特定技能人材の受入れの必須要件である雇用後の支援業務。すべて自社で行う「自己完結型」と、特定技能人材に対する支援を委託する「委託型」の2パターンがあります。
両パターンとも一長一短あり、一概にどちらがいいと言えるものでもありません、今回は、どちらが自社に適しているかを解説しますので、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

自社で行うか、委託するか

自己完結型

メリット

*委託費用が掛からない

デメリット

*外国人材の雇用実績が必要
*人的コスト・時間的コストが掛かる
*関係法令を勉強しなければならない

委託型

メリット

*特定技能人材のサポートをしてもらえる
*入管への手続きも委託できる

デメリット

*登録支援機関選びが難しい
*支援委託費を支払わなければならない

主なメリット・デメリットを箇条書きにしてみると、このようになります。
以下で、自己完結型・委託型を掘り下げながら、メリット・デメリットについて解説していきます。

「自己完結型」・「委託型」共通の条件

解雇ゼロ

特定技能人材と雇用契約を結んだ日から1年以内に解雇者を出している場合は、新たに特定技能人材を受入れることはできません。
これは、「日本人を辞めさせて外国人を雇う」ということを禁止するためのものです。もちろん、特定技能人材との雇用契約締結後も、解雇者を出せば1年間は特定技能人材を受入れるこができなくなります。
ただし、懲戒解雇など、特定技能人材を受入れるために日本人を辞めさせたのでない場合は、この規定の対象外となることがあります。個別の事例については、入国管理局へお問い合わせ下さい。

「自己完結型」の条件

外国人材の受入実績

特定技能人材を支援委託せずに受入れる場合、過去2年間に外国人材(正確には、中長期在留者)を受入れた実績が必要です。「受入れた実績」については、過去2年間のうちに3カ月以上が一つの目安になっているようですが(本記事配信時点)、実績が2年未満の場合は事前に入管へ問い合わせをしておくことをおすすめします。

外国語による支援体制

自己完結型で特定技能人材を受入れるためには、通訳ができる担当職員を確保する必要もありますが、自社雇用をしていることが必須要件ではないため、業務委託等で通訳者を確保することも可能です。
なお、特定技能人材が優秀で、日本語検定N2などを取得していて、日本語でのコミュニケーションが問題なく行えるような場合であれば、通訳ができる職員がいなくても構わないようです。こちらも、具体的な状況については入管へお問い合わせ下さい。

「自己完結型」で受入れるには

特定技能人材の受入れにあたっては、「支援計画」を作成して、計画どおりに支援を行わないといけません。
支援の内容は、以下のようになります。

事前ガイダンス

特定技能人材の入管への入国申請・資格変更申請の前に、以下内容について、事前ガイダンスとして3時間以上行わなければなりません。

・業務内容、報酬額、その他労働条件に関すること
・入管での手続きに関すること
・違約金を定める契約をしていないことの確認
・現地送出機関等へ支払う費用について、十分理解していることの確認
・支援計画の実施に要する費用を、特定技能人材に負担させないこと
・寮の確保に関すること
・生活相談、苦情の受付体制

出入国時の送迎

入国時、帰国時に空港までの送迎を行う必要があります。実習生として日本で3年以上過ごしていたとしても、「電車に乗って会社まで来て」と言うことはできません。
また、帰国時は空港へ送り届け、なおかつ保安検査場に入ったことの確認までしなければなりません。

生活インフラの確保

社員寮がない会社であれば、外国人本人は寮となる賃貸物件を探す必要がありますが、必要であれば契約手続き等の支援を行う必要があります。ちなみに住居の広さは寝室が1人あたり7.5㎡以上となるようにしなければなりません。
また、電気・ガス・水道の開通手続きもの支援も必要です。

生活オリエンテーション

特定技能人材の雇用を開始してから速やかに、次の項目を8時間以上掛けて説明しなければなりません。

・日本での生活に必要な一般知識(ATMの使い方、交通ルールなど)
・転入届など、国や市町村への手続き
・国や市町村の相談窓口
・近くの病院の場所
・急病の場合の対処法
・防災、防犯に関する知識
・入管法、労働法について

特に、市町村等への手続きは、同行するなどの支援をするよう法令で定められています。

日本語学習の機会の提供

・地域の日本語教室の情報提供
・日本語学習教材・オンライン講座の情報提供
・日本語教師との契約

のいずれかの情報提供をしなければなりません。

定期面談

3カ月に1回以上の頻度で、労働状況や生活状況を確認するための面談を行わなければなりません。面談は、特定技能人材が十分理解できる言語で行う必要もあります。

定期報告

こちらも3カ月に1回以上の頻度で、管轄する入国管理局に指定された様式に記入をし、直接持参もしくは郵送で報告をする必要があります。通常時の定期報告の際に必要な様式はおもに下記の様式になります。

•参考様式第3-6号 受入れ状況に係る届出書

•参考様式第3-7号 支援実施状況に係る届出書

•参考様式第3-7号(別紙) 1号特定技能外国人支援対象者名簿

•参考様式第3-8号 活動状況に係る届出書

•参考様式第3-8号(別紙) 特定技能外国人に対する報酬の支払状況

•参考様式第5-4号 相談記録書

•参考様式第5-5号 定期面談報告書(1号特定技能外国人用)

•参考様式第5-6号 定期面談報告書(監督者用)

•参考様式第5-7号 報酬支払証明書 ※給与が現金支払いの場合のみ必要

出入国在留管理庁:特定技能運用要領・各種様式等

その他

ここまでに挙げたもの以外にも、特定技能人材から相談があった場合に対応することはもちろん、日本人との交流促進(地域の神社のお祭りにつれていくなど)であったり、万一リストラした場合でも転職先の紹介を行わなければなりません。
こういったことから、自己完結型での受入れは相当ハードルが高いと言えます。

「委託型」の条件

委託型で特定技能人材を受入れる場合には、これまでの外国人材受入れ実績や自社での支援体制はまったく必要ありません。すべて登録支援機関に委託すればOKです。

下記の記事で登録支援機関について説明しているので是非ご覧ください。

「委託型」で受入れるには

「委託型」で受入れるには、ここまで紹介してきたものをすべて登録支援機関に委託することができます。支援体制を整えておく必要も、支援計画を実行する必要もありません。ただ、毎月数万円/名程度の支援委託費を負担する必要があります。(業界平均は約2~3万円程度)
ただ、デメリットでも触れたように登録支援機関選びが難しく、どの登録支援機関に委託するかで人材の能力・サポートの質が大きく変わってきます。

まとめ

条件さえ満たしていれば、自己完結型と委託型のどちらを選択するのも受入企業の任意です。
上記に挙げたような支援業務を自社で支援をできる体制が整っているのであれば、自社で支援をすることで毎月のランニングコストを下げることが可能です。手続きに慣れていない場合、人員を割くことができないような場合は、登録支援機関に委託して特定技能人材を受入れるのがベターでしょう。

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竹村 友希

過去3000名以上の外国人を指導してきた日本人理解授業を担当する講師。前職の介護職での経験を生かし、日本人の人口の大半を占める高齢者層と、どのようにコミュニケーションをとるべきか、どのような理解が必要かなどをメソッド化し教えている。