海外からの入国が制限されている昨今、特定技能人材に受入れ手段として多く利用されているのが実習生からの移行です。ただ、技能実習と特定技能は本来別々の制度であるため、すべての実習生がスムーズに特定技能へ移行できるわけではありません。
今回は、実習生が特定技能へ移行する際の条件とともに、手続きの流れをご説明します。
特定技能への切り替えの条件
受入企業の条件
特定技能人材の受入れは、受入企業が以下の14業種に該当する場合に認められています。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 産業機械製造業
- 航空分野
- 宿泊業
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
なお、それぞれの業種で、対象外となるものが個別に定められています。例えば、ワインなどの果実酒メーカーは、いくら飲食料品製造業とはいえ、特定技能人材を受入れることができません。
このような規定は、総務省が定めている「日本標準産業分類」を基に決定されています。
紙幅の都合上、詳細は各業種の運用要領をご確認下さい。
http://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00201.html
(出入国在留管理庁のホームページが開きます)
外国人材の条件① 同じ会社での移行
自社で受入れ中の実習生を特定技能へ移行させるためには、技能実習3年間を”良好に”修了すればOKです(業種の要件を満たしていることが前提です)。
実習生は、3年目の途中に技能検定(もしくは技能評価試験)の3級の実技試験を受けることとなっています。この試験に合格することで、技能実習3年間を”良好に”修了したとみなしてもらえます。
外国人材の条件② 転職による受入れ
他の企業で実習を修了した人材を受入れる場合、方法は大きく分けて2パターンあります。
1つは実習生のときの職種と特定技能で従事する業務が同じパターンです。この場合は、先程ご紹介したように「技能実習3年間を良好に修了」すなわち技能検定3級の実技試験に合格すれば、条件をクリアします。
もう1つは、3年間修了した実習生のときの職種と、特定技能で従事する業務が異なるパターンです。こちらの場合は、特定技能用の試験への合格が必要です。実習生の期間中に受験することは可能ですが、合格率が低い業種もあり、難易度も技能検定3級相当なので、一発合格は難しいかもしれません。
※注意:移行可能な時期について
技能実習から特定技能へ移行できるのは、技能実習2号や3号の修了時となっています。例えば、技能実習2号の途中で特定技能の試験に合格したからといって、その時点から特定技能に移ることはできません。
実習生には、実習期間中の”実習計画”が策定されていますが、この実習計画を無視してまで特定技能へ移行することを入管が許可してくれないためです。
特定技能移行のメリット・デメリット
実習生を特定技能へ移行させるメリットは、言うまでもなく労働力が確保できるという点でしょう。
それと同時に考えておいたほうがいいのが、デメリットの部分です。特定技能は転職が認められているため、より良い条件の会社を特定技能人材が見つけると、その会社へ転職される可能性があります。
この他、給与条件も「日本人従業員と同等以上」という点を、実習生のとき以上に入管にチェックされます。
特定技能人材は、実際には安く手に入る労働力とは言えなくなっています。
手続きの流れ
提出書類の準備
実習生から特定技能へ移行する際は、20〜30種類程度の書類を準備しなければなりません。提出書類は、移行する人材に関する書類と受入企業に関する書類に大きく分けられます。
移行する人材に関する書類の例としては
- 資格変更申請書
- 雇用契約書のコピー
- 健康診断個人票
などがあります。
受入企業に関する書類は、
- 登記簿
- 役員の住民票の写し
- 納税証明書
- 保険料納付証明書
など、法務局や市役所等へ出向いて発行してもらわなければならない書類が多数あります。
提出が必要な書類の一覧は出入国在留管理庁のホームページで公開されていますので、申請の2〜3カ月前には一度必要書類を確認し、計画的に作成・準備を進める必要があります。
提出書類一覧が掲載されているページhttp://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri07_00197.html
(出入国在留管理庁のホームページが開きます)
入管への申請
書類申請は、特定技能へ移行する人材の住所を管轄している出入国在留管理局(入管)へ行います。このとき、原則として外国人本人が入管へ行く必要があります(日本人の同行はOKです)。
申請後、通常の審査期間は2週間〜1カ月ですが、初めての申請の場合はいくつか不備を指摘されることが考えられます。
不備の指摘・修正書類の作成を2〜3回繰り返すと、審査期間は1カ月以上となることもありますので、時間に余裕を持って申請を行うことが欠かせません。
まとめ
実習生から特定技能への移行が可能かどうかは、実習生の職種や受入企業の業種など条件別に複雑になっています。自社のみで判断するのではなく、登録支援機関の協力を得るか、出入国在留管理局へ問い合わせすることも選択肢の一つです。
特定技能への移行を決定してからも、煩雑な書類手続きが待ち構えています。書類作成に手間取って外国人材の在留期限が過ぎてしまうと、特定技能への移行が許可されるまで、就労ができなくなります。準備を早く進めて困ることはありませんので、計画的に手続きを行いましょう。
竹村 友希
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