ミャンマー人と働く上で知るべきタブー・マナー・文化などを解説
執筆者:伊藤(株式会社JJS 取締役)
監修者:チター(ミャンマー国籍担当)
ミャンマーは強い親日国で、仏教の教えから年上の人を敬うなど日本と似ている文化を持つ東南アジアの国です。今回はそんなミャンマー人と働く前に知っておきたい、タブーやマナーを解説します!
外国人を雇用する際、その国の文化の理解はとても重要です
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1. ミャンマーの基本情報
出典:外務省「ミャンマー連邦共和国」
まずはこちらの章でミャンマーの基本情報をお伝えいたします。
1-1. 豊富な労働人口
ミャンマーの国土は日本の1.8倍と広大で、人口は約5,000万人です。ミャンマーの生産人口(15~64歳)は66.4%で若い労働人口が多いのが特徴的です。
一方で、ミャンマー人の月収の中央値は2021年時点で現地日系製造業の作業員でも1万6000円程度です。ベトナムの現地日系製造業の作業員の月収中央値が3万3000円程度であることと比べると、他の東南アジア諸国と比べても給与水準が低い状況です。そのため、日本やタイ、シンガポール、マレーシアなどに出稼ぎを希望する若者も多いです。
参考:外務省「ミャンマー基礎データ」
IDE-JETRO「途上国・新興国の2020年人口センサス 第4回 ミャンマー――揺れる社会の静かな痕跡」
JETRO「新型コロナ禍2年目のアジアの賃金・給与水準動向
1-2. 宗教は仏教!共通点が多いミャンマー人と日本人
ミャンマー人と日本人の共通点は多いです。
まず、宗教はミャンマー人の90%が仏教を信仰しています。ミャンマー人の信仰する仏教は日本の仏教よりも厳格で、現世で功徳を積むことで来世の幸せを願う上座部仏教を信仰しています。このような仏教の教えから目上の人を敬ったり、約束をしっかりと守ったり、嫌なことも率先して行ったりと日本人が好感を持つような考え方が多いです。さらに、ミャンマーでは農業が盛んで日本のような村社会文化があります。そのため、ミャンマー人は協調性が高く、空気を読む能力に長けており、相手を立てる謙虚な性格を持つ方が多いです。
また、ミャンマー語は日本語と文法が似ており、日本語の習得も早いという特徴もあります。
「ミャンマー人は仏教の考えに基づき貧しい人への寄付も惜しまないのじゃ。実際にCAFが2019年に発表した「世界寄付指数」ではアメリカに次ぎ世界第2位じゃった。困っている人を助けたいと思うミャンマー人の考え方は素敵じゃの。」
文法はほぼ一緒なのでその分ミャンマー人にとって日本語は習得しやすいですが、やはり漢字は難しいです…
1-3. 不安定な政治状況と強い親日感情
ミャンマーはまだまだ国内政治が安定していません。2021年には軍事クーデターが発生し、2023年2月13日現在でも軍が政治を掌握しており今も混乱が続いています。クーデター以降、軍の弾圧によっておよそ2900人の国民が死亡しました。
また、ミャンマーは強い親日国です。日本のミャンマーに対するODA(政府開発援助)の額はクーデター発生前の2019年度にはおよそ1900億円となり、世界最大の支援国となっています。
以上のように、ミャンマー国内の政治的・経済的状況の悪さと強い親日感情、日本人との共通点の多さから近年ミャンマー人材の採用が注目されています。しかし、日本人と似ているからといって、文化が全く同じではありません。ミャンマー人と信頼関係を結び長期的な雇用を実現するためにはミャンマー人の価値観を理解することが重要です。
参考:NHK「1からわかる!ミャンマー(2)軍が政治にこだわる理由は?」
NHK|ミャンマー クーデターから3年 各地で「沈黙のストライキ」
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2. ミャンマー人にしないほうがいいこと・タブー
こちらの章ではミャンマー人にしてはいけないこと・タブーを解説します。
2-1. 特にミャンマー人は人前で怒らない方がいい
特にミャンマー人を人前で怒るのはタブーです。ミャンマーでは穏やかさが尊ばれる文化を持っているため、幼少期から家庭や学校で怒られたことがない方が多いです。特に、人前で叱られるとひどく傷つき離職につながるケースもあります。そのため、仕事でミスがあっても感情的に叱ることは避け、穏やかに間違いを指摘してあげれば素直に改善してくれるでしょう。
またミャンマーで人前で怒られるとすぐに噂になるので、辱めを受けたと感じてしまいます。
2-2. 集団の中で意見を聞かない方がいい
ミャンマーでは、ひたすら暗記させられる教育のため、自分で考えることや自分の意見を持つことが極端に苦手な傾向にあります。そのため、先に誰かの発言を聞いてしまうと、その意見に流されやすい傾向があります。ミャンマー人の本心を知りたい場合は、個別に聞くか、他の職員より先に聞いた方がいいでしょう。
今は変わってきていますが、ミャンマーでは親や学校の先生の言うことは絶対でしたので、自分の意見を持つことが少なかったこともあげられます。
2-3. ボディタッチをしない
ミャンマー人の女性にボディタッチをするのはタブーです。ミャンマー人は貞操観念が強い方が多いです。ミャンマーでは不倫などの不貞行為には懲役刑が下されるほどです。そのような貞操観念の高いミャンマー人には、気軽にボディタッチはしないようにした方がいいでしょう。
2-4. 西か北向き枕のベットを用意する
ミャンマー人に西か北向き枕のベットを用意するのはタブーです。ミャンマーでは必ず東か南に頭を向けて寝ます。東と南に仏様がいると信じているからです。仏様に足を向けて寝るのは失礼だと言う考え方があるので、寮を準備する際は枕が東か南に向いているようにして設定してあげると親切でしょう。
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2-5. ミャンマー人女性に人前で大きな声で話をさせる
ミャンマー人女性に人前で大きな声で話をさせるのはタブーです。ミャンマーでは、人前で大きな声で笑ったり、話したりする女性は育ちが悪いと考えられます。そのため、ミャンマー人女性に人前で大きな声で話をさせるのは避けた方がいいでしょう。
3. ミャンマー人の前で気にしておきたいマナー
3-1. 年配者や上司が先にご飯を食べるのがマナー
ミャンマー人と一緒に食事をする時は年配者や上司から先にご飯を食べましょう。ミャンマーでは「いただきます」と言う文化がなく、目上の人が食事を始めることが食事の開始の合図です。そのため、ミャンマー人と一緒に食事に行く際は上司が先に食事をはじめ、ミャンマー人のみなさんに食事開始の合図を送りましょう。
3-2. はっきり伝えるのがマナー
ミャンマー人と会話をする時は、はっきりと伝えることがマナーです。ミャンマー人は自分の考えをはっきりと伝える方が多く、感情が顔に出やすい性格の方が多いです。一方で、遠回しに伝えられたり、曖昧な表現で伝えられることに慣れていません。そのため、例えば、「〇〇したほうがいい。」という指示ではなく、「〇〇してください。」のようにYESかNOをはっきりさせて伝えたほうがいいでしょう。
3-3. 鍋のままご飯を食べないようにしましょう
ミャンマー人の前で鍋を食べる時は取り皿に入れて食べた方がいいでしょう。ミャンマーでは鍋のままご飯を食べる人はお金を盗んでいる人という考え方があります。すこし昔の考え方ではありますが、気にするミャンマー人もいるため、鍋のままご飯を食べるのは避けた方がいいです。
3-4. 音を立てて食事をしないようにしましょう
ミャンマー人と食事をする時、音を立てて食べるのはマナー違反です。日本ではラーメンなどを食べる時音を立てて食べるのが基本ですが、ミャンマーでは口から音を出す人は貧乏で失礼な人だと考える文化があります。そのため、ミャンマー人と一緒に食事に行く際はできる限り音を立てずに食べましょう。
3-5. 女性にお酒を勧めないようにしましょう
ミャンマーでは女性が人前でお酒を飲んではいけないという文化があります。最近はあまり守っていない方も多いようですが、気にするミャンマー人女性の方も多いので一緒に食事に行く際は注意してください。
4. 日本人と異なるミャンマー人の文化・習慣
こちらの章では日本とミャンマーの文化・風習の違いについて、仕事観、食事、恋愛観に分けて解説していきます。
4-1. 仕事観
日本に来ているミャンマー人はお金を稼ぐことを第一に考えている方が多いです。
あくまで、東南アジア出身の方は日本にお金を稼ぎに来ているので、休みの多さよりも残業の多さを重視し、できる限り残業をしたいと考えている方がほとんどです。また、ミャンマー国内の政治状況から日本で長く働きたいと考えている方が多いです。
少し仕事観とは話が逸れますが、ミャンマー人は日本人のように自己主張の少ない方が多いです。仕事をする上で不満に思っていることがあったとしてもあまり発言をすることがないでしょう。そのため、ミャンマー人従業員が無理をしていないか察してあげる必要があります。
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4-2. 食事
ミャンマー料理は味が濃く、油の多いものが多いです。ミャンマーはタイやインドと国境が接していることもあり、タイ料理のようなエスニックな味の料理やインド料理のようなカレー風味の料理が多いです。食事で箸はほとんど使わず、スプーンやフォークで食事を行います。
ミャンマー料理で有名なものはナマズなどの魚の出汁を使ったモヒンガーやお茶の葉と豆のサラダをつかったラペットゥ、チキンの入ったスパイシーなココナッツ味の麺オンノゥー・カウスエなどがあります。
4-3. 恋愛観
ミャンマーでは恋愛は必ず男性からのアプローチから始まる文化があります。女性からは決して告白しません。また、先述の通りミャンマー人は貞操観念が強い方が多いです。恋愛は結婚を前提に行います。また、昔の習慣では結婚前に男性と一緒に泊まってはいけないという考え方がありますが、最近は守っていない女性も多いようです。
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5. ミャンマー人が喜ぶこと・したほうが良いこと
最後にミャンマー人が喜ぶこと・した方が良いことを解説します。
5-1. 褒めて育てたほうがいい
先述の通り、ミャンマー人は幼少期から家庭や学校で怒られたことがない方が多いです。そのため、叱って育てるのではなく褒めて育てた方が効果的です。仕事でミスがあった際は穏やかに問題点を指摘し、頑張っている時はしっかりと褒めて、その頑張りを認めてあげましょう。
5-2. 上司が仕事をコントロールしたほうがいい
ミャンマー人は仏教の考え方の影響から「人を悲しませたくない。幸せにしたい。」と考えている方が多いです。仕事を任せられるとNOと言うことができません。期限内に終わらせることが難しい仕事や業務遂行能力が足りない仕事であっても引き受けてしまう可能性が高いです。そのため、ミャンマー人スタッフが能力や期限に無理なく仕事を終えられるよう上司が業務をコントロールした方がいいでしょう。
5-3. 頼りにしたほうがいい
ミャンマー人は慈悲深い方が多く、頼られることに喜びを感じる人が多いです。頼られたり頼られたり、助けを求められると、一生懸命手伝ってくれるでしょう。
5-3. 大仏がある寺に連れて行く
ミャンマー人は仏教への信仰が強いです。「日本に来た理由は鎌倉の大仏を見るためです。」という方もいるほどです。そのため、大仏のいる寺に連れて行ってあげるとミャンマー人は喜ぶでしょう。
ミャンマー人は特に大仏を大事にしていて、私も鎌倉大仏や牛久大仏、東京大仏、池袋大仏など私の住んでいる地域の大仏に赴きました!
6. まとめ
本記事ではミャンマー人へのタブーやミャンマーの文化、ミャンマー人が喜ぶことなどを解説させていただきました。
まとめるとミャンマー人は協調性があったり、謙虚だったりと日本人と似ている考え方を持つ方も多いですが、控えめすぎるところにデメリットがあります。そのため、上司が心のケアや業務のコントロールをしていく必要があるでしょう。また、怒られることに慣れていないため穏やかに間違いをただしてあげる必要があります。
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