在留資格を確認しないで外国人労働者と契約して働かせた場合は、不法就労助長罪として罰則の対象になるため、注意が必要です。
企業側にとって在留資格の確認は義務であり、雇用時と離職時それぞれで外国人労働者の氏名や在留資格、在留期間などを確認して、ハローワークに伝えることが必須です。仮に届け出を怠っても、罰則の対象となります。※
2.建設業で働ける在留資格
建設業に従事できる外国人は基本的にいずれかの在留資格が該当します。
- 特定技能「建設」
- 技能実習
- 技術・人文知識・国際業務
- 技能
- 資格外活動許可(アルバイト)
- 身分系在留資格
本項目では、上記の在留資格についてまとめました。
2-1.特定技能「建設」
ここ数年で急増する特定技能外国人は特定技能「建設」の在留資格で働いています。2019年の創設時は11職種に分散されていましたが、現在は3つの区分に分けられている状態です。
3つの区分に分けたことで、その区分内に該当する資格を得られれば同じ区分内での業務が行えるようになりました。より仕事の幅が広がり、スムーズに仕事ができるようになっています。
特定技能外国人を雇用する際には、同じスキルを持つ日本人と同じかそれ以上の報酬を用意する必要があります。
特定技能には1号と2号があり、1号だと通算5年まで働けるほか、2号になると在留資格の更新回数が無制限となるため、事実上の永住が可能です。特定技能「建設」ではおよそ30人が特定技能2号になっており、今後もその数が増えることが想定できます。※
※:国土交通省「建設分野における外国人材の受入れ状況等について」
「特定技能」って何?どうやって外国人を採用するの?と疑問に思った方
『2024年最新版特定技能まるわかり資料』をご参考ください。
\ 人出不足解消や即戦力獲得の方法が分かる/
特定技能「建設」で外国人を採用する場合の手順や要件についてこちらの記事で解説しています。
2-2.技能実習
建設業で働く外国人のうち、半数以上を占めるのが在留資格「技能実習」です。技能実習には1号から3号までがあり、1号だと1年のみ、2号・3号はそれぞれ2年ずつ、合計5年間働けます。技能実習2号を修了すると特定技能1号に無試験で移行できるため、技能実習2号+特定技能1号で最長8年間働ける計算です。
令和2年から技能実習生に対する報酬面のルールが定められ、「実習生に対し、報酬を安定的に支払うこと」が定められています。この場合の「安定的に支払う」は毎月の給与支払いを想定しており、これまで認められていた日払いなどでの支払いができなくなりました。
2-3.技術・人文知識・国際業務
在留資格「技術・人文知識・国際業務」でも建設業に従事することは可能です。ただし、現場作業員として従事させることは認められておらず、建設関連の学歴もしくは実務経験を踏まえた仕事をする場合に認められます。
例えば、大学で建築を学び、建築関連の技術にちなんだ仕事を行う場合などが該当します。あくまでも専門性の高い仕事に従事する人を中心に与えられる在留資格のため、現場作業員の穴を埋めるために活用される在留資格とは言えません。
2-4.技能
在留資格「技能」はスキルの高い技能を持ち、替えがきかないような外国人に与えられます。建設業では「建築技術者」が該当します。ただ、「技能」に関しても現場作業員の穴埋めに使えるものではなく、日本にない建築技能などを持っている技術者に与えられるのが特徴です。
2-5.資格外活動許可(アルバイト)
留学生など、本来就労目的で来日したわけではない外国人がアルバイトを行う際に必要となるのが「資格外活動許可」です。資格外活動許可には以下の就労時間のルールがあります。
- 1週間の就労時間は28時間まで
- 留学生は長期休暇中、1日8時間・週40時間まで
一定の時間内であれば、現場作業員などのアルバイトに従事できます。ただし、資格外活動許可を得ていない留学生などを働かせると不法就労助長罪となり、刑事罰の対象となるので注意が必要です。
2-6.身分系在留資格
在留資格の中で最も制限がなく、自由に働けるのが身分系在留資格です。身分系在留資格は以下が該当します。
- 永住者
- 永住者の配偶者等
- 定住者
- 日本人の配偶者等
これらの在留資格であれば、就労時間などの制限なく働けるほか、単純労働なども認められ、日本人と同様の扱いでも問題ありません。
3.外国人を受け入れるまでの流れ
外国人を受け入れる一連の流れについて、ここでは「技能実習」と「特定技能」のそれぞれを解説していきます。
技能実習
技能実習の受け入れ方法は「企業単独型」と「団体管理型」の2つの方法があります。
詳しくはこちらの記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
受け入れまでの流れは以下の通りです。
技能実習生を採用するには、監理団体に加入して手続きなどを委託する方法が一般的です。監理団体に加入すれば企業側が面倒な手続きをせずに済み、入国後の講習なども監理団体が行うため、採用や育成の手間が大部分軽減されます。
技能実習は廃止される!?
2023年9月、技能実習の人権上の問題が指摘され続けた結果、ついに政府は技能実習制度の解消を表明しました。
そして、技能実習に代わる外国人材受け入れの新制度として新たに「育成就労制度」が開始されます。
「育成就労制度」は、育成就労産業分野において特定技能1号の技能を有する外国人を育成するとともに、産業分野の人材不足解消を目的としています。
現時点では、2027年から開始し、2030年までを移行期間とする見込みです。
特定技能
次は特定技能についてです。
2019年4月に創設された新しい在留資格「特定技能」では建設の他、介護や製造業など12分野で外国人労働者の就労が認められています。ここでは、特定技能「建設」で採用する場合の流れについて説明していきます。
参考:法務省「特定技能ガイドブック(事業者用)」、JAC外国人受入マニュアル第2章01.受入
日本に居住する技能実習生や留学生を採用する際は、上記ステップ8の出入国在留管理局への申請で許可が下りると、特定技能「建設」に移行できます。
一方、海外にいる人材を採用する際は、出入国在留管理局での許可後、本国の日本大使館や日本領事館で査証(ビザ)を取得し、日本へ入国します。
特定技能の場合は、原則として技能試験・日本語試験をパスした外国人が取得できます。一方、技能実習2号を修了した外国人は特定技能への移行ができ、その際に技能試験・日本語試験が免除されるため、技能実習生と比べると色々なルートがある状況です。
外国人採用をしたいけど、具体的に何をしたらいいか分からない方
まずはこちらをご参考ください!
参考:法務省「特定技能ガイドブック(事業者用)」
参考:一般社団法人 建設技能人材機構「外国人受入れマニュアル」
3.外国人労働者を雇うメリット
慢性的な人手不足に対応するため、外国人労働者を雇うメリットには以下のものが挙げられます。
- 若い労働者を確保できる
- 社内の活性化につながる
- グローバル化の足掛かりになる
ここからは、それぞれのメリットについて解説します。
3-1.若い労働者を確保できる
外国人労働者を雇うメリットとして、若い労働者を確保できる点があり、データでも明らかです。外国人労働者を年齢別で見ると、最も多かったのは20代でした。しかも、在留資格「技能実習」において半数以上が20代で、残りも30代が多く、全体的に若さが目立ちます。※
※:厚生労働省「在留資格別×年齢別にみた外国人労働者数の推移」
世界的に、若い世代の失業率が非常に高く、若年失業率は13%前後と高めです。若者の20%はニートになっているとされ、アラブ諸国の場合、若者の3人に1人がニートになっているという結果が出ています。※
※:労働政策研究・研修機構「若年失業率は13%と15年ぶりの低水準も、5人に1人がNEET」
職を求める海外の若者を日本が積極的に受け入れることで、若い労働者を確保できるほか、若いうちから技術を磨いてもらって定着すれば、企業内の生産性が高まりやすくなるでしょう。
3-2.社内の活性化につながる
外国人労働者を採用することで、社内の活性化につながります。日本人とは違う感覚を持つ外国人労働者が入ることで、さまざまな刺激を既存の従業員たちに与えていき、色々な動きにつながっていくと言えるでしょう。
日本に対する好印象を抱いて、労働者としてやってくる外国人が多く、母国への送金などの理由も相まって仕事に対してガツガツする外国人が少なくありません。いわば前向きに仕事に取り組む外国人労働者が多いため、その姿勢に刺激を受けた従業員が、「負けていられない」とばかりにより真剣に仕事に取り組んでいくというのがよくある流れです。
また、外国人を受け入れる際には事前に説明を行うなど、環境整備が必要となります。その環境整備の際に問題点が洗い出され、最終的に問題点が払拭されていくケースもあるでしょう。準備をうまく行っていけば、外国人労働者の存在で社内の活性化につなげていくのは十分可能です。
3-3.グローバル化の足掛かりになる
外国人労働者を受け入れていくことは、グローバル化の足掛かりになるため、企業側にとって大きなメリットとなります。複数の国から外国人労働者を受け入れていく中で、それぞれの国に関する文化や考え方を得られるため、その知見を踏まえたアクションを起こせるようになるのが大きなポイントです。
また、海外進出に際して、過去に働いていて母国に帰国して活躍している元技能実習生などを窓口に交渉を行っていくことで、よりスムーズな海外進出につながると言えます。グローバル化を目指すとはどういうものなのかを、外国人労働者から学んでいくことが可能です。
4.建設業での受け入れ準備
建設業で外国人労働者を受け入れていくには、以下の準備が必要となります。
- 文化や価値観への理解
- 安心して働ける現場環境の整備
ここからは、それぞれの準備について、さまざまな角度から解説します。
4-1.文化や価値観への理解
建設業に限らず、外国人労働者を受け入れる際には、文化や価値観に対する理解を深めていくほか、学んだ上で従業員たちに伝えていくことが必要です。
例えば、時間に対する考え方だけでも日本人と外国人では大きな違いがみられます。日本では1分1秒を大切にする人が多いですが、インドネシアのように多くの人が時間にルーズで、大幅な遅刻が日常茶飯事というケースもあります。※
他にも宗教に対する考え方や家族、仕事、お金などそれぞれの国で文化も価値観も異なるため、まずは企業側で理解を深めていき、日本人労働者に伝えていくことが必要です。
また、外国人労働者の中には日本人労働者とのコミュニケーションに悩みを抱える人が多いという現実があります。中でも日本語が決して得意ではない外国人に対して配慮がないことに悩む外国人が珍しくありません。何の対策も取らないと、コミュニケーションの段階でつまづくケースが目立ち始め、文化や価値観を学び、理解することも厳しくなってしまいます。※
※:PR TIMES 日本で働く外国人社員アンケート&企業ヒアリング調査『コミュニケーションの問題は、日本語だけじゃない』
一方で、日本でのルールに従ってもらうことも欠かせません。最大限文化や価値観を尊重しつつも、しっかりとルールは守ってもらうという姿勢が必要となります。メリハリをつけながら外国人労働者たちと接していくことで、お互いに理解を深め、仕事がしやすい環境が構築されていくのです。
4-2.安心して働ける現場環境の整備
建設業で働く外国人労働者に対して、現場環境の整備を行うことは重要であり、受け入れ段階で徹底した対策が必要です。最大の要因は労働災害の多さにあります。外国人労働者の労働災害発生率を見ると、外国人労働者全体で1,000人につき2.77人が労働災害に巻き込まれている状況です。
特に特定技能は1,000人につき4.31人、技能実習も4.10人と大変多いことが言えます。日本人も含めた労働災害発生率は1,000人につき2.36人であることを考えると、外国人労働者の発生率の高さがわかります。※
また労災による死亡者の数は建設業が最も多く、令和5年では32人の外国人が亡くなった中、15人が建設業でした。労災が発生すれば死に直結しかねない環境にあるといっても過言ではありません。
建設業での労災で目立つのが「墜落・転落」で他の業種よりも多い結果が出ています。労災が起こりやすい要因がはっきりとしている以上、企業側の対策は立てやすいと言えます。
外国人労働者に対する安全の教育では、外国人労働者の母国語で指導を行うのが確実です。外国人の労働災害を防ぐため、「母国語に翻訳した教材」や「視聴覚教材」を用いることで、外国人労働者がすぐに理解できるような状態になります。※
※:厚生労働省「外国人労働者及び外国人を雇用する事業者の皆さまへ」
ただでさえ外国人労働者の労災発生率が高く、建設業は労災での死亡発生率が低くない状況において、安心して働いてもらう環境を整備することはとても大事です。
5.まとめ
建設業は現在に至るまで、根強い人手不足の状態にありますが、特定技能「建設」や技能実習など、さまざまな在留資格を活用し、外国人労働者を集めることで人材不足の改善が行えます。現に建設業で働く外国人労働者の数は増加傾向にあるため、需要に応えるだけの供給体制にあると言えるでしょう。
今回ご紹介した内容を踏まえて、建設業で働きたいと考える外国人労働者を積極的に採用し、人材不足の解消を目指していきましょう。