2020年10月末の時点で、日本で働く外国人の数は172万4,328人と過去最高を更新しました。昨年に比べて外国人労働者の増加率がもっとも高かったのは、意外にも福井県でした。
どうしてこのような統計結果が確認できるかというと、外国人を雇用した企業には「外国人雇用状況の届出」が義務付けられているためです。
今回は、外国人を雇用するときに必ず行わなければならない「外国人雇用状況の届出」について解説します。

外国人雇用状況の届出とは

外国人雇用状況の届出とは、外国人労働者が入社・退職した際に、その外国人の名前・在留資格・在留期間等について確認して届出書を作成し、ハローワークへ提出することを言います。
届出書の提出が義務付けられたのは2007年からで、行政側が外国人労働者の適正な雇用管理を推し進めていくために導入されました。
一部の在留資格(外交など)の場合は届出を出す必要がありませんが、一般企業が採用するが外国人の多くは「特定技能」や「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を保有しています。このため、外国人雇用状況の届出の提出は必須と考えて問題ありません。

罰則規定も

厳密に運用されれば罰金

外国人雇用状況の届出は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」いわゆる「雇用対策法」で定められています。

第二十八条 事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。次項において同じ。)、在留期間(同条第三項に規定する在留期間をいう。)その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない
第四十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する
二 第二十八条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者

労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

法律では「厚生労働大臣」となっていますが、実際に届出る場所はハローワークとなっています。

罰金刑で特定技能もNGに

外国人雇用状況の届出の提出を忘れていたという理由で罰金刑が科せられた事例は寡聞にして聞きませんが、万が一罰金となると欠格事由に該当するため、5年間は特定技能人材や技能実習生を受入れられなくなります。
例えば特定技能の場合だと、関係省令には、「雇用対策法違反で罰金刑を受けて5年以内の者」は特定技能人材の受入企業になれないことが明記されています。

第二条 四 次のいずれにも該当しないこと。
ロ 次に掲げる規定又はこれらの規定に基づく命令の規定により,罰金の刑に処せられ,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から起算して5年を経過しない者
(7) 労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和四十一年法律第百三十二号)第四十条第一項(第二号に係る部分に限る。)の規定及び当該規定に係る同条第二項の規定

特定技能雇用契約及び一号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令

このようなデメリットがあるからというわけではありませんが、届出は適切に行うようにしましょう。

提出方法

新たに入社・退職した外国人が雇用保険に加入する(していた)場合は、「雇用保険の被保険者資格の取得届(喪失届)」を作成しなければなりません。この書類に外国人の在留カード番号や在留期限などを記入することで、雇用保険被保険者資格の取得届(喪失届)と同時に外国人雇用状況の届出をすることができます。
在留カードの確認方法については、「在留カードとは?見方や確認事項を徹底解説!」でも解説していますので、ぜひそちらもチェックしてみてください。

また、雇用保険に加入しない(していなかった)場合は、「外国人雇用状況届出書(様式第3号)」という書類を作成します。書式は厚労省や労働局のホームページに掲載されています。今年3月からは、在留カード番号を明記しなければならなくなったので、書式が一部変更されました。
なお、外国人雇用状況の届出はインターネットでも受付けていますので、そちらを利用することも可能です。

提出期限

外国人雇用状況の届出の提出期限は、雇入れの場合も離職の場合も翌月末日までとなっています。

まとめ

外国人を雇用する際は、雇用形態にもよりますが入管などいろいろな行政機関に届出が必要になります。
ハローワークへ提出する外国人雇用状況の届出も、作成が必要な書類リストに入れておいて、忘れずに届出ましょう。

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竹村 友希

過去3000名以上の外国人を指導してきた日本人理解授業を担当する講師。前職の介護職での経験を生かし、日本人の人口の大半を占める高齢者層と、どのようにコミュニケーションをとるべきか、どのような理解が必要かなどをメソッド化し教えている。