在留資格「特定技能」を活用した外国人材採用が活発になってきています。特定技能制度を紹介するウェブサイトも多数林立するようになってきました。
当サイトでも「特定技能」とのみ記載していることが多いですが、特定技能は実は「1号」と「2号」の2種類があります。
今回はこの違いをご説明致します!

受入れ可能な分野

特定技能1号

飲食料品製造業や農業など、14分野での受入れが認められています。

特定技能2号

2021年6月30日の時点で、「建設分野」と「造船・舶用工業分野」の2分野でのみ認められています。
ただし、認められているとは言え、実際に特定技能2号での許可を取得した特定技能人材は1人もいません。許可の前提となる試験が行われていないためです。
また、特定技能2号の対象分野はかなり少ないので、今後社会の要請に応じて拡大されることは十分に考えられます。

就労可能期間

特定技能1号

就労可能期間は合計5年までとされています。
1社で勤務し続けた場合でも、同業種・異業種へ転職した場合でも、就労期間は5年を超えることができません。

特定技能2号

就労可能期間は無制限です。日本の法律を遵守してさえいれば、何年でも更新手続きをすることができます。

必要な技能水準

特定技能1号

特定技能1号専用の試験に合格する必要があります。
技能実習と関連のある職種であれば、その職種の技能実習2号を良好に修了しておくことで、試験を受けずに特定技能1号へ移行することが可能です。

特定技能2号

特定技能2号専用の試験に合格する必要があります。ただ、こちらの試験は、建設分野と造船・舶用工業分野のどちらも実施されていません。

必要な日本語能力

特定技能1号

運用要領では、「ある程度日常会話ができ,生活に支障がない程度の能力を有することを基本としつつ,特定産業分野ごとに業務上必要 な日本語能力水準」とされています。
具体的には、日本語能力試験(JLPT)のN4以上か、国際交流基金が実施している日本語基礎テストへの合格が必要です。
なお、技能実習2号を良好に修了している場合、各種日本語試験の受験は免除されます。

特定技能2号

意外なことに、日本語要件はありません。日本語がペラペラでもまったく話せなくてもOKです。

支援の必要性

特定技能1号

特定技能1号で外国人材を受入れる場合は、様々な「支援」を行わなければなりません。
入社前の事前ガイダンスに始まり、入社直後の生活オリエンテーション、3カ月に1回以上行う定期面談など、いろいろな場面で実施が求められています。

特定技能2号

特定技能2号の場合は、このような支援を行う必要はありません。特定技能2号の許可を得られるレベルの外国人は、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の外国人と同等の能力があると見られるためです。

家族帯同

特定技能1号

家族の帯同は原則として認められていません。ただし、旅行などで特定技能人材の家族が日本に来た場合は、有給休暇を取得させるなど配慮しなければならないとされています。

特定技能2号

特定技能2号においては、家族の帯同が認められています。ただし、「家族滞在」の在留資格は配偶者と子供に限定されていますので、両親や兄弟は認められないものと思われます。

よくある誤解

特定技能「1号」、「2号」となっているため、「1号」の5年間を終えないと「2号」の許可を得られないと考えている方が一定数おられると思います。ところが、これは誤解です。
特定技能1号を経ることなく、直接特定技能2号の許可を取得することが認められています(直接取得できないとする規定はありません)。
逆に、特定技能1号を5年間終えたとしても、特定技能2号用の試験に合格していなければ、特定技能2号へ移行できるわけではありません。
ただ、繰り返しになりますが、特定技能2号用の試験が行われていないので、現時点では特定技能2号の許可を得ることはできません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。特定技能は日本の人手不足を解消するために創設された在留資格です。これまでは技能実習制度のみが事実上の人手不足解消策として活用されていましたが、様々な問題が発生していることから、特定技能が期待されています。
特定技能1号では、特定技能人材に対して支援を行う必要があるため手間暇が掛かりますが、一方でその支援や申請手続きを通じて外国人雇用のノウハウを蓄積できます。その意味では、他の在留資格に比べると企業にとってもメリットがあるかもしれません。

参考資料
出入国在留管理庁「特定技能制度に関するQ&A」
http://www.moj.go.jp/isa/content/930006254.pdf(R3.7.13閲覧)

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竹村 友希

過去3000名以上の外国人を指導してきた日本人理解授業を担当する講師。前職の介護職での経験を生かし、日本人の人口の大半を占める高齢者層と、どのようにコミュニケーションをとるべきか、どのような理解が必要かなどをメソッド化し教えている。