旅館の外国人採用を成功させる3つのポイント

深刻な人手不足に悩む宿泊業界において、外国人材の採用は今や欠かせない選択肢です。しかし、「採用してもすぐに辞めてしまう」「現場の仕事とミスマッチが起きる」と不安を抱える経営者や採用担当者の方も少なくありません。

外国人スタッフが職場で力を発揮し、長く働き続けるためには、日本人とは異なる「教育と定着の仕組み」が必要です。

この記事では、旅館における外国人採用をわかりやすくまとめました。公的ツールの賢い使い方から、スタッフの愛着心を一気に引き出すフォロー体制まで、採用を成功に導く3つのポイントまで解説します。

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目次

1. 宿泊業界の人手不足とインバウンドの現状             

現在、日本の宿泊施設では外国人採用に踏み切っているケースが増えています。国内旅行に行けば、肌で感じている方も多いのではないでしょうか。特に若手や人材が集まりにくい地方の老舗旅館や和風旅館において、外国人スタッフの存在は欠かせません。ここでは、深刻な人手不足の現状を解説します。

1-1. 人手不足の現状 

宿泊業の人手不足は、全産業の中でも特に深刻です。帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査(2024年4月)」によると、旅館・ホテルの71.1%が「正社員が不足している」と回答しています。

正社員の人手不足割合では、全業種のなかで情報サービスの次に高い水準です。また、アルバイト等の非正社員についても63.8%が不足と回答しており、現場の維持が危機的な状況にあります。

※参考:帝国データバンク 2024年4月発表資料

1-2. 人手不足の原因

人手不足の背景は、少子高齢化による人口減に加え、旅館特有の「中抜き勤務」にあります。中抜き勤務とは、早朝と夜の繁忙時間に働き、昼に長い休憩を挟む形態です。「実質の拘束時間が非常に長い」「プライベートが細切れになり有効活用しにくい」のが特徴です。

「仕事が終われば完全に自由になりたい」と考える現代の若年層のライフスタイルには、合いにくいといえます。そのため地方の旅館では、特に国内人材の募集が難しくなっています。

1-3. 人手不足とインバウンド(外国人観光客)

※赤い線:2025年、1~3月までの青い線:2026年
※出典:インバウンド 訪日外国人動向|株式会社JTB総合研究所

上記のグラフからは、インバウンド(外国人観光客)の急増がうかがえます。観光庁が公表した資料「宿泊業における人材確保に向けた取組について」の調査結果を分析すると、需要があるにもかかわらず、人手不足を理由に「宿泊人数の制限(売り止め)」を行っている施設が数多く存在することがわかっています。

特に旅館においては、客室清掃や配膳スタッフの不足がボトルネックです。空室があるのに予約を受けられないという機会損失が発生しています。

ここで外国人を採用することは、単なる欠員補充にとどまりません。外国人スタッフの強みを活かしてインバウンド(外国人客)へのサービスを高めつつ、諦めていた予約をしっかりと取りこぼさずに受け入れる。これが、稼働率とサービスの質を上げる「攻めの経営戦略」へとつながります。

※参考:観光庁 宿泊業における人材確保に向けた取組について

2. 旅館で雇用できる在留資格(ビザ)|「特定技能」と「技人国」         

旅館で外国人を雇用する場合、検討すべき主要な在留資格は「特定技能」と「技術・人文知識・国際業務(技人国)」の2つです。それぞれ、任せられる業務の範囲や取得するための条件は大きく異なります。

また特定技能には、旅館で雇用できる分野に「宿泊」「外食」「ビルクリーニング」があるため、募集内容に合うビザの選択が求められます。採用のミスマッチや不法就労を防ぐために、理解を深めておきましょう。

項目    特定技能(宿泊)  技術・人文知識・国際業務
主な業務【宿泊】
フロントから配膳・清掃まで、マルチに任せられるフロント、企画、広報、接客、レストラン配膳、清掃
通訳、翻訳、海外広報、企画
【外食】
レストラン部門の強化や、調理専門スタッフの募集に適する(調理、ホール接客、店舗管理)
※客室清掃などは不可
【ビルクリーニング】
清掃・ベッドメイクの清掃部門(客室・共用部の清掃、内壁・外壁の清掃)
※客室清掃などは不可
現場作業幅広く可能(即戦力)原則不可(付随的なら可)
学歴要件不要  
※ただし、以下の試験合格が必要
・「宿泊分野特定技能1号評価試験」または「宿泊分野特定技能2号評価試験」
・日本語能力試験
大学卒業または実務経験10年以上
在留期限通算5年(1号の場合)上限なし(更新可能)
家族の帯同原則不可(1号の場合)可能

2-1. 特定技能

「特定技能」は、深刻化する労働力不足を解消する切り札として2019年に新設されました。旅館を含む「宿泊」など特定の産業分野(現在16分野)において、即戦力となる外国人を正社員として雇用できます。

出入国在留管理庁の最新データによると、令和7年12月時点の在留者数は、過去最多の39万296人(※1)に達しました。政府も今後さらなる受け入れ拡大を予定しており、2024年度からの5年間で「最大82万人」(※2)の受け入れを見込むなど、日本を支える重要な労働力として期待が高まっています。

※1:特定技能在留外国人数の公表等|出入国在留管理庁

※2:特定技能の外国人、5年で82万人に拡大 政府が閣議決定|日本経済新聞

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この資料では特定技能とは何なのか、どのように外国人を採用できるかについて解説しています。ゼロからでもわかる図解付き。

特定技能の「1号」「2号」について】

特定技能には「1号」と、より熟練度が求められる「2号」の2種類があります。実務においては、まず1号として現場経験を積み、キャリアアップとして2号へのステップアップを目指すのが一般的です。

1号と2号には在留期間の長さや、家族帯同の可否、任せられる業務の幅や求められる専門知識に至るまで、多くの違いがあります。

具体的な特徴や移行の条件については、以下の詳細記事でわかりやすく解説しています。

在留期間】

  • 特定技能1号:通算で最大5年
  • 特定技能2号:期間の制限がなく、要件を満たす限り何度でも更新が可能 
    ※1号の5年間を終えるまでに、試験合格等を経て2号へ移行することで、長期的に雇用できます

他のビザとの違い

最大の相違点は「現場の実務(単純作業を含む)」が認められている点です。技人国ビザでは許可が下りない客室清掃、配膳、ベッドメイクといった業務もメインとして従事できます。宿泊業界の慢性的な人手不足を直接解消できるのが強みです。

【取得のしやすさ・更新】

学歴は不問ですが、「技能試験」と「日本語試験」への合格が必須条件となります。ただし、過去に「技能実習2号」を良好に修了している外国人の場合は、無試験で特定技能1号へ移行できます。即戦力をスムーズに採用しやすいのが大きなメリットです。

フロント・接客・企画|特定技能「宿泊」

宿泊業に特化した特定技能「宿泊」は、フロントでのレセプション、広報や企画、おもてなしを伴う接客など、旅館の幅広い業務に対応しています。

フロント業務の合間に「レストランでの配膳」や「客室清掃」をサポートするなど、施設内のマルチタスクな動きが認められている点も特徴的です。将来の幹部候補として、現場のあらゆる部門を経験させたい場合に最も適したビザといえます。

ホール・キッチンスタッフ|特定技能「外食」

外食分野における特定技能スタッフは、厨房・レストランでの調理から客席での接客、管理業務まで、現場のあらゆる仕事に柔軟に従事できます。

建物清掃・客室清掃|特定技能「ビルクリーニング」

客室をはじめ、ロビー、廊下、階段といった共有スペースから、エントランスや内壁に至るまで、建物内部を清掃・維持管理できるビザです。宿泊施設において欠かせない「ベッドメイク」も業務範囲に含まれています。清潔で快適な空間づくりを支える現場スタッフとして、活躍してもらうことが可能です。

2-2. 技術・人文知識・国際業務(技人国)       

「技術・人文知識・国際業務(技人国:ぎじんこく)」は、専門的な知識やスキルを活かす職種を対象としたビザです。永住ビザに次いで在留者が多く、令和7年6月末時点では45万8,109人に達しています。

技人国は、海外での「就労ビザ(ワーキングビザ)」に相当します。主に大学卒業程度の学歴を持つ外国人が、いわゆるホワイトカラーとしての業務に従事する際に取得します。

【技人国ビザの場合、旅館で任せられる仕事内容】
特定技能が「現場のマルチタスク」を得意とするのに対し、技人国は「言語と専門性を活かしたデスクワーク・接客」がメインです。

フロントでの翻訳・通訳業務
 海外からのゲストに対する多言語でのチェックイン対応や、周辺観光のコンシェルジュ業務
海外マーケティング・広報
 外国人目線を活かしたSNS運用、海外旅行会社(エージェント)との交渉、公式ウェブサイトの多言語化
インバウンド向けの企画・管理
 海外旅行客向けの宿泊プランの企画、館内の多言語サインの作成、外国人スタッフのシフト管理や指導

【在留期間】

在留期間は5年、3年、1年、または3か月のいずれか
※在留期間は何度でも更新可能

【他のビザとの違い】

あくまで「専門職」のための資格であるため、客室清掃や料理の配膳といった単純作業が主な業務では、許可が下りないという点に注意が必要です。

【取得のしやすさ・更新】

学歴と業務内容の関連性が厳しく審査されますが、要件を満たしていれば何度でも更新が可能です。長期的にキャリアを築いてもらうことができます。

3. 旅館の人材教育|「おもてなし」を言語化・視覚化                    

日本の旅館が誇る「おもてなし」文化は、外国人にとって時に抽象的に感じるかもしれません。また「背中を見て学ぶ」といった職人気質の人材教育では、意図した方法が伝わりにくいでしょう。文化や言語の異なる外国人スタッフを雇う場合、感覚に頼った教育では現場が混乱してしまいます。

スムーズに現場へ馴染んでもらうためには、暗黙の了解となっている日本人的な感覚のサービスを「言語化」および「視覚化」することが不可欠です。ここでは、明日から実践できる3つの具体的な教育・採用アプローチを紹介します。

外国人の日本語レベルはどれくらい?

JLTP、N1、N2とは?
実際働いている、もしくはこれから働こうとしている外国人は
どのくらい日本語力があるのか、経験とともに解説します!

3-1. やさしい日本語の使用

外国人スタッフと円滑にコミュニケーションを取るには、「やさしい日本語」がおすすめです。単に子ども向けの言葉で話すのではなく、構造をシンプルにして、相手が理解しやすいように配慮した日本語を指します。

例えば、指示を短くするのも方法のひとつです。一度にすべての手順を説明するのではなく、ひとつ完了した次の指示を出すといったやり方もあります。

また日本語が苦手なスタッフには、複数の漢字が結びついた「熟語」をできるだけ控えます。寒冷なら「寒い」「冷たい」、運搬なら「運ぶ」「別のところに持って行く」などの表現にも変えてみましょう。指示の意図が正確に伝わると、業務のミスを劇的に減らすことができます。

①「は・き・し」を意識する
「はっきりと」「短く」「簡潔に」伝える
② 業界用語や二重表現を避ける
旅館特有の専門用語や、遠回しな敬語表現は使わない

3-2. 動画マニュアルの利用

着物の着付け、お部屋の案内、お膳の配膳位置、客室の座布団の向きやしつらえ、浴場の清掃など、旅館の業務には「美しい所作や配置」が求められる場面が多々あります。正しい所作を言葉だけで説明しようとすると、言語の壁によって理解してもらえないかもしれません。ここで役立つのが「動画マニュアル」による視覚化です。 

一連の動作を録画する
社員の一連の動作を1〜2分の短い動画に収め、スマホやタブレットでいつでも見られるようにする
→日本語レベルが発展途上のスタッフでも、視覚的に「正解のカタチ」を瞬時に理解できる

動画マニュアルを利用することで、何度も同じ所作を繰り返し教える手間が省けます。結果的に、指導する側・受ける側双方のストレス軽減にもつながります。

3-3. シートの使用(厚生労働省の公的ツールの活用)

外国人スタッフの教育を仕組み化し、定着率を高めるためには、「シート」の活用が役立ちます。

特におすすめなのが、厚生労働省が公式ウェブサイトで無料公開している「宿泊業の職業能力評価基準」の活用です。このシートは、国が宿泊業界向けに作成した公的なツールです。

「職業能力評価シート」や「人材要件確認表」といったExcelファイルを、誰でも自由にダウンロードできます。

本来は、一般的な中途採用などを想定して作成・公開されました。しかし、経歴やスキルの判断が難しい外国人採用においてこそ、シート活用を取り入れてみましょう。

旅館業|厚生労働省

ホテル業の人材育成のために|厚生労働省  

4. 旅館で外国人スタッフの定着率を上げるコツ

外国人スタッフを採用できても、すぐに辞めてしまっては意味がありません。特に文化や言葉の壁がある環境では、日本人スタッフ以上に入念なフォローが必要です。

外国人材が「この旅館で長く働きたい」と思える環境づくりのために、今日から実践できる3つのコツを解説します。

4-1. コミュニケーションをとる

定着率向上の土台となるのが、日々の丁寧なコミュニケーションです。多くの外国人スタッフは、慣れない異国の地で「孤立すること」に大きな不安を抱えています。不安を解消するために、「メンター制度」の導入が効果的です。

① 相談できる「お兄さん・お姉さん」を作る
年齢の近い日本人スタッフや、先輩の外国人スタッフを「教育・相談担当(メンター)」として1人決める
②定期的にメンタリングする
メンターとメンティーは、「月に1回、1時間」など、定期的にメンタリング(対話・アドバイス)をする

メンター制度があれば、プライベートや生活面の悩みも気軽に相談できる存在を作ることができます。外国人スタッフを相談役にすると、「異国の地でがんばる仲間・先輩」の意識が強くなり、安心して相談しやすくなるでしょう。

外国人労働者との
コミュニケーションマニュアル

この資料では外国人労働者とどうコミュニケーションし、良い関係を築くことができるか解説しています。

4-2. キャリアパスの提示

外国人スタッフが早期離職する大きな原因の一つに、「このままここで働き続けて、自分は成長できるのだろうか」という将来への不安があります。そのため、明確な「キャリアパス(成長の道筋)」を提示することが不可欠です。

ここで力を発揮するのが、厚生労働省の「夢ノート」と「職業能力評価基準シート」との組み合わせです。

「夢ノート」の活用「日本で将来やってみたいこと」や「この旅館でどんな風になりたいか」といった目標をかくノートを準備
→定期面談のときに、夢ノートを用いて本人の希望や困りごとを整理する
評価シートによる可視化厚生労働省の評価シートをベースに「このレベルをクリアできたら、次は「リーダー職へ昇格」「基本給がアップ」といったステップを示す
ビザのステップアップ後押し企業側から「2号試験の合格に向けた勉強会を開く」「受験費用を会社が補助する」といったステップアップのサポートをする

キャリアアップを本気で応援してくれる会社に対して、スタッフは「この旅館が大好き、ここでずっと頑張りたい」という気持ちが生まれやすくなります。

4-3. JJSは定着率97%

自社だけで採用から教育、定着までを仕組み化するのは、簡単ではありません。その場合には、外部の専門パートナーに委託するのも賢い選択肢です。

JJSでは、外国人採用・紹介にとどまらず、入社後も手厚いサポートを行っています。これまで紹介した人材の定着率は「97%」という実績があります。

JJSが高い定着率を維持できる理由は、単なる「人材の紹介」にとどまらないからです。内定が出たあとの入国手続きや、日本での生活支援、さらには就業スタート後の定期的なフォローまでバックアップします。

外国人スタッフの雇用は、自社の負担を最小限に抑えつつ、プロの手を借りて確実に定着させる一番の安全策です。

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5.【JJSが紹介】旅館で働く外国人                  

実際にJJSのサポートを活用して外国人スタッフを採用し、大活躍されている旅館の事例をご紹介します。山梨県の旅館「梅ぞ乃」様では、ネパール出身のキサンさんが特定技能スタッフとして働いています。キサンさんは、見事に難関である宿泊分野の「特定技能2号」試験に合格されました。

一度も辞めずに4年近く働き続け、ステップアップできた背景には、旅館側の素晴らしい取り組みがありました。詳しくは、下記のインタビュー記事をご覧ください。

6. まとめ                           

外国人採用を成功させる鍵は、「客観的な評価」「成長の道筋(キャリアパス)」、そして「孤立させないあたたかいフォロー」の3つです。これらを自社だけでイチから構築するのが難しい場合は、プロの力を借りるのが一番の安全策になります。

外国人採用・支援の専門パートナーである「JJS(ジェイジェイエス)」では、紹介した人材の定着率97%という業界トップクラスの実績を誇っています。入国手続きから就業後の定期フォローまで、旅館の皆様の負担を最小限に抑える体制が整っています。

「初めての外国人採用で失敗したくない」「即戦力を確実に定着させたい」とお考えなら、まずはJJSへお気軽にお問い合わせください

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この記事を書いた人

主に「特定技能」「技術・人文知識・国際業務」「外国人マネジメント」「企業・外国人インタビュー」などの情報をこれから外国人を採用したい企業様向けに発信しています。編集部は外国人の人材紹介と支援を行っているJapanJobSchoolの社員で構成されており、専門家ならではの視点からお届けします。

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